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日本を代表する山、富士山。古来より和歌や浮世絵のなかで象徴的に描かれてきたこの山は、2013年に世界遺産に登録されたことによって、海外からも注目を集めるようになりました。
そうした文化・芸術的な側面だけでなく、周囲には豊かな自然環境が広がり、休日には登山やアウトドアのレジャーを楽しみたい人たちが多く集まる場所にもなっています。
今回は、そんな富士山のふもとで働く仕事を紹介します。
株式会社フジヤマ・クオリティは、大きく分けてふたつの分野に事業を展開している会社です。
ひとつはアウトドア事業。キャンプ場やコテージなどの宿泊施設や、忍者をテーマにした「忍里 しのびの里」、専用の器具を着けて樹上を渡り歩く「初島アドベンチャー“SARUTOBI”」などのレジャー施設を運営しています。
そしてもうひとつが飲食物販事業です。地元の四季の食材を使ったレストランや森のなかでくつろげる「ハンモックカフェ」のほか、各地の特色を活かしたお土産屋さんなどを計14店舗構えています。
今回募集するのは、飲食物販事業部のスタッフ。各店舗での販売や売り場の企画運営、商品の買い付けなど、幅広く経験することになります。
さらには、パッケージデザインやオリジナル商品の開発に挑戦できる機会もあるそうです。
過去の経験にかかわらず、自分の手で売り場やモノをつくりあげていきたいと思う方は、ぜひ読んでみてください。
都内から電車を乗り継ぎ、富士急行線の富士山駅へ。うっすら積もった雪を車窓から眺めながら、ゆったりとした3時間ほどの旅路だった。
電車を降りると、いつもとは違う大きさの富士山が目に飛び込んでくる。ベンチに腰掛け、深呼吸。空気も澄んでいて気持ちいい。
取材先は「Gateway Fujiyama 富士山駅店」。駅直結の商業施設「Q—STA」1階に位置する玄関口の店舗だ。
店内には、地元のお菓子やお酒、工芸品や富士山にまつわるグッズなどが豊富に取り揃えられている。
「お店をぱっと見たときの印象はすごく大事にしていますね。『なんだろう?』ってワクワクしながら入ってみたら、『ここ、お土産屋さんなんだ』と後から気づいていただけるような。そんなお店づくりをしています」
そう話すのは、このお店の店長であり、物販スーパーバイザーの渡辺さん。各店舗の商品選定や売り場のレイアウト、ディスプレイの監修など幅広く携わっている方で、新店舗の立ち上げも担当しているという。
たしかに、このフロア全体の雰囲気からは、少し浮き上がっているように見える。
特に目につくのは、一番手前にある「ヤマナシハタオリトラベル」の文字。
「富士吉田市の伝統産業のひとつに、織物があるんですね。それを昔ながらのものではなくて、もっと身近でおしゃれなものとして広めていこうということで、3、40代ぐらいの若い世代の人たちが集まってものづくりをしているんです」
そもそものきっかけは、親会社である富士急行と商工会議所とのつながりだった。外からやってくる観光客だけでなく、地元の人にも織物を知ってもらおうと、店内の一部をショールーム兼販売スペースとして展開することになったそうだ。
ぱっと見た印象にもこだわるし、ひとつひとつの商品にも、その土地ならではのこだわりや想いを伝える工夫がされている。相当な時間がかかって、今の売り場ができているんだろう。
店舗によっても特徴が異なるという。
「たとえば、ここのお店は商業施設のなかにあって、4割ぐらいが常連さんなんですね。なので、日常的に使うモノの需要が多かったり。河口湖のお店は8割ほどが外国の方なので、英語や簡単な中国語に対応できるようにしていたり」
「昨年の秋にオープンした『しのびの里』では、衣装が忍者や着物で、店内も江戸の町並みをイメージしています。キャラクターショップでは、そのキャラクターの世界観がディスプレイにも表れますね」
今年の夏に新しくオープンする施設もあるし、今後も新規施設の開業が続く予定だそう。それぞれ異なる色を持っていて、すぐには同じ会社の運営する店舗だと気づかないかもしれない。
季節ごとの装飾も異なってくる。クリスマスにツリーやリースで飾り付ける店舗もあれば、子どもの日に鯉のぼりを揚げる店舗もある。
立ち上げ時は渡辺さんがディスプレイやレイアウトを決めることがほとんどだというけれど、落ち着いたらそのお店で働く人たち自身が考えてつくっていくものだという。
営業企画担当として、渡辺さんと一緒に売り場づくりや新規事業立ち上げ、社内研修などを行っている黒岩さんにもお話を伺う。
小さいころから絵やデザイン、きれいなものが好きだった黒岩さん。けれども、それは単に趣味のレベルでの話だったそう。
「ここで働いていると、ポップを書くときや、ディスプレイのイメージを伝えるのに絵が役に立ちますし。プライベートで出かけるときも、ほかのお店のいいところを写真に撮ってイメージを膨らませたりもします。そういう意味では、趣味から仕事に続いているなと思うところはありますね」
次第に、商品のパッケージや容器のデザインの相談をされることも増えてきた。
