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当初の予定では10/20(月)までの募集期間でしたが、変更となり、10/16(木)に募集を終了いたしました。「10人の会社と言うと、驚く方が多いですね。人が少ないなかで、これだけたくさんの種類をつくってますから。」
大きな会社でなくても、有名でなくても、力のある会社が日本にはたくさんある。日々取材をしていると、そんなことを感じます。
福岡県大川市に、小さいながらも他には真似できないものづくりをしている会社がありました。
エレガントウッドコーポレーション(以下エレガントウッド)は幅広い業種の店舗や商業施設、建築施設などの内装用デザインパネルを製造・販売しています。カタログにある製品を販売するだけでなく、設計者やデザイナーのニーズに合う特注品も提案し制作しています。
受注先の半数以上は東京。スカイツリーから東京駅まで、ホームページで紹介しきれていない実績がたくさんあります。
今回は、そんなエレガントウッドの製品をデザイナーに提案する営業職の人を募集します。
製品を加工する機械を動かすためのプログラミング作業も担うので、デザインやものづくりが好きな人なら、たとえ経験がなくとも働けると思います。
まずはこの会社がどんな製品をつくるのか知ってほしいです。
羽田から飛行機に乗り、2時間ほどかけて佐賀空港へ。
到着すると、エレガントウッドの石井さんが車で迎えてくれた。ここから30分かけて、事務所のある福岡県大川市へと向かう。
大川市は家具の生産高が日本一の街。昔は筑後川の上流から木材を流して運び、木工関連の産業が栄えたそう。
石井さんのお父さんは1979年に石井商店を設立。家具の化粧材として使われるツキ板を、主に地元家具メーカーに向けて販売していた。
ツキ板は天然木を0.2mmに薄くスライスしたシートのようなもの。これを様々な材にのり付けすることで、木目風の塩ビシートでは表現できない経年変化の付加価値を商品に与えることができる。
「ツキ板は面白いですよ。一本の木から少量しかとれなくて、一つひとつ模様が違うから一点物なんです。その模様をつなげるために似たものをそろえたり。うちはツキ板のスペシャリスト。いまは扱える会社が少なくなりました。」
その後、取引先だったデザインパネルを製造する会社を引き継ぐことになる。
その会社の社名をエレガントウッドに変更し、凹凸のある不燃材にツキ板を貼付けた製品を中心に、デザインパネルの製造・販売をはじめた。
石井さんがエレガントウッドに加わったのは、その10年後。
京都で高級料亭や別荘などの内装を手がける大工として働いていた石井さんは、お子さんが生まれたのを機に大川市へ戻る。
入社後は石井さんのフットワークを活かして、店舗系を設計するデザイン事務所に営業の手を広げた。
ところが、なかなか上手くいかないことが多かったという。
「業界的に常に新しい形の商品が求められていて。だけど凹凸の形はもう出尽くして、どこも差別化できていないんです。だからカタログに載せた商品を見せても、金額だけで他社と比べられてしまう。そんな状況が嫌だったので、こちらからお客さんへ提案することをはじめました。」
たとえば、デザインパネルの表面の素材を変えてみる。ツキ板の他にシルクや布を貼ることで柔らかい質感を表現できるそうだ。塗装をすれば色や質感を変えることができる。デザインパネル自体も不燃材だけでなく合板やアルミなどを使うことだってできる。
クライアントのニーズに合わせて素材や加工の組み合わせを変えることで、既製品とは全く違った商品を提案できるようになった。
「提案するのは楽しいですよ。カタログにないものを見せると非常に興味を持ってくれたり。『こんなのあるの?』って。オリジナルの醍醐味がありますね。」
一つひとつの要望に応えていると、クライアントニーズはさらに多様化しているそうだ。
より複雑な加工が可能となる機械とプログラムソフトを導入した。
たとえば、とあるデザイナーの方からの相談。「風のイメージがほしい」という言葉とともにパースのような絵を渡されたという。
石井さんは、デザインを専門とする友人に手伝ってもらいながら、ラフスケッチを3パターン描いて提案。ひとつに案が絞られたら実際にサンプルを用意して完成後のイメージを説明した。
丁寧に話しを進めることで、満足してもらえるものを納めることができた。
「営業テクニックはいらないです。デザインセンスもいらない。必要なのは商品を買わせるトークスキルでもなくて、相手が何を求めるかを聞く力。一つひとつのステップを踏んで結果が出てくるような仕事です。」
会話を重ねることで、デザイナーと一緒につくりあげていく感覚がある、と石井さんは話す。
そんな密接な関わり合いから、固定のお客さんが増えてきた。
「ファンづくりをしている感じかな。営業に行くと『なんかあるやろ』って言われるんですよ(笑)。その度に新しいネタを披露しています。」
商品の提案に加えて、最近では“使い方”の提案もしている。
