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人からひとへ

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中川政七商店は日本の伝統工芸を元気にする!という思いのもと、「遊 中川」や「粋更kisara」、「中川政七商店」、そして「2&9(にときゅう)」などのブランドを通して、麻製品などの生活雑貨を販売している会社。
ただ伝統的な商品を昔のまま再生産しているわけではない。現代のニーズなども大切にして、今、ほんとうに必要なもの、自分たちがほしいものをつくっている。

今回は関東、関西、中部のそれぞれの店舗で働くスタッフの募集です。仕事はお店に立って、商品を販売すること。

取材した2人のスタッフは、どちらもはじめはアルバイト感覚で働きはじめた方。会話を通して、なぜここで働いているのか感じられた。

まず訪れたのは羽田空港の「遊 中川 日本市」。

遊 中川ブランドの商品を、ものづくりの産地に焦点をあてて品揃えしているお店だ。

京浜急行を降りて、第2ターミナルに向かうと出迎えてくれる。お店の前はこれから飛行機に乗る人、飛行機を降りた人が、ひっきりなしに往来している。

ここで働いているのが松山さん。2011年7月にオープンしたばかりのお店で店長をしている。

「この羽田空港店のオープンに合わせて、広島から上京してきました。これまで東京に来たことがなかったので、不慣れなことも多いですが、初体験のことを知っていく楽しさを感じています。」

現在、入社6年目。そのうち5年間は、ずっと広島の店舗にいた。

どうして入社することになったんだろう。

「当時オープンしたばかりの広島の店舗が販売員募集をしていたので、アルバイトで入って。その時はすごく和雑貨に興味があったり、日本の伝統工芸に興味があるということも全くなくって。動機も家から近かったからなんです。」

ところが入社してから間もなく、自分より先輩のスタッフたちは全員辞めてしまった。

「当然、補充するように新しいスタッフさんが入ってきてくださったんですけど。『じゃあ、店長誰がやるか?』となったときに会社から『やってみませんか?』というお話をいただいて。でも正直当時の私は気楽に仕事をしたいという感覚だったので、お断りしていてもおかしくなかったと思います。」

前職は、とても根気のいるところだったそうだ。だから引越しもして、「リハビリ」のような感覚もあった。

「でもそこで断ってしまう自分に、何だか引っかかりを感じて…自分が納得できるかなという。逃げるような感覚を残したくないという思いもあって。ちょうどそのとき小売課の課長さんが広島まで、いろいろと会社のことを伝えに来てくださっていたんですよ。その方が私と同級生だったんです。そのときは課長じゃなかったんですけど、いまやもう、小売課の課長さんなんですね。そのとき同級生だっていう話になって、ものすごく仕事ができる方なので、ただ呆気に取られていた自分もいました。で、その方を見ていて、これ以上引き離されたくないなって、追いつきたいなっていうような気持ちが芽生えて。それが最終的な決め手でした。」

それから6年。大変なこともあった。自分よりも年上のスタッフを指導しなければいけなかったり。お店を上手く軌道に乗せられなかったり。それでも自ら辞める事はしたくない、諦めたくない、逃げ出したくない、という気持ちがあった。

「社長が『大丈夫、ちゃんとできてるよ』と言ってくださった。トップが見える、信頼して任せて下さっているのが伝わる、社長が色んなお話を直接してくださる。すごく繋がりを感じられる会社。」

「辞めなかったのも『人』なんです。会社の人みんなそうなんですけど、そうやって背中を押してくださる。気付けばどんどん会社のことも大好きになって。もっと色んなことを吸収して成長したいと。それで、自分が吸収したことを次の世代の人たちにもっと伝えてあげたいと思うようになって。改めて考えると驚くような心境の変化です。広島を出るっていうこと自体、考えたこともなかったくらいですから。」

「私は善くも悪くも接客業にこだわりを持っていなくて。会社が好きなだけなので。会社の人たち。中川政七商店の一員であれば、全然私、小売課の販売職じゃなくていいんです。」

お店で働く、というのはどういうものですか。

「会社のコンセプトとして、『日本の伝統工芸を元気にする!』というビジョンがあるんです。でもお店にいるだけでは、なかなかピンとこないじゃないですか。すごく漠然としすぎているので。でも更にお店にもビジョンがあって、『日本の価値観を正しく楽しくお客さまに伝える』ということ。それが、他の和雑貨やおみやげ屋さんとは異なるのだと思います。商品の背景にあるようなものを、お客さんに、きちんとスタッフが理解をしてお伝えすることで、その価値がグッと上がるし、それで『日本の伝統工芸を元気にする!』ということに繋がるんですよ。」

