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きっかけはオーガニック

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「この仕事をはじめたら、きっと軽くなるんじゃないかなぁ。」

「かぐれ」ディレクターの渡辺敦子さんはそう話す。

かぐれは、日本初グリーンファッション発信のセレクトショップ。オーガニックコットンを中心とした洋服、天然素材と手仕事からうまれる生活雑貨を扱っている。ファッション性だけではなく、つくられ方や運ばれ方も見つめ、これからずっと残ってほしいと思えるものを集めている。

今回は、店頭での販売スタッフと、企画アシスタント/生産管理担当者、またオンラインショップの運営スタッフの募集です。

立ち上げから全てを担ってきたディレクター兼表参道店店長の渡辺さん。

万葉集の「寄り集まる」という意味から「かぐれ/香具礼」という店名を決めたのもこの人だ。

「元々は世界平和への興味から、大学では紛争のケーススタディを勉強していて。何か問題が起きてしまう要因は分かったんだけど、そうしてしまう人たちの気持ちがどうしても分からなかった。あるとき、それは自分には宗教観や日本人だからというナショナリズムがないからだと気づいて。それからは興味の対象が自然にアイデンティティになりました。そういうことを人に喚起するのは何かなぁって考えて、だんだん日本の美術や伝統に傾倒していったんですよね。」

進学した大学院を半期でやめ、日本画専攻の大学に入りなおす。日本画と陶芸を中心に勉強をするなかで、また新しい気づきがあった。

「例えば、日常のなかで1つでも手作りのお茶碗を使ったり、それを誰かにプレゼントするときの気持ちの込め方ってすごいなぁと。急にゆっくりとお茶をいれてみたくなったり。これってひとりひとりの生活に直接クリックするようなものかなって。もしかしたら、世界平和のために国連に入るより、こっちのほうが人を幸せにできるパワーがあるかもしれないと思ったんです。」

「それからは、身近な生活のほうが大切だという思いがどんどん強くなって、大学卒業後はスターネットで働きはじめました。」

スターネットは栃木県益子町にある馬場浩史さん主宰のものづくりの拠点。
オーガニックレストラン+ギャラリー、陶器やコスチュームの工房も併設している。

「スターネットの存在は自分の中では大きいかな。あそこは自分に必要なものは自分でつくるところからはじまってるから。そもそも物をつくるのが大好きで、自分が着る服を縫ったり、毎日使う食器がつくりたくて陶芸もやっていた。スターネットに入って、やっぱりこれでいいんだ、という納得感はあったかも。」

「元々子どものときからアトピーで、市販されているものは全然使えなかったんです。シャンプーも洗剤も。今でも、普通に売っているものじゃなくて、自分に合うものや健康でいられるものは、自分で探さなくてはいけないという思いはどこかにあるのかもしれないですね。」

お店ができるまでの話を聞いてみた。

「一番苦労したのは内装。一般的に内装をしようとすると、カタログがあって、その中からこれとこれとこれって選んで。あとは何風?あのセレクトショップ風?木を使うなら和風?北欧風?という形でお店ができていく。そういうのにものすごく違和感があった。何かのフリをするんじゃなくて、本物の素材でそのままの素材感を活かすようなことがやりたいと言ったときに、大手の内装業者さんは何も分かってくれなくて(笑)。」

「結局、作家として出会った海野毅さんという方に内装と什器をお願いしました。彼は家具もつくるし、鉄は自分で叩くし、布も触れるから、素材に対しての理解度がすごく高くて。当たり前に、国産の木を使って、壁は漆喰にしましょうねって。結局、大工さんや職人さんへの手配も一手に引き受けてくれた。海野さんとの出会いは本当に嬉しかったですね。」

そう、かぐれは扱っている商品だけでなく、お店も天然素材と手仕事の集結でできている。

ちょっとのぼりにくい無垢材の階段をあがった、2階のオープンなスペースで渡辺さんはいつも仕事をしている。

渡辺さんの仕事は、洋服や生活雑貨のバイイング、かぐれオリジナル商品やオリジナルコスメの開発、企画展やワークショップなどの企画から運営、各印刷物やパッケージのデザインや手配、ウェブショップの管理など多岐にわたる。

洋服の場合はシーズンごとに展示会に出向けばいいのだろうけれど、器や雑貨はシーズンがないので、年中ギャラリーなどをまわることになる。また前者の場合は、営業担当の人がいたり納期が決まっているが、手仕事のものは個人とのやりとりで納期もない。手間や気配りが必要とされる。

でも面白いのは、作家さんにこういうのをつくってほしいとオーダーしたら、ちゃんと1つからそれができてくること。例えば、吹きガラスのペーパーウェイトを一輪挿しにアレンジしたり。ただ、このようなオーダーは、作家さんとの関係性を保ち続けていないと難しいだろうし、素材のことや作り方をそれなりに知っていないと対等に会話ができないのかもしれない。

