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人の住まいをつくる仕事は、とても尊いものだと思います。きっと建築や不動産の仕事をしている人は、大きな希望を持って働きはじめた方も多いのでしょうけど、実際にはどこにでもあるような空間をつくることになったり、クレームを恐れるあまり型にはまった仕事しかできなかったり、売ってしまったあとのことを考えずについつい目先の営業にばかり目が向いてしまったり。
そうやっていつの間にか、はじめたころのことをすっかり忘れてしまうこともあるかもしれません。
コプラスは、コーポラティブハウスなどをはじめ、じっくりと人と関わりながら時間をかけて、集合住宅などをつくっている会社です。
コーポラティブハウスのこと、ご存知ですか?
集合住宅を建てる前から住みたい人たちが集まって、自由に設計しながら、建てるものです。つまり、一つひとつ時間がかかるのでとても大変なんですが、この仕事に魅了される人もいます。
今回はコーポラティブハウスの企画・運営をするコーディネーター、設計担当者、そして建てたあとの建物を運営する人を募集します。
長い時間がかかるけれど、その先に喜びのある仕事だと思います。
渋谷駅を出て道玄坂をあがっていく。坂をあがりきって、玉川通りをわたったところにコプラスの事務所があります。
まず話を伺ったのが鈴田さんです。
もともと不動産の仕事をしていた方です。有効に活用されていない土地を見つけて、開発するために土地を整理する仕事をやっていたそうです。
なぜ転職したいと思ったのですか?
「地主さんとの権利調整もほとんど終わると、あとは住んでいる方のところに行って、開発するので出ていってください、という話をするんですけど、すごく建物に愛着のある骨董屋さんだったんです」
その方は鈴田さんに「便利になるということはわかるから、事業自体は否定しない。けれど自分はこの建物がすごく好きなんだ」と話された。
それまでは自分がやりたい仕事をしていると思っていたけれども、自問自答するようになってしまった。
「あとはやっぱり自分のつくっているマンションは、どこにでもあるようなもので。住まい手にも自由はないですし、もっと面白い建物ができるんじゃないかと思いました」
そんなときに友人から教えてもらって、日本仕事百貨を見たそうです。そこで出会ったのがコプラスだった。
コーポラティブハウスのことは知らなかったけれど、自分の興味にも合ったので、話はトントン拍子に進んでいった。
そして、入社して出会ったのは「自分の家」という意識が高い人たち。
コーポラティブハウスを一緒につくり、屋上菜園で野菜を育て、飲み会もする。
それまでの仕事では考えられないことだった。時間をかければかけるほど、仕事に興味が生まれていく。
「利便性とか資産価値だけじゃなくて、自分たちでつくったという思い入れのある開発ができたのかな、って思ったんです。この仕事を選んでよかったなと思いました」
それにしても鈴田さんを魅了したコーポラティブハウスってどういうものなのだろう?
それを理解するには、業界経験の長い大澤さんの話が参考になりそうです。
大澤さんはなんだか親しみがあって、安心できるような方。
コーポラティブハウスのコーディネーターをしていますが、はじめはマンションディベロッパーで働いていたそうです。
「金融機関系の固い会社だったんですけど、バブルがはじけたときに早期退職を募集していたんです。それであらためて自分の仕事を考えてみたら、もしリストラされたら生きていけないな、と思ったんです」
生きていけない?
「仕事ができた気になっている人も多かったんです。自分も会社の中なら生きていけるかもしれないけど、外だったら使い物にならないのでは、と思いました」
そんなときに見つけたのがコーポラティブハウスの仕事。
「4、5年必死にやったら力がつくだろうなと思って。そしたらまた大手に戻れるかもしれないと思って」
なぜ力がつくと思ったのですか?
「土地の仕込みから、企画、入居者募集、それに運営、建物の引き渡しまで、一人でできるんです」
「これは面白いぞ、と思って働いていたら、ハマってしまったんです(笑) 2、3年でディベロッパーの10年の経験がつくように思いました」
働き続けて18年。
やりがいと大変さが紙一重の仕事だと思うのですが、どこが大変だと思いますか?
「なんていえばいいのかな。すごく悪い言い方なんですけど、生ものなんです」
生もの。
「一緒に家をつくっていくものだからです。トラブルになったときの怖さも知っています。もうこの歳なら、トラブルを起こさない自負はあるんですけど」
「辞めたくなったことだって何度もありますよ。一生懸命やっていたのに、泣かれてしまうことだって」
どんなときですか?
