※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
新しいものって、どうやって生まれるのだろう。たとえば、アイデアが生まれる瞬間って、会議室や机の上よりも、ざっくばらんに話しているときのような気がする。
今回は、つながりを生みだすことで新しいことを生みだす2つの職種の募集です。
ひとつは長野県・小海町のJR小海駅の2階で、もうひとつは小海役場が運営する農産物加工直売所で働きます。
人と人がつながり、さまざまな企画や出会いが生まれる。そのファシリテーター役と考えると分かりやすいかもしれません。
東京から北陸新幹線で佐久平駅へ。さらに50分ほど電車に乗ると小海駅へ到着します。
小海駅から小海町役場まで歩いて感じたのが、町のコンパクトさ。
駅には診療所が併設されており、目の前には商店街。小海町役場までの道中には農産物加工直売所や病院もあります。
はじめに、産業建設経済係の黒澤さんにお会いしました。駅の2階を使った活動について話を聞きます。
小海に対する思いと熱意を言葉から感じられる方です。
「小海役場で働きはじめたとき、とても刺激的な環境だったんです。上司も刺激的な方でしたし、町の方も積極的で。そういう環境だったこともあり、何かやりたいという熱意は常にありました」
「とはいえ、いろんな活動をやってきて自分が意図した通りにならないことが多かったんです」
たとえば、橋の上でビアガーデンをするというイベントを企画したときのこと。
小海役場の若手と商店街の青年部というメンバーで企画したビアガーデンは1000人以上の集客を呼び、多くの人で賑わったそう。
「結果的には成功に終わりましたが、もっといいものができたと思ったんです。というのも、みんないろんなことに追われて時間が取れなかったんですね」
町民も役場の方もそれぞれに仕事があり、企画を進行するだけでも一苦労だった。
話し合いの段階から、町の人と深く関わる場を築く必要性を感じる。
そこで話にでたのが、町の人が日々使用している小海駅の2階だった。現在は空きスペースとなっていて、人が集まって何かするには十分な広さ。
今回募集する方はここに駐在して、有機的に人をつなげていく。
「そもそも小海の若手同士がつながれていないという現状もあります。彼らをはじめ、さまざまな人が積極的に集まれるスペース運用を考えています」
「たとえば、小海では毎年大量に有害鳥獣として鹿を駆除するんですが、そのほとんどを埋めるなどして処分しています。けれど、これを捨てずに小海の魅力として発信することも可能だよねって猟師と役場のロビーや飲み屋で話すんです」
あくまでも構想で終わってしまうけど、なかにはビジネスとして発展できるアイデアもあるのかもしれない。
そうなったときに、ここへ来ればアイデアを形にできる人とつながるかも。そんな場づくりを目指していく。
「今話したこともあくまでアイデアです。運用なども含めて調整をする必要はあります。地域おこし協力隊として3年間活動する中で、形が見えてきたらいいですね」
また、小海町はインターンシップ制度があります。
「宿泊費を負担するので、町での仕事や様子を感じてもらいたいです。せっかく来るんだったら、まずはこの町の様子について知ってほしくて。その機会に、この場所にもふらっと来てもらえればと思います」
つながなきゃと思うのではなくて、自然につながれればいい。それくらい気持ちでいいのかもしれません。
まずはここに人が訪れてもらうことが目的になる。
そのためにたくさんの人を巻き込み。ときには自分が巻き込まれてみる。
ゼロからつくるよりも、まずはこの場所や関わる人をファシリテートしていく仕事だと思います。
町のみなさんは、いったいどう考えているんだろう。
その声を聞こうと、商店街にある酒舗清水屋の小山英浩さんを訪ねました。
さまざまな企画に関わることが多く、これから地域で何かやるときに一緒に活動していくことが多いと思います。
「昔は人がたくさんいたから町も元気だったけど、今は何をやるにしても同じメンバーな気がするね。景気の影響もあるんだろうけど、自分の仕事で精一杯になっているのかもしれない」
「だからこそ、若手で駅通りを盛り上げようっていう団体もあって。町としては商工会の青年部っていうのがあって、この間は役場の若手と一緒にふれあい橋の上でビアガーデンをやりました。そのイベントが大成功したのって、正直な気持ち、役場の若い人たちが動き出したからと思う。それに青年部がうまく合体できた感じでした」
新たに小海にくる人は、どんな方が向いていると思いますか。
「僕らって、自分の町のことに関して頭が凝り固まっていて。ここにずっといるから、すべて当たり前のように思っているかもしれないけど、外からきた人にとってはちょっとしたことが印象的だったりすると思う」
「くだらないことでもいいから、気付いたことを教えてくれるとうれしいね。そんなところにヒントがあったりするから」
何気なく感じたことをシンプルに伝えるも大切。ほかに必要なことはありませんか?