渡辺さんの右腕となる人がいる。オリジナルの洋服デザインを担当している坂田智子さんだ。

最初はフリーランスとして、デザインのお手伝いでかぐれにかかわったのだが、元々販売経験が長かったので、すぐにお店にも立ちはじめた。今は丸の内店の店長も兼任している。デザイナーとしても、オーガニックコットンと言えば、いわゆる一部の人のための”ナチュラル”なもの。デザイナーとして、”ナチュラル”スタイルという概念をもっと身近なものに変えていきたいと言う。

坂田さんのアパレル歴はスカウトからはじまった。

大阪の服飾専門学校時代に自分のファッションショーを開催し、そこに来ていたコズミックワンダーというブランドから声が掛かったのだ。

「これは面白そうやと思って、親は大反対やったんだけど、すぐに学校を辞めました。そしたら、仕事はじめていきなり1週間家に帰れなかったんよ(笑)。もちろん日中はお店に立って販売するけど、事務所に帰ったら裁断とかいっぱい仕事が残ってて。苦しかったけど、そこでものづくりを全部覚えた。8年後に子どもができて辞めるまで、24時間365日、20代の全てがコズミックワンダー!って感じの生活やったんです。」

元々モードが大好きで、とがったブランドに全てを捧げていた人が、今ではオーガニックコットン一色に。
そのスイッチは何だったのか。

「一番大きかったのは、自分の子どもがアレルギーを持って生まれてきたこと。子どもの為に、食べ物から何からオーガニックを取り入れる生活になりました。あとは、親になったことで、未来の地球のことをもっと考えなきゃあかんと。オーガニックコットンを使うことは環境だけじゃなくて、働いている人たちの健康だったり、フェアトレードで子どもを働かせないということにも直結する。お手伝いとして入ってすぐに、これは親として人として女として、自分がもっと広めていきたいと思ったんです。」

このアパレル不況時代に、かぐれの売上は前年と比べて2倍。その勝因のひとつは、ナチュラルすぎないことかもしれない。

渡辺さんはこうも言っていた。

「ナチュラルテイストは自分も好みじゃないの(笑)。あとは、東京で働いている人こそ元気になって欲しいという思いがあって。だって、すごいがんばってる。自分に負荷かけて。そういう人が楽しくなれるように、街で使えて、オフィスで着れることが理想。逆にそうじゃないとオーガニックコットンの活路もないわけです。一部の人のための遠い存在になって欲しくない。ただ、魅力的であるということと、ナチュラルであることのバランスは毎回悩んでいるし、どこに線を引くかということは常に課題ですね。」

渡辺さんに意地悪な質問もしてみた。

消費をしてもらわないとお店は存続できない。そもそも矛盾なのでは?

「もちろん、いっぱい買ってとは言えないし、必要なものだけ買ってほしい。特に手仕事のものは値段が張るので、他で買うより大きな決断だったり、大事に大事に見て1枚だけを買ったりする。もう、それでいいんじゃないかなぁと思ってて。その1枚を買ったことでその人が大きく変わる可能性があって。ここに来れば何でも揃うって言ってくれるお客さんもいらして。器から入った人が洋服から洗剤から下着から、結局全部買ってくださったりする訳。ここの何かレベルが一定なもの、こういう生活に必要な物にひとつ触れると全部そうしたくなるっていう可能性があるんですよね。」

丸の内店で働く松本早都子さんは、以前はパリのアトリエでアシスタントデザイナーをしていた。

「帰国後はデザイナー枠のみで就職活動をしました。今思い返すと、何がなんでもデザイナーとして働かないと!というプライドでガチガチに固まっていましたね。かなりの数の会社を受けましたが、全部落ちてしまって、自分は一体何者なのか?とネガティブに自問自答する毎日。でもあるとき、パリに行った頃のようにまたゼロからやろう!と吹っ切って、2009年の11月からかぐれの販売スタッフとして働きはじめました。」

「入社してから、かぐれで打ち出していることの奥深さを知り、私に務まるのかと最初は不安でした。また、それまでもコミュニケーションは大切だと思ってきたのですが、思った以上に人と働くことの重要さや難しさを痛感しました。個々の長所を伸ばし合い、短所を補えるチームとして、まだまだ今の私には越えなければいけない壁があると思っています。」

販売スタッフとして働いたことのなかった松本さんだったが、扱っているものだけでなく自分にも美意識を向けなければと、姿勢や仕草にも気をつけ、10キロ以上のダイエットもした。社内の「接客ロールプレイング大会」ではひとり未経験ながら入賞し、今では丸の内店の店長代行を務めている。

今回の募集は、坂田さんの右腕となる企画アシスタント兼生産管理担当者と、松本さんに次ぐ積極的な販売スタッフ、そしてwebでの通販を担うオンラインショップ担当者の3名。
かぐれの良いところは、店舗スタッフと企画担当者、バイヤー、そして作り手の距離がぐっと近く、人の繋がりが直に目に見えること。そこから自主的に学び、行動できる人、物の背後にあるストーリーに価値を感じ、伝えることができる人が求められている。

かぐれのお店からは、オーガニックコットンじゃなきゃいけないという押しつけがましさや気配を感じない。オーガニックは提案のひとつで、色々な当たり前から自由になれるきっかけを与えてくれるようなところだと思う。

そこに共感できて、ここで自分らしく働きたいと思える方はぜひ応募してみてください。(2012/8/5up)