「私たちの仕事は、お金をお預かりして、レジを打って、包んで渡すことではないんですね。」

羽田空港のお店で働く、というのはどうですか。

「ほとんど路面店という感覚ですね。前を人がたくさん通るので、単純にいえば客数が多い。当たり前かもしれませんが毎日のように北は北海道から南は沖縄まで、全国各地からのご来店がありますので、嬉しくも不思議な感覚になります。」

たしかに京浜急行で来た全日空利用者のほとんどが通る場所。

「広島の百貨店の6階にあった店舗とは、やはり違いますね。そこでは10、20分かけて接客をして販売していたバッグが、何も接客をしてないのにポンッと買ってくださる方もいる。」

松山さんが働いているのは、会社が好き、もっと言えば一緒に働いている人が好き、ということがあるんだろうな。将来は奈良の本社でも働いてみたい、という言葉からも、同じことが感じられる。奈良には、お店よりもたくさん、スタッフがいるだろうから。

「でも会社が好き好き言っていたら、仕事人間みたいに思われるかな(笑)。会社が好きだけれど、全部、自分のためでもあるんですよ。頑張れば、結果として自分のためになっている。今までもそうだったように、今、頑張っていることが、『あのとき頑張って良かったな』って何年後かに思えるんです。」

羽田空港をあとにして、六本木に向かう。目指すは東京ミッドタウン。

ここで働いているのが店長の村上さん。ペットショップやカフェ、動物病院などで働いてきた方。

今の仕事にはどこで出会ったんだろう。

「たまたまフリーペーパーの求人を見てて、見つけて、連絡したんです。はじめ、会社のことをよく知って入った人間じゃないんですよ。なんとなく和雑貨的なものは嫌いじゃない。少し興味があって。通勤もしやすそうだったし。」

「私は接客が得意とは思ってないです。接客が上手なスタッフが直営店にはたくさんいるので。それから見れば、全然得意ではないです。でもやってて楽しいと思える。」

「私の接客の仕方は、たぶん他の人よりラフなんですよね。リピーターのお客さまがいらっしゃっると、『この間買ったのが良かったわよ』とか『美味しかったから、また買いに来たわ』っていう方が、こちらのことを覚えていてくれたりする。私が働いている店舗には50〜60代のお客さまが比較的多いんですけど、気軽に話してきてくれることが多いですね。」

「お店もある程度自由にやっていいんです。その分、責任というか、アルバイトのスタッフも任される仕事は多いと思います。単にレジだけやってればいいというわけではないですね。」

たとえば任される仕事って?

「スタッフに日割り予算を組んでみてもらうとか。発注も店長が最低限のチェックはするけど、任せてみたり。」

品切れしないように、在庫過多にもならないように。

「そうですね。任せるのはある程度の説明はした上ですけど、あんまり過干渉にはならないように。やってもらって、足りなければ『足りなかったね、つぎ気をつけよう』だし、多すぎたら多すぎたでっていう…。考えてやってもらうようにはしてます。」

本社からの指示というか、「今月はこれを売る!」とか、そういうのはあんまりない?

「これはメインで見せていこう、ってものはあるんですけど。これを絶対ここから動かしちゃダメとか、これを何個売らなきゃいけない、というような変なプレッシャーはないですね。お店に任せてくれる。」

全部決められたことをそのままやるのでは、働いているほうもつまらないかもしれないし、お店を訪れる立場であっても、そこで働いている人の思いが伝わるセレクトのほうが、個人的にはいいな、と思う。

「私はほかの店舗にも行くことが多いので、最近なんとなくわかるようになったんですけど、働いているスタッフによってお店の雰囲気は変わってきますね。調子の良いお店は、なんとなく活気がある。そういう流れができている。」

流れがある。

「ちゃんとお客さんを巻き込んでいっている。うまく取り込めてると思う。空回りしてないっていうか。それはスタッフ同士のコミュニケーションや、目に見えないところが影響していたりする。」

人が魅力的で、働く人次第でいいお店をつくることができる職場なんだろうな。中川政七商店が大切にしていることも、たぶん伝統工芸をつくっている職人さんたちなんだろうし。

ちゃんと「人」がいることが実感できる職場でした。(2012/11/20up ケンタ)