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一枚から広がる世界

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

クッションやラグ、ベッドカバーやカーテンなど。

わたしたちの部屋にはさまざまなインテリアがある。

その多くに使われているのが「布」です。

cut01_015 こうしてなんらかの機能をもった形になる一歩手前の「布」に焦点を当ててみると、これまで見えていなかった魅力があることに気づきました。

縦糸と横糸の組み合わせしだいで何通りにも変化する色。縫製を工夫すれば、そのやわらかさを活かしていろいろな形をつくることだってできるし、光の当たり具合によって、さらに表情が変わっていく。

今回は、そんな布の魅力を教えてくれたニーディックという会社で、販売コーディネーターを募集します。職場は「ieno textile」か「NEED’K textile」、いずれかの店舗となります。

布が大好きだという方、布のもつ可能性をもっと人に伝えたいという方は、ぜひ続けて読んでみてください。

代官山駅から歩くこと5分。旧山手通り沿いの一棟のビルにたどり着く。

このビルの2階にお店を構えるのが「ieno textile」(以下、「ieno」)だ。

階段をのぼっていくと、開店準備をしている女性が扉をあけてくれた。

彼女はここの店長を務める森永さん。店内をぐるりと見渡せる席に腰かけ、お話をうかがった。

P1000406 広々とした明るい店内には、色とりどりのカーテンやクッションのほか、雑貨や小物もあり、バラエティーに富んでいる。

ワクワクするし、なぜか家のような安心感も感じる、そんな空間だ。

朗らかでやわらかい空気をまとった森永さんは、この場所の雰囲気にぴったりと合った人だと思う。

アジアン雑貨店でバイヤーや店長などを経験してきたが、去年その会社を退職。ニーディックに履歴書を送った。

「面接の前に一回このお店にきたんです。ソラという生地があるんですけど、その生地を見たときに『わたしがやりたいことはこれだ!』って、ピピッときまして」

ソラはどんな生地なのだろう。実際に見せてもらった。

dan2011-1 ソラ1 2 ピンクでも、オレンジでも、群青色でもない。複雑に混ざり合ったその色は、夕焼け色と呼ぶのが一番しっくりくる。

「もともと布が大好きで、自分で染めたり、織ったりしていました。いつかおばあちゃんになったら、大好きな夕焼けの空の色を自分で染めて、それをお洋服にしたいなと思っていたんです」

見る角度や光の当たり具合で表情が変わるから、立ち位置を変えたり、光に透かしてみたりしながら、いつまでも眺めていられそうな気がする。

「布って、縦糸と横糸が交差するじゃないですか。そうすると『こっちの色とこっちの色が違うと、こんな色になるんだ!』みたいな発見があるわけです。1+1=2じゃなくて、2以上になる。それがすごく楽しいんですよね」

森永さんの仕事は販売コーディネーター。店頭でお客さんの好みや家族構成などの話をしながら、その人ごとに合った布を提案する。

相手が本当に求めているものを引き出せる力が必要になると思う。

具体的にはどういう仕事になるのか。カーテンを例にお話しいただいた。

「たとえば、ひとつの窓に対して、全部同じカーテンを吊らなくてもいいんですよ。3枚別々の生地で、真ん中は柄で両脇は無地で、っていうこともできるんです。そうすることで、コーディネートの幅が広がるんですよね」

ときにはお客さんの自宅まで足を運び、その場でやり方を決めることもあるという。

こうした柔軟な対応を可能にしているのは、コーディネートする人の力はもちろん、商品によるところが大きい。

たとえば、オリジナルのカーテンクリップを使うことで、カーテン仕様の縫製をせずに布のままカーテンとして使うこともできる。

P1000448 人の自由な発想に合わせてモノも変えていくから、布の可能性がより大きく広がっているのだと思う。

こんなカーテンをつくっているデザイナーの南村 弾(なむら だん)さんにもお話をうかがいました。

hoK8m 南村さんは、世界最先端のホームテキスタイルトレンドを発信するドイツの展示会「ハイムテキスタイル」のトレンドセッターにヨーロッパ外からはじめて選出されるなど、ワールドワイドに活躍している。

ここに毎日いるわけではないものの、店舗を訪れる際には心がけていることがあるそう。

「デザイナーとして伝えたいことっていうのは、日々の会話のなかでできるだけお伝えするようにしています。思ったことややってみたこと、こうしたほうがいいっていう提案も逆にいただけるので」

天井にわたされた布はその一例だ。

P1000432 以前は壁面にしか吊っていなかったものを、森永さんはじめ、売り場のスタッフと南村さんが一緒になって考えたという。実際にやってみると「ああいうふうに使いたい」というお客さんの声が増えたそうだ。

働いている人の意見が柔軟に取り入れられるのも、お互いの信頼関係があってこそ。

森永さんのお客さんへの接し方、南村さんのデザインに対する姿勢。それぞれを尊敬し合っていることが、会話の端々から伝わってくる。

ここで森永さんから「弾さんは、うちのカーテンのことをよく“カーティン”って呼ぶんです」と一言。

“カーティン”?

