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日常に馴染ませて

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未来を形づくるには、先々を見つめることよりも、今足元にある資源をいかに活用していくかが大切なのかもしれません。

かすみがうら未来づくりカンパニーで働く方々は、実際にそうして未来を形にしているところでした。

かすみがうら未来づくりカンパニーは、株式会社ステッチ、かすみがうら市、筑波銀行が共同出資を行い誕生しました。

グラフィックやWebなどさまざまなメディアを用いて表現する株式会社ステッチが中心となり、サイクリング事業・レストラン事業・マルシェ事業の三つの事業を展開。

地域に根付く文化、地域の価値を活かし、この土地で暮らす人たちと一緒になって、かすみがうら市の未来を育てていきます。

今回は、ここで働く料理人と事業開発プロデューサーの募集です。

 
北千住駅から常磐線に乗ること約1時間、霞ヶ浦の横に位置する神立駅に到着します。

かすみがうら未来づくりカンパニーの拠点であるかすみがうら市交流センターは、霞ヶ浦のほとりに建物があるため、最寄り駅の神立駅からは車かタクシーしかアクセス手段がありません。

スタッフの方に迎えに来てもらい、車で走ること20分。霞ヶ浦が見えてきます。

そのすぐ横に建つのが、かすみがうら市交流センターです。

1階には自転車が並び、2階はかすみがうら市の食材を堪能できるレストラン。

取材当時、1階部分は改装していました。今後はマルシェなどのイベントが増えていくとのこと。

自転車・キッチン・マルシェを中心とした場所づくりは、どのようにしてはじまったんだろう。

そんな疑問を持ちながらはじめにお話を伺ったのは、ステッチで働きながら、かすみがうら未来づくりカンパニーの代表を務める今野さん。以前は編集プロダクションで働いていました。

04 生まれ育った環境が田舎だったこともあり、働きながら常に頭の片すみで気になっていたことがあるそうです。

「前職で働いていたときに街の情報を紹介する雑誌を担当していて、地方の方に話を聞くことが多かったんです。けれども、口を揃えて『昔はこうだった』という話ばかりが出てくるんです」

「国の動きとしても地方創生が掲げられ、この先そういう動きが増していくのかもと思って。街に人を呼ぶことを考えると単に情報を紹介するだけの編集方法ではやっぱり難しいよなっていう気持ちが強かったですね」

そんなとき、転職を考えてステッチに面接に行ったときの社長の言葉が転機になりました。

「グループ会社が運営する「ni-go」というワインバーで、野生鳥獣による農林被害が深刻になっている宮崎県五ヶ瀬町と共同で、食肉としての活用・消費を考えている、という話を聞きました」

「なんか、地域のなかで色々な形で仕掛けられる発想が良いなって思ったんです」

そうしてステッチで働くなか、新潟県十日町市で開催される越後妻有ライドクエストというイベントに関わることになった。

ライドクエスト事業とは、自転車で地域資源を中心としたスポットを巡る体験型の観光プログラム。

新潟県の次は、全長140kmという日本でも指折りのサイクリングロードを持つ茨城県かすみがうら市で事業を展開することになった。

かすみがうらは、日本でも指折りのサイクリングロードが整っているそう。

そこで、自転車に乗って美味しいご飯を食べまわったり、地域の風景を楽しんでもらおうと、かすみがうら市と筑波銀行と共同運営として2016年の4月にかすみがうら未来づくりカンパニーを誕生させました。

k05 さらに、その想いを展開するために、地域の商品開発やマルシェといった6次産業にも力を注ぐことに。

たとえば、といって見せてくれたのは地元のお芋屋さんの焼き芋を使用して作られた芋焼酎のデザイン。

IMG_4072 2 「この商品は、僕らがパッケージやリリース制作まで行いました。まずは売れる仕組みづくりをこちらが提示して、ぼくらの仕事を地元の方に認知してもらうことが第一だと思ったんです」

芋焼酎に使用されている焼き芋は、株式会社ひのでやさんというこだわりのあるお芋屋さんがつくったもの。

収穫した芋を1年ほどかけて熟成。その際に一酸化炭素で処理をすることで糖度を高める。さらに焼いた後で、一度冷凍。さまざまな処理を経て、糖度の高い芋焼酎が作られている。

「茨城には豊富な食材がたくさんあるので、見せ方を変えるだけで十分可能性があるんです。本来10売れるところを、僕らの力で20、30売れるようなお手伝いができればなと思っています」

そうした展開を事業プロデューサーが考案し、シェフが地元の食材を使用して商品開発やレシピなどを模索していくことになります。

「茨城でつくられている食材はとてもいいものなので、どんどん売れていくんです。僕らがその流れのなかに割って入るような活動をするのは、地域活性化とは違うと思っています」

