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「不動産の買い取り、設計、現場監督、販売も。全部知ってたら、お金をかけて人に頼むとき判断しやすくなるだろうと思ったんだよね。でも、自分でやってみたら面白くなっちゃって」ふふ、と楽しそうに話してくれたのは、ウダツの代表である宮島さん。
ウダツは、全員で5人のこじんまりとした不動産とリノベーションの会社です。
マンションの一室をリノベーションして販売・賃貸したり、工事だけを請け負ったりと、住まいのリノベーションを手がけています。
企画から手がけることが多いから、自分たちが施主や設計者となって現場で職人さんたちと空間をつくり、ときにはつくった部屋を販売や賃貸のためにご案内します。
また、住んでいる方に、1年後、使い心地をインタビューすることも。聞いた感想は、ダイレクトに次の設計に生かされます。
そんなふうにすべてを知って空間をつくる、現場監督を募集します。
これまで不動産や設計に携わっている方で、もう一歩踏み込んでみたい。そんな人にぜひ知ってほしい仕事です。
ウダツのオフィスがあるのは、六本木の駅から歩いて5分ほどのところ。
階段をのぼって3階の部屋へ入ると、無垢のフローリングにレトロな形の窓。壁に沿って造り付けの机があって、空間が広く感じられる。
「最近、前の渋谷のオフィスから引っ越したばかりで。早くすっきりさせたいなって思ってます」
そう話すのは、代表の宮島さん。
穏やかな雰囲気の中に、遊び心が垣間見える方。以前は不動産ファンドの運用の仕事や、マンションを売っていたんだそう。
「集めたお金をもとにオフィスやマンションなどに投資して、上がった賃料を投資家に配当するマネジメントをしていました。どうしてこの場所、このビルは人気があるんだろう。人が何を求めているのかというところをずっと見ていました」
「そのときに、ちょっとした工夫で住む人をよろこばせられたら、今より賃料が高くてもすぐ埋まるだろうな、と思っていて。丁度リーマンショックのタイミングでウダツを立ち上げました」
はじめは建築のことはまったく知らなかったそうです。
「それでも、設計士に頼んでかっこいい空間をつくるだけじゃだめだろうと思っていました」
どうしてでしょう。
「たとえば、ワンルームマンションも、場所によって入居する層が違ってきますよね。20代の方が多く入居する場所であれば、新しいお風呂に取り替えて家賃が1万円上がるよりも、風呂トイレが別でさえあれば、古いままでも1万円家賃が安いほうがうれしいわけです」
「10人のうち1人にデザインが素敵と思ってもらうより、どれだけ多くの人によろこんでもらえるか。そこに焦点を当てたとき、最小限の投資でいかにパフォーマンスをあげるかということがポイントになるんです」
町や物件によってターゲットが違うから、何にどのくらいお金をかけるといいかも変わってくる。
まずは建築のことを知るためにも、知り合いの工務店に助けてもらいつつ、自分で現場も見てみることに。
「はじめ、人に頼むと高いな、と思ったんです。現場の解体のごみひとつとっても、廃棄のためにお金がかかる。本当はいくらなんだろう?って興味がわいて」
ふつう、建築は分業で行われることが多いそう。
施主が設計士に依頼し、設計士が工務店に依頼する。工務店は現場監督となって配電や施工などの職人を手配し、納期に間に合うよう指示を出すという流れ。
廃棄物処理の場合、ごみを袋詰めして運ぶ人件費とトラック代、そこに工務店の手数料がかかっていた。
「そこを自分でやったらレンタカー代だけで済んじゃう。ごみも運んでみれば、どのくらい大変かも分かります。その上で、自分でやるほうがいいのか人に頼むほうがいいのか。人に頼むなら、見積もりをみて高いか安いか判断できるようになるんです」
「そんなふうに一つひとつ『それどうなってるの?』ってわかることが面白くて。気づいたら現場監督の仕事にはじまり、設計から現場、販売まで手がけていました」
お金のことがクリアになる以外にも、良かったことがもう一つ。
それは工期が短くなること。
「現場で図面通りにできないことが起きたとき、ふつうなら現場の職人から現場監督、設計士を経由して施主に話がいくので時間がかかります。ところがぼくらの場合、ぼくらが施主であり、設計士や現場監督でもあるので、意思決定が早いんですね」
それから、こんなおまけも。
「ふつう現場の職人さんは、施主が誰かもわからないことが多いです。けれど、ぼくらが仕事していると『なんだか施主が現場に来て一生懸命やってるぞ』って職人さんのほうも一生懸命やってくれるんです(笑)。そういういい点もありますよ」
「その分、業務範囲は広いのにスピード感があるから、タスクをこなしていく大変さはあります」
ここで一緒に働くことになる、現場監督の大久保さんにも話を伺います。
以前は設計事務所に5年勤め、図面を引いていたそう。
「やっぱり設計事務所より業務範囲が広いので、最初は慣れるまでけっこう大変でした」
