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正直な家づくり

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

世知辛い世の中です。無駄はぜんぶ省く。投資に対して、最大限のリターンを狙う。でもリスクは最小限に。だから見えないところは、こんなもんでいいはず。

そうなってくると、自分の仕事も責任区分が明確だから、合理的でフェアな感じがするかもしれない。でもみんなが打算的に考えていくと、結局は自分の首をしめることになるような気がする。

今回紹介するすまい工房という会社は、こういった価値観とは真逆の住宅会社です。とても面倒なことをやります。上司も頑固です。怒ります。でも納得できる家をつくることができると思うんです。今回はそんな家づくりの現場を担当する人を募集します。

熊本空港から車で30分ほど。空港と熊本市街のちょうど真ん中くらいに、すまい工房の事務所がある。住宅街の中にあって、展示場も兼ねた場所だ。

前衛的な建築家のデザイン、というものではないけれど、質実剛健でモダンな感じ。とても住み心地が良さそうだ。

すまい工房で使われる木材は、同じ地域のものを使うようにしているそうだ。つまり、木材の地産地消。木が育った環境と同じ場所であるほど、家の材木に適している、という話は聞いたことがある。ほかにも夏に涼しく冬に温かい構造だったり、こだわりがある。

そして、とくに印象的なのは、内装材に自然素材を多用していること。代表の小山さんに、これでは傷がついてクレームにつながるのでは、と聞いてみる。

「住宅をつくるということは、結婚と同じですよ。自分たちが家をつくるとこうなりますよ、ということはしっかり話す。自然素材なので傷がつくし、手入れが悪ければカビ生えるとかね。ただ、きちっとすれば問題ないということをしっかり伝えます。」

「どんなことでも、どんな人にも、100点満点ということはできません。だから無理矢理受注を取らないようにしています。うちは、うちを理解してくれる人だけから受注を取りなさいと言っているので。自尊心まで捨てて受注取るなと思うんですよ。ぼくらの仕事はおもてなしの世界。住宅をつくっているからといって、建築業だと思ってないんです。」

そのおもてなしの象徴が「餅つき大会」だ。これから家を建てる人、そしてすでに住んでいる方々を招いて、社員総出で餅をつく。そして意外と参加者はたくさんいて、みなさん楽しんでいらっしゃるそうだ。

「お客さんに喜んでもらわなきゃいけないんです。それは、どこまで相手のことを理解するか。察知能力だったり、まだお施主さんが気づいていない課題を見つけてあげること。目配りとか気配りとか、言葉を一つひとつ聞いていく。その形の一つが餅つき大会なんです。」

一見無駄なことかもしれない。口に出して求められているわけでもない。でもそういったものも贈り物をするように仕事をしていく。そんな積み重ねのおかげか、クレームは少ないそうだ。

たしかに打ち合わせだけでは伝わらないこともあるかもしれない。餅つきをとおしてできるコミュニケーションもあるはず。

そんな小山さんだけれど、最近の若い人はちょっと謙虚じゃないんじゃないか、と言う。たとえば、面接で自分を実態以上に見せようという姿勢を感じることがあるそうだ。

たしかにそれはぼくもわかる。物心ついたときから世の中は効率第一で動いていて、いかに損をしないようにするかということばかり考えている。リーマンショック前後でそれは加速した。そんな時代に社会に出たら、面接だって、いかに自分を高く売り込むか考えるのは自然なこと。誰だって貧乏くじは引きたくない、できれば勝ち逃げしたい。

小山さんは、そんなぼくとの会話にうなずきながら、次のように話してくれた。

「でもそれって逆効果ですよね。素直に僕はこんな人間です、って言ってくれたほうがいいような気がするんですよ。」

「うちの会社も中小企業だから、人を育てる努力がまだまだ足りないかもしれない。でも大企業と戦うにはマニュアルや仕組みでは勝てない。大切なことはヒューマニズムだと思うんです。素直に相手のことを考える。だからおもてなしなんです。」

すまい工房の働く姿勢が一番よくわかるのは、今回募集する家づくりの現場かもしれない。

工事を担当している碇さんにも話を聞いた。

「ほかの会社なら蓋してしまえばいい、という考え方かもしれないですけれど、私たちは間違ったらはじめにもどって、予算かかってもやり直します。その辺は大変なんですけど、でもそのほうが楽なんですよね。」

楽ですか?

