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宮島の海に浮かぶ世界文化遺産、厳島神社。その厳島神社に最も近い旅館、宮島グランドホテル有もとは、400年以上も前から宮島に訪れる人々をもてなしてきました。
代々古き伝統を守りながら、新しい時代のもてなし方を模索してきました。
今回募集するのは、仲居・フロント・事務など、旅館のさまざまな仕事を担当する人。
スタッフ一人ひとりがオールマイティーに旅館業を経験することで、総合力のあるおもてなしを目指しています。
年齢・経験は問いません。
旅館の仕事をしてみたかった人や、宮島の暮らしに興味がある人。そんな人に、ぜひ読んでみてほしいです。
JR山陽本線・広島駅を出発。宮島口駅には30分もしないうちに到着した。
改札を出て5分ほど歩き、フェリー乗り場へ。時刻表を見ると朝6時から夜22時まで、多いときには15分間隔で出航している。
帰りも時間を気にせず、気楽に利用できそうだな。そんなことを思いながら船に乗り込み、宮島へと向かう。
ゆっくりと、真っ赤で大きな鳥居に近づく。そのむこうの厳島神社。さらに後ろに、宮島グランドホテル有もとの姿が見えてきた。
船を降りると、たくさんの観光客と鹿。
平清盛を描いたドラマが放送された3年前、例年にも増して観光客が大勢やってきたそうだ。
いまは落ち着いたけれど、それでもこの日は平日にも関わらず、多くの人が観光を楽しんでいた。
有もとは厳島神社から歩いて3分ほど。「宮島ロープウェー入口」と書かれた看板を通り抜けた先にある。
エントランスから入り2階のロビーへ向かうと、専務取締役の有本さんが迎えてくれた。
有もとは宮島に400年以上も続く老舗旅館。江戸時代の創業当時から、厳島神社にお参りする人々をもてなしてきた。
有本さんのお父さまが、ちょうど20代目になるそうだ。
「幼いころから祖父や父の姿を見て、自分も継ぐんだという意識はありました。でも、毎日いろんなことがあって大変そうだなと(笑)。いまも悪戦苦闘しながら、よりよいサービスのために何ができるか日々考えています。」
有もとは宮島有数の高級旅館。瀬戸内海の鮮魚を使い、食材にこだわった本格和食の懐石料理を提供してきた。
最近では、和洋折衷の食事スタイルに変更したり、お部屋も洋室を増やしたりしたという。
「これから外国人観光客が増えていくという見通しがあります。とは言っても、ほとんどのお客さまは日本人。スタンダードな旅館を守っていければと思うのですが、いつまでも同じようなスタイルだと通用しなくなってくる。変えられるところを少しずつアレンジしています。」
またサービス全体の質を向上させるために、2年前より人事改革も行なってきた。
それまで分かれていた事務・フロント・客室・売店の業務を、スタッフ一人ひとりが1ヶ月のローテーションでまわすようにした。
「いろんな業務を経験することで、旅館業を深く理解してサービスに活かしてもらいたい。また、部署の垣根を越えてそれぞれの立場や大変さを分かってもらいたいということで、改革に踏み出したんです。」
なかには仲居一筋で何年も勤めてきたスタッフもいる。スタッフそれぞれの適正に合わせて、無理のないように部署替えを勧めてきた。
「特に新入社員の人は、替わるたびに0から学ばないといけないので、しんどかったと思うんです。でも、みんな勉強熱心でついてきてくれていて。」
「会社として、たとえひとつのポジションが人手不足になっても、すぐに補えるという形ができつつあります。働く本人たちも、どこでも活躍できるオールマイティーな人材として自信になっているようです。」
こういった人事は、ほかの旅館ではないことだそう。
さらに有もとでは、厳島神社で挙式をする人向けにブライダルサービスを行なっている。
披露宴の手伝いなど、さまざまな仕事を横断して経験できるのも、有もとならではのことだと思う。
そんな有もとに魅力を感じて、海外ホテルに就職するためのステップアップとして働く若い人も少なくないそうだ。
「若い派遣社員の子だと、自分のスキルアップのために働く方もいます。仲居さんって年齢の高いおばちゃんのイメージかもしれないですけど、うちは若手も多くて、いろんな部署で活躍してもらっています。」
スタッフは約70名。社員のほとんどは住み込みで、仲良く寮生活をしているそう。
だから「身ひとつで来ていただいても構いませんよ」と有本さん。
旅館の仕事は女性のイメージがあるけど、男性でも大丈夫なのだろうか。
「もちろん歓迎します。レストランの接客は男性を中心にやっていただいていて。部屋食、宴会場をご用意させていただくこともあるので、その際も男性が入ることがあります。」
「未経験の中途で入ったスタッフが多いので、ほかの場所で頑張られてきたような方に、ここで新たに挑戦してほしいですね。会社としては、各セクションのリーダーを育てていきたいと思っているので、そんな意欲がある人にも来てもらいたいです。」
有本さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?
