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日本文化を愉しむ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

石畳の風情、花街の香り、いくつもの小さな路地。

夏目漱石や泉鏡花などの小説にも登場し、文学者たちからも愛されたまち、神楽坂。

夕闇が濃くなりはじめ、軒先の看板が灯りだした頃、神楽坂を訪れました。

駅を降りて、早稲田通りを進み、大久保通りへと歩を進める。

日本の古くからの街並も残りながら、ダイニングバーやフレンチレストランなどの新しい文化もうまく混ざっている。

そんなお店を横目に進んでいくと、交差点の一角にみえてきたのが、日本料理屋「ささ木」

sasaki - 4 半地下にあるお店に入るために数段の階段を下り、扉をあける。ふわっと柔らかい出汁の香りが鼻に広がる。

「いらっしゃい。」と人懐っこい笑顔で向かえてくれたのは、「神楽坂ささ木」の料理長である佐々木さん。

D7A_5134 今回募集するのは、このお店のホールスタッフ。

と言いつつも、いまは2人で切り盛りしている。小さなお店だからこそ、きちっと役割をわけるというよりは、スタッフ同士、連携しながらお客さんをもてなしている。だからホールスタッフというより、お店とお客さまを接客や配膳の面からつなぐ、女将さんや仲居さんのような役割と言ったほうがいいかもしれない。

小さなことに気づける人、お客さまがくつろいで愉しんでいる姿に喜びを感じる人にきて欲しい、そんな場所。

そして、飲食店というと就業時間が長いイメージがあるかもしれないけれど、「無理なく長くここで働いてほしい」という店主の佐々木さんの考えから、勤務時間もその人に合わせて調整したり、働きやすい環境を柔軟につくっていきたいそうだ。

時間を大切に働きたい方、一人ひとりのお客さまに丁寧に接客をしたい人にもおすすめしたいです。

“本当に美味しいものを贅沢に”をモットーに旬の食材を使い、日本料理をつくっている。店内は、カウンターと個室がメインの落ち着きのある雰囲気。

お店は2014年9月上旬にリニューアルオープンをしました。


まずは、どんな人がこのお店をやっているのか知ってほしい。

お店を切り盛りしているのは、店主の佐々木さんと、料理人の阿部さんの2人。

日本料理屋というと、料理長がいて、修行にきている料理人がいる。上下関係がはっきりあるイメージがあったけれど、2人で協力しながらお店づくりをしているそうだ。

D7A_5195 思わずそれを伝えると、佐々木さんがこう話してくれました。

「料理人の感覚の、『うちの若い衆が』とか、そういう感覚はないんです。みんな適材適所で、それぞれ活躍して、それをお客様にどう伝えていくかっていう方が大切ですよね。」

お店の雰囲気にもそれは現れていると思う。料理も接客も本物だけれど、気張った雰囲気はない。この居心地のよさは佐々木さんのこういう考えから生まれているんだろうな。

料理に興味をもったきっかけはなんだったのでしょうか。聞けばお父さんも神楽坂にお店を構えているそう。

「親父の背中も見ているし、自然と、食べたいものを自分でつくりはじめたことがきっかけでしたね。」

そして、中学を卒業と同時に専門学校へ通い、卒業後に料理人として働きはじめた。

D7A_5292 新橋や京都の料亭で、休みも、寝るところもほとんどない生活を続け、再び東京へ。そして、お世話になった親方の紹介で、赤坂の料亭で働きだした。

そこで出会ったのが、ともに働いている阿部さん。

年齢が近いおかげもあってか、飲みながら、『こういう店がやりたい』『ああいう店がやりたい』など、板前になってお店を出す夢を語り合ったそうだ。

そこからしばらくは、お互い別々のお店で働き、佐々木さんが25歳のときに「神楽坂ささ木」をはじめた。

お店にはどんな特徴があるんでしょうか。

「日本料理屋というとコースのみのお店も多いんです。うちはコースはもちろんですが、メニューから一品ずつ選べるアラカルトも用意しています。コース料理だと、なにが出るって決まっていますよね。そうすると食べたくないものも出てくるかもしれない。なので、自分で量を調節できたり、食べたいものを中心に食べられる、そんな形も選べるようにしているんです。」

sasaki - 2 この日はわたしもお料理をいただいた。

カウンターに座ると、金糸の織り込まれた縁起のいい鯉の暖簾と、佐々木さんのきりりとした姿が目に入る。

おすすめされた日本酒をいただき、旬の食材の話を肴に繊細で優しい味のお料理をいただいていると、佐々木さんの話をきっかけにカウンターの隣に座っていた方との会話が生まれる。

聞くと、その人は“水曜日”のお客さまだそう。

気になって聞いてみると、このお店を知って以来、毎週水曜日に欠かさず訪れているそうだ。通いはじめて気づけば4年。いつしか年のはじめは家族みんなで来るようになったんだ、と教えてくれた。

そういうお客さまが多いのですか?佐々木さんに伺う。

「そうですね、『毎週ここに来てこれを食べて、気持ちよく酒飲んで帰るんだ』というように、決まった曜日にいらっしゃる方もいます。お客さまは、常連の方が3分の1ほど、神楽坂という場所柄、接待でつかわれる方が3分の1、新規でいらっしゃる方が3分の1くらいかな。」

