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なんにもないけれど

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日本全国の地域で過疎化が進んでいます。ただ、それは一様に進んでいるわけではなくて、中山間地域であっても人が集まっている場所もあります。もしくはもともと観光資源に恵まれていたところもありますし、産業の発達している地域もあるでしょう。

今回は鹿児島県志布志市の地域おこし協力隊の募集です。

shibushi01 志布志は、地域のみなさんが口を揃えて言うように、何もない場所です。観光資源もありませんし、大きな産業もありません。志布志港は中核国際港湾に指定されており、大阪と志布志を結ぶフェリー「さんふらわあ号」が就航していますが、あとは自然が豊かなことくらい。

ただ、取材していると見えてきたのは面白い人たちがいること。この方々は地域おこし協力隊とともに働くことになる人たちです。

「この人たちと働きたい」「何にもないくらいのほうが面白い」という方はぜひ読んでみてください。もちろん「まだ何かをしたいわけじゃないけれども、自然豊かな場所に移住したい」という方も大丈夫です。

鹿児島空港からレンタカーを借りて、志布志を目指す。高速道路をつかって1時間ちょっとで志布志市内に入った。市内にはゆるやかな丘陵に畑が広がっている。

shibushi02 まずは市役所に向かって、今回の募集を担当している津曲さんと合流する。

とても丁寧な方で、きっとこれから志布志にやって来る人たちのことを助けてくれると思う。

まず向かったのは「道の駅松山」。周辺には畑や茶畑の広がる緩やかなシラス台地がひろがっている。ここでは道の駅の直売所をリニューアルする人を募集している。

shibushi03 中に入ってみると、まず普通の道の駅とは様子が違うことに気がついた。

この道の駅を運営している藤島さんに話を伺った。急遽、お話をいただくことになったのだけれども、快く応じていただいた。

「この道の駅の運営をさせていただくことになったときは、何をするのか決めていませんでした。ただ、この地域には道の駅がたくさんあるんですね。だから漠然としたものをつくっても難しいと思ったんです。」

shibushi04 ここではスイーツのビュッフェを目玉にして、チョコレート屋さんなども併設している。なんとなく道の駅というのは、地域の物産などを売っているイメージだったので、びっくりしてしまった。しかも平日だというのに賑わっている。

ビュッフェのとなりをみると、量は少ないものの、野菜なども販売している。今回はこの直売所をリニューアルするということだから、取り扱う産直品を増やせばいいのだろうか。

shibushi05 「ただ、地域の野菜などの販売を増やすと、経営するのは難しくなるんです。」

難しい?

「なぜなら利益率がとても低いんです。ただ、直売所を増やさない、というわけじゃないんですよ。」

なるほど。不採算事業の募集となるんですね。

「今までどおりのやり方ならそうなります。直売所の充実ということをもっと大きな枠組みで考えればいいんです。いま裏でハーブ園を作っていこうとしていますよ。ハーブ園といっても、ただ見せるだけでは面白くないので、ハーブを蒸留する。炊き上げて、得た雫を汲み取る。蒸留水とかをいろんなアロマにしたり、飲料水の許可まで取りたいと思っているんですよ。」

「そういった新しい取り組みも含めて、興味をもっていただければいいと思います。入口は野菜の直売所の充実という部分なんですけれど。」

藤島さんは、もともと福岡で飲食店やお菓子の製造販売などをおこなっている方。話を聞いていると、とても面白く、且つ商売としてもよく練られたアイデアをたくさんもっている。

この道の駅でも、はじめはいろいろなことを考えたそうだ。

「福岡から一人で乗り込んできて、だだっ広いスペースをぐるぐる回りながら考えました。もともとお菓子屋なんで、パフェ専門店とかも考えましたね。そんなときにいいパティシエと出会って、ふたを開けてからはじまったような感じです。」

shibushi06 「志布志には何もないんですよ。だから集客できるような場所をつくる、という義務感は持っていますよ。」

面白い方だった。一緒に働いていく中で、自然といろんなことを経験できるようになると思う。

次にまた市役所のほうに戻って、港湾商工課観光物産係長の河野さんに話を伺った。

なんだか生き生きとしている方。この人も面白くて素敵だ。

河野さんと働くことになるのは、観光特産品プロデューサー。その名前のとおりオリジナルの特産品の開発が主な役割となる。

「志布志といったらこれ、というお土産品とかそういったものがないんですね。」

shibushi07 やっぱりないんですね。

「そうなんです。本当に中途半端なところなんです。だから特産品のプロデュース業務をお願いしたいんです。」

「観光資源だって、県内の指宿市さんだったり、霧島市さんとくらべても非常に乏しい。そんな中で志布志観光振興計画っていうものを作成して、観光客数100万人を目指しましょう、ということになっています。」

いろいろな食に関する試みだったり、大阪と志布志を結ぶフェリーを活用したスポーツ合宿なども企画され、実践しているそうだ。うまくいった事例としては、ほかの地域に出向いて志布志のPRをする「志布志フェスタ」だったり、夜の飲食街でスタンプラリーを実施したこともある。

