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お遍路を支える

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いまから1200年前、弘法大師空海が開いた四国八十八ヶ所の霊場。

そのすべてを巡礼する四国遍路は江戸時代に誕生しました。数百年が経ち、いまも多くの人々がお参りをしています。

四国巡拝センター株式会社は、四国八十八カ所巡りを専門に扱う日本でたったひとつの旅行企画会社。

歩き遍路を企画から集客、案内まで、自社で一貫して行なうことができる。

ここで、遍路の旅を支える企画営業職を募集します。

junpai-center01 企画営業職はコースを企画するだけでなく、添乗員として一緒にコースをまわることも。数年のキャリアを積めば、自身も先頭に立って巡礼者を案内する“先達”になれます。

お問い合わせを受けてから、無事お家に帰ってもらうところまで。全国から集まる人々の想いのこもった旅を支える。

どんな仕事なのか、ぜひ読んでみてください。

 
 
香川・高松駅でタクシーに乗り、瀬戸大橋通りをまっすぐ進む。船がいくつも浮かぶ湾が見えてきた。

橋の手前で左折すると、すぐに四国巡拝センターのオフィスに到着した。

junpai-center02 迎えてくれたのはセンター長の山上さん。

前職から八十八カ所の仕事に携わり、この道35年の大ベテランです。

junpai-center03 四国巡拝センターに問い合わせする人の多くは、60〜70代の方だという。

「年齢を重ねていくうちに悩みを払拭したいとか、想いをかたちにしたいとか。そこで何かしようと四国遍路を知って、弊社にお問い合わせいただくことが多いです。」

四国八十八ヶ所は知名度があるけれど、実際にはじめるにはどうしたらいいのか知っている人は少ない。

お客さまは行きたいという気持ちがあるものの、まず何を質問すればいいのかわからない状態だという。まずは四国八十八ヶ所を説明するところからはじまる。

「それから、歩きなのか車で行くのか、日程はどうするのか相談させていただいて。車の場合はグループ会社が大小さまざまなバス・タクシーを所有しているので、お客さまの人数に合わせてご提案させていただきます。」

Exif_JPEG_PICTURE お客さまの多くはご高齢のため、ほとんどの方は車で回ることを選択する。

コースを企画する際は、なるべくお客さまの要望に添うようにしているという。

「たとえば、ゆっくりでもいいから四国を観光しながら回りたいという方もいらっしゃれば美味しいうどん屋さんをコースに入れたり、足が悪いから車椅子を用意してくれないかってことで準備することもあります。」

「お寺から次のお寺へかかる時間は決まっています。まずは基本的なコースをつくるところからはじめて、慣れてくれば要望を取り入れたオリジナル性の高いコースを企画していく感じですね。」

八十八カ所の基礎知識を身につけるのは、そこまで長い時間がかからないという。それよりも苦労するのは、全国各地から四国へやってくるまでの交通手段を覚えること。

「たとえば、宮城にお住まいの方から八十八カ所に行きたいとお問い合わせをいただくと、ご自宅から集合場所までのさまざまな交通手段をご提案します。そこまでのコースをつくることで、はじめてプロになると思っています。」

junpai-center05 出発当日を迎えると、グループ会社に所属する先達の資格を持った専門ドライバーがお客さまをご案内する。

人数の多い団体客の場合、プランナーである山上さんが添乗員としてバスに同行することがあるという。

「一般的な旅行会社はプランを企画して販売するところで終わりますが、わたくしどもはお客さまと一緒にお寺を回って、最初から最後までお付き合いさせていただきます。」

それぞれのお寺のアナウンスから、本堂前での読経、さらには観光名所の案内まで。肩書きは企画営業職だけど、企画以外のさまざまな仕事を担うことになる。

junpai-center06 歩き遍路を担当する堀さんにも話をうかがう。

堀さんはこの会社に勤めて13年にもなるけれど「まだまだ覚えることが多いですね」と話す。

「お寺の伝説とか土地の言われとか、主要な部分についてはご案内できるんです。でも山上さんは、土地の名産品から通過する場所の歴史まで、話の幅が広いんですよね。そのあたりはまだまだわからないですね。」

junpai-center07 堀さんはこれまでずっと歩き遍路を担当してきた。最近はバスのお遍路にも携わっているという。

車と歩きではどんな違いがあるのだろう。

「歩きは定員20名ほどグループでひとつのツアーを組みます。貸し切りはほとんどないので、できあがっているツアーにご案内して、日程を合わせて参加いただく。お客さまのご要望を汲んでコースがオリジナルになることはあまりないです。」

また、歩きと車では別のルートを通るようになる。ご案内するところが変わるから、お寺を回る際の先達としてやることも全く変わってくる。

「バス遍路なら、車内で楽しく過ごしていただいたり、ついたお寺でガイドしたり、般若心経を御勤めします。歩きだと、みなさんの健康状態や危険箇所の周知に一番注意します。」

さらに、かかる日数が全く違う。

歩きのツアーは1泊2日~2泊3日程度で区切って巡るショートコースと、9泊10日~10泊11日程度で区切るロングコースがある。

ショートコースの場合、すべてのお寺を回りきるのに4年もかかるという。

junpai-center08 「見ず知らずのメンバーが集まって、今日から頑張りましょうと歩いていくんですけど、1番から88番まで1200kmもあるんです。はじめはみんなで『長いわ!』って言いながら、ひたすら歩いていくんですね。」