「食材の良さを活かしながら農家さんが抱えている課題を探し出し、ぼくらのマーケティング力で、お互いが良い関係を作れる企画を一緒に考えられるといいですね」

そこで一番必要とされているのが、手を動かせる料理人の力。今は料理人が一人しかいないので、商品開発などに手が回っていない状況だといいます。

オープンして1年も経っていないので、認知度などは決して高くはありません。

けれども、毎日少しずつ新しい取り組みをしていけば、かすみがうらに根付かせることができるのかも。

 
次に話を聞いたのは、実際にシェフとして働く梅津佑次さん。

08 「小さい頃からラーメンが好きで、土浦にあるラーメン屋に家族でよく通っていました。そのときに炎を上げて調理する姿に憧れたのが、料理人の世界に興味を持つようになったきっかけですね」

調理専門学校を卒業後、都内で有名な中華料理屋に就職。3年ほど働いたある日、筑波にあるナポリピッツアのお店「Amici(アミーチ)」で食べたピザに衝撃を受けます。

「ふわふわのピッツアをはじめて食べて感動したんです。それからイタリアンを学びたいと思い、千葉で7年ほど勉強しました」

「30になったとき、こちらの事業を立ち上げる話をいただいて。生まれが隣の土浦市っていうこともあり、茨城を活性化させていきたいっていう思いがありました」

実は、もうひとつ理由があったんですと話してくれた梅津さん。

「正直、料理人ながらも茨城の有名な食材が何なのか、そんなに知らなかったんです。土浦レンコンなどは有名ですが、さらに細かく知りたいっていう気持ちがありました」

都内で働いていたときには、お肉だったらどこのブランド肉だとか、野菜は築地から仕入れるといったルールがあった。

「ところが、こちらでの食材の仕入れ方は、直接生産者のところまで足を運び、どういう育て方をしているのか1から話せる環境がありました。こんな食材が茨城にあるんだっていう発見がオープン以降ずっとあるんです」

たとえば、と話してくれたのが茨城県で生産量第一位の生の蓮根を食べて育った豚「蓮根豚」。

「自分はお肉の脂身があまり得意ではないんですが、蓮根豚の脂身は美味しいって思えたんですよ。甘い、といいますか」

ここで働くことで、これまで自分が知らなかった地元食材への気づきがとても多かった。さらに、生産者さんと直接話すことが、その気づきの質を高いものにしてくれた。

「そうですね。料理って物語が大事だと先輩方に教わって、そういった想いが料理に加わると、やっぱり美味しくなるなと思ったんです。なので、1から生産者さんとお話しできる環境っていうのはありがたいですね」

10 そうした食材を見つけられる環境の良さは、かすみがうら未来づくりカンパニーの運営の仕方に関係していることに気がつきます。

「民間企業と市、銀行という3つのセクターで運営しているので、市役所との関わりが強いんです。なので、かすみがうら市の食材についても、ライドクエストでまわる美しい風景についても、この町のプロである市役所の方がすべて教えてくれるんです」

「さらに驚いたのは景色ですね。テラスから見える朝日がすごい綺麗で。こんな場所が地元に存在していたことが自分にとってはいちばんの驚きでした。まさに秘境の地でしたね」

13 アクセスは決して良いとは言えないけど、実際に訪れてみると都会や観光地とも違った風景があり、ここだけの時間の流れを感じます。

「まだまだお客さんの流れが読めないというのが正直なところで、これから探っていく段階ですね。今はデータとして集めていて、今年から活かしていければと思っています」

どんな人と一緒に働きたいですか。

「一言で言えば、“ばか”なやつでしょうか。ここは立ち上げたばかりなので、何が人気になるのかってまだわからないと思うんです。これやってみたい、あれやってみたいっていう勢いは大切かな」

「むしろ、調理や味に関してはすぐにできなくていいと思っているんですよ。逆にすぐできてしまうと、自分は不安です」

不安ですか。

「料理って、自分勝手にやってしまうと味が変わってしまうんです。なので、仕事を覚える早さよりも、自分のペースでゆっくりできる人が良いかな」

「『料理人』という肩書きよりも、笑顔が似合う人とか、人としゃべることが好き、とか。そういうことでいいと思います」

人を肩書きで括りがちだけれども、どこにでもある働き方なんてないし、実際の働き方はそれぞれまったく異なるもの。

すこし解像度を変えることで、そういった気づきをたくさん発見できるのかもしれません。梅津さんの話を聞いていくうちに、そんなことを感じました。

どこにでもある風景なんてありえないように、ここから見える風景も、きっとどんどん変わっていくのかな。

 
取材も済み、一息つくと「今の時間の夕日は綺麗ですよ」と梅津さん。

11 そこには、きれいなグラデーションを描いて空と湖に馴染む風景が広がっていた。

最後に、こんなことを話してくれました。

「お店ははじまっていますが、まだ1でもないと思っていて。何が正解かわからないから、とりあえずやってみようっていう状態なのかな」

「ぼくも今野さんと料理のことはもちろん、サイクリング事業についても話すことがあります。知識がないからこそ気軽に、でも真剣に話し合いができているのかなって思いますね」

今ある資源を生かして、これからの日常に馴染ませていく。そうした活動こそ、未来づくりなのかもしれません。

(2016/12/22 取材 浦川彰太)

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