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これからはジェネレーター

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「まだ未来の言葉なのですが、『ジェネレーター』という役割をつくりたいと思っているんです。」

「ファシリテーターは、時間以内に有意義な議論をまとめますよね。それに対してジェネレーターは、自分も議論に入るんです。発電機という意味の通り、場を盛り上げて、そこから出てくるアイデアをもとに自分もアイデアを出す。ゼロから1をつくる人ですね。今回募集する仕事は、そういうジェネレーターになるためのスキルが身につくと思います。」

たとえば、地熱や風力発電は、もともとそこにある自然エネルギーをみんなが使えるかたちに変えて届けている。『ジェネレーター』は、そんなふうに、地域の声や思いをかたちにしていく人のことかもしれません。

※ジェネレーター:慶應義塾大学SFC井庭崇准教授が提唱する新しい役割

GFL 2 日本全国の地域でそんな役割を担っているのが、UDS。建物そのものからイベントやワークショップなどの場づくりまで、あらゆる「コミュニティの生まれる場所」をつくっている会社です。

コーポラティブハウスの草分け的存在でもあり、「キッザニア東京」や「CLASKA」なども手掛けてきました。

その実績から、最近は、鹿児島の薩摩川内市や、京都府、東京の練馬区など、行政の依頼でまちづくりに関わる機会も増えてきているそうです。

今夏には、神奈川県の海老名市に、「RICOH Future House」というUDSが企画・設計・運営に関わる施設がオープンする予定。

これは、海老名に拠点を置くRICOHが、まちと自分たちの持っている研究や開発のリソースを組み合わせて長く続いていくものをつくりたい、という思いから建てた場所。

この施設の運営をUDSが共同で担っていきます。

141105_RFH_1m印刷用 1階は、まちと建物をつなぐカフェ。2階は、テーマに基づいたイベントを毎日開催する「フューチャースタジオ」。

3階は、子ども向けに科学の楽しさを伝え「好き」が見つかるアフタースクールと「好き」を探求できるサイエンスラボ。そして4階は、働く人が集まるサービスオフィス。

一見、さまざまなテナントが入る複合商業施設のようにも見えるのだけど、それぞれのフロアには、訪れた人が未来を語りたくなるようなしくみや、コミュニティを生むしかけがあります。

今回、求められている役割は、施設のなかでもっとも”発信”の要素が強い2階の「フューチャースタジオ」で、毎日開催されるイベントを企画・運営していくイベントオーガナイザー。

どんな仕事なのか、UDSが手がけた東銀座の複合ワークスペース「LEAGUE」に、話を聞きにいきました。

「ゆくゆく、自分の地元に帰ってなにか場づくりをしたいけど、いまはスキルがないという人や、海老名にゆかりがある人がいいかなぁ。たとえ経験やノウハウが少なくても、海老名のことを好きで、こうしたい!という思いを持った人。」

そう話すのは、UDS代表の中川さん。

SONY DSC 全国を舞台にさまざまなコミュニティを生む仕事をすると同時に、一緒に働く「人」を通して会社の全体を見る立場でもあるそうだ。

海老名のプロジェクトでは、どんなものをつくるか、というところから、できた建物の運営まで、すべてに関わっている。

「海老名に来たことはありますか?」

話は、中川さんのこんな質問からはじまった。

「海老名は、新宿から電車で45分、駅の乗降客は1日25万人以上のベッドタウン。都心でも田舎でもない、いわゆる郊外のまちなんですね。東口には大きな商業施設があって、年間2000万人の買い物客で賑わいます。一方、そのすぐそばに田園風景が広がっていたりもして。」

「実は、僕が最初に行ったとき、駅の西口は田んぼだったんです。でも、2009年に法律が改正されて商業施設の誘致が決まって、いま西口にも新たなまちがつくられようとしている、という段階なんですね。」

「これから先、どんどん人口が減っていく世の中で、こんなに大きな開発がされようとしている郊外の地域って、たぶん海老名だけなんじゃないかな。あんまりみなさん注目していないのですが、まちづくり的には、日本でいちばんホットスポットだと思いますよ。」

「RICOH Future House」は、そんな劇的に変わろうとしている海老名駅の西口エリアにオープンしようとしている。

「地域とともに長く続くものがつくりたい。それがRICOHさんのブレない思いなんです。だから、一過性の流行りものをつくってしまっては、目的が果たせない。じゃあどんなものをつくろうか、というところから考えはじめました。」

中川さんが最初にイメージしたのは、スウェーデン発祥の「フューチャーセンター」だった。

海老名の人が、自分たちの住む地域について主体的に問題解決のディスカッションをしていけるような「未来の公民館」をつくりたいと思った。

けれど、いきなりそこにたどりつくのは難しい。

まずいちばん最初に必要なステップは、海老名のことを真剣に考える人を増やすこと。

「地方だと、産地特有のものがあったり、住む人に誇りがあったりと、アイデンティティーがはっきりしていて分かりやすいのですが、郊外は、ちょっと難しいんですね。住んでいる人は、生活の場として海老名を選んでいるのであって、海老名にとくべつな愛着を持っている人は、まだ少ないように感じます。」

