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求む、温浴プロデューサー

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

まちを見渡すと、色々な「場」が生まれているように感じます。

それはたとえばパン屋さん、あるいはシェアオフィスに、イベントスペース。

一人ひとりにとって心地よい場所を求め、つくる人が増えてきたのではないでしょうか。

その根底には「人とつながりたい」「一人になれる時間がほしい」という気持ちもあるように思います。

1 昨年11月、埼玉・大宮に“おふろcafé utatane”が生まれました。

おふろ?café?と思う人もいるかもしれません。

これまで飲食店で働いてきたけれど、食に限らず空間づくりから関わりたい。居心地のよい場を、トータルでプロデュースしたい。いずれは自分でも何かはじめてみたい。

そうした人にぜひ知ってほしい、仕事です。

おもてなしから空間づくりまで、トータルで場をつくる温浴プロデューサーを募集します。

平日の朝8時。大宮駅から車で10分ほど進んだところに、utataneはある。

2 入れ違いに、スーツ姿の人が数名、チェックアウトをすませ出てきた。これから仕事に向かうようだ。

ここはかつてのスーパー銭湯。リノベーションを行い運営しているのが、株式会社温泉道場です。

暖炉のあるロビーで代表の山崎さんに話を聞きました。

3 山崎さんは現在31歳。2011年の3月に温泉道場を起業した。

「実家が会社経営をしていることもあり、独立は自然と頭にあったんです。起業に必要なことを考えてコンサルティング会社に入社しました。5年で独立しようと思っていました。」

そこで出会ったのが、日帰り温泉のコンサルティングを担当する部署だった。

「もともと温泉が好きでしたが、施設の設計や改修も含め、幅広く経営を学べることに魅力を感じたんです。」

温浴ビジネスチームでは全国を飛び回り、多いときは1日に17ヶ所の温泉に入る毎日を過ごしたという。

「気持ちいいのは最初のせいぜい3ヶ所です(笑)。何をしていたかというと、クライアント周辺の温泉に入り、規模、泉質、風呂の種類… を比較することで他の施設にはないものを見つけ出し、独自性を打ち出していくんです。」

提案は、接客といったソフト面の提案もあれば、風呂の増築改修といったハード面も。

そして2011年3月。クライアントの運営する「玉川温泉」「白寿の湯」を業績改善するため株式会社温泉道場を立ち上げ、2店舗を事業買収した。

「玉川温泉は、周辺の温泉と比べて設備が古いことを逆手にとり、昭和レトロをコンセプトとして打ち出しています。」

4 現在では、地元の方にくわえてそれまで見られなかった若い層も訪れるようになった。

「utataneのなかを歩いてみましょうか。」

山崎さんの案内のもと、施設を見せてもらう。

休憩所はもちろんのこと、旅行誌を取り揃えたトラベルカフェに、ハンモックもある。

コワーキングスペースがあり、PCを広げて仕事をすることも可能。フリーwifiも飛んでいる。

また、お風呂に入りながら本を読むこともできる。

どうしてこのスタイルにしたのだろう?

「最近では『若い人が以前ほど温泉や銭湯に入らない』とも言われるようです。でも、“お風呂のある暮らし”は、日本の残すべき文化の1つだと思います。そもそも銭湯の発祥は、1階でお風呂に入って、2階の茶室で時間を過ごして帰る。文化の発信地であり、リアルなコミュニケーションの場であったんです。」

「それも、世代をまたいでです。玉川温泉でも、おじいちゃんが孫を連れてきて、かけ湯を教える姿を目にしますよ。ゆっくりと遊んだり、ともに過ごせる場なんですね。」

「はだかの付き合い」なんて言葉もあるな。

言われてみれば、一緒にお風呂に入ることでお互いの距離がぐんと縮まるように思う。日ごろ面と向かっては言いづらいことも話せたりする。

5 家の風呂に毎日入れば、近所の銭湯や温泉に行くことだってしばしば。世界的に見ても、ちょっとめずらしい習慣のよう。

そんな風呂は、人々の生活に合わせてスパ、日帰り温泉、サウナにスーパー銭湯… 形を変えてきました。

これからの形として、温泉道場が提案するのがutataneです。

「お風呂に入ったあと、ハンモックに揺られうたた寝をしたり。カフェでゆっくりと話をする。物書きする人や、ノマドワーカーが仕事をしながら過ごすのもいいでしょう。『今日はゆっくりしていこうかな』と思えば、そのまま宿泊もできます。そうして、お風呂がある場の新しい使い方、過ごし方を掘り起こしていきたいんです。」

6 話を聞いているロビーも、週末になるとイベントやライブを開くこともあるそうだ。よく見るとDJブースがある。

「プレイしにくる若い人もいるんですよ。」

とはいえ、オープンしてまだ3ヶ月。施設運営は試行錯誤を繰り返す毎日だ。

「お客さまは、若いカップルもいれば、家族連れに高齢者まで。いろんな人が見えますね。ただ、PCを広げる人はまだまだ少なかったり。もっと色んな人に色んな使い方をしてもらえたら。場の使い方に、広報の仕方。これからだと思います。」