「たとえば、プロが見たらうまくまとまっているものを提案しても、その良さを共有できていなかったり。コミュニケーションが大切なんです。8割が聞く仕事ですね」
まずは話を聞く。その姿勢が大切だと思う。
けれども、普通は自分の住まいを考えるなんてなかなか経験しないから、どういうものが住みやすいデザインなのかわかる人は少ない。
だからこそ、話を聞きつつ、相手がまだイメージできていないものを、提案しながらつくっていく必要がある。
「お客さんにすべて合わせるのはプロとしてダメだと思うんです。ちゃんと話をしながら、こちらの世界も知ってもらう努力をする」
たとえば、大澤さんが10数年前に担当して、ちょっとトラブルもあった案件があった。
その方から久しぶりに「リフォームしたい」という連絡が。
「すごい愛着をもって住んでいて、自分が売らないのは住みやすいからだし、結局いい家だった、と言われたんです」
もしかしたら、不動産って、売ったら終わり、みたいなこともあるけれど、長期的な仕事なのかもしれない。コプラスの仕事は、ずっと続いてくものをつくっているように思う。
「あと本来、家を持つことは、買うことじゃないと思うんです。『つくる』ということ。その原理原則にのっとってやっている仕組みだと思います」
たしかに家って、昔はみんなつくるものだった。
土地を買って、大工さんにお願いするように、すでにあるものを買うというよりも、プロと一緒になって考えていくのが普通だった。
今では与えられたものから選ぶことが、当たり前になってしまったかもしれない。
「ぼくらは販売って言いません。募集って言うんですね。ディベロッパーは人が集まったら営業の仕事は終わりかもしれないけれど、ぼくらはそこからスタートなんです」
スタートからはどんな仕事がはじまるのだろう?
設計の立場でコーポラティブハウスをつくっている永久さんにも伺いました。もともと有名な建築家の設計事務所で働いていた方です。
「はじめは3年と思って、アトリエ事務所にいきました。そのなかで転職するきっかけになったのが、最後に担当したプロジェクトでした」
それは個人の地主さんが、自宅のとなりに賃貸マンションをもっていて、それをリノベーションして再生させよう、というものだった。
「実は、これがお客さんと直接取り組むはじめての仕事でした」
それまでは施主の顔が見えなかったんですね。
「そうですね。ご高齢の方で、次の世代に不動産を引き継いでいくためのものでした」
「そこで、受け継がれていくものへの愛着とか、建物にはいろんなストーリーがあることを知って。それが今の仕事に至るきっかけです」
コーポラティブハウスって、どういうイメージでしたか?
「実は学生時代に、となりの研究室ではコーポラティブハウスの研究をしていたんですけど、そのときは『一人ひとりのお客さんと密にコミュニケーションとるなんて大変そう、もっと大きなことをやりたいな』って考え方だったんです」
けれどもコプラスで働くうちに、その面白さに気づいてく。
「やっぱり、いろんな人とつくりあげていくのが、この仕事の面白さだと思うんです。もちろん、大変なこともあるんですけど、一緒に考えていけるのが醍醐味なんです」
たとえば、コーポラティブハウスの説明会では、設計者が自らプレゼンすることもある。
顔の見えない人に設計するのではなく、まず自分の思いを話すことができるし、一緒につくり続けていくことができる。
「目を見ながら仕事ができる。それが圧倒的な違いでしょうね。とても息の長い仕事ですけど」
やっぱり普通の不動産の仕事とは、全然違うようだ。
どんな人が向いているのだろう?
あらためて大澤さんに聞いてみると、予想外の答えだった。
「ちょっと思いつきかもしれないけれど、分譲マンションをやっていた人がいいと思います」
なぜですか?
「ある程度働いた人なら、自分の分譲マンションに対する考え方が形になっているだろうし、コーポラティブハウスのほうが合理的なこともよくわかるようになってくるので」
たしかに業界を知らずに憧れで仕事をするよりも、働いてみて心底実感したほうが、コプラスの仕事の大切さがよくわかるように思います。
「ほんと、うちの会社、変態って言われますからね(笑)」
たしかに苦労を買ってでもしているように思います(笑)
「でも、うちみたいなのは、世の中が不況のときも強いほうなんですよ」
なぜですか?
「景気がいいときは、工事費も土地代もあがってしまう。景気が悪いときに買おうと思ったら、今度は融資が難しくなる」
「けれどもうちの会社は、一緒に建てるところからはじめるので、お客さんたちの与信力で融資してもらえるんです。だから誰もが苦しいときに強いのが強みです」
リーマンショック以降、景気は拡大しているけれども、いつまた不況がやってくるかはわからない。
そんなときに強いビジネスモデルだと思うし、働く個人にとっても、あらゆることを経験できるので、生きる力がつきやすい会社だと思います。
さらにコーポラティブハウスで培った「人と人とのつながり=コミュニティ」を育むノウハウを生かして、いろんな領域に広がりつつあるそうです。
賃貸住宅にもコミュニティを、ということでコプラスが提案している「コミュニティ賃貸」は、共用の屋上菜園やコモンルームがあり、入居者同士のつながりを育みます。
そんなユニークな物件の企画・運営・コンサルティングに携われる「PM事業部スタッフ」も募集しているようです。
住宅以外にも昨年末には新宿で、ゲスト同士の交流を促す場をもつホステルを設計。
福岡では地元の方々と一緒に廃業旅館を断食施設として再生し、まちづくりを活性化する事業も進めているそうです。
ユニークでいいものをつくるから、いろんな相談が届くのだと思います。
もし不動産業界で働いていて、次の仕事を探しているならどうですか?
一つひとつ息の長いプロジェクトが多いですけれど、ここでしか経験できないことがたくさんあると思います。
(2016/4/25 ナカムラケンタ)