わからないことがあったら、理解するために自分で体を動かすことも。この日は午前中、現場のごみを片付けてきたんだそう。
「汚いし重いし、こういうのがいやだって人もいるでしょうね。ぼくはそんなにきらいじゃないです。ずっと机上で図面を引いていたので、もっとものづくりの現場に携わりたいという思いがありましたから」
実際どんなふうにつくっているのだろう。
大久保さんが担当した下丸子の物件を例に教えてもらいました。
「物件の仕入れは宮島や担当の人がするので、ぼくら現場監督は、着工までにプランを考えるところからはじまります」
ウダツのつくる空間は、実用性やニーズと照らし合わせたシンプルな設計。
まずは宮島さんと話し合い、具体的なターゲットを想定する。
「下丸子のある大田区という場所は、昔ながらの工場がたくさんあって、そこで働く事務職員の方や羽田空港で働いている方も多いんですね」
「そこで、わりと安定した仕事についている20代から30代のカップルや単身の方を想定してプランを考えました」
この建物の元々の間取りは37平米で、2K。
建てられた昭和48年当時は、貧しいながらも子どものいる家庭が多かった。とにかく部屋数が必要だったため、リビングは玄関の真ん前まで追いやられているようなプランニングだった。
「今回はカップル2人なので、部屋数よりも住み心地を優先しました。ゆっくり料理する人たちかなと思ったので、キッチンスペースを広くとって、入った瞬間『おっ』と思ってもらえるポイントをつくりました」
「そういう“ネタ”をひとつは入れるようにしているんです」
ネタ、ですか。
「今の生活にあってうれしいものですね。ぼくも最初はわからなかったんですけど、これは急に思い浮かぶというよりも、経験を重ねていく中で引っ張り出す感じです」
また、リノベーションの場合は、実際に現場を解体してみるまで中がどうなっているかわからない。
壁をはがしてみて、壊すことのできない躯体が現れたらプランを変更しないといけないから、常に2案くらいは考えておく。
着工になったら工事の申請を出して、部材を発注、職人さんを手配する。
「ぼくが一番大変だったのは、やっぱりこの工務店的な部分です」
「どのタイミングで人を手配したらいいのか、資材はいつ届くのがベストか、搬入経路は大丈夫か。工程表はつくるけれど、実際職人さんにどんな作業をするか、何が必要かを聞きながら進めていきました」
現場に入ると水道屋さんや電気屋さん、左官屋さんなど、入れ替わり立ち替わり人が来る。
職人さんの中には、人はいいけれど気難しい方もいるそう。
気持ちよく仕事してもらえるような段取りも、現場でトライアンドエラーしながら覚えたそうだ。
「たとえば、どういう作業をするかわからないまま現場にくるのと、事前に何をするかわかっているのとでは、心持ちも違いますよね。なので、作業することになる箇所の写真を撮って送り、必要なものを持ってきてもらったり、作業するところを前もって片付けたりしています」
クロスなどの内装仕上げまで終わったら、あとは家具をディスプレイして生活のイメージをつくっていく。
「下丸子はキッチンが売りだったので、キッチンに有孔ボードを取り付け、おたまやフライパンを並べて、『ここに住んだら楽しく料理できるだろうな』と住むイメージを持ってもらえるようにしました」
大久保さんは働き始めて2年。はじめは宮島さんについて学び、一人で担当できるまで1年かかったという。
「現場では何が起こるかわからないので、できあがると今回も無事に終わったな、ってほっとしますね」
最後に、販売という流れ。
ここで、宮島さん。
「自分がつくったものをお客さんが見にきて、その反応を見られることはいいことなんですよ」
「設計が狙った通りに使われているか、答え合わせができる。もし間違っていたとしても、次にプランを考えるとき、むちゃくちゃ実用的じゃないですか」
さらにウダツではマンションを購入していただいた方にインタビューをすることもある。
宮島さんがインタビューであったことを話してくれた。
「ぼくは、玄関口のスペースは広々しているほうがいいと思ってドアをつけなかったんだけど、みんな『郵便ポストの隙間から冷気が入ってくる気がする』って、廊下に突っ張り棒をして布かけてるんですよ(笑)」
そんなお宅をいくつか見て以来、なるべくドアをつけるようにしているそう。
「やっぱり自分の感覚と、実際に買ってくれて住んでいる人の感覚って違うんですよね。それを知るのはたのしいです」
すべてを知っているからこそ、取り入れたいものはすぐに反映できる。
大変な面もあるけれど、色んなことを吸収できる環境があると思います。
「自分の仕事はここまで、と決めてしまうんじゃなくて、『えっ、なにそれちょっとやらせてよ』みたいな、仕事と自分の好きなことが重なっている人と一緒に働きたいですね」
自分もそんなふうに働きたい。そう思えたら、ぜひ連絡してください。
(2017/9/26 倉島友香)