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「 」なシゴト

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宮城県石巻市の市役所の一角に、地元の高校生たちがつくり運営しているカフェがある。名前はいしのまきカフェ「 」(かぎかっこ)

このカフェを起点に、地域や協力団体とつながり、高校生と一緒に石巻を元気にしていく人を募集します。

石巻までは、仙台駅からバスで1時間ほど。

駅のすぐそばに、市役所の庁舎が見える。スーパーマーケットも入るこの建物のなかに、「 」カフェがある。

人だかりができていたので近づいてみると、東京からの団体のお客さんが来ているところだった。

『どうして「 」という名前になったんですか?』

『もともと、お店の名前が決まっていなくて仮で「 」としていたんですよ。お店の名前をどうするか話し合ったときに、「 」って何でも当てはめられる可能性があるしワクワクする言葉だよね、という話になって、そのまま店名にすることになったんです。』

東京の学生からの質問に、「 」カフェのスタッフが答えている。

カフェの前には大きな黒板があり、手書きで大きくカフェの名前が書いてある。お店の名前からしても外観からしても、みんなでつくっていく、という気持ちが伝わってくる。

東日本大震災のあと、小中学生の学習支援は多くあったけれど、高校生の支援は少なかった。

高校生たちが地元を離れる前に、地域を知り社会に触れる機会をつくろうという目的で、フィリップモリスジャパンと日本財団、そしていくつかのNPO団体が共同で企画したのが、このプロジェクト。

一緒にカフェをつくりませんか?という呼びかけに、石巻周辺の高校に通う30人以上の学生たちが集まった。

だけど、「カフェをつくる」ということ以外は、ほとんどなにも決まっていない状況。店名もコンセプトも決まっていない、真っ白でなにもない空間からスタートした。

去年の11月にグランドオープンし、今は土日・祝日限定で、カフェを運営している。

週末になると高校生がやってきて、キッチンとホールに立つ。メニューづくりやイベント企画、PR、仕入れやシフトの調整も分担して行っている。

「きっかけは、高校で配られたチラシを見たことです。そこに、カフェの空間づくりから関われる、と書いてあって。わたしは将来、建築関係の仕事に就けたらいいなと思っているので、参加することにしました。」

そう話してくれたのは、もうすぐ高校2年生になるゆんちゃん。ゆんちゃんはとても明るくて、「 」ではムードメーカーのような存在。

「学校よりも楽しいです。バイトはしたことはないけど、バイトより多分楽しいと思う。ここに来るのがワクワクする。」

密かに楽しみにしているのは、営業後に、メニューで出した余りものやこれから出す試作品をみんなで食べること。ただ楽しいだけではなくて、味のチェックや、メニュー開発の話し合いの場にもなっている。

「これはさごはち漬けといって、この地域の漬け物なんですよ。にんじんがにんじん臭くなくて、さっぱりしておいしいです。それから、主食のメニューをもっと充実させたいと思っているんです。ムール貝のカレーは来週から”受験生”です。」

地元の漁師さんが獲ったムール貝をつかったカレーは、大阪から通ってメニュー開発を手伝ってくれている料理研究家の堀田裕介さんと一緒に考えた。

来週から試験的にメニューに登場することになっている。ムール貝を獲るところを、今度みんなで見に行くそうだ。

「こんなふうに地元の食材を知ることができたのも嬉しいかな。前はスーパーでただ買物していたけど、魚とか旬の野菜とか、そういうものに目がいくようになった。」

地元の食材を使い、土地の魅力を発信すること。これも「 」の大きな役割。だから、漁師さんや農家さん、それからメーカーとやりとりをする機会も多い。

石巻に工場をかまえる木の屋石巻水産とは、「くじら大和煮」の缶詰を共同開発したそうだ。

「ここに参加してから、確実に人と関わるのが上手くなった気がする。前は、あまり発言するタイプじゃなかった。それは、新しい場所に行っても役に立つと思う。」

「 」の取り組みを知って、全国から沢山の協力者や、お客さんたちがやってくる。

石巻のことを知ってもらう入口になっているのかもしれない。

ただ食事をして休憩する、というカフェではないから、いわゆる経営やサービスの視点だけが求められるわけではないと思う。

地域と連携しあう姿勢だったり、”これから”を考える想像力だったり、そういうものも必要かもしれない。

高校生たちに聞いてみた。どんな人と一緒に働きたいですか?

