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島根とIT、いい関係

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

IT技術の普及で、プログラマーやデザイナーなど手に職を持つ人たちは、どこでだって働けるようになってきました。

「いつかは地元に帰って働きたい」「地域のなかで仕事を」

そんなふうに考えるクリエイターも増えてきたのではないでしょうか。

とはいえ、いざ地域に入っていこうとすると「仕事はあるのだろうか?」「すでにあるコミュニティに入っていける?」と不安は尽きないもの。

そんな人にとって、今回の募集はまたとないチャンスだと思います。

株式会社アットゴーは、ITデザイン会社としてWebサイトやポスター、PRムービー、そしてノベルティーグッズ制作などのデザインワークからシステム構築までを一気通貫で行う会社です。

2017年春に、島根県にある世界遺産・石見銀山の町並みのなかにサテライトオフィスをオープンすることになりました。

a-go01 地域のなかで暮らしながら働くWebデザイナーとグラフィックデザイナー、ITエンジニアを探しています。

東京本社と、実際に働くことになる石見銀山のオフィスを訪ねてお話を聞いてきました。



東京・溜池山王。

駅から歩いて5分ほどのビルに、アットゴーの本社オフィスがあります。

代表である吾郷(あごう)さんは、とても気さくで話しやすい雰囲気がある人。

a-go02 まずは、会社設立の経緯から聞いてみることに。

吾郷さんが独立し、アットゴーを立ち上げたのは2001年。Webデザインを行う会社としてスタートし、デザイン制作はもちろん、システム構築やアプリ開発にも仕事の幅を広げてきた。

「有難いことに、お仕事はお客様からのご紹介でスタートすることがほとんどです。お困りごとをお伺いして、自分たち自身も受けたいと思うご提案をするよう心がけています」

地元は島根県。子どものころからデザインやものづくりの仕事に興味があったものの、最初に入社したのは愛知県にある食品の卸会社だった。

「当時、フードコーディネーターという職種が出始めたころで。海外から新しく仕入れた食材のプロモーションがしたいと入社したんです。ポスターをつくったり、店頭でレシピの提案をしたりね」

ところが、思いとは裏腹に競り免許を取って市場で競りに参加することに。吾郷さんは「大変だったけどいい経験になった」と笑うけれど、3年間もそんな生活が続いたというから驚いた。

その後念願のデザイン会社に転職し、大手通信会社のホームページ立ち上げに関わる。

当時はインターネット黎明期。ゼロから同僚達とつくり方を開拓していった。

「数万人ものお客様が利用するサービスということもあり、自分達のつくったものでみんなが喜んでくれるのが、本当にうれしかったんですよね。でももっと自由に、Webもグラフィックもアプリも全部やりたい!と独立を決めました」

こうして聞いていると、すべてを糧にしながらエネルギーに変えてきた人なんだと思う。そんなふうに全力で想いに応え続け、今では社員9人の会社へと成長した。

a-go03 ここでご自身の出身地である島根に、サテライトオフィスを出すことになった経緯についても教えてもらう。

「子どものころは、地元にやってみたい仕事はないと思っていたんです」

地元の高校を卒業後、見えている就職先といえば看護師、栄養士、公務員。クリエィティブな仕事は、都会でないとできないと感じていたという。

「でもいずれは島根に戻ってきたい。会社を興してからは、IT系の仕事を地元で営むことで地域の活性化にも貢献できるはず、とずっと考えていました」

その思いを後押ししたのは、東京で出会った地元大田市出身の人たちの存在だった。

「東京大田市人会という場に参加して、全国で活躍されている企業の方々や石見銀山ご出身の方に出会って。みなさん『応援するよ』って声をかけてくださったんです」

オフィス立ち上げが正式に決まったときには、複数の新聞社から取材を受けるくらい大きな反響があった。この求人も、島根県と大田市のサポートがあって実現したもの。

すでに、地域での仕事の話も進めている。

たとえば、地域PR用のアプリ制作。町歩きのルートや歴史、クーポンなどがひと目でわかるアプリを提供し、観光客にまるでガイドさんが同行しているように楽しんでもらおうという試みだ。

「地元の通信会社さんや地場の会社さんと組んで、より良いコンテンツを提供したいと考えています」

新しく入る人は、企画段階から吾郷さんと一緒に参加できるそう。とはいえ、まずは東京の仕事を中心に経験を積んで、ゆくゆくは地域の仕事をつくることにも取り組んでほしいとのこと。

さまざまな人や場所と出会いながら、仕事をつくっていくことになりそうです。



この会社で働くことって、どんな感じなのだろう。働いている人にも話を聞いてみます。

入社2年目の西村さん。

a-go04 「大学は英語科だったんですけど、雑誌の編集に憧れて、面白いホームページを見つけると自分でもつくってみたいなと思っていて。ここではWebもデザインも、両方できそうだと思って入りました」

まだ経験は浅いながらも、先輩社員の指導のもと、ある企業のポータルサイトを担当している。インターフェースのデザインや、機能の組み込み、質問対応までをこなしているそう。

実際に働いてみてどうですか?

