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一人ひとりがつくる社会

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「社会がこうなるといいな。」

日本にある資源を活用することで、エネルギーシフトを進められないか。同じマンションに暮らす人同士のつながりが生まれないか。一人ひとりが、自分で考えることで社会はより良くなるんじゃないか。

日々浮かんでくる疑問を見つめ、毎日の仕事を通して、一つひとつ形にしていく人たちに出会いました。

NPO法人ビーグッドカフェで、プロジェクトマネージャーを募集します。

コンセプトづくりから、営業、イベントの運営、さらには制作物のディレクションまで。社会人としての経験を活かしつつ、自分次第で幅広く手がけていける仕事です。

東京・三軒茶屋。

0 駅から歩いて5分ほどで、ビーグッドカフェのオフィスが見えてきます。

迎えてくださったのは、代表のシキタ純さん。

お会いするのは2度目。一見コワモテですが、話してみるとユーモアのある柔らかい方です。

1 今年で活動16年目を迎えるビーグッドカフェ。まずはこれまでの歩みをうかがいます。

学生時代から社会の役に立ちたいと思っていたシキタさん。

社会を知り、力をつけたい。その思いから、総合商社の丸紅へ就職します。

輸出入の仕事を重ねて独立。テキスタイルの輸入・ファッションショーの企画を行います。その後は海外のインディーズレーベルを日本に紹介、日本のクラブカルチャーを盛り上げてきたという。

一度区切りをつけて、社会によいことをしたいと勢いづいたのが1998年のこと。

「その年の秋、獅子座流星群が騒がれたときに、色々なクリエイターたちと山で星を眺めながら話したんです。『競争社会から、分け合う社会にシフトできないか』『環境について若い人たちと考える場をつくりたいね』。」

翌年1999年に誕生したのが、ビーグッドカフェ。

はじめに原宿で「語り合うカフェ」をつくった。そして1月からは「戦争」「有機野菜」「貧困」といったテーマでゲストを呼び毎月開催。2007年までに約100回を開催した。

2 それまで環境について考える場といえば、市民会館で高齢の人が真面目な議論を交わすものだった。

ビーグッドカフェは肩書きや属性を越えて、同じ思いを持った人が話し合うスタイルを開拓していったという。

以降も精力的に活動を展開。

2005年には愛知万博で畑を耕し、作った野菜をレストランで提供し、さらに生ゴミをミミズコンポストでたい肥にして戻す。ほんとうの食育と循環を伝えた。

また最近では、越谷レイクタウンに環境コンサルとして関わり、廃棄される素材でアート作品をつくり、飲食店から出た天ぷら油を回収してリサイクルするシステムを提案。

3 「地域活性化、エコ、再生可能エネルギー、官民連携… 活動の幅は広いです。いずれにも共通するのは、『持続可能な暮らし』です。」

16年にわたり活動を行ってきたビーグッドカフェ。企業、大学の研究室、マスコミをはじめとするメディア媒体… 幅広いつながりは大きな財産になっているという。

活動は、海外へ展開することも。

2011年の東日本大震災、2012年のバンコク大洪水。続く自然災害を契機に、アジアでの防災・コミュニティを考えるフォーラムVISIONSを開催。

昨年9月にはタイが舞台となりました。

シキタさんは、今回の募集についてこう話す。

「ソーシャルの分野でどんどん新しい動きが生まれていますよね。これまで築いた縁を活かしつつ、これからのビーグッドカフェを描いてほしい。そうした中での求人です。」

4 いまでこそ10人以上が働くビーグッドカフェ。立上げ当初を振り返ると、「社会にいいことをしながら飯が食えるわけがない」という厳しい声もよく聞こえたそうです。

シキタさんは、ソーシャルマーケットをつくるところから取り組んでいきました。

働く一人ひとりが、世の中になかった仕事を形にしていく。16年経った今も、その姿勢は変わりません。

ビーグッドカフェで働く人には、仕事は「与えられる」よりも「自らつくっていく」という言葉がしっくりくるようです。

こんな人に来てほしいという。

「私が『この企画を進めてほしい』と頼んだときに『でもシキタさん、いまアメリカではこういったビジネスモデルが広がりを見せています。取り入れてみてはどうですか?』と言えるような人。議論しあい、よりよいものをつくりあげるパートナーとして仕事をしたいです。」

すでに、ビーグッドカフェにはそんなパートナーが増えつつあります。

話をうかがったのは、女性の青木さん。

日本仕事百貨を経由して、おととしの6月から働きはじめました。

思ったことを素直に言葉に表していく、話していて気持ちのよい方です。

5 学生時代は環境に関する研究を行っていました。

現場を見たいという思いから、東京にある地元の市役所へ就職。環境課を経て、環境コンサルティングへ転職。そしてビーグッドカフェへとやってきました。

転職のきっかけは「縁とタイミング」だと話します。

「誰かの失敗を批判しあうよりも、一人ひとりが自分で考えて世の中に参加していける社会がいいなと思っていて。そのために官民連携や、対話から創造の生まれる場をつくりたい。そう考える中で、ビーグッドカフェの募集を見つけて。やりたいことのタイミングと重なったんです。」

