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香る裏方

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

空間って、いろんな要素でできています。

家具や照明といったインテリアはもちろん、音楽をかけるだけでもその空間の雰囲気は様変わりする。

そこにいる人の感覚ひとつによって、空間の受ける印象はガラリと変わります。

アットアロマ株式会社は五感の一つ“嗅覚”にうったえる、いわば香りによる空間デザインをしている会社です。一般的にはアロマオイルと呼ばれる天然植物由来の精油を、下の写真のようなディフューザーを使って主に商業空間に拡げます。

all-in-one-type145s_image05_%e9%ab%98 なんとなく馴染みがないように思うかもしれません。でも思い返してみると、ホテルのロビーやデパートでよい香りがしたことはないでしょうか。

アットアロマが空間をデザインしている施設は全国に2000か所ほど。ホテルや商業ビルをはじめ、実はさまざまな場所で香りによるデザインが取り入れられてきています。

今回は、香る空間を技術の面から支えるスタッフの募集です。

内装施工や電気工事の経験があると仕事をスムーズに進められそう。まずは、手足と嗅覚を使って空間をデザインしていく、プロフェッショナルな仕事を知ってほしいと思います。



東京・三軒茶屋。

駅前のにぎやかな大通り沿いのビルの中に、アットアロマのオフィスはある。エントランスに入るとよい香りが迎えてくれた。ふわっとやさしい落ち着く香りだ。

「強く長く残る合成香料と、優しく広がり消えていく天然の香りは全くの別物ですよ」

そう教えてくれたのは取締役の深津さん。

img_3633 香料の中には石油などから科学的に合成される合成香料と、自然の産物からつくられる天然香料がある。

「ジュースで考えてみてください。天然100%の絞りたてのジュースと、着色料と香料と砂糖を入れてつくられるジュース。同じオレンジジュースでも全く別物ですよね」

とても華やかな雰囲気の深津さんは、もともとは航空会社の客室乗務員をしていた。

気圧の変化や毎日何百という人と接する特殊な環境にストレスを抱えていたとき、心と身体を癒してくれたのが植物から抽出した天然のアロマオイルの香りだったそう。

いつしか、都市にいると遠ざかってしまう天然の香りの魅力を、より多くの人に届けたいと思うようになった。

「森林に行くと心地よくなる。ラベンダーの香りを嗅ぐとよく眠れるといいますよね。天然のアロマオイルにはさまざまな効能があるんです」

仕事を辞めた深津さんはアロマオイルについて一から勉強をはじめた。アロマセラピーやマッサージの資格を取り、縁あってアットアロマの前身である輸入販売の会社に入社する。

「はじめはアロマオイルとディフューザーを海外から輸入して販売するだけのたった3人ではじめた会社でした」

「そこから、よりお客様のニーズに合う香りや香りの拡げ方を追求していった結果、“@aroma”ができあがったんです」

現在アットアロマでは、@aromaというブランドでアロマオイルそのものとオイルを拡散するディフューザーの開発、香りによる空間のデザイン、そして空間をデザインする人材の育成事業を行っている。

img_3655 深津さんの仕事内容は事業と共に変わってきていて、今はオリジナルオイルの開発を行なっている。企業のブランドイメージにあった香りや、目的に合わせた機能を持つ香りなども開発しているのだそう。

香りによるブランディングやその効能を期待して、空間をデザインしたいという企業や施設の依頼は増え続けているそうだ。

とはいえ、香りでデザインされた場所ってそんなに馴染みがないように思います。

「アロマの香りって特定の業種しか必要なさそうなイメージがあるんですけど、
本当に人が暮らす場所に広がっていて。ホテルやスパはもちろんですが、ショールームやアパレルショップ、駅や空港、斎場など。ありとあらゆるところで実は導入されているんですよ」

all-in-one-type145s_image01_%e9%ab%98 もしかしたら意識していないだけで、知らない間にデザインされた場所を出入りしていたのかもしれない。

認知度も高まり需要が増えている一方で、その香りを支える裏方も必要とされている。

「空間デザインのメインは香りそのものだけど、それを支える機械やアロマ空間の設計がしっかりしていないと、その香りは活きてこないんです」

機械と空間の設計ですか。

「そう。照明に置き換えてみてください。照明デザインって色や当て方をデザインする方もいますけど、それだけでは成り立たない。設備としてどのようにビルに取り付けるかなどを考える裏方がいてはじめて成立しますよね」

今回募集しているのは、“アロマエンジニアリング”。香りを設備の面からデザインしていく仕事です。

きっとはじめて聞く方が多いと思います。実際どんなふうに働くことになるのでしょうか。

エンジニアリングとして働かれている竹内さんにお話を伺います。

img_3646 「施設の中で香りを広げるということは、人の動線や空間の大きさに加えて空調設備も関わってきますし、香りの濃度や噴霧するピッチなどいろんな要素が絡んでくるんです」