「笑顔がいいとか、そういう素質よりも、人としての部分を見たいなと思っています。たとえば旅館に宿泊して、いい仲居さんに心地よい接客を受ければ、この旅館でよかったって思いますよね。サービス業の知識や経験が豊富でなくても、素直だったり、正直な方と働きたいです。」
「あとは、宮島が好きだとか、島暮らしをしてみたいという方も大歓迎ですよ。」
そういえば、宮島で暮らすということは島暮らしなんだ。
広島市内から40分。都会から近い距離で、島の生活を味わえる。
次に話をうかがったのは、若女将のひろみさん。
にっこりと、とても表情豊かで物腰の柔らかい方。
有本さんもそうだけれど、スタッフの話になると「うちの子はね」「あの子はね」と、にこにこした表情になる。
なんだか家族のような、親のような優しさのある人たちだと思う。
ひろみさんは広島市出身。
4年前に嫁ぎ、有本さんと一緒に宮島で暮らしている。
ここでの生活について聞いていると、決して便利ではないという。
「島ですから閉鎖的な環境があるかもしれないです。旅館の仕事はハードだから、休みの日にならないと自由に遊びにいけない。でも、逆に仕事に集中できるかなと思うんです。休みは思いっきり楽しめますよ。」
暮らしはとても穏やかだそう。旅館内は賑やかだけど、夕方から一歩外へ出ると辺りは暗く、静かな時間が流れている。
「わたしは4年前に、旅館業も島暮らしも、何も分からないで嫁いできたんです。仕事しながら成長していけばいいって、わたしは自分に言い聞かせながらやってきました。」
「はじめて来る方も不安がたくさんあると思うんですけど、わからないことは当たり前なので。わたしも一緒に成長していきたいと思っているので、怖がらずに前向きにやってもらって、もし何かあればどんなことでも相談してほしいです。」
ここで働くスタッフの方にも話を聞いてみた。
入社2年目、経理を担当している田辺さんです。
取材にうかがったちょうどこの日、田辺さんは予約受付の仕事を新たにはじめたばかりだという。
「これまで業者さんと電話することはありましたけど、相手がお客さまだと本当に緊張してしまって。今日もすごく緊張してます(笑)。」
有本さんから「ほかの仕事もやってみないか」と誘われ、この仕事を担当するようになったそう。
「『やる?』と聞かれたので『やります!』と。不安ですけど、前向きに捉えて。できるところからやっていこうという気持ちですね。」
新しい仕事をやってみて、どうでしたか?
「仕事内容が全く変わるわけではないですけど、視野が広がるというか。たとえば値段にしても、いまいち経理では分からなかった部分があって。その流れがすこし見えはじめて、これからもっと見えてくるようになればいいなって思っています。」
社内の仕組みが変わり、経理担当者も料理を運ぶのを手伝ったり、現場に積極的に関わるようになっているそうだ。
「やることは増えるかもしれないけど、できなくないと思うんです。もし経験がある人なら、前職の常識を捨てるくらいのつもりで、素直な気持ちで入ってくれるといいと思います。」
もうひとり、紹介したいスタッフさんがいます。
主に接客を担当している、ひとみさん。
宮島工業高校を卒業後、有もとで13年働いてきました。
旅館業は、サービス業の中でも特にお客さまと一緒に過ごす時間が長い仕事。
仲居として長年勤めていると、お客さまとの関係も生まれてくるそうだ。
「年に何度もお越しになる方のお顔は覚えますし。お声掛けすると、お客さまも喜んでくださるんです。わたしの名前をご存じない方でも、『あなた、いつもいるわね。今度来たときも、またいてね。』ってお声掛けいただくことがあって。」
「毎年、この季節になるとあの方がいらっしゃるなって楽しみなんです。それでお会いできるとやっぱり嬉しい。それがここで仕事を続けている一番の理由ですね。」
この仕事の大変なところはありますか?
「時間には厳しいかもしれないです。旅館の仕事はチームプレイなので、ひとりが遅刻してしまうと、ほかの人たちが大変な思いをしてしまいます。あとは体力。体力がないと、この仕事は難しいかもしれない。」
料理をはじめ重たいものを持って、宴会場に入ればしゃがんで立っての繰り返しになる。
疲れて笑顔が消えてしまってはいけないから、体力と元気に自信がある人に向いていると思う。
「能力はいりません。体力と元気さえあれば、楽しく仕事できますよ。」
接客がはじめての人でも、礼儀作法を習得できる。有もとでは会社負担で、華道や茶道の稽古をつけられるそうだ。
ひとみさんも月に2回華道を習い、お部屋の生け花を担当している。
有本さんは、こう話す。
「厳島神社がありますから、特にお祝い事や何かの記念に来られる方が多いんです。そのなかで喜んでいただけるように、スタッフ一人ひとりのおもてなしを磨いていこうと。いまはまだ不定期に行なっていますけど、今後はより充実させようと思っています。」
経験も年齢も問わず、やりたいという気持ちがあれば働くことができる。
旅館で働きたいと考えていた人には、本当にいい機会だと思います。
意欲があれば幹部候補として、ゆくゆくは有もとを引っ張っていく存在になってもらいたいと、有本さんは話します。
「いろんなサービス業を経験した方でも、自分の新しい可能性にチャレンジできる環境だと思います。旅館ならではのおもてなしの想いで、これから先を一緒に歩んでいける人に来てもらいたいです。」
気になった方は、ぜひ応募してみてください。
宮島に行ったことがない人は、これを機会に訪ねてみるのもいいと思います。
(2015/9/3 森田曜光)