すでにいろんなことをはじめているように思った。

「ただ、地域おこし協力隊の方には、行政では考えつかないようなところを発想していただいて、一緒に形をつくっていきたいと思います。さらに地域おこし協力隊は3年間だけれども、そのあとは観光特産品協会に入ってもらえるような人材に来ていただきたいですね。」

特産品の開発以外にはどんな仕事がありますか。

「情報発信ですね。志布志のゆるキャラ『ししまる』なども活用しながら、県内外に志布志のPRをしていってもらいたいです。基本的には市が観光特産品協会に委託した事業になります。」

「特産品開発も、それを専門にしているコンサル会社があります。そこと協力しながら、観光特産品協会の会員さんである市内のお店などとともに進めていただく形になると思います。餅は餅屋じゃないですけど、すべて自分でやってしまうと大変でしょうから。」

話を聞いていると、この仕事の難しいところは、いろいろな関係者の間に入りながら、仕事を進めていくことだと思う。

たとえば、いいお菓子屋さんなのに、後継者がいないために協力が難しいところもあるかもしれないし、逆に自分がつくりたい、という人がたくさん現れて調整が難しいこともあるかもしれない。ただ、コミュニケーション次第では、みなさんに協力してもらいながら開発することもきっとできると思う。日頃からいろんな人に会うことは大切かもしれない。

shibushi08 河野さんと話をしていて、いろいろな可能性を感じた。今は海外旅行客にも人気の抹茶のスイーツをつくったらいいだとか、もしかしたら食べ物じゃないのかもしれないとか。

枠組みにとらわれずに自由に話ができる方だと思う。

となりで話を聞いていた観光特産品協会で働く今別府さんには、どんな人がいいのか聞いてみる。

「すでに地域にはいろんな方がいらっしゃいます。自分の理想だけを追いかけても難しい。だから地域をよく見て、どんな人たちと関わればいいのか考えられる人がいいと思います。」

shibushi10 都会の考え方をそのまま持ってきても実現するのは難しい。まずはどんな人がいるのか、どんなことがあるのか知りながら、自分のアイデアと結び付けられたらいいと思う。

あらためて観光物産係長の河野さんに仕事について聞いてみる。

「仕事は面白いですよ、とても面白い。イベントがあったり、業務に負われたり、どんどん遅れてどうなるだろうっていう不安もありますけど達成感がある。」

shibushi9 「私も役所に20年いますけど、今までにない経験をこの2年間でさせてもらっているので、すごく忙しいですけど、すごく楽しいです。」

最後に地域おこし協力隊を担当している、市役所の企画政策課に向かった。そこで課長の武石さんに、地域おこし協力隊とともに進んでいきたい未来の話をしていただいた。

「すでに地域には地域おこし協力隊とは別に、移住されたきた方がいらっしゃいます。これからは地域おこし協力隊もやってくる。さらに若い方の移住につながっていけばいいと思っています。二地域居住でもいいです。自然があって、食べ物がおいしくて、仕事があれば満足いただける方っていると思うんです。」

shibushi11 武石さんは志布志で生まれ育った方。どういう地域にしていきたいのか聞いてみる。

「生まれて育った人が、そこで一生を過ごすというのが理想なんじゃないですかね。私は大学だけはよそに行きましたけれども、それ以外はずっと志布志です。」

「大学に行った人が帰ってこれる受け皿をつくらないといけないんですね。つまり仕事をつくること。可能性があるのは1次産業なんです。志布志にはそういった資源がたくさんあります。農業や林業などの仕事の場をつくっていきたいです。」

すでに農業公社をたちあげて、70〜80世帯の人たちが移住してきている、という実績もあるそうだ。

より事業として成り立たせるためには、地域をコンパクトにして学校や病院などを集約しつつ、外側に広がる農地を大規模化させていくことも必要かもしれない。

「1次産業から、いろんな仕事が生まれると思うんです。畑や田んぼの区画整理も必要だし、山も切る人がいるから、運んでいく人もいるし、取引をする人も生まれる。そうやって雇用も生まれていくでしょうし、そのために投資を集中させることも必要でしょう。」

そのほかにもいろいろな取り組みをしているのが志布志市です。

ゴミの分別は27品目におよんで、生ゴミなどは堆肥化したり、紙おむつもエネルギーにできないか考えたりしているそうだ。バイオマス発電の構想もある。

志布志には、やっぱりわかりやすい観光資源も大きな会社もなかった。でもだからこそ、危機感をもって、どうにかしないといけないと考えている人たちがいる。

そして、そういう人たちは逆境を好機ととらえているようにも感じる。

shibushi12 もし何にもない場所だけれども、地域の人たちと協力しながら、働いていきたいと思う方がいたら、ぜひ応募してみてください。もちろん、自然が豊かなところに移住したい、という方も大歓迎です。

(2015/2/13 ナカムラケンタ)