求人 NEW

まちつくり不動産部

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

お互いに深く関わり合う、家つくりと街つくり。

これからの姿において、2つの姿勢が大切になるのかもしれません。

一つは、住まい手が「ほんとうに求める暮らし」に寄り添うこと。

そして、家を建てる土地の文脈(歴史、文化、気候、風土)に沿うこと。

今回は、「100年後の街つくり」をテーマに家つくりを行う株式会社NENGO(ネンゴ)で働く人を募集します。

平日の午後、渋谷から東急東横線に乗って20分で綱島駅に到着。

駅前の商店街を抜けると、築40年ほどの木造物件をリノベーションした建物が現れた。

1 この建物の2階に、NENGOの手がける「綱島不動産マーケット」はあります。

NENGOは、不動産選びからリノベーションを設計、施工までワンストップで行う会社です。

今回募集を行うのは「綱島不動産マーケット」、そして日本初の中古マンション専門取引サイト「おんぼろ不動産マーケット」からなる不動産事業部です。

階段を上がり、通されたのは畳の和室。空間ディレクターの和泉さんが迎えてくれた。

この部屋には、NENGOの家つくりに対する姿勢が盛り込まれている様子。和泉さんに説明してもらう。

「背中に見える入り口は躙り(にじり)口と言います。クライアントさんも僕らも正座をして部屋に入るんですね。対等の立場で話し合いたい、という思いがあります。」

2 写真右奥に見える、かつての押し入れは床の間に。その壁面は納戸(なんど)色。綱島を流れる鶴見川の水面をイメージしたそうだ。

ちなみに塗料は、NENGOが輸入総代理店を務めるオーストラリア発祥のポーターズ・ペイント。自然原料にこだわり、国ごとに独自の色も展開されている。

こうした意匠はともすれば、押しつけがちな印象を受けることも。けれど、この空間ははじめて訪れた感じがなく、居心地がよい。

和泉さんは、もともとアメリカでファッションを専攻、働いた後に帰国。不動産・建築の世界に飛び込んだ。

現在はディレクターとして不動産仲介から設計、施工管理に引き渡しまでを一貫して手がける。

NENGOの家つくりはどのように進んでいくのでしょう。

「施工した方からお客さんを紹介いただくことも多いです。はじめは2時間ほどかけてじっくり打ち合わせを行います。」

「その方の生い立ちに、いまの仕事。休日はどう過ごされているのか。起きてから夜寝るところまで、どういう暮らしをするのか。ご夫婦なら、なれそめも。一見家つくりに関係のなさそうなことも聞いていきます。」

物件を購入後、基本設計のフェーズに入る前には、お施主さんは20枚に及ぶ“ライフスタイルシート”を記入する。これはなかなか大変な作業だと思う。

不動産選びと聞いて連想するのは、「南向きがいい」「2階以上がいい」「エリアは世田谷区がいい」といった条件のヒアリングが一般的。

NENGOはどうしてこのような進め方をするのだろう。

「条件を掘り下げていくと、奥底に思いが見えてくるんですよ。」

たとえば、はじめの打ち合わせお客さんからカフェ風というキーワードが浮かんできたとする。

「掘り下げていくと、『家族一同が集ってご飯を食べたい。』『料理の音で目が覚める暮らしがしたい。』といった言葉にちゃんと落ちていくんですね。」

そこからは、NENGOが家つくりにおいて大切にしたいことが見えてきた。

「リノベーションにおいては、最終形の家そのものだけが目的ではないと思います。『自分たちのほんとうに望む暮らしは?』を考え、見つけるプロセスこそ大切なんです。」

「自分はこれまでどんな生き方をしてきて、どうなりたいのか。夫婦で大切にしたいこと。子どもとの距離感。自分自身、そして家族のことを真剣に考えるいい機会なんです。その人の生き方、哲学の上に家はあると思います。」

ここからは、昨年から不動産事業部で働きはじめた詫磨(たくま)さんにも加わってもらう。

3 詫磨さんはこれまで、不動産・建築分野のさまざまな仕事に取り組んできた。

その根本に共通してあるのはこんな思いだと言う。

「住む人の顔を見ながら仕事がしたいんです。」

これまでの歩みを聞いてみる。

はじめに、新卒で入社したのは大手不動産会社。新築物件の営業を担当した。

「『この家に住むと、こういう暮らしができますよ。』と建物ありきで、人の暮らしを考えていきますよね。そのことが悪いわけではないんですが、どこか違和感がありました。」

その後、1年間ビザを取得してハワイの不動産会社で働いた。そこでの経験は大きかったという。

「住み方のバリエーションが多いんですよ。ふつうの大家さんが一週間・一ヶ月単位の賃貸も行えば、もちろんシェアハウスもありました。日本も、もっと自分の好きなところに住んでよいのでは、と思いました。」