山崎さん自ら泊まることもたびたびあると言う。

7 「お客さまが見えると、『何を求めて来てくれたんだろう。』『どんな風に過ごすんだろう。』と知りたくて。館内をうろうろしたり、施設を利用してみるんです。そのなかでこういうものがあった方がいいなと見えたことを、詰め込んでいくわけです。」

この日も山崎さんはutataneを動き回っていた。

館内を案内するナビゲーションを貼り直してみたり、お客さんが心地よく過ごせるイスの配置を考えたり。

またカフェの一部には、TVを設置した。

どうしてだろう。

「飲食店って、食事が終わるといづらくありませんか?TVがあることで和らぐのでは、と思ったんです。ゆっくりしていってください、というメッセージです。」

8 これから入ってくる人もそうして試行錯誤をしていくのだろうな。

「正解はないです。日々探していく仕事なんです。」

今回は支配人をはじめとするスタッフの募集。

utataneを接客から空間づくりまでトータルでプロデュースしていく。

「お客さまと共に過ごせる場を考えてほしいんです。これをやったら楽しいということを探して、表現していってほしい。とは言え、空間づくりの経験は問いませんし、その人の感性で進めていってもらえたらと思います。未完成のutataneを一緒につくっていきたいんです。」

「これまで温泉道場は、日帰り施設に取り組んできたんですが、今回新たに宿泊も手がけてみたんです。そうすることで、ビジネス利用の方も増えました。お風呂をつかってどんな提案ができるのか。プロデュースをしていってほしいです。」

9 くつろぎの場であり、人と人が交わりつながる場であり。ゆるやかに、この場所にコミュニティを築いていく仕事なんじゃないかな。

どんな人がよいのだろう。

「飲食店などでのマネジメント経験があることが望ましいです。数年働いて、一通りの施設運営はそつなくできるけれど、そろそろ新しいことをしたい。自分の手でつくっていきたい人ですね。うちはどんどん任せていきますよ。」

「料金プランの提案から、集客の導線に企画。お金の出入りも見れば、パートさんのシフトも組んでいきます。人が足りなくなったら採用も行うでしょう。人事の決定まで任せていきます。」

山崎さんは、温泉道場のこれからを考える上で、もう一つ大切にしてほしいことがあると話す。

それは人を育てていくこと。

「施設運営って一般的にはマニュアルを作成して、パートさんにその通り動いてもらうものだと思います。僕らは働くメンバーの一人ひとりが、どうしたら施設がもっとよくなるか考えていける職場をつくっていきたいんです。」

「とは言え経験がないことには、なかなか動き出せないでしょう。僕もつねにアドバイスができるわけではありません。」

ここで、昨年に新卒で入社した早乙女さんに話を聞いてみる。

10 utataneではオープンから働いている。

いまは事務にスタッフの採用。それからフロントに立ってお客さまと接したり、お風呂の管理もする毎日だという。

そんな早乙女さんにはやりたいことがあるそうだ。

「わたしは将来葬儀事業を立ち上げたくて入社したんです。けれど、なにから手をつけたらよいかわからない。それならうちでやりなよ、って山崎さんに言ってもらったんです。」

11 「いまは、仕事ってこういうものなんだと実感する毎日です。目の前の仕事に手一杯。事業のイメージをして働きたいんですが、なかなかできていません。」

ここで再び山崎さん。

2月の大雪のことを話してくれた。

「もう一つの施設、玉川温泉でのことです。例年雪の降らない地域なんですが、一気に70cm積もったんです。営業できない日が続いたとき、地場のお客さんから『ここに来られないと困るんだよ』という声をたくさん聞いて。僕らも仕事の意義を再認識させられました。」

とは言え、温泉道場の事業は温泉に限ったものではないようだ。

昨年は、ときがわ町の広報事業を受託した。

ときがわ町には、古民家を改装したカフェに武蔵野うどんの人気店、自然をいかしたカヌー教室、キャンプ場とさまざまなスポットが点在しています。

けれどはじめて訪れる人にはわかりにくいもの。そこで、町のガイドブックを3月に発行する予定だ。

「仕事を通して地域に足りないものに応えていきたいんです。地域で仕事をつくる人を輩出する場になりたい。起業することで地域は活性化していきますよね。そう考えたとき、たとえば早乙女に、仕事の上で大事な心の部分を伝えていける大人が、うちにはもっと必要なんです。」

12 地域活性化という言葉には人それぞれのニュアンスがあるけれど、山崎さんが考えるのは、次のようなものだと思う。

「地域に雇用とお金を生むこと。そして一人ひとりが自分で考えることで楽しく仕事に取り組める、そんな職場を増やしていくこと。」

豊かな地域の姿を描いているように思います。

取材を終えた後はしばらく、utataneの館内でゆっくり話を振り返っていました。

色々な職場を訪ねるなかで、「人をどう見るか」によって仕事としてのアウトプットが変わってくることを感じます。

たとえば人の持つ可能性を信じるのか。待つことができるのか。

目に見える施設づくりから、おもてなしにスタッフの育成といった人づくりまで。幅広く取り組んでいける温泉道場の仕事は、きっと自分を育んでいけるように思います。

(2014/2/24 大越はじめ)