「最近では、ジャムサンドクッキー。はじめはプラスチックのタッパーみたいな容器に入っていたんです(笑)。中身は本当においしいので、そのままではもったいなかったんですよね」
「なので、業者さんと相談して、ビンに詰めることにしました。ラベルもその場で絵を描いて、ハサミで切ったものをお渡しして。それをもとにつくってもらいました」
高速道路のサービスエリアに出店している「頑固市場」では、ホタテや甘エビ、めかぶやスルメイカを漬けた「海彩漬」という商品が、発売から3年ほど経った今でもよく売れているという。ラベルを独自にデザインしただけでなく、このときは中身の味に関しても、業者さんと相談しながらつくりあげていった。
「自分がつくったものとか、ディスプレイしたものが売れるときはやっぱりうれしいです。その分思い入れも、商品に対する知識もありますから」
「お客さまに説明をして、知っていただく。その間にコミュニケーションをとれるのもうれしいですよね」
ここまでお話を伺ってみて、幅広く、自由度の高い関わり方ができそうな印象を受ける。
逆にどんなところが大変か聞いてみた。
「わたしは神奈川からの移住者なので、最初の年はものすごく寒かったですね。自宅の排水管が凍ってしまうぐらいの寒さです。あとは車がないと、生活する上では不便だと思います」
「きれいなまちですし、都心に暮らしたい人でなければ、楽しく暮らせると思うんですよね。一歩外に出れば富士山がある環境ですし、高速バスで1時間半ほどいけば、すぐに都内にもいけちゃうので」
続けて、渡辺さん。
「わたしは書類づくりが苦手なんですが、社内を通す稟議書はフォーマットが決まっているので、そこまで苦労することはないと思います」
「それよりもスタッフが一番大変だと思っているのは、きっとわたしに電話をかけてくることですね(笑)」
え、それはなぜですか?
「なにか報告や相談をされたときには、わたしは必ずなんで?って聞くんです。なぜそう思ったのか、疑問は全部なくしていきたいんですよ」
「電話がないと、今度は『最近電話ないけど大丈夫?』って突っ込むので。みんな内心ヒヤヒヤしてるんじゃないかな(笑)」
でもこれはきっと、ここで働く上でとても大事なことのような気がする。
なんとなく気に入ったという理由で商品を仕入れたり、ディスプレイを変えていくと、次第にお店の軸となるコンセプトが揺らいでいってしまう。
渡辺さんは「なぜ?」をとにかく問いかけることによって、それを未然に防いでいるのだと思う。
これまで複数の店舗で働いてきたという黒岩さんも、こう話す。
「どこのお店にも色がありますけど、コンセプトさえ飲み込めればどこでも働けると思います。それに、自店に対する愛情もそこから生まれてくると思うんですよ」
「社内でもいろんなお店があるので、あまり自分のお店だけと思いすぎてもよくないですが、他のお店との違いも知った上で、自分のお店を愛してほしいなと思います」
最後にお話を伺うのは、飲食物販事業部部長の犬飼さん。もともとはアウトドア事業部の担当だったものの、飲食物販事業の拡大に伴って異動。今では14ある店舗の統括責任者を務めている。
「今では会社全体の予算のうち、6割は飲食物販事業にあてているんですね。それだけ成長している理由は、スタッフ自身がその場所を感じて、自分たちで商品を選んだり、ディスプレイを変えたり、ポップを書いたりしているからだと思うんです」
「たとえば外国の方に対しては、値札に外国語表記をするだけじゃなく、手持ちのポップを見せながら商品を紹介したりします。そうすると、試食した方が『こっちきて!』と呼んでくれたりする。現場でないとわからないことを、スタッフ自身が考えて実現してくれていますね」
こうした取り組みは、周囲のほかのお店にも影響を与えているそうだ。手書きのポップをはじめたり、新店舗の立ち上げ時に相談がくるようにもなったという。
「やはり、オリジナル商品はうちの力を入れているところですね。このふたり(渡辺さん、黒岩さん)を見て、下の人が『わたしもつくりたい!』といって続いてくれたらうれしいですね」
社内には研修のプログラムもあるし、接客経験は必ずしも必要ない。
経験よりも、なんらかの想いを持った人にきてほしいと犬飼さんは話す。
「自分の想いを実現して、次につなげることができる会社だと思うので。自分の個性を活かしたい人と出会いたいですね」
残りのお二人にも、どんな方にきてほしいか聞いてみる。
まずは渡辺さん。
「仕事を楽しめれば、自然と興味もわいてきますよね。ポップだって、最初から書ける人はいませんでした。人を真似して何度も書いているうちに、真似される側になっていくんですね。なので、その場でその仕事を楽しめる人にきていただきたいです」
続いて、黒岩さん。
「お土産屋さんって、確固たる像もないですし、業界もないと思うんです。未発達な部分もありますが、わたしはこのお店は最先端だと思っています。お土産やさんの最先端で、新しくモノを生み出していけるような、創造力を持った人と働けたら楽しいですよね」
富士のふもとで、最先端を走る。楽しそうだと感じたら、ぜひ応募してみてください。
(2016/3/25 中川晃輔)