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旅する人の百貨店

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飛行機が出発するまでの待ち時間というのは、宙に浮いたような、少し不思議な時間だといつも思う。

ふだんなら通り過ぎてしまうようなお店に入ってみたり、いつも買わない雑誌を買ってみたり。

なんだか、思いがけないことに出会えることが多い気がする。

SONY DSC 移動するだれもが、多かれ少なかれ過ごすことになる「待ち時間」。

そして、そんな「待ち時間」の新しい過ごし方を提案しているのが、「イセタン羽田ストア」というお店。

日本全国・世界を結ぶ羽田空港 第一旅客ターミナルの、搭乗手続きを終えた乗客のみ入ることができる出発ゲートラウンジのなかにある、小さな百貨店です。

SONY DSC ここは、伊勢丹メンズ館のプロデュースで2012年にオープンした、旅の“緊張感”や“癒し”をテーマにした編集ショップ。

衣料や雑貨の販売エリアに、飛行場を望むカフェと、バカラのグラスでお酒を楽しめるバーなどが併設されている。

ビジネスマンやバカンスを楽しむファミリーなど、ここには、飛行機の出発を控えたさまざまな人々がやってくる。

ここにあるのは、旅行や出張のためのものだけじゃない。一生ものになりうるような商品と、ゆっくりした自分の時間を過ごせる空間。

百貨店が、旅の途中にとつぜん現れる感覚。

SONY DSC そんな「イセタン羽田ストア」で、お客さまと関係を築きながら商品を販売するスタイリスト(販売スタッフ)を募集します。

浜松町からモノレールに乗り、羽田空港に向かう。大きな荷物を抱えた人たちが沢山乗り込んでくる。

駅直結の空港内の広場で待っていると、担当の方が迎えにきてくれた。

専用入口に通され、飛行機に乗るときのように荷物検査をして扉を開けると、出発ゲートラウンジへ出た。

SONY DSC ここはもう、飛行機に乗る人しか入ることのできないエリア。到着機のアナウンスが耳に飛び込んでくる。

動く歩道が敷かれた大きな通路に面して、「イセタン羽田ストア」の入口が見える。お店が縦に長いので、ここからだと向こうの端が見えない。

「このくらいの規模がないと、やはり百貨店のラインナップは表現しきれないんですよ。」と、出迎えてくれた店長の小島さんが教えてくれた。

SONY DSC 小島さんが言うには、ここは、新宿にある伊勢丹メンズ館のなかで、特にお客さまに支持されている商品を中心にセレクトした「いいとこどり」のお店。

ストア内は、大きく2つのテーマに分かれている。

「JETSET」は、旅の”緊張感”を表現しているゾーン。

SONY DSC 革小物、シャツ、ネクタイ、ステーショナリーなどビジネスの身だしなみを整えるアイテムが揃う。

靴売り場のなかにあるシューシャインバーでは、シューシャインマスターと呼ばれる専門スタイリストが、靴を見違えるほどピカピカに磨いてくれる。

もう1つの「RELAX」は、がらりと雰囲気が変わって”癒し”のゾーン。

SONY DSC 旅先で活躍しそうなカジュアルシャツ、サングラス、レザーバッグやシューズなどが、遊び心のあるディスプレイで表現されている。

カラフルな商品を見ているだけで、なんだかワクワクしてくる。

「ストア中央のプロモーションスペースでは、職人さんを呼んでの実演販売会や、常に話題性のある商品を定期的に紹介しているんですよ。」と小島さん。

去年の11月には、一本5〜10万円の高級洋服ブラシをつくり続けている「イシカワブラシ」の職人さんを招いた。

職人さんは最初、「空港なんかじゃ売れないよ」と言っていたそうだ。でも、試しに3日間来ていただいたら7個も売れた。これには、職人さんもとても驚いたそうだ。

SONY DSC 「イシカワのブラシは、馬のしっぽの根元の『尾脇毛』という毛を1本1本手作業で植え込んでいるんです。柔らかいけれど戻りがいいから、スーツの生地を痛めない。そういった品質の良さを分かってくださるお客さまが、このお店には多いんですよ。」

「イセタン羽田ストア」の店づくりにオープン当初から関わってきたという小島さん。

案内していただくなかで、たびたび「お客さまに恵まれている」ということを嬉しそうにおっしゃる。

ミスのお詫びをすると「こちらにも非がある」と言ってくれる方、スタイリストにお土産を持ってきてくれる方。色々なお客さまとのエピソードを教えてくれた。

小島さんは「不思議なことに」と言うけれど、いくら特殊な環境にあるお店とはいえ、飛行機を利用する人は老若男女さまざま。

自然にいいお客さまばかり集まってくるわけではないのだと思う。

たぶん、スタイリストの方たちがお客さまと「いい関係」をつくっているから、いいお客さまが多いのだろうな。

スタイリストの方たちが、すっと気持ちよく背筋を伸ばして立っている様子や、お客さまに商品を丁寧に説明している様子を見ると、そうなんじゃないかと思う。

SONY DSC 「少なくとも、この2年間やってきただけの成果が跳ね返ってきているのかな。今までにない取り組みだから、スタイリストも一緒に、みんなで一からこのお店をつくってきたんです。だから、それぞれお客さまのお力になりたいという気持ちが強いんだと思います。」

「○○さんいる?」とお客さまに名前で呼ばれるスタイリストもいるそうだ。

規制エリアの中なので、通常の店舗よりもお客さまの数は多くない。だから、ひとりひとりの接客に集中できる。

販売を仕事にしていきたい人にはいい環境だと思う。

ここには、ゆくゆくは伊勢丹や三越などの百貨店で働きたいという方から、元キャビンアテンダントで接客経験と語学力を活かしここで働いている方まで、多様なスタイリストがいる。