「はい。たとえば餅つき大会もお施主さんがいらっしゃるので、未だにこわいと思うんです。何か住んでいて問題があったらどうしようとか。」

「でもね、みなさん笑顔なんですよ。はじめはドキドキして待っているけど、やっぱりみなさん笑顔なんです。」

こんな碇さんのことを、同僚のみなさんは「とても厳しい」方だという。

まだ小山さんと碇さんが、前職の会社にいたときに、こんなエピソードがある。そのときの様子を小山さんが話してくれた。

「正直言うと、最初の碇の印象悪かったんですよ。分からないから聞いても怒るときがありますから。でもこの人すげえなあ、って思うことがあったんです。」

九州の支社にいるときに、淡路島の仕事を担当することがあったそうだ。毎回、長距離をドライブして車で通う。そのとき碇さんは助手席に座って、小山さんが運転を担当していた。

「あるとき打ち合わせがなかなか終わらなかったんです。今日も僕が運転するだろうし、早く帰りたいから、何も分からずに『碇さん、そんなの大工さんが納めるんだから、早く帰ろうよ』って言ったんですよ。そしたらメチャクチャ怒り出して。そんなに大工任せにできるかって。自分が分からないと、現場は任せられないんだって。『外で待っとけ!』って怒られて、それから1時間ずっと待ってた(笑)。」

そのときから、相変わらず車の運転こそ、小山さんに任せっきりだったけれど、一生懸命な働く姿勢を見て、碇さんが辞めるときには自分の会社に誘いたい、と思うようになった。
「碇は単純に家づくりが好きなんですよ。ガンプラの延長線だと思ってる。だから、あれだけ一生懸命できるんだと思うんですよ。『オレが好きでやってるんだから、お前たち、なにジャマしてんだ』っていうイメージですね。」

とはいえ、やっぱり厳しいのは大変なこと。いきなりすべてを求められてもできないように思うし、心が折れてしまわないか。

すると碇さんは次のように話す。

「住宅の現場の担当って、仕事を大きく分けると5つあるんですね。『工程』、『品質』、『安全』、それから『原価』、それと『お客様の担当』。はじめはすべてできなくていいと思うんです。すべてやろうとしたら、ついてこられなくなるから。だからまずは一つひとつ勉強してもらえばいい。はじめは見ながら勉強すればいいです。教えていくので。」

「でも何度も教えても、同じことを間違えられると悲しくなる。」

そうですね。間違いは仕方ないけれども。好きで怒るわけじゃないですからね。

「でも仕事っていろいろなことを経験していくことでだんだん面白くなっていくんですよ。こだわることで、もっといい建物ができるんです。そうするとまた面白くなるんですよ。」

この会社は、とことんこだわることができる会社だと思う。違和感のあることがあっても、ちゃんと改善してしっかりやることができる。もちろん、時間や予算の制約はあるだろうけど、その中でお施主さんに向き合って、真摯に家づくりができるように思う。

もうひとり紹介するのが小谷さん。彼女は設計を担当していて、日本仕事百貨を見て入社された方だ。

前職はデザイン事務所で働いていたのだけれど、もともと建築出身だったので仕事の軸を元に戻したい、という思いがあった。とはいえ、熊本に縁もゆかりもない。不安はなかったのだろうか。

「あんまり不安に思いませんでしたよ。やったことないからやってみようと考えました。ただ、東京にくらべると楽しいところが減るんじゃないかって思いましたね。」

実際に入社してどうでしたか。

「仕事百貨で読んだとおりでした。ただ、行事と会議が多い、と書いてあって、その通りだったんですけど、想像以上に多かったっていうのはあります。」

想像以上なんですね。餅つき大会の準備とかですか。

「そうですね。餅つき大会もありますし、あとは会議も長いです。自分の仕事とともに、会議や行事をやらなくてはいけないので、スケジュール調整は難しいです。どちらも大切なことなので。」

「ただ大変なことばかりじゃなくて、設計の勉強会などに会社のお金で参加をさせてくれるんですよ。それがすごくありがたくて。たとえば東京であっても旅費もだしてくれて授業料もだしてくれる。なかなかないと思うんです。もともと設計ができて、さらに上を目指している人ならわかるんですけど、経験のない私にもそういう機会があります。」

もし効率を考えるならば、会社は勉強会にお金を支払うこともないだろうし、会議も短いほうがいいし、餅つき大会なんて必要ない。工事もいかに安くすればいいか考えればいいし、クレームがないように自然素材はやめたほうがいいかもしれない。

でもやっぱりそういうものって無駄にならないんだと思う。必要としている人はいるし、納得できる家づくりもできる。そして、ちゃんと頑張っただけ会社にも自分にも何かが返ってくる。

損して得とれ。急がば回れ。本当にこの姿勢は一貫していると思う。

「私は今まで仕事を仕事としてドライに割り切っていたんです。でもそれじゃだめなんだと思いました。相手のことを考えて仕事するのは、面倒と感じる人もいるかもしれないし、あったかいと感じる人もいると思うんです。」

「いきなり住む場所も職場も変えたので、はじめはギャップがあったんですけど、今は少しずつ馴染んできているのかな。今でも感情をすごくストレートに表す人が多くて、それにも少しびっくりしていますけど。」

もし納得した家づくりを仕事にしたい方がいれば、ぜひ会社を訪ねてみてください。熊本だっていい土地ですよ。自然もたくさんあるし、文化も成熟しているし、ごはんもおいしいです。そしていい人たちがたくさんいます。(2012/12/31up ケンタ)