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お正月、七五三、卒業式や結婚式。そんな大切な時間を華やかに飾ってくれる着物。もともと興味があったり好きな人はたくさんいると思う。
でも、一式揃えるのにそれなりのお金が必要だったり、そもそもどこでどんなふうに着ればいいのか分からなかったり。いろんなハードルを感じて、着物が遠い存在になっている人もいるかもしれません。
もっと多くの着物を着たいと思う人に、着物を自由に楽しんでもらいたい。
きもののやまとでは「着たい」に応える人を募集します。
いまでこそ着物にはフォーマルなイメージがあるけれど、昔の日本には日常的に着物を身につける暮らしがありました。
何気ない、日常の選択肢としての着物。
着物業界を牽引してきたやまとは、そんな自由な着物の世界を広げようとしています。
今回募集するのは、やまとが展開するお店「なでしこ」の販売スタッフです。
着付け方や着物の知識がなくても大丈夫。なでしこで働くスタッフの多くは、同じように未経験だったようです。
どんな仕事なのか、東京にある有楽町マルイ店を訪ねました。
レディースのお店がそろう5階フロア。その一角に、なでしこ有楽町マルイ店があります。
スタンダードなものからレースを使った着物、それにかわいらしい雑貨など、着物をまったく知らない人でも手に取りやすそうな商品が並んでいる。
店内に入ると、はじめに迎えてくれたのはなでしこ部長の本山さん。
18年やまとに勤め、これまでなでしこの現場をずっと見てきた方です。
そんな本山さんに、なでしこはどんなお店なのか聞いてみると、まずは着物の歴史について話してくれた。
「昔の日本では、着物は普段から着るものでした。時代とともにだんだんと洋装化が進んでフォーマルなものになって。その結果、着物は“着るもの”から“所有するもの”に変わって、普段から着る人が少なくなったんです。」
「でも、和装に関して調査されたアンケートでは、『女性の9割が着物を着たいと思っている』という結果が出ているんです。じゃあなぜみんな着ないかというと、ひとりで着ることができなかったり、値段が高かったり、いろんなマイナスなイメージがあるんですね。」
着物を着たいと思う多くの人たちに、もっと気軽に着物を楽しんでほしい。
お手頃な値段の着物やカジュアルな雑貨をそろえることで、若い女性でも立ち寄りやすく、着物をもっと身近に感じられるお店として、なでしこは2004年にスタートした。
「当時はそういったモデルではじまりましたけど、10年以上経ってくるともっと進化していかないといけない。うちの会社では“アパレル化”という言葉を使っていまして。」
アパレル化?
「どうしても着物の商売って、店舗スタッフの販売力に頼る比率が多くて。アパレルさんのように、入店しやすい店づくりや手に取りやすい商品といったレベルにはまだ達していないんですね。」
「そこをこれからはモデルチェンジしていかなきゃいけないという、そんな過渡期に入ったところなんです。」
そんななか、やまとが新たに打ち出したもののひとつが「DOUBLE MAISON」というブランド。
洋服のスタイリストがクリエイティブディレクターをつとめ、着物や洋服という概念にとらわれず、着たいと思えるものを提案している。
「着物というのは、産地やつくりの違いはありますけど、実はブランドと呼べるものは少ない。DOUBLE MAISONはまさにブランド着物なんです。」
DOUBLE MAISONはネットショップでの扱いがほとんどだけれど、一部なでしこの店内でも置かれている。
さっき見たレースの着物は、DOUBLE MAISONの商品のひとつ。
「世の中では料理でも洋服でもクロスコーデしているのに、着物にはそういうことが少ないんです。レースやシルクサテンは着物のなかでタブーな素材でしたけど、使うことで着物の可能性がもっと広がる。これまで踏み入れなかったところに対してどんどん投げかけていったんです。」
DOUBLE MAISONに続き、今年3月にはメンズ着物テーラー「Y.&SONS」をオープンした。
ほとんど存在しない男性の着物市場を、これから広げていくお店として期待されているという。
なでしこは、今年からDOUBLE MAISONやY.&SONSの事業部と統合し、新たな着物の可能性を模索していくことになるという。
もしかしたらなでしこはリブランディングによって、DOUBLE MAISONやY.&SONSに劣らない斬新なお店に変わっていくかもしれないと、本山さんは話す。
「そんなことも楽しみにしてもらえたらと思います。入社する際、着物に関しての知識を気にされる方が多いんですけど、まったく必要ないですよ。一番は明るい人だといいですね。」
