求人 NEW

やってみるべぇ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

群馬・福島・新潟の3県にまたがり、自然の宝庫といわれる尾瀬国立公園。その群馬県側の麓になるのが片品村です。

冬にはスキー場が開かれ、四季を通して多くの観光客が訪れます。

ここで、地域おこし協力隊員をはじめて募集します。

katashinamura01 東京から車で約2時間半の場所にある片品村。首都圏から近く、IターンやUターンした人は少なくありません。

観光客が多いこともあって、外の人を受け入れる風土のある地域。きっと田舎がはじめての人でも飛び込みやすいと思います。

協力隊にチャレンジしたいと思っていた人や、田舎暮らしをしたいと思っていた人。そんな人にぜひ読んでみてほしいです。

 
 
東京駅から新幹線に乗り換え、上毛高原駅へ。

この日は小雪が舞う、ちょっと肌寒い気温。

到着して改札を出ると、本間さんが車で迎えに来てくれていた。今年の春から地域おこし協力隊員になる方です。

日本仕事百貨での募集は本間さんが村役場に提案したもの。本間さんを筆頭に、これから一緒に働くメンバーを募集します。

katashinamura02 さっそく助手席に座り、片品村へ向かう。

「昨日車の中で灯油をこぼしちゃって。くさかったらごめんなさい(笑)。」

雪深い片品村ではストーブが必須。ただ村の中心部はわりと雪が少なく、本間さんのように雪国初心者でも心配ないという。

もともと東京出身の方。昨年の春ごろから片品村に通いはじめ、12月に移住した。

それまでは大手通信会社で営業の仕事をしていたそう。

「学生のころから環境問題やソーシャルベンチャーに興味があって、環境系のNGOで働いたりしていました。とりあえず3年間は普通の会社で働いてみようと就職したけど、気づいたら9年経っていて。」

「一生する仕事じゃないなって思ったりして、転勤後に転職活動をはじめたんです。」

山登りが好きで、ゆくゆくは自然に囲まれた環境で暮らすことを描いていた。転職活動中にはNPOにインターンしたり、自然学校に通ったりもしたという。

そんななか、たまたま知り合いを通じて片品村の花咲という集落に通うようになる。

「片品村は東京から近いところがいいなと思っていて。日帰りできて、友達や家族にも観光で遊びに来てもらえる。」

「いま盛り上がっている地域は、東京から離れているところが多いじゃないですか。そこに飛び込むとなると、仕事も人の関係も離れなきゃいけない。近場のここなら、ライトに関われると思うんです。よいところもわるいところも全部含めて、田舎を知ることができるだろうなって。」

実際に来てみて、どうですか?

「東京からすごく近いのに、ほんとうに田舎で。みんな言葉が荒いけど、優しいです。野菜や狩猟で獲れた肉をいただいたり、みんなが気にかけてくれて。」

「移住者の方もぽつぽついて。レストランを出したり、自然農をやっていたり。面白い人たちがたくさんいますよ。」

katashinamura03 車を走らせること1時間。沼田市の市街地を抜け、片品村に近づいてきた。

さっきまで降っていた雪は止み、真っ白な山々の稜線がくっきりと見える。

「いまは雪景色を楽しんで、春が来るとお花が咲いて。夏は尾瀬が綺麗で、秋の紅葉もすごく綺麗で。ここで暮らしていると、四季折々を楽しめるんじゃないかな。」

katashinamura04 しばらくして片品村の中心地に到着。

メインストリートの商店街を覗くと、シャッターの降りたお店が目立っていた。

「観光客が毎年来てくれるからって、地元の人はそんなに困ってないんです。自分たちは暮らせる。でも、若い人たちは出て行っちゃうんですよね。」

人口は約4800人。2040年には半数近くに減少するといわれている。

「消滅の可能性がある地域なんです。いまの生活が困ってないからってそのままじゃだめでしょうと。若い人に残りたいと思ってもらえるような地域にしようと、役場の人たちも一丸になって動きはじめていて。」

