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土佐の宝に

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

都市部を離れ、地方へ移り住むということ。

昔は家業を継ぐため、定年退職後にセカンドライフを送るためという人が多かったかもしれません。いまはたとえ地縁がなくても、若くても、何かをきっかけに移住する人がいます。

でも、定住となるとなかなか難しいのが現実。とくに暮らしを続けるための仕事が見つからなかったりする。

今回は、高知県土佐市の地域おこし協力隊として漁業・農業・観光業に携わりながらゆくゆくは担い手となり、土佐市に根付いてくれるような人を募集します。

農業をやりたいと決まっているような人は、はじめからひとつの分野に。そうでなくても、まずは地域に入ってから自分に合うことを見つけていくことができます。

土佐市にはどんな人がいて、どんな仕事をしているのか。

前回の募集で土佐市に移り住んだ地域おこし協力隊の方々のもとを訪ね、話をうかがってきました。

 

土佐市のなかでも太平洋に面した宇佐地区は漁業がとても盛んな地域。

昔は遠洋のカツオ漁で栄えた漁師町。いまはうるめいわしの一本釣りを中心に漁が行なわれている。

そんな宇佐地区に、大久保さんは昨年の4月にやってきました。

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大久保さんは地域おこし協力隊として宇佐地区に移り住み、いまは漁協を中心に活動しています。

漁協での一日は朝8時からはじまる。

8時半から船の水揚げが開始。特産品のうるめいわしの漁船が戻ってくる10時が忙しさのピークなんだそう。12時に水揚げが終わると、今度は軽トラに乗り、近くのスーパーへ魚を配達。帰ってくるとだいたい15〜16時。すこし休憩を挟んで17時から夕方の競りのお手伝い。18時を迎えて一日の仕事を終える。

「はじめて漁協に来たときに『新入り?』って聞かれて。『はい、そうです』って答えたら、それからは普通の職員さんと同じ扱いで(笑)」

「漁協で私以外の男の人は3人いるんですけど、水揚げ担当の人は2人しかいないんです。全員で対応しなきゃいけないから、当然自分も。田舎なのでどうしても人手が足らないんですよね。若い人でも50歳、70歳とかご高齢の方もいますよ」

大久保さんは静岡出身の25歳。

土佐市に来る前は大学院で海洋生物について研究していた。将来は漁業に関わる仕事をしたいと思っていたそう。

野外調査に日本各地の漁港をまわっていたところ、三重県尾鷲市で地域おこし協力隊に出会い、地域おこし協力隊として漁業に携われる地域があることを知った。

宇佐地区は漁業が盛んといえども、いまはもうカツオが獲れなくなり、漁師たちの高齢化も進み、だんだんと衰えはじめている。

そんな状況を変えてみせようと、大久保さんは意気込んでやってきたそうだ。

けれど、活動開始から約10ヶ月。実際に入ってみることで見えてきたことがあるという。

「宇佐地区に限らず、いろんなところで『漁業が衰退しているのは漁師がしっかりしないからだ』って言われているような気がします。でも、漁師さんや漁協の人たちはすごく努力しているんです」

たとえば、量が少ないけれど多品種な魚を地産に力を入れている地元スーパーへ提案し、バラエティ豊かな商品として扱ってもらうようにしたり。

昔はあまり知られていなかったうるめいわしをブランド化させ、全国から問合せがくるまでになった。

「うるめいわしは痛みやすい魚なので、刺身で食べるには高知県内が限度なんですね。いい状態で食べてもらいたいからって、遠くからの仕事は断っていたりして。プライドを持ってしっかり仕事をしているんです」

「そういうのって外から見えないんですよね。何もしていないなら自分がやればいいって思っていたんですけど、そんな簡単ではなくて。あれだけ努力してもこれしかうまくいっていないのかって思うと、正直今はどうしようかなと思っているところですね」

