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顔が見える距離感で

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

一つの空間がつくられるまでには、いろんな人が関わっている。

信頼できる施工業者さんと直接コミュニケーションをとりながら、お客さんが望む空間をつくりあげてきた会社があります。

オフィスやショールーム、ファッションブランドの店舗、飲食店など。さまざまな空間のデザインと空間構築に関わる業務をトータルに手がける、株式会社ナリング・クリエイティブ

office お客さんへのヒアリングから、設計、施工監理、竣工後のチェックまで。社内で一貫してサービスを提供しています。

お客さんとも職人さんとも、直接かかわり合いながら、求める空間をつくっていく。

そんなふうに働きたい人には、ぴったりの仕事だと思います。

今回は、設計を担うインテリアデザイナーと、プロジェクトを監理する人を募集します。



東京・代官山駅。

正面口を出て左に曲がり、2分ほど歩く。ビルの13階、見晴らしのいい場所にナリング・クリエイティブのオフィスはあります。

まずは、代表の山本康弘さんに伺いました。

山本さん1 建築の勉強をしてから20歳で就職した会社では、とある会社の全国出店の仕事を一手に請け負う部署で、スピード感をもって仕事をしていたそう。

「でも、結局マニュアルに基づいた図面しか描いていなくて。これでは本質的なスキルは身につかないと思ったんです」

2年後に転職したのは、元請け、下請け、孫請けといった階層構造の末端にあたる施工会社だった。仕事内容は前の会社とまったく違うものになったといいます。

「今まで平面図さえ描いていれば空間ができていたけれど、新しく入った会社ではテーブル一つ作るにも、まず木工屋さんに天板を発注するところからはじめるんです」

天板の木目は板目なのか柾目なのか。厚みはどのくらいか。テーブルの裏面まで仕上げるのか。

予算によって細かい指示をして発注する。

発注した天板が用意されたら、傷がつかないように塗装屋さんまで運び、どういう塗装にするか指示を出す。そうして今度はテーブルの脚を金物屋さんに発注する。

天板と脚がそろったら、自分たちで組み立てて、出来上がったものを現場に運ぶ。

「大工さんに塗装屋さん、硝子屋さん、壁紙問屋さんと、空間に関わる人って多岐にわたるんです。そういう人たちに分離発注をして、ダイレクトにコミュニケーションをとりながら指示をしていく」

「そうやって現場管理をしながら、いれ替わり立ち替わり職人さんたちと調整をしつつ、空間を仕上げていくということをやっていたんですね」

木工所 仕事に慣れたころ、「下請けから脱却して、お客さんの顔が見たい」と思うように。

社長にお願いをして、一人大阪から東京に出してもらい、デザイナーズブランド店舗の内装工事を手がけていったといいます。

そこで、施工の経験が強みになります。

分離発注することによってコストパフォーマンスはよくなり、予算に合わせた施工方法を設計者に提案することで、お客さんの要望にも応えることができた。

仕事ぶりが評価され、次第に施工だけでなくデザインもお客さんから直接頼まれるようになった。

「自分のわがままで東京に出してもらって、いい経験をさせていただいた会社に感謝していたので、辞める気持ちはなかったんです。そうして10年間休む暇なく働き続けていたあるとき、怪我をして3日間入院して。それを機に独立を考えました」

独立してからも分離発注のやり方を引き継ぎ、22年経った今もそのスタイルは変わりません。

根っこには、お客さんの立場に立って考えるという思いがあるようです。

「たとえば僕らの業界は、見積書の内容が伝わりにくいんです」

伝わりにくいというと?

「お客さんにとってわからないことがいっぱい書いてあるんですよ。だからうちは、空間に関わるいろんな業者さん一つひとつのお値段を、お客さんに直接見ていただきます。そしてナリングが設計、監理をしていくらになるかを伝える」

「使うものの原価についても、お客さん自身がインターネットで調べられるように情報はすべてオープンにして」

どういう業者さんが関わっているか、どの部分で費用を安く抑えるか。一つひとつお客さんにもきちんと説明する。

「お客さんとの距離を縮められるようにいつも工夫を心がけています。空間に関わる人がどれだけお客さんのことを思えるかということは、すごく大事なことで」

「幸いうちと一緒に仕事をしている施工業者さんたちも、もう20年ぐらい付き合っている方々ばかり。『ナリングさんはこんな想いで仕事をしてるんだな』という共感を得たうえで働いていただいていると思います」

実際にかたちづくる人たちから信頼や共感を得て空間をつくるということは、目に見えないかもしれないけれど、使う人の幸せにつながっていくんだと思います。

店舗内装 突然「僕は腕時計が好きでね」と山本さん。

腕時計ですか?

「どうして好きになるんだろう?と考えると、特別な技能をもつ世界でも数少ない職人たちが、とてつもない時間をかけてつくっている。真摯な情熱が凝縮されているからだと思って。目に見えるもののさらに向こう側にある何かに、人は惹かれているんじゃないかな」

「だから、僕らも空間に関わる以上は、そういう想いを大切にしないといけないなと思って」

笑いながら話していても、心に響く言葉でした。

どんな人に来てほしいですか?