少し変わった入社経緯を持つスタイリストの関根さんに、話を聞いてみた。

関根さんは、大学院で地質学を研究していた。

SONY DSC 「大学院のとき、インターンシップで研究所に行く機会があったんです。そこで、研究だけではなくもっと人と接する仕事がしたいと思い、大学院を辞めて接客の仕事を探していました。」

接客のなかでも、とくに惹かれていたのが百貨店の仕事だった。

百貨店プロデュースの新しい試みの場所ができるということを、偶然広告を見て知り、興味をひかれて応募した。

時給制の仕事をすることに、最初は抵抗がないわけじゃなかった。

ところが、面接で実際に話を聞いてみると考えが変わったそうだ。

「面接に、このお店の立ち上げに関わってきた社員さんたちが来られていたので、これからどんなお店ができるのか聞いてみたんです。そうしたら、『出張で疲れている人の癒やしになれるような場所』とか『旅行に行く前に一緒に楽しみを共有できるようなお店にしたい』とか。それを話す社員さんたちの顔が、マンガみたいにキラキラしていて。仕事でそんなふうに輝けるのってすごいなと思ったので、ここで働くことを決めました。」

SONY DSC 実際に働いてみて、どうですか?

「いつも感じるのは、お客さまとの距離がとても近いことです。顔が見えるお客さまが多いですね。今日も、いらっしゃったお客さまがたまたまお誕生日だったので、その場にいたスタイリストたちがメッセージを書いて、チョコレートに添えてお渡ししたんです。」

そのお客さまは、仕事の都合で出張が多く、月に何度も空港を利用する。フライトまでの待ち時間があるときには、よくお店に足を運んでくれるそうだ。

SONY DSC お客さまと仲良くなると、全国各地のお土産話を聞けるのも楽しい。

「ここで働いていると、日本全国からお客さまがいらっしゃるんですよ。たとえば、わたしのお客さまで金沢にお住まいの方がいらっしゃるんですけど、その方に聞いたおすすめの場所の話を、これから金沢へ行く方にお伝えすることができたりだとか。生の情報を得ることができるのも、ここならではだと思います。」

ここならではの大変さについても聞いてみた。

「飛行機の到着時刻が重なったりすると、どっとお客さまが増えます。欠航や、搭乗口の変更などで、お客さまの流れが変わってくるんですね。」

とつぜんフライトがキャンセルになったとき、急遽今夜泊まるホテルを探さないといけなくなってしまったお客さまの代わりに、ホテルの手配を手伝ったスタイリストもいた。

お客さまも、飛行機を利用することに慣れていなかったり、突然のアクシデントには不安になる。そんなとき、一層寄り添えるような存在になりたい。

SONY DSC 売り上げに対する意識以上に、お客さまの役に立ちたいという姿勢だったり、顔の見えるお客さまを増やしていくことが、求められるそうだ。

「新しく入る方は、接客業の経験がなくても大丈夫だと思います。わたしもアルバイトくらいしか経験はありませんでした。」と関根さん。

しいていえば、取り扱っているアイテムの数が多いので、それを覚えることは大変かもしれない。

「ただ、わたしたちもゼロからはじめたので、ゆっくりみんなと一緒に覚えていけることではあるかなと思います。」

全ての商品ではないけれど、一部の商品には、その商品を説明する冊子がある。そこに、担当スタイリストがメモを残してくれていたりする。

たとえばペンだったら、「オードリー・ヘップバーンが使っていた」とか「限定品」とか。それを読めば、知らなかったスタイリストも、その商品について理解を深めることができる。

SONY DSC そんなふうに、みんなで得た知識をシェアするしくみが、いくつかできてきているそうだ。

どのアイテムをとっても、歴史が深かったり製造にこだわりがあったりするから、調べていくと面白い。接客だけではなく、物の知識を深めていくことが好きな人にも、向いているかもしれない。

ここでは、スタイリストひとりひとりに、それぞれ担当アイテムがあるそうだ。靴下には靴下担当の方がいて、化粧品には化粧品担当の方がいる。

カタログから商品を選び発注し、商品を仕入れ、管理し、並べ方まで。そのアイテムのすべてをその人が受け持つ。

以前は銀座三越でアクセサリーを販売していたというスタイリストの横山さんは、こんなことを言っていた。

「まさか商品をオーダーするバイヤーのような仕事までできるとは思っていませんでした。小さいお店だからこそ、やらせてもらえる範囲が広いんだと思います。以前は販売のみだったのですが、ここで働いてから、全体の流れが分かるようになりました。」

SONY DSC 担当の商品についてより深い知識を得るために、そのブランドへの研修の機会があれば、積極的に行かせてもらえるそうだ。

すべてのアイテムに担当スタイリストがいるのだと思うと、そんな丁寧な売り場で買い物をしてみたいと思わされる。

「いいもの」にアンテナを張っているお客さまがここへ集まってくる理由も、分かったような気がする。

今年の秋までには、このお店の反対側の南ウイングにレディス店が、そして第二旅客ターミナルにメンズ2号店が、それぞれオープンする予定になっているそうだ。

どのお店も、出発ゲートラウンジのなかだからこそ生まれる時間のなかで、過ごし方を提案する場所になるのだと思う。

訪れる人の思いがけない旅の一部になれるような、そんなお店だと思います。

そこに加わりたいと思った人は、ぜひ応募してください。

(2014/3/6 笠原ナナコ)