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そう話しながら、大久保さんの表情はどこか明るい。

というのも、宇佐地区での暮らしがとても気に入っているそうだ。

「宇佐の人は人懐っこいというか、すごく人がいいんですよね。引っ越した初日からお隣の方に夕飯をごちそういただいたりして。挨拶まわりすると、みんな『じゃあ呑みにいこう』って誘ってくれて。それからも、いろんな魚をもらったりして」

「食べものはおいしいし、人は温かい。都会では味わえないですね。ただ、ここで住み続けるためには、なんとか仕事を見つけていかないと」

大久保さんにとって、漁協での仕事も漁師になるということも、将来の選択肢のひとつなのだそう。ホエールウォッチングに毎年3000人ほどの観光客がやって来る宇佐では、クルージングガイドなどの仕事もあるそうだ。

「このままでは『田舎暮らしいいな』ってだけで終わっちゃうので、そこをなんとかしないと」

もし漁業を希望すれば、大久保さんと一緒に仕事をすることになるそうだ。

大久保さんは、どんな人にきてほしいですか?

「高知の人って明るく人に接して、とにかく呑む。そういうのが好きな人のほうがいいかな。それならきっと高知を好きになってくれると思うので。これから自分はどうしようってことも、まず高知や土佐を好きになってから考えられると思うんです」

 

次に訪ねたのは、仁淀川河口に位置する新居地区。

海にとても近い場所に、今年4月オープン予定の観光交流施設がある。

1階に地産品の直販所と観光案内所、2階に飲食&交流スペース、3階にテラスを設け、隣に展望台兼避難タワーが併設された建物。新居地区の新しい拠点として期待を集めている。

昨年の4月から新居地区に移り住み、オープンに向けて準備を進めていたのは地域おこし協力隊の永田さん(写真左)と高石さん。

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永田さんはもともと東京・渋谷の飲食店で店長を務めていた。その経験から、観光交流施設の2階の飲食&交流スペースを任されている。

「前に働いていたのはお客さまの数が尋常じゃないようなお店でしたけど、こっちではお客さまとの密なコミュニケーションができるんじゃないかなって。地域のお店はコミュニティの場として人が集まって、情報交換とか意見交換とか、いろんなことができる場がつくれるんじゃないかなって。それが楽しみですね」

聞いてみると、地域には活動的な若い人たちがいるそうだ。

たとえば、サーフボードと飲食のお店を営むB&Mさん。仁淀川の河口でサーフィンの大会を開くなど、地域を盛り上げようとさまざまな活動をしている。

ほかにも、陶芸を営む森田器製作所さん。以前、陶芸婚活を主催し、昼食をB&Mさんが用意するなど、横のつながりもあるそうだ。

こうした地元の若い人たちをはじめ、隣の地域の人や観光にやってくる人の交流の場になることを目指している。

準備を進めながら、永田さんはすでに新居地区に定住することを心に決めているという。

「仕事でも生活でも、とくに大きな壁にぶち当たったようなことはなく、とても順調に来れているんです。ただ、すごくお酒を呑むので最初は面食らったところが。東京にいたころの2年分の飲み会はすでに消化しているかな(笑)」

「人はほんといいですよ。都会で過ごしてきたよりしびれる毎日が過ごせるんじゃないかな。田舎ですけどすごく忙しくなると思うので、やりがいを持って働いて、自分と向き合えるんじゃないかなって思います」

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観光交流施設の1階、直販所と観光案内所を担当するのは高石さん。

いまは直販所に並べる商品を検討中だという。

「土佐にはおいしいものがたくさんあるんです。うるめいわしの刺身は大変おいしかったし、一番びっくりしたのはイタドリっていう野草。高知県の方はすごく好きで、こんなものがあるんだって感動したり。あとはやっぱり文旦ですよね。小夏の白い皮と一緒に食べる小夏もおいしいです」

