求人 NEW

つないでゆくもの

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

民芸品の手仕事ににじむつくり手の個性や、水晶のうつくしさ。

触れたときに、やわらかな気持ちにさせてくれるものがあります。

そういったものは、一体どんな魅力があるのだろう。

mederu - 1 (9) mederuのジュエリーは、「そのものの魅力」を見つけて引き出すようにかたちづくられています。

ジュエリーを通して、日本の技術や想いをつないでいく。

今回は、そんなジュエリーをつくる人、伝え届ける人の募集です。


東京の下町、浅草駅を降りる。観光のイメージがつよいけど、ここは革卸しの歴史がつづく職人の町でもある。

隅田川にそって15分ほど歩き、川沿いから一本入ると、辺りはお寺や公園のある穏やかなところ。そこにmederuのお店と工房があります。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 中へ入ると、店の中にも緑や春先の花が。

この日は、春を待つ新しい空気に添うような真珠のジュエリーが並んでいた。

店の奥にあるアトリエから2階へ上がり、スタッフのみなさんが昼ご飯を食べたり、話をするために集まるという食堂へ。

はじめに、「mederu jewely」 を立ち上げた黒川さんにお会いしました。

もともとアパレル業界で、ものづくりをしていたという黒川さん。仕事をするなかで、いいものがつくれても、世の中の人に伝わっていない現状を知ります。

「前につとめた職人のつくる鞄のブランドでは、つくる側ではなく、伝えることに注力しました」

“伝えること”に確かな手応えを感じていたころ、あるジュエリー職人と出会う。

「ふつう金属ってすごく冷たい印象があるんですけど、その職人のつくるジュエリーは、すごく温かみがありました。こういう曲線や温かみがとても好きで、そういうスタンダードなジュエリーが世の中にないなって思ったのが、最初のきっかけでした」

mederu - 1 (10) スタンダードなジュエリーとは、どういうものでしょう?

「スタンダードって、高級品という意味ではなくて、毎日つかえるいいもの、付き合っていくごとに味わいの増していくもののことだと思うんです」

たとえば、シャツ。素材や仕立てのよいものは、丈夫で長く着ることができるし、着るうちに柔らかくなって体に馴染んでいく。

「そんなふうに長く付き合っていきたいなと思うものって、素材がいいとか丈夫というのも大事なんですけど、同時に、今日みても新鮮とか、今日見てもかわいいなって思うこともすごく大事で」

今日見てもかわいいと思うもの。

「それって、そのものの魅力だと思うんです。たとえば、これは陶器の豆皿ですけど、こういった民芸品は手づくりだから100%整ったかたちにはならない」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「でも、一つひとつどうしても滲みでてしまう手づくりの個性って、ぼくは愛らしいなと思うんですよね。そんな思いもあって、ジュエリーをつくるときも職人さんと一緒につくることにしました」

実際つくりはじめると、ジュエリーは基本的に分業制であることが見えてきた。

一番最初のかたちをつくるキャスト、石留め、研磨、彫金など。それぞれの工程に職人さんがいて、それぞれのもとに毎日通い、自分たちが理想的だと思うジュエリーをつくってきた。

素材や、技術をもつ職人を訪ねて全国を回るうち、あることに気がつきます。

「ジュエリーの魅力って、古くからあるものとつながっていることなんです。日本のジュエリーは、漆のような日本らしい素材や、日本の工芸品に使われていた技術でつくられたものもあるんです」

そういった魅力を探求したジュエリーが、“labo”というライン。

mederu - 1 (11) 自分たちが生まれるより前からあるような素材や技術、そのものの魅力を発見し、今の技術やデザインにして職人さんと一緒につくっています。

「ぼくたちは、ものをつくるときにちゃんとそのものの魅力を大切にしたいなと思っているんです」

「実際に産地や職人のもとへ何度も足を運びながら、昔つくったものとか、こういうことをやった、ここが魅力的だよねとか、そういう話を聞くことによって、私たちが知らない、新しい発見があると思うんですよね。ぼくたちは古くからあるものを見て学びながら、今の技術でもっとよくできるものがあれば、逆に職人さんに伝えることもあります」

古いものと、新しいものの見方。それが融け合って、技術や想いは更新されるのかもしれない。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「メデルはジュエリーというかたちをつくっていますけど、長く培ってきた技術や想いをつないでいくことも大事にしたいなと思っています」

