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はたを楽にする

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働くってなんだろう。なんのために働くのだろう。

この会社を訪れたときに浮かんだのは、働くの語源とも言われている“傍(はた)を楽にする”という言葉。

「はた」というのは他者のこと。他者を楽にすること、負担を軽くすること。

賃金労働だけではない“働く”が、ここ株式会社中西にはあるように感じました。

愛知県・豊明市で50年続き、地域や行政の資源ゴミ回収やリサイクル事業をおこなっている株式会社中西

D7A_5869 社員は55名。そのうちの半数以上の28名が知的障がいや精神障がいのスタッフ。

全国に62社ある障害者雇用優良企業のうちの1社でもあります。

障がいを持つ社員のことを“挑戦の機会を与えられた人たち”という意味で、チャレンジドと呼び、健常者・チャレンジドが、それぞれの得意分野を活かしながらともに働いています。

主な事業は豊明市を中心とした、地域の資源ゴミの収集・運搬や、収集した資源ゴミのうち、資源として利用できるものを分別するという、リサイクルをするためには、なくてはならない中間処理という仕事。そして企業からでる産業廃棄物の処理など。

最近では、個人宅の片付けや生前整理などの新たな取り組みもはじめました。

今回は、不要品回収を通して地域や行政のリサイクル環境をつくっていく営業スタッフと、障がい者指導を通して分別工場の管理をしていくスタッフを募集します。

福祉作業所や非営利団体ではなく、民間企業として活動しているからこそ、しっかりと収益をあげ、チャレンジドの持っている力を引き出していくという意識が必要。

既卒の方はもちろんのこと、新卒の方の応募も歓迎しています。

名鉄名古屋駅から20分ほど電車に揺られ、最寄りの前後駅で降り、そこから車に乗り込み5分ほど走ると、分別工場を隣に併設した建物がみえてきます。

D7A_5856 お話を伺うまでに時間があったので、まずは工場内を案内してもらいました。

中西の所有する分別工場は3つあり、ここではビンや缶、ペットボトル、金属、自転車などを分別、解体しています。

それぞれの素材ごとに作業場所が別れていて、チャレンジドたちが中心となり素早く分別作業をしています。

ビン色選別 作業場は、つかう道具がきちんと整理整頓されています。

作業をのぞきこむと、手を止めることなくにこにこと挨拶してくれる人、恥ずかしそうに声をかけてくれる人など、さまざま。

みんな楽しそうに仕事をしている。率直にそんな印象をもちました。

すると、案内をしてくれた方がこう話してくれました。

「彼はね、いまはにこにこ明るくしゃべってくれますけど、1年程前は、自閉がきつくて手紙じゃないとコミュニケーションができなかったんですよ。でも、諦めずに手紙のやり取りを重ねていくうちに、あるとき、急ににこにこするようになったんです。その頃から、作業もぐっと早くなりましたね。」

どうしてそこまで関われるんだろう。そんなことを考えながら、事務所に戻りお話をうかがいます。

まずは、代表の笠原さんに、中西のこれまでの歩みを聞きました。

「もともとはビン商といいまして、酒屋からでた一升ビンやビールビンなどの空きビンを回収し、メーカーごとに整理して売る、という仕事をしていました。」

D7A_5870 そして、自治体の資源の回収がはじまっていく。

ビンからはじまり、新聞、ダンボール、アルミ缶。近年になってペットボトルやプラスチックなど。

「自治体の回収がはじまったのが、35年くらい前ですね。豊明市に掛け合い、委託を受けたことからはじまりました。いまは、規模がどんどん広がり、名古屋市も含め13自治体の回収をおこなっています。」

障がい者雇用はいつからはじまったのでしょうか。

「27年ほど前から1人、2人と紹介してもらって。さっきご覧になったように、ガラスビンの色わけね、最初はそれをやってもらったんです。そしたらなかなかやれるじゃないかと。『彼らにできることは彼らにやってもらおう。』そう考えるようになっていったんです。試行錯誤しながら、作業のやり方を少しずつ改良していきました。最初はめちゃめちゃ苦労しましたよ(笑)。」

中西で働いているチャレンジドのほとんどは、知的障がい者。ものごとを理解してもらうことや、コミュニケーションには苦労することもあるけれど、中には健常者よりも手先が器用なスタッフもいるそうだ。

D7A_5922 通勤時に問題行動を起こさないように指導や見守りをしたり、障害年金の受給申請手続きの援助をしたり、福祉施設でもなかなかやらないところまで踏み込んでサポートをしている。

工場を見学しながらも考えたのだけど、どうしてそこまで関わるのだろう。

「それは、チャレンジドはうちの社員だから。スタッフには快適に働いてもらいたいから。そのために、サポートすることがいっぱいあるんです。」

「福祉的な目でみられることもありますが、あくまで企業ですよ。安定した収益をあげて、彼らに長く働いてもらいたいんです。」

つぎに営業スタッフとして働いている高橋さんにお話を聞きました。誠実な人柄がにじみ出ている、そんな雰囲気の方。

高橋さんも含め、中西のスタッフは目を見て人と話すことが自然と身に付いている人が多い印象をもちました。離職率も低いそうだ。

高橋さんはどうしてここで働きはじめたのですか。

D7A_5885 「僕は、三重のきれいな環境の中で育ちました。なので、環境にいいことがしたかったんです。以前は産業廃棄物のプラスチックを集める仕事をしていて、その中で笠原社長と知り合う機会がありました。その会社を辞めることになったときに誘っていただいたんです。会社のほがらかな雰囲気が好きで、ここで働くことにしました。」

