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「時間の切り売りというかたちではなく、みんなでいる時間が楽しいなと思ってもらいたいです。仕事だから付き合うということではなく、会社がひとつのかすがいとなって輪が広がっていく、そんな会社にしていきたいんです」働く自分と、それ以外の自分。
ワークライフバランスという言葉が頻繁に使われるようになり、会社と自分との関係を考えることが増えたように思います。
会社と自分が良い関係でいるためにはどうしたら良いのだろう。それは、効率よく数字を出そうとか自分だけが儲けようとか、そういうものだけでは手に入れられないことのような気がします。
訪れたのは、愛知県や岐阜県で事業を展開している株式会社桶庄。
明治5年に木桶の販売から始まったその歴史は、時代とともに形をかえて、今ではガス周りのメンテナンス・リフォーム・不動産・リノベーションといった4つの事業で住まいを総合的にサポートしています。
今回募集するのは、地域の家々を訪問しガス周りのメンテナンスをする”ふれあい巡回スタッフ”と、リフォームの営業や現場管理をする”リフォームアドバイザー”。
どちらも、経験は問いません。
目の前にいる人たちに喜んでもらうと、自ずとワークとライフは近寄っていくと思います。そして仕事をしているときも、自分の時間になっていく。
きれいごとのようだけれど、それを実践しようとしている会社だと思います。
名古屋駅から地下鉄に乗って四駅目。高岳駅から歩くこと20分ほどで、桶庄のショールームと商談スペースを兼ねたオフィスに到着した。
意外と駅から遠く、迷ってしまった私をニコニコと入り口で待っていてくれたのは佐藤寛之さん。
4代目にあたる現社長を父親に持つ、桶庄の常務取締役だ。
まずは桶庄の仕事について聞いてみる。
「うちにはいろんな部署があるので、お客様の一生に合わせた付き合い方をしています」
一生に合わせた付き合い方。
「たとえば、桶庄でリノベーションした家をつくります。住んでいるうちに水漏れやガスの不調が起きたときにはメンテナンスの者が駆けつけて修理対応をして」
「子どもが生まれたり、二世帯にするということならリフォームを行います。最後に老夫婦二人だけになって、それまで住んでいた家を売却するという場合には不動産部門が動くというふうです」
お客さんに対して、生涯をかけて会社全体で対応するというのが桶庄の
ポリシーなのだそう。
地域密着で長年営んできた会社だからこそ、ひとりのお客様に何度も使ってもらう。その循環を生みつづけることが大切なのだとお話ししてくれた。
佐藤さん自身についてたずねると、おっとりした口調で「子供のころから人見知りで、商売人には向いとらんと言われて育ちました」とのこと。
佐藤さんが桶庄に入社したのは4年前。28歳のときだそう。
仕事でストレスを抱えた両親や家族経営のむずかしい部分を子どもながらに感じて育ったことで、学生時代から両親と距離を置いてしまっていた佐藤さん。
自身の体調不良で生死を考えたことをきっかけに、10年間口をきいていなかった父親と和解し、桶庄に入社することを決めたのだといいます。
「入社式でみんなの前で僕が挨拶したときの両親の顔が、今でも忘れられないです。あんなにうれしそうな親の顔は見たことがなかったですね」
父親の会社を家族の一人として見ていたからこそ、佐藤さんが桶庄で目指すものははっきりとしている。
「家族に応援される会社がいいですね。子どもに自慢ができて、子どもがお父さんに夢を見られる、そんな会社にしたいです」
お客さんや社員の一生をあずかる桶庄は、関わる人みんなと一生ものの縁を紡いでいくことを目指しているそう。
それぞれの部署で役割分担しながら、お客さんの一生に合わせた付き合いをする桶庄。そのなかで住まいのメンテナンスを担当する”ふれあい巡回スタッフ” はどんな仕事をしているのだろう。
加藤さんにお話を伺った。
「まずは自分たちで”この日時に回ります”というチラシを担当地区のお宅にポスティングしておきます。その日時にお宅に伺って、給湯器の調子が悪い、コンロの火の点きが悪いということであれば修理をして差し上げるんです」
名前のとおり巡回スタッフは、地域の家々をまわって住まいのお困りごとを聞いてまわる。それはとても地道で大変そう。
門前払いのときもあるんじゃないですか?