「いちばんは素直であること。聞く耳を持てるということが、その人の成長の可能性を広げると思います」



大切なのは素直なこと。スタッフの方に話を伺ってもそれは実感するものでした。

クリエイターの村田耕太郎さんは、もともとは住宅の設計事務所で働いていた方。ここに勤めて4年になるそう。

村田さん2 最近手がけた事例を紹介してもらいました。

「サイバーエージェントという会社が、いま力を注いでいる動画事業のためのプロジェクトに、昨年末から参加していて」

スタジオ2 防音スタジオをつくるのは、はじめての試みだったそう。今までにないおさまりや工程があったといいます。

「防音するためには床面と天井面を突き抜けて壁を建てなくちゃいけないので、一度天井と床をはがして壁を建てて。段取りがなかなかうまくいかなくて、現場をまとめるのは大変でした」

音響のコンサル業者さんや職人さんからアドバイスをもらって、なんとか仕上げることができた。

「印象に残っているのは、クリエイティブディレクターとして指揮をとっていたNIGOさんという著名な方と仕事ができたことです。こだわるポイントとそうでないポイントのバリエーションを提案するなかで、おさまり方に対するこだわりを学びました」

プロジェクトをきっかけに、お店のリニューアルを頼まれるなど、仕事が広がっていったそう。

小さな会社でも目の前の仕事に向き合っていれば、チャンスは巡ってくる。

具体的にどういう仕事の進め方なのか。

平野翔太さんにも伺います。クリエイターとして勤めて3年になるそう。

平野さん 「お客さんは僕たちが内装デザインのプロフェッショナルだと思って話していて。自分のなかにアイデアがあっても、遠慮して言いだせなかったりするんです」

「だから、なるべく喋らないようにします。写真や事例を見ていくうちに、だんだんお客さんのほうから『実はこういうのがやりたい』ってアイデアを出してくれるようになって」

プロとしてリードしていく部分はあるけれど、まずはお客さんがどういうことをしたいのかを丁寧に拾っていく。

たとえお客さんの要望が無理なものでも、どういう無理が生じるか絵に描いて説明し、「こうしてみたらどうですか?」とさらに提案をしていくそう。

お客さんの立場に立ってイメージを形にしながら、使いやすさも考慮して、選択肢を出していく。それが会社のスタンスだといいます。

以前はゼネコンに勤め、現場管理の仕事をしていた平野さん。

「何百億のビルを建てるような大きな仕事ばかりで、お客さんが誰かもわからないまま仕事が終わっていくのが自分に合わなくて。もともとの施工の経験を活かしつつ設計もできる会社を探していたら、ここを見つけました」

入ってみてどうでしたか?

「最初は、自分で考えてつくるということが、思った以上にエネルギーを使う大変なことなんだと感じました。根気よく続けられないと難しいです」

diner 「でも、自分たちでお客さんと直に話をしながら仕事を進めて、図面通りに職人さんがつくってくれて、お客さんに使ってもらえる。人付き合いの濃い仕事で、面白いなと思います」

使う場面を想定しながら図面を描いていても、できたものが実際に使われている様子を見ると、なんとも言えない感動があるといいます。

ナリング0904 1人が常に抱えるプロジェクトは3〜5件ほど。それらと並行して、以前手がけた空間をリフレッシュさせたり、追加の依頼やメンテナンスなどにも対応していく。

細かな依頼に対応する速さも、お客さんから支持される理由の一つのようです。

一方で、現場を監理しながら図面も描き、なおかつ細かな仕事もこなすために自分で時間を捻出していく必要があるといいます。

どんな人が向いているか聞いてみます。

まずは村田さん。

「デザインとコストのバランス感覚がうちの良さだと思っていて。ある程度デザインを切り捨てる部分もあります。トータルでみて、どういう価値をお客さんに提供できるかを考えられる人がいいですね」

平野さんはどうですか?

「外注に頼らず自分たちのなかだけで完結していて、お客さんの反応も直に得られる。自分の仕事が誰かのためになっていることを素直に喜べる人は向いていると思います」

ミーティング
スタッフの方に勤続年数を聞いてみると、17年、11年、5年とのこと。みなさん、継続して働いている会社のようです。

どうしてなのか、代表の山本さんにあらためて聞きました。

すると「会社をいかに気持ちのいい環境にするかに興味がある」そうです。

「月1回社員で飲み会をしたり、ミーティングでは『グッド&ニュー』というポジティブな出来事をスタッフ全員が発表したり、細々と試していて」

「どんなことがあっても、ナリングの社員は守る。お客さんに心地良い空間を提供するために、会社が健全で、安心して働ける環境をつくることが自分の役割だと。創業22年目にしてやっと胸を張って言えるようになったんです」

お客さんとも、一緒に働く人とも、コミュニケーションを大切にする。そうすることで息の長い関係が続いていくんだと思います。

しっかりと根を張っていくための土壌が、ここにはありました。

(2016/08/13 後藤響子)