「まずは施設の図面を見ながら、お客様の導線だけでなく換気や冷暖房などの設備位置を確認していきます。企業の担当の方と『この種類のディフューザーにしましょう』とか、『このポイントにディフューザーを設置しましょう』と図面上に落とし込んだり、その施設にあった提案をするんです」

img_3653 新規オープンやリニューアルの際に依頼が来ることが多いので、仕事は図面を見るところからはじまることが多いそう。

SONY DSC 天井に仕込むのか、壁掛けにした方がいいのか。その空間にはどんなディフューザーが最適かを考えていく。

図面に落とし込んだら、次は工事。施工業者に正確に指示を出していくために、空調設備や壁材、電気の配線などの知識が必要になる。

「この壁材だったらドリルで貫通させ内側に固定しましょうとか、ここは壁面に直接打ち込みましょうとか、そういうことがわかると思うので施工や電気工事などの経験があると理解が早いと思います」

そう話す竹内さんはもともとグラフィックデザインを学んできた方。

入社後は何度も壁にぶつかりながら施工の知識をたくわえてきたからこそ、新しく入る人は経験を持っている人の方が働きやすいのではと思っているそう。

「最初はアロマ自体のイメージを伝えていくという感覚的な仕事なのかなって思っていたんですけど、やってみると相当技術的な仕事だと思いましたね」

とはいえ、ディフューザーの調整もするアロマエンジニアリングの技術は香りによる空間演出には欠かせない。老舗デパートの伊勢丹の話をしてくれた。

「同じ建物でも、各階ごとにアイテムが違いますよね。ハイブランドのものを販売しているようなフロアでは、ここをまとめている伊勢丹という色を主張するために、少し香りの濃度を強くしてアピールしたりします」

「あとは同じフロアでも、メインの通りは一番濃度を強くしてそれ以外は淡くしたり」

濃度を変えるんですか。

「もちろん香り自体にもイメージはあるんですが、それだけじゃなくて濃淡も一つのデザインとして捉えています」

「ディフューザーの調整をして量や噴霧時間を変化させることで、濃淡のある空間を演出できるのが天然の香りのいいところなんですね」

合成香料とは違い、淡く消えてゆくアロマの香りだからこそできる変化のある空間デザインは、エンジニアリングたちの日々のメンテナンスで成り立っている。

営業終了してからの深夜作業があったり、重いオイルを持って回ったり汗をかく仕事も多いのだそう。もちろん自分の鼻で一つひとつの香りを確認していくから、まるで職人のようでもある。

“空間をデザインする”という言葉のイメージから、入社後にギャップを感じてしまう人も多いのだとか。たしかに身体を使って機器点検をするといったことは“デザイン”という言葉のイメージには重ならないのかもしれない。

それでもやっていることは空間のデザインなのだと思う。

SONY DSC 竹内さんにやりがいを聞くと、うれしそうに答えてくれた。

「自分は日々裏方として仕事をしていますが、目に見えない香り空間がお客さまに評価されて、喜んでもらえている場面を目の当たりにするのは嬉しいですね」

たとえばどんなときでしょうか。

「長く担当しているある商業施設があるのですが、そのご担当の方がVMD(ビジュアルマーチャンダイザー)の講演会で、施設の香りをご紹介してくださったことがあります。その際に、出席していた私を名指しでご紹介してくださって」

「それだけでも嬉しいことなのですが、施工業者さんや店舗デザイン関係の方は結構知ってくださっていて。エンドユーザーのお客さまだけではなくて、裏方の方たちにも認知され信頼されているんだと思えたときは、とても誇らしい気持ちになりました」

五感を刺激する空間づくりの一つの手法として、嗅覚にうったえるアットアロマの仕事は空間づくりのプロたちにも注目されている。目には見えないものを支える技術者は、自分たちにしかできないプロフェッショナルな仕事を求められるのだと思う。

SONY DSC どんな人に来てほしいですか。

「技術系の方って業界に線を引いて男くさい業界に行かなきゃていうイメージがあると思うんですけど、そういう方にも別の一つの入り口として考えてもらえたらいいですね。うちの会社も十分汗くさいかもしれませんが(笑)」

新しく入る人は、たくさんの研修を受け、多くの現場をOJTで回ることになる。まずはアロマの基礎知識を学び、資格を取る。そのあとは工具を使った機器の解体や組み立てに、営業研修も。@aromaのオイルを嗅ぎ分けられるようにもならないといけません。とにかく実際の現場に出てしっかり目で見て経験することが大事なのだそう。

SONY DSC 「最初に依頼が来たところから営業窓口としても対応することはあるので、見積もりを取ったり、お客さまに@aromaの商品を説明したり。そこからアフターメンテナンスまでですから、川上から川下まで受け持つんです。それは面白いところですよ」

ひとくちにデザインといっても、関わり方はさまざま。地道に支える裏方がいてはじめて、五感を刺激する空間は完成します。

自分の持つ技術で、目には見えないものを演出するプロフェッショナルな仕事。

そんなアットアロマの仕事を面白いと思えたら、ぜひ応募してみてください。

(2016/11/2 遠藤沙紀)