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ものづくりの輪

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「街を歩いていて、自分がつくったアクセサリーを身につけている人を見かけると、嬉しくなります。それって、お客さんが喜びを返してくれているんですよね。つくる人がいて、売る人がいて、お客さんがいて。みんながつながってものごとが進んでいる。だから、仕事って輪だと思うんです」

届けた喜びが、自分に返ってくる。一方通行ではなく輪になっている仕事。そんな「仕事の輪」をつなぎ、つくっていく人を募集します。

SONY DSC 10年前に小さなコスチュームジュエリーのオンラインショップからはじまった、ジュエリーやウェアのオリジナルブランド「petite robe noire(プティローブノアー)」の、営業・営業事務とMD・ディストリビューター、販売、経理を募集します。


ブランドの名前は、「黒のシンプルなドレス」という意味。そんなドレスに似合うようなアクセサリーを紹介したいというコンセプトで、さまざまなアイテムを発表している。

職人さんと直接やりとりをしながら、ときにはアンティークのデッドストックの素材を使いながらつくる、味とストーリーのある商品。

そう聞くと手仕事の少量生産をイメージしてしまうかもしれないけれど、「petite robe noire」の取引先は、アパレルブランドやセレクトショップを含め、全国100以上ある。
製作に関わる職人さんの生活がじゅうぶん成立するしくみを、これからもしっかりつくっていくことを目指している。

人と人がつながる”あたたかみ”と、大きな仕組みをつくるための現実的な部分。

そのバランスを考え続けている会社だと思う。そして、一緒にそれを考えていく人が、いま求められている。

IMG_4712 「petite robe noire」を運営する株式会社P.R.N.Japonを訪ねるため、恵比寿駅に降り立った。
新緑がまぶしく、風が心地よい日。賑やかな通りを歩くと、オフィスの入るビルが見えてくる。

表札のかかるドアのベルを押すと、白く透けるカーテンとアンティーク調の床や家具が心地よい、落ち着いた雰囲気の部屋に通される。

いただいたお茶を飲みながら待っていると、代表兼デザイナーの阿部さんがやってきた。

こんにちは、と現れた阿部さん。話してみると、選ぶ言葉はとても柔らかいのだけれど、話にすっと一本筋が通っている。

デザイナーでもあり経営者でもある。その両軸を常に持っているからなのかもしれない。

SONY DSC 身につけている大ぶりなアクセサリーは涼しく光り、 窓から差し込む光と反応しあって美しい。

これらは「petite robe noire」の商品で、すべて阿部さんがデザインしたものだそう。
「つくるときは、素材を並べて、ずっと見ていたりします。何日か見ていると、ぱっと、素材と素材がお話をはじめるような瞬間があって。それって、イメージがあるから対話できるんですよね。これとこれを組み合わせて、こうしようって。そんなふうにつくっています」

阿部さんのデザインしたアクセサリーは、大胆かつ素材を生かしたシンプルさがある。

流行り廃りのないデザインだから、親子でファンというお客さんも多いそうだ。

「よく、競合を聞かれるけれど、競合はないんです。似たような素材や形の商品を出すお店も、最近は増えてきているのですが」

わたしたちはわたしたち、というように、まっすぐ話す阿部さん。

SONY DSC 10年前、まだオンラインショップが一般的ではなかった時代に、阿部さんは、ひとりでオンラインブティックをはじめたのだそうだ。

海外でファッションを学んでいたときに、たびたび訪ねた蚤の市。そこで惹かれた古いアクセサリーの魅力を伝えたいと思い、海外を旅しながら蚤の市を回って、そこで買い付けたものを売りはじめた。

「インターネットって、顔が見えない。まだまだ未熟なメディアだと思うんです。でも、そのぶん発展性があると思っていて。わたしは、”あたたかみ”のあるウェブをやりたいと思ったんです。人と人のつながり。その可能性を探りたいなって」

手探りではじめたオンラインブティックは、予想以上に注文が増えて忙しくなった。

商品を実際に見たい、という声を聞いて展示会を開けばたくさんの人が来てくれた。要望に応えるかたちで、マンションの一室にお店も開くことになった。

そんなとき、思っても見なかった依頼がくる。

「阿部さん、こんなふうにものを選ぶような感覚で、新しいアクセサリーをつくってくれませんか?そんな話をいただいたんです」

「でも、最初は断ったんです。古いものだけで十分じゃないかな。ものに溢れた世の中で、さらに新しいものをつくるのってどうなんだろう、と思って」

「ただ、職人さんを紹介してもらって実際にものづくりの現場を見たときに、なるほど、と思ったんです。わたしのなかで、理詰めが完結する部分があって」

そこで阿部さんが見たのは、昔ながらの方法で、手間暇かけたものづくり。

持ち主が使い道に困っていた、50年前に製造されたコットンパール。100年前にオーストラリアでつくられて、倉庫に眠っていたスワロフスキー。

そんなデッドストックに出会い、それをつくる職人さんに出会い、自分がそのものづくりに関わる意味が見えてきた。

IMG_0638 「ちょうど10年前は、大量生産の安くて手間のかからないものがたくさん流通していた時代でした。そんななかで、こういう美しいものづくりが絶える必要もないんじゃないかな、と思ったんです」

そして、捨てるはずだった素材を生まれ変わらせたコスチュームジュエリーから、阿部さんのブランドはスタートすることになった。

雑誌で紹介されたり、有名人の方が身につけてくれたりと、どんどんブランドは広がっていき、最初は阿部さんひとりだった会社も大きくなってきた。いまは26名のスタッフがいる。