「わたしたちに興味をもってくれている人。その時点で、いい人だと思う。」

「すでに名前を覚えてくれているような人がいい。ブログやTwitterで発信もしているので、それを読んできてくれたら嬉しいよね。」

高校生に指導をするというよりも、意見を出し合う対等な関係があるように思う。なにか疑問があればすぐに確認し合うし、共同経営者みたいなものかもしれない。

だから、これからのカフェを一緒につくっていくことになる高校生たちに興味を持ってくれていることは、大前提かもしれない。

「高校生は強いので、ある程度自分を持っている人がいいと思います。」そんなどきっとする意見も。

「でも、結局は会ってみないと分からないじゃないですか。だから、まずは会ってみたいです。」

その通りかもしれない。面接には高校生も立ち会うそうだから、会ってみたらお互いに分かることがあると思う。

高校生といえば、義務教育を終えて自分の意思で人生を歩みはじめたとき。まだ大人とはいえないかもしれないけれど、もう子供じゃない。それぞれちゃんと考えているし、意見があれば目をみて伝えてくれる。

こちらがそれに素直に向き合うことができれば、いい関係が築けるんじゃないかな。

カフェの企画・運営に関わる、日本財団の金子さんにも話を聞いてみた。

「人生の岐路に立っている高校生たちに対して、どれだけのことができるかですよね。ひとりひとりの重要な時間をいただいて、カフェが成り立っているので。それぞれがここで色々な経験を積み、自信を持って将来に向かっていけるようにサポートしていくのがぼくたちの役割です。」

金子さんは、行く前に想像していた「財団の人」というイメージとはまったく違う。とてもフランクな方だし、服装もお洒落。

「スーツだったのはいちばんはじめのときだけですね。そこで、違うなって思って脱ぎました。」

スーツを脱いで今は完全に私服で、週に1度、東京から石巻まで通っている。

「最近、メディアで取り上げられたりなどして、色々な団体さん、企業さんからお声がけいただくことが増えたんです。だから、現地でコーディネートしていかないと、周りの評価のスピードに追いついていけないんですよ。」

財団の仕事で毎週出張なんて普通はありえないのですが、と金子さん。大変そうだけど、なんだか楽しそうに見える。

「楽しいですよ。僕はもともと、総務の仕事をしていたんです。日本財団は、さまざまな活動をバックアップする団体ですが、バックアップのバックアップをするのが仕事だったんですね。でも、今はこうして自分から周りを巻き込んでいく立場になったので、面白いしやりがいもあります。」

高校生との距離も、ものすごく近いように感じる。印象的だったできごとはありますか?

「自慢に聞こえてしまうかもしれませんが、やっててよかったな、と思う瞬間があって。ある高校生が、取材を受けたときに、ぼくみたいな大人になりたい、って言ってくれたんです。僕、それを読んだときに泣きました。高校生たちは、ここでリアルな大人の姿を見ることが刺激になっていると思うんです。自分がその機会のひとつになれたことが、嬉しくて。」

「ひとりひとり進む道は違うけれど、前に進んでいこうということは共通しているんですよね。みんなの将来が楽しみでしょうがないですよ。」

高校生にとっては、ここはロールモデルに沢山出会える場所。触発されて変わっていったり成長していくところが見られるのは、魅力かもしれない。

もうひとり、紹介したい人がいます。

大阪のNPO法人Co.to.hana(コトハナ)の代表でありデザイナーである西川さんです。

西川さんは、月に何度か石巻に通い、「 」のプロジェクト全体のしくみづくりを考えている。

普段取り組んでいる仕事も、街づくり、建築、グラフィック、ウェブに関わらず、コミュニーケーションをデザインしていく仕事が多いそうだ。

「 」は、経営陣に高校生がいたり全国から注目が集まっていたりと、少し特殊だと思うのですが、関わってみてどうですか?

「今、東北はすごく求心力があると思います。震災があって、信じていたことが信じられなくなったり、逆に自分の進むべき道が見えてきたり。そんななかで、多くの人たちがここに集まってきているんですね。」

「ここは、可能性に満ちあふれた場所だと思います。ここで起きている現象や取り組みは、5年後10年後、きっと力になるんじゃないかな。そういう場にいるってことが、体感できるんですよ。」

たしかに、石巻には、ISHINOMAKI2.0をはじめ、パワーのある面白い人たちがこのまちに集まってきている印象がある。復興というと足りないものを埋めていく感じがするけれども、そうではなく全く新しいものをつくっていく感じ。そんな空気がある気がする。

具体的な仕事は、まず週末、カフェを営業すること。それ以外には、地元の産業や企業に協力を呼びかけ、繋がっていくこと。イベントやワークショップを企画し運営していくこと。このカフェから石巻の魅力を発信していくことが、主な役割になる。

今はカフェの運営は寄付などで担っているけれど、ゆくゆくは収益を上げて自立運営していくのがみんなの理想。だから、これからカフェをどうやって経営していくのかも、考えていってほしい。

できることは沢山あると思うけれど、まずはこのプロジェクトに関わるみんなのこと、石巻のことを、知っていくことが大切かもしれない。そこから、「  」に当てはまりそうなものを見つけていけばいいと思う。

最後に、西川さん。

「高校生もそうですが、関わるスタッフもみんな若いんです。スペシャリストというよりも、これから一緒に成長していこうって世代なんですね。だから、一緒に学びながら、失敗しながらやっていけたらいいな。みんなの成長を見ていると、自分も成長することができるんですよ。いきいきとした激動の人生を送れると思うので、ぜひ来てほしいと思います。」(2013/4/1 up ナナコ)