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名物をつくろう

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

人気商品とは、どうやって生まれるのだろう?

まず大切なのが「素材」です。あとは開発を後押ししてくれる「環境」。

今回、訪ねた鹿児島県大崎町には、名物と呼ばれるものがあまりありません。けれどもたくさんの素材があります。

kagoshima-osaki02 そして、温かい人たちがたくさんいます。移住した先輩もいます。

人も土地もいい場所です。

ここで地域おこし協力隊に入り、新商品を開発する人を募集します。

経験はあるに越したことはありませんが問いません。ぜひ名物をつくってください。



鹿児島空港に到着。霧島連峰を横目に見ながら、車で大崎町に向かいます。錦江湾に出ると、目の前に桜島。ダイナミックな景色が広がる1時間10分ほどのドライブで、大崎町役場のあるあたりに到着しました。

まずはお昼ごはんを食べようと思ったのですが、お店がほとんどありません。

役場の前にある小学校から下校する小学生がたくさんいてにぎやかで、もうすぐ夏休みなんだろうか。とてもゆっくりした時間が流れている。

kagoshima-osaki03 なんとか食事を済ませてから連れて行かれたのが安田農園です。

夏の農園は暑いけれども気持ちがいい。小屋のなかに入ると、いきなりスイカをいただきました。

取ったばかりのスイカを包丁で切って食べる。

kagoshima-osaki04 「冷やしていないのにおいしいのかな?」と思っていたら、これがとてもおいしかった。あまりにおいしかったので、もうひとついただいてしまいました。

安田農園ではスイカ以外にもたくさんの果物を育てています。代表的なものがマンゴーです。今回募集する人は、まずは安田農園で商品開発を取り組むことになりそうです。

農園の代表が安田静男さん。そして息子さんが安田弘毅さんです。ほかにも家族や従業員の方々が働いていて、全部で8人ほどの組織です。

息子さんの弘毅さんに話を伺います。

「もともと農業をやろうとは思ってなかったです。あんまり継げとも言われてなかったし、せっかくの休みの日も農作業させられたりしたからね」

「でも農業関係の学校に行ったら、まわりに熱いヤツらがいて、面白そうだなって思って」

kagoshima-osaki05 学校を卒業して、弘毅さんが安田農園の仕事をはじめたときの主力の生産物はメロンだったそうです。

「鹿児島県でも早い段階でメロンをはじめたのが父らしくて。小さいころからメロンがずっとありました。トマトと輪作してね」

ところがだんだんとメロンの価格が落ちていった。さらに実家で働きはじめた年の夏、台風が来て、農園は大損害がでてしまった。

「そしたら『マンゴーがいい』という話を聞いたの。しかもマンゴーって鉢植えでできるって言われて」

「うちはもともとメロンもトマトも巨大な鉢植えに植えて育てていた。そうすると味が良くなるんです。普通だったらまずは100本くらい導入して様子見るんですけど、一気にどーんって始めましたね」

はじめは収量が少なかったものの、だんだん多くの実がなるようになっていった。さらにおとなり宮崎県の東国原元知事のマンゴーの宣伝のおかげで、売上も伸びていく。

kagoshima-osaki06 たくさん収穫できるようになると、その分規格外で出荷できないものも増えてきた。

「ジュースに加工してみることにしたんです。マンゴー自体は冷凍しておけばいいので、ある程度規格外のものがたまったらメーカーに送る。そしたら瓶詰めされて返ってきます」

ほかにもマンゴーカステラなどもつくっているそう。

次は何を開発するんでしょう?

「今はドライマンゴーかな。もともと娘がマンゴーを好きで、収穫できない時期でも食べられるようにつくっていたんです」

そうすると、その話を聞いていた父親の静男さんも会話に入ってきた。

「わたしはジェラートをつくれる機械を勉強中だね」

kagoshima-osaki07 お父さんはドライマンゴーよりもジェラートなんですね。

「率が違う。ジェラートは混ぜるからね」

たしかにドライマンゴーは原料が100%マンゴーだけれども、ジェラートはそうじゃない。それに冷凍されているからロスも少ないのかもしれないし、ドライマンゴーだと海外の安い製品との競争になるかもしれない。

ほかにも地域内ではミカンやいちご、パッションフルーツ、それに森のアイスクリームと呼ばれているアテモヤなど、いろいろな果物をつくっている。安田農園は直売所ももっているし、いろいろな商売が考えられるのかもしれない。

農園と侮るなかれ。地域で事業をつくっていくのに、とてもいい経験ができると思う。農作業も希望があればできるそうだし、まずは冷凍したマンゴーをつかって商品を試作するところから始まる予定です。県の加工技術センターも使えるそう。

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農園をあとにして、大崎町役場でより詳しい話を聞くことにした。

まずお話を伺ったのが、農林振興課の濵屋さん。大崎町出身で、農政に長く関わってきた方。

大崎町で商品を開発するときの課題ってなんでしょう?

「まあ、販路がなかなか見つからない、というのがネックになりますね。6次産業化を進めてはいるのですが」

kagoshima-osaki08 ただ、大崎町は耕作放棄地が少ないって聞きました。何か理由があるんですか?

