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一日は庭の掃除からはじまる。庭の落ち葉を掃き、窓ガラスを磨き、お客さまを迎える。
雑誌の誌面を飾る撮影現場は、真剣そのもの。限られた時間の中で、予定通りに進むよう小さな気づかいを積み重ねていく。お客さまに困りごとがあれば、すぐに駆けつける。
撮影が終わると、スタジオの家具に不具合がないか確かめる。椅子を塗装し直すこともある。
東京・代々木上原の住宅街にあるbarbie bleau(バルビーブロー)。
一軒家を改装したハウススタジオで働く人を募集します。
撮影や舞台美術に関心のある方、ホテルマンのように人を迎え、さりげなくもてなすのが好きな方。
制作を日々舞台裏から支えつつ、あらたな場のかたちを描いていきます。
最寄りは、東京・代々木上原駅。
古い洋館やおもむきのある日本家屋の合間に、カフェやレストランが並ぶ、閑静な住宅街の一角にbarbie bleauはありました。
コーヒーをいれて迎えてくれたのは、岡本さん。
女性誌を中心に活躍するフリーのスタイリストです。
撮影小道具のレンタルショップbarbieの代表でもあります。
「barbie は、2001年にビルの一室からはじまりました。お客さまも増えていき、2010年に参宮橋のビルを一棟借りしたんです。その一角ではじめたのが、レンタルスタジオbarbie bleauです。」
barbieという名前は、パリから郊外へ60㎞ほど進んだ小さな村バルビゾンに由来する。第二次世界大戦中は、印象派の画家たちが避難した土地でもある。
「バルビゾンに魅せられてしまったんですね。その魅力を取り入れたスタジオがあったらいいんじゃないか。そう思ったんです。」
住宅を改装したbarbie bleauは、ハウススタジオと呼ばれる。その名のとおりリビング、庭、キッチンと様々なロケーションを備えている。
参宮橋のスタジオは人気を博し、様々な撮影でつかわれるように。
テイストは活かしつつ、よりよいスタジオをつくりたい。
その思いから、2013年にはじめたのが代々木上原のスタジオ。
外観は住宅だけれど、中に入るとスタジオが広がります。
「ここは南向きで、いい自然光が入ってくるんです。そして広すぎるぐらいのお庭もありました。」
岡本さんは、自らつかうことをイメージして、庭の設計、フランスでの家具の買い付けを行った。
「庭へ出る扉のドアノブは、壁掛けのフックを使っているんです。雨の日でも庭で撮影ができるよう、屋根つきのテラスをつくりました。」
壁や家具のエイジング加工は、スタッフたちと進めたところも少なくない。
「格好はラフですが、一流ホテルのホテルマンのような気配りを心がけています。つねに『お客さまはこうしたいのでは』と考えて動くと、撮影現場に一体感が生まれてきます。その結果、『やっぱりこのスタジオでよかった』と言ってもらえます。」
「あとは、笑顔ですね。気持ちいいやりとりは、よい撮影にもつながるんですよ。業種は問いません。接客経験があるに越したことはないんですが、一番大切にしたいのは人となりです。入社2年目の若いスタッフも経験はないですが、明るい笑顔と一生懸命さで頑張っています。」
続けて話をうかがったのは、入社して3年を迎える山口さん。
話しているとこちらも笑顔になるような、気持ちのよい方です。
音楽業界を経て、スタジオでの仕事を探していたという。
「前職は音楽スタジオでした。コンサート前に、アーティストが1週間ほど練習するような場です。僕自身も、ものづくりをしています。人が真摯に制作に向き合う環境は、自分にとっても刺激になる。そう思い、撮影スタジオを選びました。」
どんなふうに一日を過ごすのでしょう?