でも、もしも「東京に行けばなんでもある」ではなく、「東京に行かなくてもここには素敵な場所がたくさんある」という発想に変わっていけば、海老名のことを好きな人はもっと増えていくのではないか。

中川さんはそう思っている。

農家㈪ 「じつは僕、生まれと育ちが東京の小平市だったんですよ。海老名と同じように、ニュータウンで土着の人がいない環境でした。だからこそ、新しい人たちで町内会をつくって、庭でラジオ体操をやったりとか、みんな仲が良くて地域のつながりが強かったんです。」

「自然もたくさんあったので、田んぼに手をつっこんでザリガニを捕ったりとか、クヌギの木にいるクワガタを捕ったり。だから、いままで海老名には何の縁もゆかりもなかったのですが、共感できるところが多いんです。」

何度も海老名を訪ねるうちに、いろいろな新しい出会いもあった。

「スタッフのひとりが、地元のお母さんに『ご飯食べにおいでよ』って誘われて行ったら、いただいたご飯がすごく美味しかったらしいんです。庭で採れた柿もすごく甘かったって。いま、カフェで、そのお母さんの味を紹介したらいいかもねって話になっていて。」

ほかにも、「海老名の水田の歴史を絶やしちゃいかん」と熱く語る農家の方や、小学生向けにお米の収穫体験をしている酒蔵の若旦那さんなど、海老名のことを熱く語る人たちとたくさん知り合った。

「地域ってやっぱり、すべて人の問題に集約されるんですよね。だから、人と話すことがいちばん大事だと思います。」

毎日イベントをやるって大変そうだな、と思っていたのだけれど、話を聞いているうちに、「人」というリソースがあればテーマは尽きないような気がしてきた。

1941409_443274022486383_1340641739023531468_o 実際に、イベントオーガナイザーはどんな仕事をすることになるんだろう。

「建物の4つのフロアを見ていくと、1階のカフェ、3階のアフタースクール、4階のシェアオフィスは、人が来る、という受信の仕組みなんですよ。 そこで、発信施設として、2階のフューチャースタジオでは毎日何かイベントをしよう、ということになりました。」

拠点となる2階のフロアは、パーテーションで自由自在に区切ることができ、200人規模のセミナーから料理教室まで、あらゆるイベントに対応できる。

ここで毎日、イベントを企画から運営まですべてオーガナイズしていくのが、今回求められている役割。

「イベントのテーマはぜんぶで7つ。子育てと教育、食と農、環境、地域ビジネス、コミュニケーション、カメラ、そしてFABラボのようなものづくり体験。ただ著名な人を呼ぶのでは、僕たちがやっている意味がないんですよね。やっぱり、『海老名ならでは』のものが生まれていくようなものをつくりたいんです。」

毎日イベントといっても、話し合いや持ち込み企画もあるので、すべてを自分で考えないといけないわけではない。

どちらかというと、イベントを具体的にどう実現させるか、を考えるのが仕事になる。

みんなで考えたイベントの内容をもとに、人のアサイン、スケジュール、連絡調整、集客などあらゆることを考えていく。

「どういう空間にするのか。何を提供するのか。どんなふうに声をかければ人が集まるのか。どうすれば来てくれた人のモチベーションが上がるのか。人を集める企画って、ほんとすべてが詰まっていると思うんです。クリエイティブに考えないといけないし、すごく自分が出るものだと思います。」

10847268_449011871912598_2497353073862926904_o なんだか特別なスキルが必要なように感じるかもしれないけれど、べつに難しく考えることはないそうだ。

まずは、海老名に興味を持ち、知りたいと思うところから。たくさん人と話してみて、そこから「じゃあどうするか?」と考える。

そんなふうに自然とアイデアを出していくことができれば、巻き込める人はどんどん増えてくると思う。

「いま、海老名のプロジェクトに関わるスタッフは15人いるのですが、やっぱり、海老名が好きって人が多いですね。設計担当も実は海老名高校出身だし、アフタースクールの運営をする人は、海老名在住なんです。きのう採用したカフェの料理長は海老名出身ではないけど、場づくりが好きな人で、食育とか料理教室とかやりたいよねって盛り上がっています。」

今回募集する人も、下のカフェや上のサイエンスラボとゆるやかにつながって、一緒になにかすることもできそうですね。

「1階のカフェも、バーベキューができたり展示ができたりDJブースがあったりと、ただお茶するだけではなく、長居したくなるような場所にしたいです。3階のサイエンスラボは、子どもの『なぜ?』という好奇心を育む先端技術の入口。そんな場所にしていくつもりです。」

井庭研CoCooking 一過性のものではなく、これからもずっとそこにあるもの。そんな施設のあり方を考えたい。

ゆくゆくはここから、地域のお母さん同士が自分たちのコミュニティをつくったり、一緒に起業したりするビジネスマンが現れたりするのかもしれない。

そんな未来の起点をつくる場所になっていく。

そこに立ち会って、一緒にアイデアを生み出して、”発電”していけるような人を求めています。

きっと、これからまちづくりで生きていきたいと思う人にとっては、とてもいい環境です。

(2015/5/21 笠原名々子)