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バリバリ働く会社員や育休中のお母さん、就活中の大学生に定年退職したばかりのお父さん。まちにはさまざまな境遇の人がいて、ひとつとして同じ生き方はありません。
一人ひとりが自分らしい生き方や働き方をしていたら、そのまちはきっと豊かになるだろうし、自分も元気をもらえそうな気がします。
いろいろな人たちが自分らしい生き方と働き方ができるよう、そっと背中を押してくれる。
今回は、そんな場所とも言えるコミュニティカフェのスタッフを募集しています。
国分寺駅すぐそばに建設中のマンション“プラウド国分寺”の1階部分に、この秋「カフェといろいろ“びより”」がオープンすることに。
特徴は、カフェ×日替わり店主。
「びより」のスタッフが直接たずさわるカフェと、 日替わり店主による食事の提供のコラボでお店を運営していきます。
今回取材をしたのはこの場所を運営することになるNPO法人ツナグバヅクリ。
目下「びより」の立ち上げメンバーをさがしています。
そのカフェに行けば、自分らしい生き方に少しだけ近づけるかも。そんなふうに思ってもらえる場づくりを通して、自分の生き方も見つけてほしい。
興味がわいたら、続きを読み進めてください。
今回の取材は、ツナグバヅクリがすでに運営をしているコミュニティカフェ「ななつのこ」で行なうことに。
京王線・千歳烏山駅に到着すると、にぎやかな商店街が迎えてくれます。
商店街を横目に線路沿いを少し行くと、きれいに区画整備された団地が見えてくる。
まだ新しさをのこす建物の群は、2年前の建て替えを経て誕生した「コーシャハイム千歳烏山」です。12棟600戸からなるこの団地の中に「コミュニティカフェななつのこ」はあります。
「ななつのこ」で待っていてくれたのは、ツナグバヅクリ代表の鎌田さんと副代表・岩嶋さん、同じく副代表でデザインを担当している坂上さん。
3人が席に着くととってもにぎやか。まるでご近所の井戸端会議を見ているような雰囲気です。
「まずは私の背景をお伝えしますね」
そう言って鎌田さんがお話してくれました。
「いまから20年以上前のこと。東京都による郊外のニュータウン開発が盛んに行われていた時代でした。小さな子どもを抱えて非常に多くの人たちがいちどに多摩ニュータウン・南大沢の団地に移り住んだのです」
鎌田さんもニュータウンに移り住んだ住人の1人。そのころ知り合った南大沢周辺の不動産を持つ大家さんに、人のつながりを生むまちの事務局をやってほしいと言われたそう。
「南大沢にはどんどん新しい人たちが入ってきていて。でも誰も、なにもわからない。どこの幼稚園に入れたらいいのかとか、医療機関のことも知っている人がいない」
「井戸端会議をしていても、結局まちのことばかり話していて。これは自分たちでやるしかないよねって思ったんです」
鎌田さんは、編集者やコンサルタントといったキャリアを持つ主婦たちとまちづくりコンサルの会社を立ち上げることに。新住人とまちをつなぐイベントづくりや、誘致された大規模アウトレットとの地域連携などを東京都と協力して実現していったそう。
その会社の仕事とは別に、ボランティアとして『暮らしの情報センター』という場もつくった。
たとえば塾を選びたいと思っても、当時はインターネットなど浸透していない時代。そこに行けば全部紙ベースで教育や医療など暮らしに必要な情報を集めた資料が置いてある。
地域の住人に必要とされ、いつも誰かが集まるその場所のスタッフのことを、みんなは“暮らしのコンシェルジュ”と呼んでいたと言います。
当時鎌田さんは2人のお子さんのお母さん。子育てもしながら大変だったと思うけど、モチベーションはどこにあったのでしょう。
「仕事するのが好きなんです。地域と人をつなぐことが好き。まちへのおせっかいをずっとやってきてます」
まちへのおせっかいの仕事は20年経った今も続いています。
コミュニティカフェ「ななつのこ」もその1つ。まちづくりの手腕を買われ、首都圏のいろんな場所でコンサルをしてきた鎌田さんたちが、はじめてデベロッパーから運営を任されたのがこの千歳烏山のカフェ。
そのノウハウを活かして、今年の11月に「カフェといろいろ“びより”」をつくることになりました。
ツナグバヅクリが運営するコミュニティカフェはいったいどんな場所なのだろう。
教えてくれたのは、2年前の日本仕事百貨の記事で「ななつのこ」のスタッフになったという柴崎さん。
ふわっとした笑顔と、キラキラした目が印象的な人です。
「ただ単にコーヒーを出すだけということはないですよ。必ずここに来ると何かを得て、次にみんな進んでいく。チェーンのカフェに行っても得られないものを提供するところかな」
チェーンのカフェでは得られないもの?