そのひとつに、村の中心地一帯を“まちの駅”にしようという計画がある。

郊外の広い土地に構える道の駅ではなく、使われていない土地や建物を活用して村全体を道の駅化する“まちの駅”。

その計画の第一歩として、未活用だった建物を改修し、直売所の機能を持たせた“かたしなや”が誕生した。

katashinamura05 「このあたりは個人で小さい直売所をやっている人がいっぱいいるから、ここ20年は大きな直売所をつくることができなかったんです。小さい建物ながらも、大きな変化ではあって。」

はじめてみると直売所のニーズは意外と多く、これから同じようなスペースを増やしていく予定だという。

まちの駅化計画ははじまったばかり。メインストリートを足湯通りにするなど様々な案があがっているけれど、具体的な方向性はこれから決めていくようだ。

「どこの地域もそうだけど、とにかくやりたいことがいっぱいあるんです。でもやる人がいなくて。自分はこれをやりたいとか、何か引っかかるものがあるなら、その人にお願いしたいと思っています。」

たとえば、どんな役割が待っているのだろう。

「スキー場や尾瀬のほかにも、この村には自然豊かな里山があったり、美味しい野菜や加工品があるけど、観光に来るお客さんに全く知られてない。そこを結びつけられる人がいると面白いと思います。」

「あと、人がいればすぐに動き出せそうなのが外国語の対応。尾瀬やスキー場があるのに英語でガイドできる人がほとんどいなくて。そもそも外国人向けに情報発信していなかったりするので、デザインやwebができる人もいるといいですね。」

katashinamura06 本間さんは狩猟と自然ガイドを軸に、協力隊で活動していくという。

地元の猟師さんとイノシシや鹿を獲りに山へ入ったり、ツアーを企画したり。既に着々と活動を進めている。

きっとこれから加わる人も、本間さんのようにまずは自分が興味のあることからはじめて、そのなかから新しい村の魅力や課題を発見していくのだと思う。

「何かひとつやることがあると、村の人に話を聞きやすいと思うんです。Webをつくるから、お話聞かせていただけませんかって。そういうところから人間関係をだんだんつくっていって、こんなことをやっている人いるんだとか、こんな問題があるなってだんだん分かってくると思う。」

「自由に動ける環境だと思いますよ。これやりたいっていえば役場の方が予算取りしてくれるし、副業もOKにしてもらっているので。手取り足取りはできないけど、まずはひとつやることを決めて、人とコミュニケーションとって自分のやりたいことを見つけていける人だったら面白いことができると思います。」

katashinamura07 続けて本間さんが案内してくれたのは、村内にある温泉施設“ほっこりの湯”。

「わたしと一緒に活動してくれている地元の可愛い女の子がいて。利江ちゃんっていうんです。」

入口の扉を開けると、正面には村の田園風景を一望できる大きな窓。

「利江ちゃんはこの施設のオープニングスタッフとして、ここで働いていて。窓から見えていた電線を、電力会社と交渉して上の位置にずらしてもらったり、小さい子ども連れの親子のためにべビーベッドを置いたり。施設を上手く使って、地元の人が利用しやすいようにいろんなことに取り組んでいる子なんです。」

katashinamura08 カウンターの横には駄菓子コーナーが設けられ、休憩スペースの奥にはごろ寝処が用意されている。販売スペースには、移住者がデザインした手づくりアクセサリーが並んでいた。

子どもから大人まで、片品村に住む人の交流の場となるようにつくっているみたい。

しばらく眺めていると、奥のほうから「こんにちは」と利江さんが声をかけてくれた。

katashinamura09 利江さんは、生まれも育ちも片品村。専門学校で学びに東京へ行き、成田空港で仕事をしていた。

「スノーボードが好きなので、冬になると東京で働きながらも毎週片品に帰って滑っていて。3年が経ってから、こっちに戻ってきました。しばらくスキー場のアルバイトを2年くらいしていたら、ほっこりの湯のオープンを手伝ってくれないかって誘っていただいて。」