「今は客先に常駐して、複数のサイト運用を担当しています」

「自分なりにシステム設計の勉強をしていて。担当しているサイトの仕組みについて理解が進むと、課題点を自分で見つけて改善できるようになってきたんです。ちょっと成長を実感できてうれしかったですね」

a-go05 西村さんのように自ら学び続ける姿勢があれば、システムからデザインまで領域を超えて幅広く挑戦できる環境があります。

「残業はほとんどないので、メリハリをつけて働けています。社長はプライベートの相談とかも、笑って聞いてくれます(笑) 毎日楽しいですよ」

「これからはもっとデザインの仕事もやってみたいです。社長はお客様に、すごくいろんな提案をしている。そんな姿を近くで見ているから、私もどんどん勉強して世界を広げていこうと思います」



東京での取材のあと、日を改めて島根へ。

出雲縁結び空港から大田市内までは車で約1時間。サテライトオフィスのある大森町までは、さらに車で15分ほど。

新しいオフィスの前で吾郷さんに再会し、中を案内してもらいました。

a-go06 築125年の古民家ながら、なんと室内はオール電化で床暖房も完備。まさに古いものと新しいものの、いいとこ取りという感じ。

ここで東京本社とコミュニケーションをとりながら、テレワークで仕事をする。想像よりも、かなり快適な仕事空間となりそうです。

そして実はこのオフィス、日本仕事百貨で何度もご紹介している群言堂本店が目と鼻の先にある。

群言堂を運営する石見銀山生活文化研究所は、天然素材と製法にこだわった服づくりをしたり、昔ながらの暮らしを伝える宿を運営したり。衣食住を通して、自分たちの暮らしを発信しつづけている会社です。

アットゴーには、まだ実際に島根で生活をしている人がいないので、群言堂で暮らしの様子をたずねてみることにしました。

迎えてくれたのは、広報の三浦さん。

a-go07 出身は名古屋。大学時代に参加した、現在の会長にあたる松場大吉さんの講演会をきっかけに、大森町に興味を持った。

「そのあとインターン生として、夏休みの間1ヶ月ほど大森町で過ごしました」

1ヶ月暮らしてみて、どうでしたか。

「ご飯食べにきなよって誘ってもらったり、海とか温泉に連れて行ってくれたり。外から来た見知らぬ若者にも、すごくオープンで寛容に接してくれたのが印象に残って」

「こういうところで暮らせたら幸せだろうなと。仕事を考える上でも、暮らす環境っていうのをはじめて意識した瞬間だったかなと思います」

a-go08 その後入社とともに移住を決め、大森での生活も今年で6年目。最初に抱いた印象は変わっていないけれど、一言でいうと「結構都会的な田舎町かな」と話します。

「田舎に行くとある種の寂しさを感じることがあるんですけど、それはないかなと思いますね。人が近くに感じられるというか」

「たとえば子どもたちが登校するとき、観光で来ている人にもちゃんと挨拶するんですよね。住民もいってらっしゃい、おかえりと声をかけていて、地域で子どもを見守っています。子どもがそういう社会の中で育つのはすごく健やかでいいなと思います」

町にはコンビニがない。けれども、小さな商店とJAの直売所がある。最近、とてもおいしいドイツパン屋さんができたそう。本場イタリアのコーヒーが飲めるコーヒーショップやゆっくりと時間を過ごせるカフェもある。

休みの日は、どんな過ごし方をしているのだろう。

「6、70代のおじさんたちがまだまだ現役なので(笑)そういう人たちに、遊び方を教えてもらっています」

山で山菜を採ったり、川でウナギ釣りをしたり。夏には海に潜ってタコを捕る。今年は狩猟免許も取得してイノシシも獲った。

a-go09 自然に溶け込んだ暮らしを楽しむ一方で、「地域のための時間をどう考えるか」がポイントになるようです。

「良くも悪くも距離が近いので、それなりに人と触れあわなければ生きていけないというか。義務ではないですが、自治会や消防団など地域の活動に関わることもあります」

三浦さんも、自治会で会計を担当している。正直、負担に感じることもあるそうだ。

「でも町のなかでなんらかの役割を果たして、居場所ができるというか。役割があるということも、すごく大事な、素敵なことだと僕は思うんです」

a-go10 大森町の人口は約400人ほど。ほとんどが顔見知りだという町内では、こういった環境を受け入れ、楽しめることが不可欠なのだと思います。

「ここではどうしても暮らしと仕事の境目が曖昧になってくるので、もしかしたらつらいと感じる方もいるかもしれません。でもそれを心地よく感じられそうであれば、心から大森での暮らしをおすすめしますよ」

三浦さんをはじめ、群言堂にはU・Iターンをして大森にやってきた人たちがたくさんいます。

それは暮らしていく上でも大きな助けになるだろうし、便利さやお金では測れない価値がこの町の暮らしにはあるように感じました。

a-go11 これからの暮らしを考えるとき、都市と地域とを対立関係で考える必要はないと思います。

働き方も暮らしも柔軟にデザインしながら、都市と地域をつなぐ豊かな生き方が、ここでならきっと見つけられるはず。

2月2日には、吾郷さんと三浦さんをバーテンダーとしてお迎えするしごとバーが開催されます。少しでも興味がわいたら、ぜひ直接リトルトーキョーでお二人と話してみてください。

春にはIT関連のクリエイター、エンジニア向けの移住体験ツアーも開催されるので、実際の暮らしも体験してもらえたらと思います。

(2017/1/31 並木仁美)