「個人でやるだけじゃなく、法人化しているところが多いですから」

たしかに安田農園さんもそうです。

「どんどん集約してやっていますね。あとは畜産農家。自分たちで飼料をつくって、畜産をしているところもあります」

ほんとうになんでもある町ですね。

「逆に言えば、特化したものがあまりないんです」



そのあと話してくれたのが企画調整課の上野さん。大崎町出身で、役場の企画広報なども担当していて、今回の地域おこし協力隊の窓口でもある。

「農業は盛んです。ただ、なんでもできてしまうから、政策的に集中できるものがないところは難しい」

kagoshima-osaki10 何か地域に特徴はないんですか?

「リサイクル率は9年連続日本一です。リサイクルの町ですね」

リサイクル率はなんと80%以上。ごみを27種類に分別しているそう。

なぜそんなことになったのかといえば、地域の埋立処分場を延命するため。焼却場がないため、町全体でごみの分別とリサイクルに乗り出すことになった。

kagoshima-osaki11 生ゴミは堆肥にして販売し、食用油の廃油はディーゼル燃料として、ごみ収集車を走らせている。さらにごみ問題に悩むインドネシアのデポック市の支援もはじめている。

とても柔軟で、先進的な地域だと思う。

あとはどんな課題がありますか?

「そうですね。就職先はあるんですけど、若い人は学校を卒業したら、そのまま戻ってこないことも多いです。あとは内科や歯科はあるんですけど、小児科と産婦人科がないから隣町までいかないといけませんね」

隣町の鹿屋は車で30分ほど。車はあったほうがよさそうだ。



役場で二人の話を聞いたあとに、地域おこし協力隊の先輩にも話を聞くことにしました。

山本さんは大崎町に移り住んできて4ヶ月。もともとは東京でCM制作をされていたものの、日本仕事百貨を見て移住することになった。

kagoshima-osaki12 なぜ仕事を辞めて、大崎町に来ることにしたんですか。

「社会人になって1年しか働いていないんですけど、仕事をしていて、これって誰に届いているんだろうかって思うことがあって。大勢の人の目には届く仕事だと思うんです。でも記憶には残らないような気がして」

「あとはほんとうに自分がいいと思うことを宣伝したい、仕事にしたいと思うようになったんです。ずっとこの先この仕事をやっていくのかって思ったときに、ないなと思って」

そんなときに地域おこし協力隊の仕事があることを知った。ところが地域おこし協力隊のホームページを見てもよくわからなかった。

「ほんとうにタイミングがよかったんです。たまたま日本仕事百貨でこの求人を読んで、内容もよくわかったし、自分のやりたいことにも近かった」

それにしてもなぜ大崎町だったんですか。

「まず地元から近いと甘えてすぐ帰っちゃうと思ったし、どうせなら遠くに行きたかった。北か南かといったら、南な感じもしたし、釣りとか海が好きなんです」

直感でいいと思った大崎町。

ギャップはありませんでしたか?

「面談で訪れたときに、すっかり日が暮れてしまって。到着したときにはまったく明かりがなかったので、とんでもないところに来てしまったと思いました。夜もどこかでごはん食べようと思っていたんですけど、ほとんどお店がなくて困りましたね」

とはいえ、昼になってみると、コンビニもお店もあったので安心したそう。

そのあと面談に。

もともと「面接行くなら会社をやめろ」といわれて鹿児島に乗り込んできた。

会話のなかで山本さんが会社を辞める覚悟で面談を訪れていることを知り、帰り際に「採用する予定だから安心してね」と言われたそう。

「ほんとうにいいところ、いい人たちだと思いました。ピンと来たのは間違っていなかった」

移住してからはどうでしたか。

「やったことないことばかり経験しました。いろんなイベントとかに呼んでいただいたり、マンゴーの収穫祭とか、たくさんのことを経験をさせてもらって。東京にいたらできなかっただろうなっていうことをやっていて、毎日新鮮です」

暮らしはどうですか。

「早速釣りをしたら、クーラーボックスいっぱいにカサゴが釣れました。それで魚がさばけるようになりました。千葉で釣れなかった苦労はなんだったんだろうってくらい。あとは直売所で野菜を買って食べてます。そのままでもすごくおいしくて」

kagoshima-osaki14 「あとは些細なことですけど、家にいて聞こえる鳥の声の種類が増えました。トンビの声が聞こえると『おーっ』と思ったり」

充実した毎日なことが伝わってくる。

最後に山本さんが地域おこし協力隊について、こんな話をしてくれました。

「インターネットで調べると、ネガティブなこともたくさんあって。ぼくも心配していました。でもその心配もなんだったんだろうって思います」

「はじめに役場で聞かれたのは、自分は何ができるかってこと。そして、役場のアルバイトできてるわけではない、ってことを言われたときに、安心しました。地域おこし協力隊という制度があるから、とりあえず人を募集してる、っていう感じじゃないんです」

あともうひとつ移住に踏み切れたのは、応募する数日前に彼女にフラれてしまったことだったそう。

ほんとタイミングだと思います。これを読んでいるのも何かの縁かもしれません。

kagoshima-osaki01 もし少しでも気になったら、まずは問い合わせてみてください。

大崎町にはたくさんのものがあります。また畑でスイカが食べたい!と思うくらい、印象的な時間でした。今度は新しくできた名物がいただけたら、こんなにうれしいことはありません。

(2016/9/6 ナカムラケンタ)