いまはどんな仕事をしているのでしょうか。

「営業の仕事は大きくわけて、自治体などの行政の仕事、企業の仕事、個人宅の仕事と、3種類があります。僕は、主に企業と個人宅を担当しています。行政も一部担当していて、資源ゴミの回収先でなにか不具合があったときのケアもしています。」

「企業の仕事は、工場から出る産業廃棄物を集めるために、『こういったものが捨てられると思うんですけど、リサイクルできるようになります。やりませんか?』というような形で提案していきます。」

そして1年ほど前からはじまったのが、個人宅の片付けの仕事。

「引っ越しの片付けもありますが、高齢者からの依頼が多いですね。ものを捨てられない方が多くて、もので溢れた中で生活している方もいます。住みやすい、快適な空間をつくることは、病気の予防にもなると思っています。これまでリサイクル業を通して障がい者の福祉に関わって来たように、片付けを通して高齢者福祉に関わっていきたい。この地域を中心に、さらに事業を広げていきたいですね。」

この仕事をするにあたって、必要になることはどんなことでしょうか。

「まずは回収の現場などを経験して、中間処理をするまでに、どのくらいの費用と時間がかかるのか、ゴミの量に対してどのくらいの人が必要になるのか、その感覚をつかんでいくことです。」

新聞回収1 営業職であっても、まずは回収現場にはいって、作業の感覚とリサイクル品目をおぼえていく。

「リサイクル品目が多いので、覚えることがたくさんあります。その勉強も必要になってきます。」

営業の経験がある方であれば、仕事を覚えるまでは、午前中は現場に入り、午後から営業の仕事を手伝っていく。

未経験であれば、現場の割合を増やし、徐々に営業の仕事を覚えていくそうだ。

どんな人に来てほしいですか。

「個人宅の見積もりにいくと、おばあさんの一人暮らしだったり、仕事以外の話をすることも多いです。なので、相手の話を聞ける、向こうの意見を引き出せるような雰囲気の方だといいのかな。」

「それと、自分はこういう仕事をしたいというものがあると、わりと自由にやらせてもらえます。なので、やりたいことがある方には、より働き甲斐をもちやすい会社だと思います。」

つぎに、チャレンジドたちの指導や現場の管理をしている、市川さんにお話をうかがいます。

回収などで外の仕事が多いためか、こんがりと日焼けしている。

チャレンジドの指導や現場の管理はどういうことをしているのですか。

「指導といいますか、作業の進め方や、危険なことはしちゃいけないと教えたりしています。あとはいい悪いの判断ですね。たとえば同僚の悪口をいっていたら、それはどうしていけないのか、わかるように話していきます。」

D7A_5905 作業を覚えるのにかかる時間も、教え方も一人ひとり違うという。

「挨拶ではじまり、作業をし、最後はきれいに掃除をして再び挨拶をして終わり、という形が基本になっています。その基本ができていけば、あとは繰り返し作業を教えていくような流れです。」

作業を教える上でなにか気をつけていることはありますか?

「悪いことをしたときには叱りますが、仕事で失敗したことにたいしては叱りませんね。失敗しても『なにやってるんだ』ではなくて、『どうしてそうしたの?それはこうだよ。』という風に話すようにしています。できたら誉めますし、できなかったらわかるまで教えています。」

分別するものの色や形を見本として置いておき、作業を覚えるまで、市川さんなどの指導スタッフがじっくり教えていっているそう。

D7A_5911 「昨日は処理しないといけない自転車がたくさんあったんです。量が多くて作業が終わらないかと思ったんですが、チャレンジド5、6名と健常者1、2名でなんとか全部片付けることができました。みんな力をつけてきて、すごいと思います。」

指導スタッフに関しては、現場での仕事が多い。特に夏場は体力も必要になってくる。

どんな人が向いていますか。

「最初の頃は気が強い方がいいのかなと思ったりもしたんですけど、チャレンジドのことを考えると、やっぱり優しさも大切。トラブルが起こることもありますから、図太い一面もある人がいいですね。」

D7A_5846 どちらの職種についても、まずは回収や分別などの現場を経験するところから。理屈ではなく、チャレンジドたちとともに身体をつかい仕事を覚えていきます。

最後に、代表の笠原さんがこんなことを。

「チャレンジドたちに教えていると、向こうから教えてもらうこともたくさんあって。彼らと付き合っていると、予想外の問題がぼーんぼーんと出て来ます。またかって。ここで働くと、人間としての幅が広くなると思いますよ。」

「はた」を楽にする。

環境の負荷を取り除いていくこと。チャレンジドたちに生き生きと働いてもらうこと。

仕事の自由度もあり、やりたいことがあるのなら、自分次第で実現していける。民間企業であるからこそ、両方のバランスを考えて働ける方をお待ちしています。

(2015/9/9 吉尾萌実)