「撮影は朝早くはじまることも多いです。自然光で撮影するので、季節や時間帯によって、どんな日差しが入ってくるのか。光の具合はつねに意識していきます。」
出社すると、まずは庭の手入れから。
「撮影は季節を先取りして行われます。そのため一年を通して、緑豊かな環境が求められるんですね。常緑樹を中心とした植物への水やり、古木のオリーブやミモザに虫がつかないよう手入れもします。」
毎日手入れをすることで、次第にスタジオに愛着が湧いてくるという。
庭を整えると、お客さまを迎えるスタジオとメイクルームのセッティング。
主な撮影は誰もが知っているような女性誌や、そこに掲載されるようなファッションブランドなど。
リピーターのお客さまが多いという。
「一人ひとりの方に、撮影の特徴があるんですね。いつも花を持ってくる方には、水を入れたバケツを用意しておく。大物の家具をつかう方もいます。搬入がスムーズに進むよう、玄関と勝手口の両方を開け、お待ちします。荷物整理のため、トレーや長机も揃えますね。」
撮影クルーは雑誌の担当者、カメラマン、スタイリスト、アシスタントそしてモデルの方など、10人以上になる。ときにはクライアントの方が訪れることもあるという。
メイクやカメラマンの機材は、30㎏近くということも珍しくない。2階のスタジオまで、重い荷物を運ぶことも日々ある。
「一つひとつは小さなことですが、気持ちよく撮影に入るための準備だと思います。」
「撮影中は何かが起きたときにすぐ対応できるよう、つねに緊張はしています。僕らは撮影こそしませんが、舞台裏で一緒に制作している。そんな気持ちですね。」
つねに慌ただしく動き回るというよりは、何かが起きたときにパッと動くような仕事だと思う。
勝手がわかってくると楽しいんです、と山口さん。
撮影中に日差しが強くなると、窓にトレーシングペーパーを張ることでやわらかい光を演出したり。
撮影につかわない道具を片付けておくことで、全体の進行をなめらかにしたり。
撮影をする側として、そんな気配りはうれしいもの。
けれど、さりげないからこそ、気づかれないことも多いのでは。
「そうですね。でも僕は、内心うれしかったりするんですよ。先に気配を感じとって、何気なくやっています。」
「過去には対面で接客をしたこともあります。面と向かっての『ありがとう』もうれしいんですが、いまのほうが向いているように思います。」
お客さまが帰ると、家具や設備をチェックします。
「撮影中は毎日のように家具を移動したり、シャンデリアを外します。どうしても、ぶつけて傷や凹みができやすいんです。」
山口さんは、椅子を片手にこう続ける。
「この椅子、左右で座面が違いますよね。撮影中に、お客さまが膝を乗せてネットが破れてしまって。板を張ったんですよ。」
次の撮影までに直す必要があるけれど、業者に頼んでいては間に合わない。自分たちで直すことも、多々ある。
「棚の塗装をすることもあれば、自分たちで家具をつくることもあります。」
実は、このテーブルも山口さんが制作したものだという。
材料は、スタイリストの岡本さんがフランスで購入したもの。
アンティーク製の鉄脚と、工事現場で使われる足場板を組み合わせ、最後に塗装を施して完成したという。
以前からDIYが好きだった山口さん。働きはじめて考え方が変わったという。
「正直に言って、ここまでやるとは思っていなかったんですよ。目覚めてしまいました(笑)。最近参宮橋のスタジオでは、撮影に使う移動式の壁を、フレームから壁紙張りまでみんなで行ったんですよ。いま、3つ目のスタジオを立ち上げる計画もあります。プロセスから関わっていきたいですね。いずれは、ものづくりの部門をつくれたらとも思っています。」
スタジオとは、もともと芸術家の仕事場といった意味合いを持つそうです。
スタイリストの岡本さんも、インテリアに限らず一つひとつを真剣にされている方。刺激を受け、学ぶことも多い。
同時に、雑誌の誌面を飾ることもあるからこそ、モノを見る目を養うことも大切になると思います。
撮影前にお客さまから依頼を受けて、小道具をレンタルショップbarbieで用意することもあります。
スタジオは朝が早い日もある分、仕事の終わりは早い。
18時には一通り終わり、19時を回るのは、月に1、2回程度だという。
日々の運営に加えて、これからのスタジオを描くことも大切になる。
「今年撮影した方に2度3度と足を運んでもらうには、どんなスタジオが求められていくのか。仕事を受けるだけでなく、考えて、しかけていくこともあります。スタジオから広告業界へ、価値観を提供していきたいんですね。」
「長い目で見れば、リニューアルも必要になるでしょう。日ごろから色々な興味を持っている人が、自分を活かせると思います。スタジオは全く考えていなかったような、色々な背景や、技術を持つ人が働けたらいいですよね。」
最後に、代表の岡本さん。
これから一緒に働く人に、伝えておきたいことがあります。
「わたしたちは、撮影小道具レンタルショップから、ハウススタジオをはじめました。今後は広告や撮影にとらわれすぎず、あたらしい展開もしていきたいと思っています。」
「わたしが上に立ち、管理する。そうした上下関係の組織というよりは、仲間なのかな。なにより自分自身、まだまだこれからやりたいことがあります。思ったことやアイデアは、どんどん出してほしいです。お互い遠慮せず話し合い、いまは、まだないものを一緒につくっていけるといいですね。」
(2015/12/16 大越はじめ)