修業なのだから当然だけど、とてもつらそう。

「おっしゃる通り、しんどいです。でも、一歩一歩前に進んでいかなきゃいけない目標があるので、それに向かってただただ歩き、お寺をお参りする。疲れて、お宿に入るとばったり眠ってしまう。」

「そんな日々を繰り返していくうちに、抱えていた悩みがバカらしくなったなあ、なんて話す方もいらっしゃいます。何かひとつでもその方にとってプラスになることが見つかると嬉しいですね。」

そんなふうにつらい時間を共有していくうちに、だんだんとお客さまの結束力が高まっていくという。

「4年間同じメンバーなので、当然顔見知りになるんですよね。しんどい思いをするけど、みんながみんな自分のことだけになれない。歩くペースが遅いお客さんの荷物を、ほかのお客さんが持ってあげてフォローしたりだとか。チームとしてゴールに向かっていくようになります。」

「それでだんだんと終わりが近づいてくると、寂しいなって雰囲気が出てくるんです。『これだけ歩いてまだ5番か』って思っていたのが『もう88番か』って。最後を迎えると、達成感や寂しさ、いろんなものが混じり合う。人生変わったって言う方もいらっしゃるんです。そういった姿を見ると、やりがいを感じますね。」

堀さんは前職でホテルに勤めていた。この会社に転職後、はじめはお遍路が馴染みないものだったけれど、だんだんとお遍路が好きになっていったそう。

junpai-center09 オフィスで話をうかがったあと、山上さんと堀さんに先達の格好に着替えていただき、お寺を実際に案内してもらった。

向かうのは82番根香寺。

紅葉が映える季節は、八十八カ所で3本指に入る名所だという。

山の上にあり、道中の景色も楽しむことができる。

junpai-center10 窓の外をずっと眺めていると、堀さんがこんな話をしてくれた。

「歩き遍路って、ただ歩いているだけだとなんてことのない普通の道です。だけど、そこに先達の一声が入ると、見える風景が変わって、いまから1200年前に弘法太子空海が歩いた道になるんです。」

それは堀さんが入社間もないころ、ベテランの先達が率いるツアーに参加したときの体験。

「石原先達という方が山を登っていくときに、弘法大師和讃を歌われたんです。そしたら、何気なく見ていた景色が歌とリンクして、同じ風景を何百年も前から参拝者たちが見ているんだなと。いま歩いているのは、その人たちが踏み固めた道なんだなと感じることができたんです。」

単なる道であっても、先達の声掛けで見方が全く変わってくる。その旅がお客さまにとってよいものになるかどうか、ご案内する先達に委ねられていると言っても言い過ぎではないかもしれない。

根香寺に到着すると、山上さんがお寺の説明をしてくれた。

「こちら第82番、五色台にあります山号が青峰山、根香寺と申します。弘法大師空海はここのお山に来て五智如来を感じ取り、青峰・赤峰・白峰・黒峰・黄峰、五色台と名付けました。」

「弘法大師空海とその甥にあたる智証大師、このふたりが開いたお寺になります。甥の智証大師がご本堂の千手観音を刻んだ木の根っこが香っていたことから、根香寺と名付けられました。」

ほかにも、牛鬼の角がこのお寺に奉納されているという伝説話や、大師堂にまつられている弘法大師の手から縄が伸びているという話まで。

これだけ多くの情報を覚えるのはなかなか大変かもしれない。だけど、そういった話やお寺が好きな人なら苦にならずにどんどん覚えていけると思う。

junpai-center11 説明を終えると、さっそく中へ。

落ち着いた静寂な境内。先達の赤い杖の「カシャン、カシャン」という音がリズムよく響く。

手と口を清めたあと、本堂にお参りする。

ふたりは「合唱礼拝!」のかけ声とともに、音木を鳴らしながらお経を唱えはじめた。

junpai-center12 お寺でお経を唱える。そんな神聖な仕事は聖職者だけのものだと思っていたけれど、ここでは企画営業職がそれを担う。

仕事でお寺の荘厳な雰囲気を味わえるのも、この会社の特徴だと思う。

ふたりはどんな人に来てほしいのだろう。

まずは山上さん。

「好奇心旺盛な人。この通り、奥が深いですから。ひとつ教わったら、もうすこし調べようかなと。お寺が好きな人のほうがいいでしょうね。」

続けて、堀さん。

「覚えようとするとなんぼでも覚えることがあるんです。ひとつの寺でも言われがたくさんがあって、その道中のいろんなことも覚えるし、お客さん一人ひとりの情報も覚える。やろうと思えばいろんなサービスができると思うんです。なので、積極的な方がいらっしゃればいいなと思います。」

それと、ふたりそろって体力が必要と話していた。

今回募集する人は、山上さんのようにバスやタクシーのお遍路の企画がメインになるけれど、経験を重ねれば歩きお遍路も携わるようになる。

ゆくゆくはこの会社の将来を担うような、幹部候補を求めているという。

「ほかにないツアー会社だと思います。1番から88番までのお寺をお参りして、そのなかで感動が生まれたり、みなさんが結束して最後を迎えられたり。そのお手伝いをさせていただくのが私どもの仕事かなと思いますので、そういうのに興味を持った方にぜひ来ていただきたいですね。」

年数を重ねれば重ねるほど、深まっていく仕事。働く人自身の味わいも増していく仕事だと思います。

(2015/4/16 森田曜光)