そんな青木さんが手がけるのは、資源エネルギー庁の「GREEN POWERプロジェクト」。

現在は国内発電電力量の2.2%しかない太陽、風、地熱などの再生可能な自然エネルギーを普及する活動です。

これまで行われてきた官主導のトップダウン型とは異なり、GREEN POWERプロジェクトはボトムアップ型をとっています。

6 NPOグリーンズが藤野電力などと協働する「わたしたち電力」をはじめ、民間団体の支援により、盛り上げようとしています。

そこで青木さんは、企業連携プロデュースを担当。企業や自治体への提案を進めていきます。

「企画書を作成して、色々な企業を訪ねました。大事にしたのは根気づよく、同じ思いで連携できる団体を探していくことでした。この人はお金を出して、この人は知恵を出す。この人はデザイン、場… それぞれができることを持ち寄って、実現していく。イノベーションは、立場の異なる人同士の対話から生まれてくると信じています。」

連携したのは次の3団体。

コミュニティ形成により不動産の資産価値を高める“経年優化”を提唱する三井不動産グループ。発電技術を開発してきた株式会社東芝。そして低炭素社会の実現を目指す神奈川県川崎市。

様々な団体と協働する分、三者三様の考え方を調整することは難しかったという。

そこで大切にしたことがある。

「自分の芯をしっかり持つことです。お客さんからの意見はありがたく受け取りつつ、失礼のないように『わたしはこう思うんですが、どうですか?』と、ときには押し返す強さも必要だと思います。」

現在進行しているのが、「グリーンパワーで描く川崎の未来プロジェクト」です。

昨年9月には、東芝が自社でCSRの一貫として行ってきた「ミニ電気自動車の工作教室」を開催。

11月には、川崎市内の太陽光発電所を子どもたちと訪れる予定です。

見学後は、子どもたちと一緒に、未来の川崎のエネルギーを描くワークショップを行うという。

「子どもたちにインプットだけでなく、自分の頭で考えて形にしていく機会を持ってほしかったんです。」

もう一人紹介したい人がいます。

ビーグッドカフェでは、ソーシャルや環境についての意識を持ちつつ、社会人としての幅広い経験が活かせる場でもあります。

アパレルブランドの店舗設計・施工の仕事を経て、やってきたのが鶴淵(つるぶち)さんです。

7 鶴淵さんが担当するのは、三井不動産レジデンシャル主催の小学生向け環境教育プログラム“&EARTH教室「すまいのECOチャレンジ」”。
2010年以来、商業施設でのイベントを展開してきました。

昨年度からは、小学校への出張授業が増えたという。

「環境と言っても、テーマは『あいさつ・ごはん・森林・地球・生活』と幅広いんです。社員の方と一緒に学校を訪ねて、授業を行います。最後に、子どもたちからエコチャレンジ宣言をしてもらうんです。」

「すると『今日話を聞いたのでコンセントをこまめに抜くようにがんばります!』そんな声が返ってきます。社員さんは、自らつくったプログラムが子どもに届き、感動するんですね。問い合わせをくださった先生も『やってよかった』と言ってくださいます。」

8 さらに運営をサポートするのが、ステューデントスタッフ。

先生を目指す人。人前で話すことを得意にしたい人。大学で環境学を学び、教育現場で実践したい人。彼らにとっても、気づきは大きいという。

「一人ひとりの笑顔、感想がたしかな実感として伝わってきて。関わる人みんながうれしくなるプロジェクトです。」

鶴淵さんには、前回の取材でも話を聞かせていただきました。

この一年半の間で、心境の変化もあったそうです。

「以前は企画から当日の運営まで、自分がすべてに関わらないと不安だったんです。僕が先生を勤めることもよくありました(笑)。最近は、子どもはもちろん、スタッフまで。関わる一人ひとりがよくなるには、どうしたらよいか。人に任せられる部分は任せて、ほんとうに自分が担うべき役割を意識するようになりました。」

9 「僕らの仕事は、企画から制作物までとても幅広いです。だからこそ、チームで進めることも大切です。組織としても、育ってきたのだと思います。」

これから働く人に伝えたいことがあるという。

「僕自身、とても楽しい仕事だと思っています。同時に、いままでなかった仕事をつくるには、大変なこともあるかもしれません。イベントは土日に行うことが多いですし、設営から手伝うこともある。人に伝えていくには、学ぶこともたくさんあります。小学生が日々どんな勉強や遊びをしているか。教科書を読んで、児童心理学の勉強会を開くこともあります。」

また企業や行政の方へ提案を行う上で、地域や環境分野における知識も求められる。

「日頃から色々な興味を持っていること。それらを組み合わせて、あたらしい仕事をつくるには、自問自答する強さも必要です。その両方を楽しめるといいと思います。」

取材が終わると、二人は机に戻り、この日が納期だというレポート制作に取り組んでいきました。

日々の仕事の積み重ねが、社会をつくっていく。

改めてそう実感しました。

(2015/3/2 大越はじめ)