求人 NEW

攻めのタイル

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ちょっと古いイメージもあるけれど、色や形の組み合わせによっては新しくも可愛くもなる。

タイルには、まだまだいろんな可能性があると思うんです。

nittoseitosho01 生産量日本一を誇るタイルメーカー、株式会社日東製陶所

昨年新たに約14万個のタイルを使ったカフェ「スワンタイルカフェ」をオープンしました。今回募集するのはこのお店の店長です。

日々の営業に加えて、業界のこれからを一緒に考えてほしい。タイルの新たな可能性を見出していく仕事でもあります。

 
岐阜・多治見。

美濃焼きで広く知られるこのまちには「美濃焼卸団地」という場所があります。

老舗メーカーや関連企業が集まり、訪れた人は実際に陶器を買うこともできる。

この中の一角にスワンタイルカフェはあります。

nittoseitosho02 もともと倉庫だった建物をリノベーション。運営する日東製陶所は団地近くに本社を構える地元のタイルメーカーです。

実は日本のタイルの約9割が多治見でつくられています。日東製陶所はこのまちの生産量の約3割を担うトップメーカー。

そんな会社がなぜカフェをはじめることになったのだろう。

5代目の社長、若尾さんにうかがいます。

nittoseitosho03 「まずタイル業界がどうなんやという話からすると、タイルには建物に貼ってくれる職人さんが必要です。ところが今どき若い人が職人にならないから、我々がどんなにつくっても貼れる数が限られてくる。このままでは業界全体が衰退していってしまう」

「なんとか地場産業を守りたい。私が社長になった5年前から企画室を立ち上げて、社員たちと会社の進むべき方向を話し合ったんですね」

日東製陶所はトップメーカーといえどもまだ知名度は低い。卸したタイルは大手陶器メーカーの名前の入った段ボールに入れられ、自社の名前が外に出る機会はなかったといいます。

話し合いを進めるなか、若尾さんのお祖父さまの代から続くブランド「スワンタイル」の名前をそのままに、これまで受け身だった営業方法を見直すことにしました。

「うちの出荷量の60%は関東圏です。今まで通りの消費者頼みの営業ではなく、もっと決定権のあるデベロッパーやハウスメーカーへ直接営業に行こうと。それで営業所とショールームを東京につくって、いまはインターンの子も含めて5人が頑張っているところです」

nittoseitosho04 さらに営業の際の提案力を高めようと、日東製陶所ではつくっていない床用の大きなサイズのタイルを製作していた多治見の会社を若尾さんが引き継ぎ、日東製陶所は外装・内装・床と多様なタイルを扱える総合メーカーに。

知り合いの地元メーカーからもタイルを仕入れはじめ、タイルの地域商社のような役割も見えてきています。

「タイルメーカーでここまでやっているところは全国でもないだろうし、本当は商社に任せることだけど、そうも言っていられない。最近いろいろやりだして、流通が少し変わっていく可能性が出てきていると思います」

nittoseitosho05 そして昨年5月に新たにはじめたのがスワンタイルカフェです。

最近はDIYなどでタイルを扱う人もいるけれど、まだ建材としてのイメージが強かったり、触れる機会も少なかったりする。そもそも多治見がタイルの生産量日本一であることを知らない地元の人も多いのだとか。

タイルをもっと身近に感じてもらいたい。そんな想いからワークショップなども行なえる工房を併設したカフェ「スワンタイルカフェ」がスタートしました。

nittoseitosho06 建物全体に約14万個ものタイルが使われた、他では見ることができない空間。一見ただの白い壁も、よく見るとトーンの異なる4種類の白色タイルが貼られていたりする。

テーブルやランチョンマットにもタイルが使われ、照明は釉薬の樽を再利用したオリジナルのものです。

「一般的にタイルって統一された種類で施工されたりするけど、ここはツルツルしたものとデコボコしたものを組み合わせたり、いろんな色を組み合わせたりして、ちょっと特殊な使い方をしていて。ぜんぶ私のわがままを言わせてもらってできたカフェなんです」

そう話すのは現在育休中の加藤さん。営業を担当しながら企画室での活動も行い、いまは時折カフェのお手伝いをしています。

nittoseitosho07 スワンタイルカフェの内装に使われているタイルはすべて加藤さんが提案したものなんだとか。冒頭の写真はテーブルに使われているタイルで、その組み合わせも加藤さんが考えました。

営業担当だけど、もともとデザインの経験があったのでしょうか?

