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おいしいご飯、食べてますか?食生活が多様化し、米離れが進んだと言われる昨今。それでも「炊きたての銀シャリ」「TKG(卵かけご飯)」といった響きに、私たちは魅了されます。
吟味して選んだお米を、独自のブレンドでネット通販する会社が京都の「八代目儀兵衛(ぎへえ)」。業務拡大にあわせてDTPデザイナー、Webディレクター兼デザイナー、コーダーの3職種でスタッフを募集します。
あらゆるものが便利に買える時代、多くの企業が自社の商品にどうやって付加価値をつけて売るのかを試行錯誤している。
そうした努力は、きっと私たちの暮らしをたのしくする。それが贈りものならば、もらった人はうれしい気分になるだろう。
「お米の価値観を変える」というミッションのもと、どのように世の中を驚かせようかと考えている京都の米老舗が八代目儀兵衛だ。
八代目儀兵衛の社長は、橋本隆志さん。江戸時代の寛政年間に創業した本家の初代儀兵衛から数えて八代目にあたる。
「8」は、お米にまつわる数字。米将軍として知られた八代将軍吉宗、夏も近づく八十八夜。八代目儀兵衛の創業は、2006年8月8日だ。
「米の消費量も減っているなか、お米屋の知恵を使って新しく販売できる方法はないか、お米の価値そのものを変える売り方はないか、と考えてたどり着いたのが『お米ギフト』でした。」
お米ギフトの特徴は、単一産地の米ではなく、橋本さん自ら吟味したお米をブレンドした商品が大半をしめることだ。
「京都らしい艶やかな装い、伝統のお米というだけではなく、人生の節目に利用し、大切な方々へ届ける “贈りもの”だからこそ、お祝いごと、お返しを演出するためのストーリーがコンセプトとなっています。」
公式通販サイトで人気の商品を紹介してもらおう。
「十二単(じゅうにひとえ)シリーズ 満開」は、5,000円(税別)で12種類のお米が2合ずつ、色とりどりの風呂敷に包まれている。
おむすび、和食、洋食、焼き飯、丼もの、お寿司、お粥、炊き込みご飯……といった具合に、用途に応じてお米を変えて、調理法にあうようにブレンドされている。
「良縁米シリーズ 永久(とわ)」は婚礼用ギフトで、同じく5,000円(税別)の人気商品。桐箱に入った3合ずつの袋は、男性らしいしっかりとしたお米「殿米」と、女性らしい柔らかなお米「姫米」だ。
商品コンセプトは「良縁のブレンド」だ。最初はそれぞれの米を味わい、最後に2つの種類をかけ合わせると、お互いの持ち味を引き出し合い、より味わい深く、絶妙な食感の「し合わせ米」に変身するという。
ブレンドって、奥が深い。コーヒーやウィスキー、香水などの世界にも似ている。
「異なるお米を混ぜることはネガティブにとらえられる業界ですが、ブレンドすることで、お米の特徴がより引き出せるんです。」
たしかに、これまで産地偽装のニュースもあった。
八代目儀兵衛では、産地を袋に印刷していない。年や時期によって中味を変えているため、手違いで誤ったブレンドが袋詰めされてしまう万が一のリスクを避けるからだ。
使用するお米は、Web上ですべてオープンにしている。こうした対策ができるのは、ネット通販ならではのメリット。
「お米は日常的にあるものだから、特に関心がない人も多いでしょう。スーパーでお米を買うときも、産地と品種しか手がかりがないですよね。でも、その情報だけでおいしいお米を判断できますか? と世の中に訴えたいんです。」
八代目儀兵衛のギフトチームは、現在20人ほど。彼らは「社員食堂」でほぼ毎日、昼食をともにする。同じ条件で炊いたお米を1日4種類ほど食べくらべるという訓練も兼ねているのだ。
すると、この仕事は「お米好き」が第一条件になるだろうか。
「そんなに食いしんぼうでなくても、お米が嫌いでなければOKですよ。僕自身もパンは好きですしね(笑)。」
「目指すのは、お米を食べる機会を少しでも楽しんでもらうこと。お米はそれぞれ味が違うんだと多くの人に認識してもらえればうれしいです。だから、自分たちの商品は『食育ギフト』だと思っています。」
老舗が手がける商品は、ともすると伝統や品質の良さをストレートに打ち出すだけの売り方も多い。でも、橋本さんの考えは違うようだ。
「僕らが吟味しているから、お米がおいしいのは当たり前だと思います。それより、もっと違うところに価値を見出したい。お米を食べることの幅を広げ、サプライズや珍しさ、面白さを考えられるか。そのために、どういった表現をするか。販売店舗を持たないので、Webでどう伝えるかがキーになります。」
Webスタッフには、プランナー的な要素も求められるのですね。
「むしろ、そちらのほうが大きいかもしれません。ミーティングもどんどんブレストでアイデアを膨らませていきます。」
「来てほしいのは『自分たちの商品を、世の中に売っていくことによろこびを見出せる人』です。僕らは決して、既存の商品をたたき売りするようなECサイトじゃありません。」