食材も季節ごとに変わり、お皿や盛りつけも目に美しい。毎週きても飽きない理由がよくわかる。

「お皿も永楽善五郎のような、京都の骨董ものが多いんです。一枚一枚に思い出がありますね。お金ないときに無理して買ったなーとか、使うたびに思い出します。(笑)」

D7A_5221 つぎに、佐々木さんと一緒に働く阿部さんにもお話を伺いました。第一印象では無口な人かと思ったけれど、料理の細かいお話など、こちらがわからないニュアンスも汲み取って、丁寧に説明をしてくれた。

阿部さんは、焼きもの、揚げもの、ご飯もの、飲み物に個室への配膳まで、板前の仕事以外の仕事をすべて担当している。カウンターの裏のお客さまにみえないスペースで、ささ木の料理を支えている、縁の下の力持ちだ。

佐々木さんの料理をつくるペースに合わせて、焼き物をつくるタイミングを見計らい、お客さまに一番いいタイミングで料理が届くようコントロールしている。

D7A_5158 今回入る方は、阿部さんがいままでやってきた、接客や配膳、飲み物などの手伝いから徐々に仕事を覚えていく。

接客をするにあたってどんなことに気をつけていますか?

「どんな目的でお店にきてくださっているのか、ということを考えるようにしていますね。カウンターは、料理自体を愉しみにきていたり、のりさん(佐々木さん)と話しをするためだったりするので、料理に関しても一つずつ説明することが多いです。けれど、個室に関しては接待でつかわれることが多いので、その場の雰囲気を大切にするようにしています。お料理の説明なども、お客さまに差支えのない範囲に留めていますね。」

最初、苦労したことなどはありましたか?

「しっかりと確認することですね。簡単に思えるんですが、できなかったりします。」

たとえば、お客さまに「さっき飲んだものと同じものを」と言われて、自分がわからなかったら、お客さまにメニュー表をみせて教えてもらったり。

「自分の曖昧な記憶から判断して『多分これだと思います。』で、違うものをお出ししたら、お客さまに迷惑がかかってしますよね。基本ですが、大切なことです。」

sasaki - 1 どんな人と一緒に働きたいですか?

「目と目を見て話ができる方。あとは素直な人がいいですね。純粋にわからないものをわからないって言えて、話を聞いて、納得してくれたり、接客していて感じたことを話してくれる人だといいかな。」

佐々木さんにも、どんな人と一緒に働きたいかを聞いてみた。

「気が利く、というよりも、気がつく人と一緒に働きたいです。」

気がつく、ですか。

「気が利いてもね、おせっかいなこともありますよね。なので、まずは気が付く、それでちゃんとコミュニケーションをとれる人かな。」

自分が気を利かせて『これやっておきました』といっても、やり方が違うと無駄になってしまうこともある。

まずは気がついて、素直に聞ける人。

「それと、お客さまから注文を受けて、料理を提供するまでにどのくらい時間がかかるのか、そのタイミングを把握するのには時間がかかるかもしれません。たとえば、焼き場に魚が入っていて、これ以上つくれない状態で注文をうけてしまうと、お客さまを待たせてしまいますよね。」

sasaki - 3 「そういうときに、正直に『あとこれくらいお時間いただくんですけど大丈夫ですか?』と聞ければ、お客さまも『大丈夫だよ』って待っていただけるし、もし手持ち無沙汰そうだったら、『その間なにかいきますか?こちらなら、すぐおつくりできますよ。』と提案できれば、お客さまも安心できますよね。そういう気づきがある人だと、いいです。」

ここにお店を構えて9年。いままでは居抜きで借りていた空間を工夫しながら使って来たけれど、自分たちのより提供したい料理をつくるために改装することを決めたそう。

新たに人を募集すると聞いたので、てっきり席数も増えるのかと思っていたけれど、それまであったテーブル席をなくし、全体の席数を減らすそう。お客さまによりくつろいでもらうため、そして調理場を広くとるために、カウンターと個室のみの空間に生れ変わりました。

自分たちの手の届く範囲で、実直にお客さまをもてなす。そんな意気込みを感じました。

D7A_5180 これからどんなお店になっていくのでしょうか。

「これからの食は、量ではないと思うんです。いい食材をつかって、おいしいものを少しずつという流れになっていくと感じています。なかなか1人でコース料理って食べませんよね。ちょっといいお刺身を食べて、焼き魚を食べて一杯飲む、そういうお店があったらいいなと思うんです。いい食材と器を使って、値段もできるだけおさえながら、『月に1回は必ずいこうね』って言われる場所にしていきたいですね。」

料理、会話、お皿、盛りつけ、さまざまな面からお客さまが食を愉しむ空間をつくっていく。それは空間づくりでもあり、日本の食文化をさまざまな文化の中継地、神楽坂からつないでいくことだとも思います。

新しく生れ変わる「神楽坂ささ木」で、お客さまの食を通した愉しみを生み出し、支える人をお待ちしています。

(2015/8/26 吉尾萌実)