「値段は安いものではないですし、日用品を買うのとは違うので、10人のお客さまに対応しても9人の方は『じゃあまた来ます』ってなるんです。9のことにめげずに、1のことを喜べる。そんなマインドを持てることが大事かなと思います。」
次に話しをうかがったのは、入社10年目の延山さん。
新卒で入社し、いまはマルイ有楽町店の店長を務めている方です。
さきほど対応していたお客さまとは、なにやら話しが盛り上がっている様子だった。どんな話をしていたのだろう。
「ご趣味についてですね。基本、お客さまとは着物以外のお話をしています。会話のなかで自分との共通点やその方のこだわりを見つけることが楽しいし、それによってお客さまから信頼をいただけるようになると思うんです。」
そんな話は、着物を提案するときのヒントとして聞くこともあるという。
「たとえば、海に潜るのが趣味だという方だったら、『〇〇さんは海がお好きだって仰っていたから、海色の着物がお似合いだと思うんです』って。見た目の似合う似合わないだけじゃなくて、どうしてその着物がその方に合うのか、そこまでしっかり提案しています。」
ほかにも単に着たときの格好を見せるよりも、着物を着てどんな場所へ出掛けるか。そんな話をすると、聞いているお客さまも一緒に想像して、着物の楽しさを共感してくれる。
お客さまとはたっぷり時間かけて話をして、十分に納得できてから購入いただく。次に来店されるときは担当者の名前で訪ねる方が多いそうだ。
「自分の仕事がお客さまに認めてもらえる瞬間なので、すごく嬉しいですね。毎日そういうことが起こるわけではないけど、そんなふうにやりがいを感じられる仕事だと思います。」
実は、はじめは着物に興味がなかったという延山さん。この仕事で着物にハマり、いまでは80着以上もの着物を持っているそうだ。
「大島紬とか結城紬とか、やっぱり職人さんが技術を使って一つひとつ織っているものは、着心地がいいし、もののよさに感銘を受けて買いたくなるんです。ちょっと誤解を招くかもしれない量ですけど(笑)。」
仕事終わりに職場の仲間と一緒にレストランへ食事に行ったり、休日にも着物でお出掛けしたり。ここで働く人たちも、そんなふうに着物を楽しんでいるという。
「着物が本当に好きだという方にはすごくいい職場だと思います。人とお話しするのが好きな方だと、もっといいですね。」
最後にもうひとりの方に話をうかがいます。
もともと着物が好きで、ホテルから転職したという、チーフの滝沢さん。
アジサイのような模様の素敵な着物は、そのめずらしさについ買ったものだとか。
「これは山形県の紅花紬という、泥で染めて柔らかくしたもので。アジサイとか宇宙とか、水彩画とか。いろんなふうに見ていていただける着物なんです。」
やまとで働いていた高校時代のお友達の話をきっかけに、入社したという。
はじめはどうでしたか?
「販売スタッフにはノルマはないけど、もちろん目標はあって。まえは買ってもらわなきゃという意識で接客していたんですけど、いまは買わせてはいけないなって。」
買わせてはいけない。どういうことでしょう?
「商品のことも価格のことも、お客さまがわからないことの多い業種だと思うんです。だから、言い方を悪くすれば買わせることができてしまう。お客さまを守れるのは、現場に立つ担当スタッフだと思うんです。」
お客さまの層は店によってさまざま。マルイ有楽町店は30〜40代の着物を知っているお客さまが多いけれど、なかにはまったくはじめての人もいる。
どんな人に対しても正直に向き合い、分かりやすく話をすることが大切だという。
「着物の種類から仕立て方まで、覚えることは多くてわたしは大変でした。でも、お客さまの前では知ったかぶりはしないで、分からないものは分からないと正直にお話しして。じゃあこれは何なのか、上司に聞いて、一緒に勉強しましょうと。そんな向き合い方でいいと思うんです。」
スタッフを20〜30代でそろえることで、実体験を通じてお客さま目線で話しができるようにしている。
たとえ人に話すことに苦手意識をもっていても、着物が好きな人なら自信を持って伝えることができると思う。
これからなでしこはDOUBLE MAISONやY.&SONSと一緒になり、新しい動きがはじまるかもしれない。
滝沢さんはこの先どんなことを考えているのだろう。
「どんな未来があるのかまだ分からないですけど、販売員で終わりたくないと思っています。チャンスがあれば販売以外で着物業界に関わりたいし、いろんなことをやってみたい。この会社でそれができるのなら、すごく楽しそうだなって思っています。」
今回は契約社員での募集だけど、ゆくゆくは正社員になり店長になることができると、本山さんは話していました。実際にそんなふうにキャリアを積んだ方が何人もいるそうです。
これからのなでしこの変化も楽しみだと思う。
着物が好きで、この仕事に興味を持ってくれた人はぜひ応募してみてください。
(2015/4/23 森田曜光)