橋本さんは、最初から米屋をやろうと思っていたのだろうか。京都の老舗に生まれた長男だから「親がそういうふうに仕向けてきた節がある」とは振り返る。
社会人になって2年間、京都の通販会社で働いた。その間にも米販売を取り巻く環境も変わり、家業の売上が下がっていくのをもどかしく見ていたという。
その後、家業に戻っていろんな手は売ったものの、米離れの動きは止まらなかった。
自分たちが売っているお米がおいしいのは当然でも、買ってもらえるきっかけはなんだろう、と自問する日々。
それに加えて、30歳を過ぎたとき、橋本さんは座骨神経痛をわずらってしまう。
「お米屋は精米や配達など、重たいものを運ぶ仕事です。腰痛でなにも仕事をできなくなったら家業を継ぐこともできないわけで、焦りました。」
そのとき大学時代の先輩から「ネットでやったらどうや」と声をかけてもらった。
「大学時代の先輩に声をかけていただき、代々継がれてきた『お米屋』としての大切なミッションに気づいたんです。」
おいしいお米を届けるという仕事。それに「お米の価値観を変える」という新たなミッションを加えた橋本さん。そうして「お米ギフト」という業態が2006年に生まれた。橋本さんが33歳のときだ。
ただ、ネット通販としては後発の部類だった。
「ほとんどの人から『通販では1円でも安いところに人は流れるから、値段を安くするしかない』と言われました。でも、Webの力は、伝える力にあります。最良のものを届けるという自分の考えが間違っていなければ、そのまま伝わるんです。」
自分たちがいいと思うものを認めてくれる人は、京都以外にもいるはずだと考えていた。
3人で起業した会社は、創業9年を迎えたいま、正社員40人、パート・アルバイトのスタッフを入れると70人の組織に育った。
橋本さんの弟が料理長に就任し、八代目儀兵衛のブレンド米を実際に味わえる「米料亭」も京都・祇園と東京・銀座にオープンした。
「もっと情報を発信していきたいですが、いまのスピードでは間に合いません。海外展開も視野にいれて、クリエイティブチームの一員としてお手伝いしてもらう人を募集したいです。」
採用者が一緒に仕事をすることになるスタッフに会った。
創業当初から関わっている外部のクリエイティブディレクターが、徳島出身のオキタリュウイチさん。東京と京都を往復しつつ、商品開発やコンセプトメイキングを担当している38歳だ。
Webや商品で心がけるのは「京都の伝統感を出しつつ、心の躍動を喚起させるデザイン」。その「静と動のせめぎ合い」が難しい、と語る。
「さまざまな意味でイノベーティブな会社ですから、実験的なことに取り組みやすい環境だと思います。」
これからオキタさんが考えているのが、お米がテーマの1〜3分くらいの動画制作。目標は2,000本。
「お米に関するキーワードを検索すると、必ず八代目儀兵衛が出てくるようにしたいんですよね。」
そのため、動画撮影や編集をする人材を必要としている。
「チャレンジ精神が尊重される会社です。なにか思いついたら『それ、何時間でできる?』という具合に、熱が冷めないうち行動へ移す。京都の老舗らしいノンビリさはないですね。」
もう一人は、Webディレクターの伊藤裕也さん。静岡出身の28歳で2年前に入社、京都の伝統やコンテンツに興味をもって京都に移住してきた。お米の知識や経験はなかったという。
社内には農業関係、お米の仕入れ担当、お米職人、物流部署、ギフトコンシェルジュなど、『お米』に関するさまざまなプロがいる。そんな職場に、伊藤さんは「ベンチャースピリットがある会社」だという印象を抱いている。
「決まった目的を実現するために、Webというツールにまったく捉われることがないです。テレビとのメディア連携、リアルな農家さんとのつながり、アンテナショップである祇園と銀座の『米料亭』のおもてなしなど、手段を問わずに世の中にアプローチできます。」
仕事量はシーズンによるが、もっとも忙しいのは新米の話題が飛び交い、お米に注目が集まる秋。
「注文も増えるようになりますし、新しいこともどんどんやるので、秋は本当に“米騒動”って感じです(笑)」
「お米に関する世間の関心が高い時期に、新たなプロジェクトをリリースして、世の中をあっと驚かせたいんです。毎年、春夏ごろから秋に向けてコンテンツを考え出しています。全社的に協力もしあい、各自もいい意味で勝手に部署をまたいで動きまわってプロジェクトチームが生まれています。」
八代目儀兵衛は、海外からの認知度も上がりつつある。週1回のペースで、香港、シンガポール、ヨーロッパ、アメリカに配送があるという。現在、サイトの多言語化も検討している最中だ。
今年のミラノ万博では京都府のブースで出展。いずれは海外展開していく目標に近づいたところだ。
急成長するベンチャー。その軸となる商材は実体のないものではなく、脈々と続いてきた「お米」という食文化であるのがユニークです。京都や老舗という要素を活かしつつ、自由なアイデアを尊重する気風もありました。
それにも増して、同じ釜のおいしいご飯をお腹いっぱい食べ、もくもくと仕事に取り組める職場は素敵だな、と感じます。
(2014/4/30 神吉弘邦)