「たとえば『ずっと家にこもってお菓子ばかりつくってるから、よかったら食べてください』って、以前あるママさんが手づくりのお菓子を持ってきてくれたのね」
「食べてみたらホッとする家庭の味で、ここでそれを販売してもらおうということになって。お客さんたちが、ここで誰かに自分の持っているものを提供する。そういう橋渡しができるんです」
地域のイベントや暮らしの情報が得られる資料が置いてあるほか、地域住人が講師を務めるワークショップ、絵の展示、作品の販売なども行なっている。
「まちの暮らしの中にあるいろいろな種を、苗に育てていくんです。ここで得た経験が、かかわった方それぞれの次のステップにつながるといいなと思っています」
コミュニティカフェの主役はまちの人たち。
スタッフは、まちの人たちの“できたらいいのにな”“やってみたいな”という想いを聞いて、かたちにするお手伝いをしている。
カフェの運営はもちろん、講座やイベントの企画運営も仕事のうち。訪れる住人との対話の中で生まれる企画はたくさんある。
柴崎さんは“まちなかダイニング”という団体をつくって、ななつのこで食事を提供していたりもする。ほかにもお客さんの悩みの解決をしているうちに、違う肩書きの名刺が増えているのだそう。
「私の場合は、介護をしながら何かできるのかな?って最初は思っていました。ところができることって実はいっぱいあって。まさかこの歳でコーヒーを淹れて接客するとは思っていませんでした(笑)」
要介護のお父さまを、団地内の高齢者住宅に入居させたことがきっかけで応募したという柴崎さん。数年前には想像もしなかった働き方を手に入れたんだとか。
まちの人の背中を押してあげられるカフェ。大変なことはあるのでしょうか?
「いろんな人が集まるというのが一番大変ですね」
「泥だらけのベビーカーが中に入ってきて、すごく嫌な思いをする人もいると思うんです。でも、2人子どもがいたらしょうがないよね。それでも来れる場所でよかったって思える。それを楽しめることが大事」
困ったことや、やってみたいことを誰もが言葉にできる場所でありたい。だからコミュニティカフェは基本的にまちの住人みんなに開かれている。
新しい国分寺のカフェ「びより」には、元料理人のほかにも、これからお店を持ちたい、料理教室を開きたい、そんな夢を持つまちの人たちが日替わり店主になることが決まっているそう。
志を持った店主たちやふらりと訪れるまちの人たち、誰にとっても居心地のよい、そんな場所になるといいな。
副代表の岩嶋さんにもお話しいただきます。
「カフェとか料理教室をいつかやってみたい人ってたくさんいるわけですよ。でも、最後に資金繰りやパートナーの理解が得られなくて二の足を踏む人も少なくないんです。だからその人たちがちょっと一歩踏み出せる、実験場のような場所にしたいねって」
実験場のような場所。
「いくら学ぶことだけで腕を磨いても、実践しなければできることにはならないんです。シェフとして立ち振る舞うのであれば、きちんと経済をまわして、対価を取っていってほしいと思います」
スタッフの仕事は、ここにかかわる人々がこの場所を使って次のステージにステップアップできるように陰から支えること。日々のレジ打ちやスタッフの調整など、集客の仕方も考えることもあると思う。
「接客ができるスーパー総務っていうイメージですかね」
コミュニティカフェとはいえ、びよりは“お店”。ボランティアではないから、利益を出すことも考えていく。
続いて、横で岩嶋さんの話を聞いていた坂上さん。
店主になってもらう人の中には、上は70代から下は30代の人がいるそう。
まちのコミュニティカフェだから、利用者の層は幅広い。
「世の中シングルの男女も増えてるし、結婚して子どもをつくる人もいれば、子どもは持たない人もいる。多様なライフスタイルの中で、どうしようと悩んでいる人もいます。そのときに、本音や本心をお茶を飲みながら気楽に話したりできる場所にもなってほしい」
カフェの担い手はまちの人。その多様性を受け入れて、彼ら一人ひとりの生き方・働き方に寄り添うような、優しい場所になるといい。
ここで働くスタッフは、そんな場所の顔になるということ。
「カフェに集う知恵や技術をもった人たちと、良い意味で切磋琢磨しながら、自分自身も高めていきたい。そんな思いもどこかに持っていて欲しいな」
最後に、ふたたび鎌田さんが話してくれました。
「私たちの仕事は基本主役じゃないんです。黒子なんです」
黒子。
「ここは運営してお金をまわしていかないといけない。その上で人が夢を実現していくのを見て、うれしいって思う人がいいなあ」
「『あなたは何がお好きですか』って聞いて、その人に合せてイベントを紹介するとか。そんなアナウンスができるといいよね」
たとえばマンションに住むおじいちゃんが、ここで英会話教室を開くことになるかもしれない。育休中のお母さんが、絵本づくりのワークショップを開くかもしれない。
誰かの夢の種をひろって、育てる豊かな土壌をつくっていくような仕事。
「いろんなアテンドができる。私たちの役目ってそういうこと。要するに、私たちって究極おせっかいなおばさんだよね(笑)」
そういうと同席していた岩嶋さんと坂上さんも一緒になって笑います。
はじめはコミュニティカフェの多様性にとまどい、大変なこともあるかもしれません。でもお話を伺った4人とも、とてもいきいきと働いているように思いました。
気になった方は一度ななつのこを訪れてみてください。きっと誰かが「こんにちは!」と軽やかに迎えてくれますよ。
(2016/9/26 遠藤沙紀)