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映像という手段

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「仕事とは」

その答えは人によってさまざまだと思います。

もちろん生活するための手段でもあるけれど、わたしにとって仕事は人と関わる理由です。

一緒に働く人も、仕事を通して出会う人も。ただの知り合い、というのではなく、仕事という理由があるからできる関わり方があると思っています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 今回出会った株式会社えんがわのみなさんは、映像に関わる仕事をしています。

えんがわは東京・恵比寿に本社があるプラットイーズという会社の子会社としてはじまりました。働いている場所は、徳島の神山という町。

ここで映像エンジニアやシステムエンジニアとして働く人を募集します。この環境をたのしめる人であれば経験は問いません。

自分の視野を広げるため、地域の人とつながりをつくるため、大切なものを未来に残すために。仕事をすることが、それぞれにとっていい意味で「手段」になっているように感じました。


徳島市内から神山へは車で40分ほど。山に囲まれるこの町には、アーティストやクリエイター、サテライトオフィスで働く人など、移住者が集まっている。

今や神山の顔の1つにもなった「えんがわオフィス」。ここはプラットイーズが古民家を改装して、サテライトオフィスにした場所だ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 出迎えてくれた谷脇さんはもともと徳島が地元で、社会人22年目にしてプラットイーズに転職をした方。会社のことを聞いてみる。

「プラットイーズはテレビ、映像に関わる業務をしています。すごく簡単に言うと映像をみて欲しい人、届けたい人に届ける仕事ですね」

今はテレビの前にいなくても、インターネットを通して多くの映像をみることができるようになった。

どの映像をみるか選ぶとき、手がかりになるのはあらすじや出演者、映像の顔になるサムネイルやクチコミの星の数。これらの「メタデータ」とよばれる情報が映像についているからこそ、検索してみたいものを選ぶことができる。

映像にメタデータをつけたり、編集したりするのがプラットイーズの主な仕事の1つ。

そのほかにも放送局が時間通りに番組を放映することができるシステムの開発、CM枠を売るためのプロ向け番組表の制作など、映像に関わるさまざま仕事をしている。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA えんがわオフィスでは20名ほどのスタッフが働いている。プラットイーズとえんがわのスタッフがそれぞれ半分ずつ。やっている仕事は垣根なく「映像を残す」事業を中心に取り組んでいる。

その1つは今まで放映局がテープとして保管してきたものを、扱いやすい形式に整え、メタデータをつけて、いつでも探せる状態で保管をしていくというもの。

テープの状態だと映像を探しにくいし、保管するための場所も必要になる。映像の保管、そして撮影、編集する環境は日々進化しているから、最適な方法に適合させていく必要がある。

最近は「4K」という言葉を耳にするようになったけれど、そもそもなんのことですか。

「フルハイビジョンの4倍の解像度の映像のことを言います。テレビの放送がアナログからデジタルになりましたが、さらにきれいな映像をみることができるように、4K放送へと進化してきています。えんがわオフィスができた2年半前には、まだ4K映像自体がなかったので、僕らも自分たちで撮るところからはじめました」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA もう1つ力を入れて取り組んでいるのが「地域アーカイブス」と呼ばれるもの。

「古い写真や映像をデジタル化したり、今ある風景や人をきれいな4K映像で撮って残していきます。ただ残すのではなくて、メタデータをつけて使いやすい状態で残しておくんです」

保護する、とは少し違うんですね。

「地域の様子を伝えるものは、時間がたてばたつほど貴重で価値のあるものになると思うんです。けれど、使いもしないものをとっておくのは難しいですよね。使える状態にしておくことで、未来に残していく仕事です」

最初は神山や徳島県のようすをアーカイブしはじめた。昨年からは行政と連携しながら、より誰でも利用しやすいものになってきているそう。ゆくゆくは他の地域にも、サテライトオフィスを構えながら地域アーカイブスをする、というかたちを広げていきたい。

「撮影や編集と聞くと華やかに聞こえるかもしれないけれど、アーカイブ自体は地道な仕事です。けれど今普通だと思っている風景を映像とメタデータを合わせて残しておくことが、50年後、100年後にすごく意味が出てくることだと思うんです」

昔のことを知っている人の話や、今ここに生きている人のこと。映像という形だからこそ、伝えられることがある。


実際に地域アーカイブスを担当している兼村さん、石川さんにも話を聞いてみる。

口数の少ない2人は、1年半ほどここで働く同期のような存在なんだとか。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 左の兼村さんは沖縄出身。大学進学で沖縄を出てから、地域との関わりを考えるようになった。