「『どれを使うか』ではなくて『どう使うか』。たとえば、部屋の1面だけにパネルを使ったり、わざとパネルを離して目地をアクセントにしたり。使い方を提案することで、空間デザインの可能性が広がるんです。」
石井さんにとって、デザインパネルは手段のひとつなのかもしれない。
目指しているのは価値あるものづくり。大量生産型の安値競争の中で勝負するのではなく、技術力と提案力を活かした独自の方向性を探っていく。
「やり方次第でナンバー1をとる自信があるんですよ。いっぱいお金儲けをしたいとかではなくて、新しいものつくって世の中に出していきたいですね。」
事務所に近づくにつれて、家具の販売店があちこちに見えてきた。車はあっという間に事務所に到着した。
角窓が特徴的なRC造の事務所。メーカーというより、デザイン事務所のような外観だ。応接間にはツキ板やデザインパネルが綺麗に飾られている。
ここで話を伺うのは、入社3年目の森永さん。彼女は石井さんと2人で営業を担当している。
営業では製品を加工する機械を動かすためのプログラミングを自ら作成し、デザイナーに提案する。
そのプログラミングの様子を、森永さんに教えてもらった。
プログラミングではCADCAMというソフトを使い、機械が刃を入れる深さや形、手順をパソコン上の図面に書き込んでいく。
コストを抑えるために製造時間を短く調整したり、パネル同士のつなぎ目が見えないように模様を区切ったり、考慮しなければならない点がいくつもあるという。
なかなか難しそうな作業だと思う。
「そうでもないですよ。基本操作はイラストレーターと似ているので、扱ったことがあればやりながらさくさく覚えていけます。普段からパソコンに触れていたり、ソフトを扱うのが得意な人も向いてると思います。」
プログラミングが終わると、実際の完成形を3Dのシミュレーションで確認できる。このデータを設計CADに取り込み、部屋のCGパースをつくってクライントに提案する。
サンプルをつくるよりも早くビジュアルを見せることができるから、取引先の担当者には喜ばれることが多いそうだ。
その後は、エレガントウッドの工場で働くスタッフと連携して製品の製造に移る。
工場スタッフには製品の図面だけではなく、納品後の完成予想図やCGパースも一緒に渡す。その際、クライアントの細かいニュアンスも伝える。
「うちの製品は空間に納まることで完成するから、職人さんに図面以外のことを伝える必要があるんです。提案段階でどんなに上手くいったって、結局は完成した製品がいいものでないといけないですからね。」
森永さんは大学でデザインを専攻。卒業後、エレガントウッドに新卒入社した。
「はじめてこの会社の製品を見たときに、すごく綺麗だなと思って。どんなふうにつくっているのか知りたくて、それで一度話に伺いました。」
仕事は石井さんにしっかり習いながらも、自由にやらせてもらっている。
そんな石井さんのことを「いい上司なんです」と森永さんは話していた。
「仕事はまだまだですけど、楽しいなって思います。無事施工が終わって、東京への出張で物件を見に行くのがわくわくするんです。自分のデザインしたものが何十年も残ることって、やりがいがあると思いますよ。」
ただ人手が少ないためか、日々の仕事は忙しい。繁忙期には納期に追われることだってある。
クライアントのニーズに応えられるのは会社の強みである一方、一つひとつの案件に時間をかけて向き合わなければならない。
「打ち合わせや電話、プログラミングに見積もりと、やることは幅広くあります。忙しくてもぴりぴりしないで、楽しく仕事できる人に来てもらえるといいですね。」
職場はアットホームな雰囲気だという。少人数の会社ならではのことだと思う。
誰かの誕生日には、みんなで食事会を開く。スタッフの家族や地元の外注先の方を呼んでバーベーキューや花火大会もするそうだ。
どんな人に来てほしいのだろう。あらためて石井さんに聞いてみた。
「何に関しても興味を持っている人がいいですね。いくら喋りだけが上手でも、社会で起こっていることに関心がないと。それと私は経営にだんだんとシフトしていくので、ゆくゆくは営業を任せられるような人にも来てほしいですね。」
石井さんは、デザインができる友人の手を借りながらも、自分でホームページやカタログをつくっている。
もしこういったことにも興味やスキルがあれば、どんどん取り組んでほしいとのこと。
「仕事に絶対の形はありません。新しいやり方や可能性があるなら広げていっていいと思っています。いまは相手に合わせたデザインを提案しているだけですけど、これからはデザインをゼロベースで考えた製品や空間デザインも含めて提案していきたいと思っています。」
エレガントウッドには他に負けない技術力と提案力がある。
さらにこれから独自の路線で事業を展開していく会社なんだと思う。
今は人手を増やし、会社の基盤をつくっている時期。気持ちとスキル次第では、中核として働ける職場だと思います。
(2014/9/22 森田曜光)