IMG_3620 「少量生産ではなく、ちゃんと工場を回して量産して、関わる人たちが食べていけるように考えるところを目指しています。毎シーズンコレクションを発表していますし、一筋縄にゆかない複雑なことも多く、課題もたくさんあります。情熱がないと継続が難しい仕事です」

「でも、試行錯誤して物が出来上がった瞬間のよろこびや、その物から生まれるお客様とのうれしいつながり、素晴らしい輪の広がりもまた、この仕事だから得られる気持ちです」

なんでも簡略化せず、一般論だけでは進めないこと。どうやって人のつながりを大切にしながら会社として成長していけるか、阿部さんは考え続けている。

そんな阿部さんを支えているのが、ここで働いて7年になる、営業の橋本さん。

SONY DSC 阿部さんが描く夢や理想をどう実現するか。売上というリアルな数字とともに向き合いながら考えていく。

営業ってそんな仕事なのかな、と想像するのだけど、実際はどうなのだろう?

橋本さんに話を聞いてみた。

「そうですね。売り上げを達成することも嬉しいけれど、わたしは、それに付随する+α、売り上げを達成するプロセスの中でいろいろな人と関わることのほうが嬉しいかもしれません。営業の喜びって、対”人”的なところなのかな、と思いますね」

橋本さんは、売り上げを達成するのは当たり前、なんてさらりと言ってしまうので、実はかなり仕事のできる方なのだと思う。

けれど、大事にしている部分は、阿部さんと同じ「人のつながり」という部分なのだろうな、ということが伝わってくる。

そんな橋本さんに、ここで働くことになった経緯を聞いてみた。

「もともと、つくることに興味があって、パタンナーの学校に通っていたんです。でも、向いていないと気づいて。今あるもので素敵なものがたくさんあるのだから、わたしが新しくつくる必要はないと思ったんです。だからものをつくれる人をサポートする仕事がしたいなって」

IMG_0680 そしてアパレル業界に就職した橋本さん。

最初に入った会社は規模が大きく、なぜそれをつくって、どんなふうに人の手に渡っていくのか、というものの流れが見えず、もやもやしてしまったそうだ。

「もっと人の顔が見えるところで、デザイナーの声を直接聞きながら、それを代弁する仕事がしたいと思いました」

そんなとき、もともと知り合いだった阿部さんに誘われ、会社を手伝いはじめる。

「実際に働いてみると、商品を扱ってもらう取引先はもちろん、最終的に商品を手に取るお客さんと接する機会もあるし、職人さんの顔も見えるし、ちゃんとつながっていると感じながら仕事ができる環境でした」

「やりたいと思っていた、ものをつくる人をサポートする、というのができているなと感じます。そんなところが、ここまで仕事を続けてこれた理由なのかな」

実際には日々どんな仕事をしているんですか?

「営業は、複数人のチームで動いています。取引形態で担当を分けていて、わたしは、立ち上げ当初からお世話になっているお取引先や全国展開のセレクトショップを担当しています。40ほどの取引先があり、その取引先に、気持ちを託したすべての商品を適切に効率よく、紹介して販売していただけるように考えるのが仕事です」

SONY DSC 「けっこう、自由にさせてくれるんですよ。そのかわり、責任もありますけど。でも、試して失敗してしまっても、また任せてくれる。」

「だから、自分で考えてなにかやるのが好きで、失敗することを恐れない人。失敗しても、次はどうしようと考えられるポジティブな人。そんな人なら楽しく働けると思います」

橋本さんに話を聞いたあと、MDの伊藤さんにも話を聞いた。

「本来、MDの仕事って、売り上げ、在庫、仕入れなどの数値を管理して、それをもとに販売計画を立てることなんですね。でも、そこだけに捉われず柔軟性のあるチームをつくっていきたいと思っています」

MDは、デザインをする阿部さんと営業の橋本さんの橋渡しをする、いわば真ん中の「心臓」のような仕事だと、伊藤さんは思っている。

あまりデザイン寄りになっても営業寄りになってもだめ。そのバランスが難しい。

「だからこそ、みんなでデザイナーの気持ちやお客様の声を共有するために、スタッフミーティングとか、ディスカッションとか、そういう機会を大切にして、スタッフみんなの気持ちが一つになるように心がけています」

「それから、ここは小さな所帯なので、展示会やイベントもスタッフ総出でやるからお客様と接する機会もある。プレスやセールスの仕事にも関われる。そんなふうに仕事の幅を広げながら、バランスの取り方を見つけていくことも、できると思います」

IMG_3705 歯車のひとつではなく、「自分も会社をつくっていく」という意識を持ちやすいんじゃないかな、と伊藤さん。

ここからここまで、という決められた仕事だけをしたい人には向かないかもしれない。けれど、どうやって理想と現実を兼ね備えたいいしくみをつくれるか、という大きな部分を考えていきたい人には、とてもいい環境だと思う。

最後に、代表兼デザイナーの阿部さんの言葉を紹介します。

「いま会社は女性が多いですが、男女問わず、この会社の活動に興味を持ち、仕事をすることに情熱を持てる方に来て欲しいと思います。新しいチャレンジを盛り上げて行こうと前向きに進める人。人を思いやることができ、その上でしっかり仕事の話し合いが出来る人。お客様から職人さんまでつながる輪を一緒につくっていけるような方を、お待ちしています」

(2015/8/20 笠原名々子)