「地元を外からちゃんとみることができたんです。漠然と地域に関わることがしたいと思ったけれど、具体的な方法がわからないまま過ごしていました」

歴史や文化を知ることが好きだったので、卒業後は京都に移り住んだ。地域に関わる活動もしていたけれど、なかなか仕事につなげることができなかった。

そんなときに「神山塾」を知る。神山で半年間過ごし、給料をもらいながら地域に関わるプロジェクト。半年したら京都に戻ってこよう。最初はそう考えながら、神山にやってきた。

engawa - 7 「自分の力不足もあって、京都ではうまくいかなかったんです。でも神山には新しいことに挑戦する人や応援してくれる人がたくさんいる。もう少し、自分もここでやってみようと思ったんです」

神山塾の同期の中には、この町で靴屋や惣菜屋をはじめる仲間もいた。手探りながらも進んでいけるこの環境の中で働いてみたいと思った。

ちょうどえんがわでスタッフを募集していたけれど、映像に関わる仕事をした経験も、知識もあるわけではなかった。

「正直、映像が好きでこれ1本で食っていくぞ、みたいなことを考えているわけではありませんでした。映像が、地域に関わる手段になると思ったんです」

地域アーカイブスを行うために町に暮らす人に取材をしたり、さまざまな風景を撮りにいくことになる。

ただ住んでいても話す機会もなかった人に、仕事という理由をつけて会いにいく。それは兼村さんにとって、仕事をする大きな理由になっている。

「普通に生活する人たちの話が聞けたり、いい景色をみることができる。機材は重いし、自然は厳しくて大変なことも多いんですけどね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA となりで話を聞いている石川さんは、小中学校を神山で過ごした地元の人。大阪の大学では仲間たちと自主映画をつくっていたそう。

縁があって映像の編集をする仕事をすることになったけれど、2年半ほど働いて、徳島で仕事を探すことになる。もともとプラットイーズのことは「地元で映像の仕事をしている会社」として知っていた。

「それまでは編集を担当していたんですが、ここでは企画から撮影、編集、納品まで自分でやります。調べたり教えてもらったり。自分でやってみないとわからないことも多いです」

「よくもわるくも自由な会社です。自分でやりたいと思ったら『やったらええんちゃう』ってやらせてくれる。でももちろん責任もついてきます」

数百万円する機材を使わせてくれたり、試しにナレーションの文章を読んでみたらすんなり採用されたこともある。びっくりするくらい軽やかに決まるけれど、実際にやるのは自分。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「去年の夏、阿波踊りの撮影から編集までを担当することになったんです。上映するイベントが決まっていたけれど、やればやるほどきりがなくなってしまって。締切がある中で編集をしていくのが大変でした」

いそがしいときには、時間がいくらあっても足りないと感じることもあるそう。

「神山で阿波踊りを踊る人たちの取材もしたんです。長い期間取材をさせてもらい関係性もできていたので、上映するときはどういう反応があるのか心配しました。でもとても喜んでもらえたんです」

「こういうのいいな、って。ここで働くようになって、人との付き合い方が変わった気がします」


もう1人紹介したいのが橋本さん。「兼村さんも石川さんも、スイッチが入るとすごいしゃべるんですよ」と笑いながら教えてくれた。

橋本さんは大阪のテレビ番組のAD、音楽の著作権管理を経験したあと、地元である徳島に戻ってきた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「ここで働きはじめたのは去年の11月です。入ってすぐ、会社が主催した4K映画祭というイベントをの準備を手伝うことになりました。本番まであと1ヶ月だっていうのに、なんにも決まってなくてびっくりしたんです」

バスの運行を確認したり、上映スケジュールを決めたり。入社してからすぐ、怒涛の日々が待っていた。

結果、イベントは大盛況。神山という田舎に、3日で2900人もの人が訪れた。

いろいろなことにチャレンジしていく会社だからこそ、ただ淡々と映像をつくるだけが仕事というわけでもなさそうだ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA イベントが落ち着いたあとは、お遍路のPRをするための映像制作を担当。石川さんと同じように、企画から撮影、編集や音を入れる作業まですべて自分で行っている。

最初は手探りかもしれないけれど、もちろん映像としての質は求められる。

「正解がないんです。けれど、仕事の進め方やつくったものが前よりも少しずつよくなっていくのを実感します。昨日の自分よりできることが増えるし、視野がどんどん広がっていくんです」

働きはじめてまだ数ヶ月だけれど、神山という環境をいかしてできることを考えているそう。

「神山にはいろいろな働き方をしている人、個性的な人がたくさんいるんです。もっと関わりをつくって、一緒におもしろいことをしたいなって思っています」

engawa - 3 (1) 日々緑が鮮やかになっていく、清々しい季節がやってきました。そろそろ田植えもはじまります。会社では、みんなで田んぼをかりてお米づくりもしているそうです。

映像という手段を身につけて、どんなことができるだろう。

気になることがあれば、まずは神山を訪れてみてください。ここは、健やかな選択をしていける場所だと思います。

(2016/4/27 中嶋希実)