「もちろん門前払いのこともありますし、そっちのほうが今は当然かもしれない。僕らも訪問したお宅の25%の方にお会いするのを目標としていて。お会いできた方には、全力でお役立ちできるようにします」
人懐こくキラキラした目で語ってくれる加藤さん。そんな巡回スタッフの仕事はただ修理をするだけではないといいます。
「まずは新規のお客さまに、ガスの修理屋というだけではない桶庄を知ってもらうことが、ふれあい巡回スタッフの最も大切な業務なんです」
その仕事は、生涯関わるかもしれないお客さんをガスの修理点検をきっかけに見つけ出し、縁をむすぶこと。たとえば、と言って担当したお客さんのお話をしてくれた。
「そのお宅には給湯器が点火しないということで伺いました。修理交換をして差し上げて、終了するときに会社の案内をお渡ししてリフォーム全般もやっているとお話したんです」
お客さんにガス修理だけじゃないイメージを持たせるんですね。
「お客さんからしたら突然来たガス屋さんなのにそんなこと任せちゃって大丈夫?という感覚だったと思うんですが、説明して帰ったらそのあとお風呂のリフォームのご依頼を頂いて」
「さらに娘さんの嫁ぎ先の整体院が新しいお店を出すときにも『加藤さん、こういうのって相談してもいいの?』ってご相談を受けました」
具体的な依頼だけではなくて住まいの様々なことを相談されることが多いのは巡回スタッフならではなのだそう。相談したい相手の顔が思い浮かぶような付き合い方をしないと、こんなふうに長きにわたって相談をされることはないと思う。
メンテナンスをするなかでリフォーム担当に引きつぐ仕事もあるそうで、その際も不安にさせないよう最初の打ち合わせには同席したり、桶庄とお客さんとの関係をとても大事にしている。
「僕らはプロなので、お客さんの立場にならないとお困りごとの解決にはならないと思うんです。メンテナンスとリフォームで完全に分業にしたほうが効率はいいけれど、お客さんに少しでも安心感と愛着を持って欲しいから」
ノルマがないという桶庄では数字をあげることよりもお風呂場は寒くないだろうか、台所は不便じゃないだろうか、そんな視点でお客さんと接するのだといいます。
1件1件に誠実に対応することが、お客さんの生涯の喜びや信頼に変わり、次の桶庄の仕事をつくっていく。「手に職もつけられて、こんなにいい仕事はないですよ」と笑う加藤さんはとてもいい顔をしていました。
巡回スタッフから受けた依頼や、広告に反響があったお客さんにリフォームの提案をしていくのがリフォームアドバイザー。
桶庄では、営業から現場管理まで担当がすべて見るので、何度もお客さんのお宅に伺うことになる。
続いてお話ししてくれたのは高木さん。今はリノベーション部門に異動されていますが、昨年まで10年間リフォームアドバイザーをしていた方です。
「リフォームはリピートしてご依頼くださる方が多いので、提案から工事の進捗報告などで何度もお会いして、人対人の関係をつくるようにしています」
人対人。
「そうです。僕は結構自分の話をしますね。特に子供が生まれてからは家族の話をしたり」
いろんな家庭で話しをする機会があるから、人生経験があるほうが人対人の関係をつくりやすいのかもしれない。
リフォームに関しての経験はなくても大丈夫なのでしょうか?
「未経験者でもウェルカムですよ。はいったばかりの人に大きな仕事をいきなり任せるということはありませんから。それこそ網戸の張り替えのようなものから段階を踏んでステップアップしていけます」
お客さんとの関係づくりの一環として、桶庄では過去に一度でも取引があったお客さんを対象として年に1回のバスツアーを企画している。運転手以外は添乗員もすべて桶庄の社員。旅程やイベント・お土産、すべて自分たちのオリジナルだという。
どんなことをするのでしょう?
「プロの旅行会社にはないものが目白押しです。お客様のご家族からこっそり預かっておいた感謝の気持ちを記した手紙をお渡ししたり、結婚◯十年記念のお祝いでご主人から奥さまへ一言いただくとか」
「そのほかにもサプライズが盛りだくさん。もちろん名古屋駅での社員総動員のお出迎え付きです(笑)。旅行を通じて桶庄とだけではなく、ご家族の結びつきが強くなってもらえたらと思っています」
参加したお客さんの中にはサプライズに涙したり、リピートしてくれる方もいるという。その顔を想像しながらツアーを企画するチームはあくまでも志願制。高木さんも企画に携わったことがあるのだそう。
ビジネスとは離れたところでも、関わる人と良い関係を築きたいという気持ちが桶庄で働くスタッフには感じられる。
それは社内でも同じこと。家族ぐるみのレクリエーションや社員どうしのあつまり、人に感謝を伝えるということをとても大事にしている桶庄ならではの伝統がたくさんあるそうです。
それは効率や生産性とは真逆にあるものかもしれない。ときにスピード感がないように感じるかもしれない。
働くことは会社を通して人とつながること。
その人たちとの関わりがより良いものになれば、自ずと仕事は一生をかけたくなるものになるように思いました。
仕事は仕事、と割り切るのではなく、目の前の人との関わりを積み重ねていく。
そうやって一生ものの縁を紡いでいくのもいいかな、と思った方はぜひ応募してみてください。
(2016/3/14 遠藤沙紀)