「いいえ、ちゃんと勉強したのは色彩検定くらい。営業の仕事でお客さんと話したり面白い提案を考えたりするうちに、いつの間にか素敵だねって言ってもらえるようなタイルの組み合わせができるようになってきて」

「向こうの壁の茶色いタイルなんかは、昔のものを復刻させたんですよ」

そういって見せてもらったタイルはレトロチックで可愛い感じ。一回りして新しくも感じる。

nittoseitosho08 「昔のタイルには、今では禁止されている鉛入りとかの釉薬を使ったものがあって。私はそんな昔の色が好きで、現代で表現できないか釉薬部の人に頼んだりしていたんです」

「そんなとき昔の資料を見ていたら、たまたまこの形が出てきて。営業でお客さんに聞いてみても反応がよかったので、『私が売ります!』って型まで復元してもらって」

聞くと、ひとつの型をつくるだけで100万円以上はかかるのだそう。小さいタイルだと1枚の卸値が数円だったりする。

けど、この会社ではやりたいと手を挙げた人に任せる風土があるのだといいます。

たとえば加藤さんはほかにも、タイルを使った紐ネクタイを考案。インターン生が考えたタイル製のボタンなどと一緒に商品化され、店内で販売しています。

タイルを使ったワークショップを開催する工房の運営も、基本的にインターン生に任せている。

nittoseitosho09 「結構のめり込んじゃうんですよね。この会社にはそういう人が多いと思います。ただ黙々とつくるんじゃなくて、愛情を持ってつくっている。それだけタイルには魅力があるので」

 
「根本的にタイルが好きなんですよね。面白いんです。どうやったら色が変わるかとか、みんなで揉めるくらい話し合ったりして。タイルって1260度くらいで焼くんですけど、±1度の変化でタイルの色も変わってくるんです」

そう話すのは、スワンタイルカフェの店長兼シェフを務める安江さん。

日東製陶所の工場でタイルをつくる職人さんでもあります。

nittoseitosho10 日東製陶所の社員に最初からタイルに興味があった人はほとんどいないのだそう。みんな日々タイルと向き合ううちに好きになっていきました。

同じようにタイルのよさを、カフェや工房を通じてお客さんにも分かってもらいたい。

最近地元TVで放送されたこともあって、客入りは連日順調だといいます。

nittoseitosho11 そんななか安江さんは再び工場に戻ることになりました。今回は彼の後任の募集になります。

お店の管理はもちろん、料理をつくることまで仕事は多岐に渡ります。営業時間は11時からのランチにはじまり、夜は予約制でコース料理を提供している。

席数は全部で約40席。休日は全て埋まるほどで、ほとんど安江さんが調理を担当しています。

「夜の予約があったときは、前日の夜のうちに仕入れをして、次の日の朝に届いた魚をさばいて、夜の準備をしながらランチの準備もして。季節ごとに旬のものを入れるので、毎月替えていくメニューもあって。アルバイトのシフト管理も自分がするので結構大変ですね」

安江さんは調理の実務経験があったということで、半年前からピンチヒッターでカフェに入っていました。毎月メニューを変えたり、夜にコース料理を提供しているのは以前いたシェフのときの名残なんだそう。

nittoseitosho12 ホールにアルバイトがいるとはいえ、これだけの仕事量をひとりで担うのはなかなか大変だと思います。

これからは運営に人を合わせるのではなく、応募してくれる人に合わせた運営をしていく予定。雇用形態や給与条件なども、やりたいことや経験によって相談してほしいとのこと。

「これまではカフェをちゃんと運営することに意識が行き過ぎちゃっていたんです。それで現状お客さんは来ているけれど、タイルに結びついているかというとそうでもないと思う。もっともっとタイルを知ってもらうためにメニューを変えたりとか、ここだからこそできることがある思うんです」

nittoseitosho13 たしかに、どこかまだこの空間を活かしきれていない感じを受ける。ワークショップや作品展示をするのもいいけれど、それだけではタイルが沢山あるオシャレなカフェで終始してしまう。

もっとソフトを企画したり、地域にフォーカスして近隣の人たちと一緒に盛り上げていくこともできると思う。

企画室の加藤さんは、工場の駐車場を利用したハンドメイドマーケットを企画しているのだそう。育休中にものづくりをしているママさんや地元の雑貨屋さん、陶器屋さんを巻き込んだ新たな地域イベント。

また、スワンタイルカフェにやって来たタイルマニアのお客さん要望に応え、ヴィンテージタイルを復刻して商品化することも目指しています。

タイルに関しては安江さんが工場を案内しながら教えてくれるとのこと。カフェ運営のほかにも、企画室の加藤さんたちと一緒に新たしい企画をしてほしい。『タイル』『多治見』『地場産業』といったキーワードに繋がることなら何をやってくれても構わないそうです。

代表の若尾さんは「地場産業を守りたい」と話していました。

けど、これから加わる人に求められるのは攻めの姿勢だと思う。

ここで何ができるか。ぜひ一度スワンタイルカフェを訪ねて、思い浮かべてください。

(2016/11/1 森田曜光)