「片品村振興公社の支配人の重雄さんからは、まかせるから自由にやっていいよって。オープン前の準備も全部自分たちでやって。」

ほっこりの湯を運営するのは片品村振興公社。利江さんはその準社員として、ほっこりの湯のリーダーを務めている。

せっかく地元に戻ったのだから、いろんなプロジェクトに関わりたい。最近は商品開発の会議に参加したり、本間さんと一緒に活動したりしているそうだ。

「振興公社の重雄さんや副村長に、本間さんと一緒に活動したいと相談したら、どんどんやりなよって言ってくれて。役場の人も振興公社の人も、上に立つ人が協力的なのですごくありがたいですね。」

katashinamura10 利江さんは、どんな人に来てほしいですか?

「いろんなことに対して難しく考えないで、ああやってみようって思える人。できないことはわたしたち地元の人がフォローできるので、前向きで明るい人だと嬉しいな。」

利江さんもそんな姿勢で、役場や振興公社の人たちと一緒にほっこりの湯をつくりあげてきた。

やってみようと思ったときには、もう動き出しているくらいの人がいいかもしれない。

「ほっこりの湯で、これは売れないかもしれないけど仕入れてみようとか、結構悩むんです。でも、やってみないことにははじまらないので。役場の人たちも『やってみるべ!』っていう人たちばかりです。」

「この村はやれば変えられる部分がいっぱいあるから、来てくれる人の経験や知識はどんなでも活かせると思うんです。私も何ができるかまだ分からないけど、一緒にやっていけたらなって。」

 
 
ほっこりの湯を後にして、こんどは片品村役場へ。

最後に片品村振興公社の支配人、重雄さんに話をうかがいます。

協力隊と役場の間に立ち、困ったことがあれば力になってくれる方です。

katashinamura11 以前は総務省で働いていた経歴のある重雄さん。10年前に帰郷し、奥さんと6人のお子さんたちと一緒に暮らしています。

「外に出て分かったのは、水が美味しい。向こうでは隣人の顔すら知らなくて。ここでは当たり前のことが外では当たり前じゃないんだって気づきました。いろんなことをやってほしいという気持ちはありますが、まずは村の人の視点では気づかないよいものを、若い人の感覚や外の目線で掘り起こしてもらいたいです。」

重雄さんは、どんな人に来てもらいたいですか?

「遠慮しない人がいいです。言いたいことや困っていることがあっても、口に出さないんじゃしょうがないので。話すことがきっかけになって新しい動きが生まれたり、協力隊の人をサポートできたりしますから。」

「はじめて訪れるようなところかもしれないですけど、第2の故郷と思ってもらえるくらい本気でやってくれる人に来てもらいたいですね。何をやるにもやっぱり気持ちが大事だと思います。こちらも全力でサポートさせていただきます。」

 
 
帰りがけ、重雄さんから「よかったら、かたしなやで召し上がっていってください」と雪下人参ジュースをいただきました。

雪に埋めることで甘さを増した雪下人参の100%ジュース。柿のような甘さと、人参のいい香り。

これがびっくりするくらい美味しくて、はじめて飲んだという本間さんと一緒に驚いていました。

まだ知られていない魅力が、ここにはいくつも眠っているようです。

katashinamura12 役場のまちの駅プロジェクトも協力隊の活動も、まだまだこれから。

だけど、まずやってみようという柔軟な考えと行動力が、この村にはあります。そして尾瀬やスキー場だけでなく、まだ知られていないよさがいくつもある。

都心から近く、飛び込みやすい地域。気になった方は、ぜひ一度訪ねてみてほしいです。

(2015/3/18 森田曜光)