「なんかね、カーテンって言ってしまうと、建材みたいに感じられて」

たとえば、屋根材は屋根に使うのが一般的であるように、カーテンもカーテンとして使うという考え方にしばられてしまいがち。でも布として考えれば、もっと柔軟に使うことができる。

P1000413 「一枚のテキスタイルからカーテンになったり、ベッドにかけてもらったり、テーブルに使ってもいい。いろんなことに派生することのできるテキスタイルなんです。それに使い方を一緒に考えていくなかで、新しいヒントがたくさん生まれます」

ただ、使い方は柔軟に考えていいものの、あくまでも基本が大切。

インテリアの基本は理解した上で、もっといろんなことに挑戦したい人にはぴったりの環境じゃないだろうか。

それからもうひとつ、南村さんは「ふつう」という言葉を何度も口にしていた。

「ぼくにとってのふつうは、無理や無駄のないうつくしさ。極力ストレスを排したもののことなんです」

「ieno」の工場は、世界各地に存在している。ベルギー、スペイン、インド、トルコ、イタリアなど。日本にもいくつか工場がある。

その土地ごとの文化や工場の設備などに合わせ、無理なくできることをすれば「ふつう」にいいものができあがる。

店内では、インドの民族衣装サリーを再利用してつくったひもを、これから編もうとしているところだった。

糸の質も色もバラバラだけれど、そのランダムな感じがよかった。

P1000436 ほかにも、代々木公園の木漏れ日がそのままデザインになっていたり、アクリル・エステル・コットンの頭文字をとったa.e.cと呼ばれるリサイクル素材でつくられたボーダーのカーテンがあったり。

什器をよく見たら、展示会で使用済みの木製コンテナだった。

日常の何気ないひとコマや、捨てられてしまうはずだったものが存分に活かされていることに気づく。

「環境にも人にも、動物にも。過度なストレスを与えない、ふつうなものをつくりたい。『キチッとしすぎてることが、ほんとにふつうの姿なのかい?』みたいなことですよね」

お二人の話を振り返りながら、今度は「NEED’K textile」(以下、「NEED‘K」)へ歩いていく。

旧山手通り沿いに10分弱ほど。ヒルサイドテラスを越えてしばらくすると、「NEED‘K」の看板が見えてくる。

なかに入って、驚いた。第一印象は「ieno」とまるで違う。

DCF 1.0 全体として「ieno」が明るくやわらかい雰囲気なのに対し、「NEED‘K」はシックで落ち着いた印象を受ける。店内はいくつかのテーマごとにエリア分けされていて、それぞれの世界観がびしっと決まっている。

そこへ「こんにちは!」と明るい声で呼びかけられた。

迎えてくれたのは、販売コーディネーターの鳥海さん。このお店に勤めて3年目になるという。

P1000487 「ieno」とはまた違った雰囲気のお店ですよね。

「自らお部屋を可変的に変えていくっていうコンセプトは共通していると思います。わたしは『ieno』の商材も大好きですし。プロに任せて終わりじゃなくて、住まい手がつくりあげていくっていう点で、どちらもワクワク感があると思っています」

お客さんに「一方通行で提案する」のではなくて、「楽しみながら一緒につくりあげていく」という姿勢は同じ。

ただ、お客さんのインテリアに対するハードルは高い。気軽に楽しんでもらえるように、鳥海さんはいつもあるたとえ話をするそうです。

「お客さまには『お洋服と同じと思ってください』って言いますね。たとえばあのぴかっとしたクッション。なかなか選ぶのは難しいかもしれないですけど『お洋服でいうとアクセサリーじゃないですかね』と話してみます。するとお客さまは『ああ、そうなの!』と言って、気軽に選べるようになるんです」

いろいろなテーマがそろっているので、自分に合った洋服を探すような感覚で買い物ができる。逆にお客さんの服装から想像して、その人に合いそうなテーマのものを紹介することもできるとのこと。

「飽きない会社だと思いますね。『これください』『はいどうぞ』ではなくて、お話ししながらお客さまごとにつくりあげていくことなので、限界がないというか」

施工例01 どんな人と働きたいか聞いてみた。

「布が好きな人。それはもう、ここでの共通言語だと思うので。あとはお客さまとともにつくりだしていくステップを、一緒に歩いてくれる人がいいです。先生みたいに偉そうにするんじゃなくて、そういう気持ちいい人がいいですね」

取材を終えて、普段何気なく接していた布の見方が変わったように思います。

「布」にはまだまだ可能性がある。

その可能性を、お客さんや仲間と一緒に広げていきたいと思った方は、ぜひ応募してみてください。

(2016/9/12 中川晃輔)