「何か実績とかいらないから。なんで役場の若手がこれだけ支持されているかっていうと、根底に仕事という役割がありつつも、その枠を超えている関わり方が生まれているからだと思っていて」
「今いる役場の若い人たちは、仮に担当が変わっても町のことをずっと考えてくれるんだろうなってことが伝わってくるんですよ」
毎日のように町のことを考え続けるだけでも、何か変わるかもしれない。
小海駅2階と同時に募集するのが、小海町農産物加工直売所で働く地域おこし協力隊です。
農政係の柳澤さんにも話を聞きます。
「大学卒業後は民間企業で6年ほど勤めていました。ただ、何かしら地域の役に立ちたいなと思い、長野に戻ってきました」
「というのも、自分の幼少期の思い出を振り返ったとき、町の運動会やお祭りの記憶が甦るんです。そういう記憶を次は僕らが子どもたちにつくりたい」
記憶に残る場所をつくる仕事。一体どういうものでしょう。
具体的には、小海町の農産物を販売している直売所に勤務し、そこで施設の運営やイベントの立案企画、販路拡大、農産加工品の開発などをおこなっていくことになります。
「ただ、駅の2階と同じように直売所のあり方だけを考えれば良いという問題でもありません。一緒に町のことを考えていくことになると思います」
この街が求められている課題を探し、解決できるための場所づくりを模索していく。その中で3年後の姿も自然と見えてくるのかもしれません。
「たとえば、レストランをはじめたいとか、パン屋をやりたいという人に対して、食材や場所を提供したり、協力出来そうな人をつなげたりするといったことが仕事になればいいのかなと想像しています」
「もしかしたら駅の2階を使うこともあるかもしれません。ですので、今回募集する2つの地域おこし協力隊は、職種は違っても活動の中で関わっていく場面が多いのかな」
内側と外側をつなぐ役割もあれば、内側同士でつながることもある。
「地域をデザインすることに近いのかもしれません。小海に眠る手付かずの地域資源をさまざまな人につなげていく。そんな編集作業になっていくと思います」
実際に小海町農産物加工直売所で働いている関さんにも話を伺います。
販売員としてお店の運営から生産者の野菜の受け入れ、商品の陳列、事務処理など、施設全体の管理・運営をしています。
また、売り場以外にも加工室という町民の方が使用できる施設があります。
実際にここで働いてみてどうでしたか。
「ほぼ一人ですべてをこなすので、動きっぱなしで大変です。休憩もありますが、常にお客さんの出入りを気にするので、臨機応変に動いています」
そうなると、どうしても一人では回らないときもあると思うのですが。
「そうですね。たとえば、電話対応しているときにお店にお客さんが来てしまうと、もどかしさを感じます。そんなときにサポートし合えればうれしいですし、小海町の生産者とコミュニケーションとれたり、学校給食の食材を運んだりなど、積極的に外に出られる人がいてくれればって思いますね」
また、季節ごとにイベントも企画してるとのこと。
「春は山菜、夏は花市、秋にはきのこ祭りや根菜祭りなど。イベントのときには一緒に盛り上がるために働いてくれるといいですね。あとは広告業務なんかも手がつけられていない状況なので、一緒に考えていきたいです」
やることはたくさんある。今は人が少なくて大変ですね。
「正直、忙しすぎて辞めたいと思うときもありました。でも、一緒に働いている先輩や、役場のスタッフが親切で話しやすい人ばかりなんです。私自身も、やるからには中途半端な気持ちでやりたくないタイプなんです」
「いろんな選択肢もありましたが、ここから離れたくないっていう気持ちがなによりも強いですね」
どんな毎日になっていくのだろう。きっと、つなげるものだけ仕事の幅も広がっていくと思う。
たとえば「小海の農産物を使ったレストランをはじめたいんだけど」という相談に「こんな野菜を作っている農家さんがいます」と紹介する。
「山で狩った鹿の皮を使って、何かできないかな」という相談があれば、「こんなワークショップをすれば、面白いアイデアが生まれるんじゃないか」と提案する。
あそこに行けば実現できるかも。そう言って人が集まり、つながっていく。
2階のスペースにいると、そんな光景が見えてくるようです。
人をつなぐプラットフォームをつくる。
そんな場づくりに少しでも興味を持った方は、まずは小海に訪れてみてください。小海町のインターンシップ制度を使えば、期間限定で仕事や町の様子を体感する事もできます。
訪れてみなければわからない。つなげてみないと何が起きるかわからない。
ぜひその先に広がる景色を自分の目で確かめてください。
(2016/10/1 浦川彰太)