仲介をする上で施工現場も知りたいと、帰国後は内装会社へ。そして昨年、日本仕事百貨の求人でNENGOを知った。

4 「不動産から引き渡しまで一貫して関わることが、ほんとうにお客さんのためになると思ったんです。リノベーションは、家探しから携わることができますよね。」

現在は、おんぼろ不動産のサイトを運営しつつ、問い合わせに対応する日々。

お客さんはどんな方が多いのだろう。

「生活をつくりあげたい、という方が多いです。みなさん、自分の生活がどうしたらより気持ちよくなるか、考えているんですね。とても刺激を受けますよ。」

5 これから入ってくる人も、はじめに不動産の仲介を行う。

再び和泉さん。

「お客さんの『こう暮らしたい』という本質を引き出した上で、最適な提案を行う。まず身につけてほしいのはその姿勢ですね。」

物件を探しつつ、お客さんとはリノベーションの話も進めていく。物件が決まると、必要に応じて銀行ローン組みのお手伝いをして成約となる。

「色々と物件を提案する中で『この家に住みたかったんです。』というお客さんの反応に出会う瞬間はうれしいですよ。リノベーションまで関わっていけたら、なおさらですよね。」

「長い目で見れば、その家で暮らしが育まれていくことも喜びですよ。引き渡し後も、ホームパーティーに呼ばれることもあります。深いつながりが続いていくんですね。」

6 仲介を身につけると、次のステップへ。

「リノベーションの現場ディレクション。そしていずれは不動産から引き渡しまでを見られるプロデュースを任せたいです。ゴールまでのステップは用意しています。階段を上っていってほしいですね。」

働く人に求められる質は高いように思う。

「ワンストップで見通せる幅の広さに加え、人としての深みも求められます。お客さんの本質に触れるには、色々な経験の引き出しも、相手の気持ちの機微を感じとることも大切です。」

どんな人がよいのでしょう。

「お客さんの幸せのために、とことん何かをしてあげたいと思う人。これまでの経験を引き出しに、新たなものも取り入れて。考えたことを最後までやり遂げてほしい。」

働きながら自分の引き出しを増やせる環境は社内外にある。会社の外にもどんどん出て行ってほしいという社風だ。

「それから、日本のアタリマエの枠にとらわれず自分で考えること。一度海外に出た人もよいかもしれませんね。」

ここで、綱島不動産マーケットについても聞いてみる。

「その名の通り、綱島のまちに特化した不動産です。ここはかつて、ラジウム温泉のメッカ。東京の奥座敷と呼ばれたところなんですね。実は、日本一の桃の生産地だった歴史もあります。」

「けれど、いまは駅前にナショナルチェーンが建ち並び、どこにでもあるまちになってしまいました。伝統文化がありながらも、もったいないまちの代表格というか。このまちらしい発展が考えられると思います。」
7 そうした思いから、昨年10月に古家を改装したオフィスに引っ越した。

引っ越し元年は、不動産の賃貸に注力しつつ、綱島に根づいていきたいと考えている。

また不動産を軸としつつ、コミュニティづくりにも取り組む。

「このまちを好きになって、どう暮らしていくか。僕らはそのお手伝いをしていきたい。ゆくゆくは、リノベーションの楽しみを賃貸に取り入れた“仕立てる賃貸”にも力を入れたいです。」

仕立てる賃貸では、物件が従前の状態から、借り手と大家さん、そして私たちがコンセプトメイキングをしながら、内装のレイアウトを考えていく。

「やりとりが生まれることで、借り手と大家さんの関係がよいものになるんですね。綱島だからこういう物件がある。綱島だからこういう暮らし方ができる。いい人が集うことで、まちも変わっていきます。」

その他にご近所さんと知り合い顔の見えるまちを目指そうと「むこうさんげんりょう隣の会」という企画も行っている。

テーマは防災に食など。

「東日本大震災を機に、防災の必要性を感じたけれど、どうしたらいいのかわからない人がいます。有事を想定して、水がない状況でカレーをつくるワークショップを地域のNPOとともに開きました。みんなで桃ジャムをつくったこともあります。」

8 和泉さんは、「スタッフとして働いていただく方には、希望があれば、この街に住んでも面白いかもしれません。」と話す。

なお、「おんぼろ」か「綱島」で迷う方もいるかもしれない。その場合は、面接で相談をしたいとのことです。

NENGOを訪ねるのは今回で3度目。

働くみなさんからは芯の強さを感じる上で、住まいには柔らかさも感じられる。文化として根づいてゆくものがしっかりあるように思います。

9 最後に2人に、質問をしてみました。

リノベーションの現状については、まだまだマイノリティという人もいれば、言葉が氾濫しているという人もいるように見受けます。

今後、どうなっていくと思いますか?

和泉さん。

「『ほんとうはどう暮らしたいのか』という本質を掘り起こしていく考え方がクローズアップされるのではないでしょうか。結果として、ハードをこうしましょう。今回は手を加えません、ということだって出てくるでしょう。より深く語られていくと思います。」

続いて、詫磨さん。

「二局化が進むのかな、と思います。リフォームと同じような感覚で使われる場合もあれば、注文住宅を建てるぐらいの思いで臨むところもあると思います。」

(2014/1/28 大越はじめ)