たとえば、技術をもったおじいちゃんが引退してしまったら、去年までつくれたものでも、今年はもうつくれない。

そのおじいちゃんがつくればものの数分でできることでも、一度技術が途絶えてしまうと取り戻すのに30年くらいかかるそう。

「やっぱり現場に行ってその人たちと共感してつくりたい。喜びを共有できたほうが、ものづくりの環境をよりよくしていけるんじゃないかなと思っているんです」


メデルではたらく人はどんなことを感じているんだろう。

右から開発をしている浜本さんと、販売を担当している秋谷さんにお話を聞きました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ふたりとも、mederuのブログを読んだのがきっかけだそう。そのときのことを、浜本さんはこんなふうに話します。

「浅草の行事や街の風景から感じたことや、アップルパイを焼いたとか、ジュエリーとは関係のないことばかりだったんですけど、ここは何かよさそうだという勘が働いて(笑)」

浜本さんは開発部でジュエリーをつくっています。

どんなふうにつくっているのか聞いてみた。

「私たちがつくるとき大事にしているのは、産地も職人も実際に会いにいくということ。現場を見るなかで、実はこういうところが魅力だよね、というのを発掘する感覚が私たちに求められているのだと思います」

魅力を見つけてつなげ、かたちにするようなイメージ。

たとえば、と水晶のジュエリーを見せてくれた。

mederu - 1 (12) 水晶は、山梨の甲府が産地。浜本さんは、甲府を訪れます。

交通網が発達していない時代、技術は産地のそばで培われたため、甲府には職人さんも多くいるそうです。

研磨や彫刻の職人にとって、どれだけ複雑で細かいカットができるかというのが腕の見せ所なのだとか。浜本さんが職人を訪ねて見せてもらった水晶も、細かくカットされたダイヤモンドのような派手な輝きをもっていた。

お話を聞いたり、産地を見ているうちにこんなことに気がつきます。

「水晶のよさって、ダイヤのようなキラキラ感ではなく、日本女性が共感できるような静かに澄んだ感じなんじゃないかと思ったんです」

「そこで、水晶自体のもつ穏やかな魅力が引き立つよう、奥行きのでるようなカットをしたいです、と職人さんにお伝えしました」

どんなカットがいいか、曇りガラスのような加工を入れたほうがいいのか。何度も足を運び、一緒に試しながらつくっていった。

mederu - 1 (13) 「一番大事なのは、どこまで職人さんたちの懐に入れるか、ということかもしれません」

浜本さんは、職人さんを訪ねるたびにまるで家族のように接してもらうことも多いそうです。

「コミュニケーションの中でいろんなお話ができるようになるんですよね。でも、何十年もやっていらっしゃる熟練の職人さんたちからしたら、私たちは素人同然かもしれない。だからこそ、一緒にやっていくなかでこちら側の熱意を伝え続けていくことが、ものの魅力を見つけるために必要だと思います」

もうひとつ。ものの魅力に気づくために、常日頃からアンテナを張って好奇心を広くもっておくようにしているといいます。

「最近は、和菓子が気になっています。お茶の香りを邪魔しない素朴な小麦の焼けた匂いとか、そういうほのかさが魅力だよね、って」

となりで聞いていた秋谷さんが、ふふふと笑いながら話してくれた。

「いまは、和菓子に興味があるんだね。いつも話をしながら、こういうことを考えてつくっているんだな、と知れるのは面白いです」

「つくるときの苦悩やいろんなところに行っているのも知っているので、新しいジュエリーがでたときはその思いを受け継いでお店へ出ています」

お客さんとの接し方次第で、ジュエリーの印象を左右することにもなるから、責任重大だそう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 気をつけていることはありますか?

「たとえば、なにかやってあげたいと思っても、そのお客さまにとってベストじゃないとただのお節介になってしまう。その人にとって今、何が一番いいことなのかなっていうのを考えながらお話をするようにしています」

とくに、ブライダルリングを買いに来る男性は緊張していて、お店に「失礼します」という感じで入って来る方も。そんなときは、一緒に選ぶような感覚でお話しするそう。

「買ってもらえたから良かった、じゃなくて、その後も長くつかってほしいなと思っているんです」

「そのために、お客さまに長く添えるものになるように、考えてつくっていることをお伝えします。ちゃんと気持ちが通じあえば、買ったあともお手入れしながら長く使ってもらえるかな、というところを大事にしています」

ふたたび、浜本さん。

「私たちがやっていきたいことって、ほんとに一過性のものづくりじゃなくて、続けていかないと意味がないことなんです」

「そのためには、ずっといいものをつくり続けないといけない。つくる側はそのものの魅力を探せるような視野の広さが必要だし、伝える側はファンになってもらえるような接客をしないといけない」

とても地道で時間のかかることかもしれません。

けれど、じっくりと人やものづくりに向き合いたい人にとっては、とてもいい環境があると思います。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ジュエリーを通して、日本のものづくりの技術やものを愛でる文化をつないでいく。

歴史の一部分になるような、奥深い仕事だと思います。

(2016/3/24 倉島友香)