昨年の4月からいろいろと計画していくなか、一筋縄ではいかない状況もあったそうだ。

「この施設を立ち上げるにも、いろんな思いをもってらっしゃる方がいたり、取り巻く環境もさまざま。そのなかでどうやってみなさんに納得していただけるか、行政とも地域住民とも違う立場の地域おこし協力隊の僕らが、橋渡し役になることが必要なんです」

高石さんは地域イベントのお手伝いに積極的に参加して、そこでさまざまな人の意見を聞いているという。本音を聞くだけでなく、そこで信頼を培っていくことも重要なのだそう。

「仲良くなっていくと、何かお願いごとをしても『ああいいよ!』ってすごく快く受け入れてくださるんですよね。生活をしていても、ご近所さんが畑から好きなものを好きなだけ採っていっていいよって」

「そういうのが、自分がこっちに来てよかったなって感じること。前はシステムエンジニアだったってこともあって、自分のやったことに対して相手の反応が分からなかったんですよね。こっちは良くも悪くも反応がある。それが魅力だし、すごく充実してますね」

高石さんは地域おこし協力隊の任期を終えた3年後をどうするのか、まだ決まってないという。観光交流施設での活動を通して自分がどうしていくかを定めていきたいと話していた。

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最後に訪ねたのは、土佐市で観光振興を行なっている協議会「土佐市観光Style」。

土佐市観光Styleは新居地区の新しい観光交流施設の運営主体となる団体だ。

まちあるき観光や産業体験観光、い草を使ったオブジェクトの商品開発など、土佐市の魅力を知る仕組みづくりを精力的に行っている。

観光交流施設に拠点を移し、これまでの事業を継続しながら、新たにできることを模索していくそう。もし観光業に携わりたいのなら、土佐市観光Styleの方々と一緒に体験ツアーを企画して、ガイドを務めるような仕事もあるという。

そのことを話してくれたのは、土佐市観光Style副代表の合田さん。

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合田さんはもともと愛媛出身。転勤を繰り返し、土佐でずっと暮らしていくことになったそう。

「土佐市って仁淀川がすごくきれいで、いいところだなって思って住みはじめたんです。けど地元の人には『わざわざこんなところに住まなくても』って言われたりして。このとき土佐市には観光施設もなければ発信しているところもなかったんですよ」

土佐市を「いいところだ」と言ってくれる外の人が増えれば、地元の人も魅力に気づき、地域が盛り上がっていくのではないか。そんな考えのもと、土佐市観光Styleの取り組みはスタートしたという。

「40年前には土佐市にい草農家が290軒以上もあったんですけど、いまは3軒しかないんです。い草農家さんをはじめいろんな産業で頑張っている方がいて、そういう人たちや産業をわたしは土佐市の宝であると思っていて」

「この宝に光を当てて知ってもらって、みんなで守っていって。それを子どもたちにも伝えて、子どもたちがいずれ帰ってきたいと思う場所にならないといけないなと思っていますね」

合田さんはどんな人に来てもらいたいですか?

「わたしは土佐市への思いを持つまでに長い時間がかかったんです。きっと地域おこし協力隊のみなさんも大変な面もあるでしょうし。ただ本気でこのまちに根付こうとしているなら、わたしたちもその人たちのことを土佐の宝だと思うので。そんな人たちを全力で応援していきたいと思っています」

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一生懸命な地域おこし協力隊を「わたしたちの宝」と言葉にしてくれる人がいる地域ってなかなかないんじゃないだろうか。地域おこし協力隊を担当する役場の高芝さん(写真左)も、「人生をかけて来てくれる人を全力でサポートしたい」と話してくれた。

先輩の協力隊もいて、とても入りやすい環境だと思います。お酒も飲めれば、すぐに地域の人ととけ込めるはず。

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まずは見学に行くのがおすすめです。明るい高芝さんが快く迎えてくれると思います。

(2016/1/21 森田曜光)

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