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取材前に時間があったので、兵庫県の豊岡の商店街を散歩していたときのこと。ある鞄の専門店で、ひときわ目を引くものに出会いました。
それは雪のように真っ白な、革のキャリーケースです。
「汚れが目立つし扱いにくそうだな」と思う気持ち半分、今まで出会ったことのないデザインは、純粋に心惹かれるものがある。
どうしてこんな鞄をつくろうと思ったんだろう。その疑問はこの日の取材で解決しました。
「僕、新しいことに挑戦するのが大好きでね!」
そう話してくれたのはコニー株式会社代表の西田さん。コニーは、豊岡で40年以上鞄の製造、卸しをしてきた会社です。
実はこの白い鞄は、コニーが新たにはじめたオリジナルブランド“CREEZAN”のアイテムの一つ。お話をうかがってみて、この鞄の斬新さと存在感は、まさに西田さんそのもののようだと思いました。
今回は、西田さん率いるコニーで受注から納品までをマネジメントする生産管理スタッフと、革を扱う鞄職人を募集します。
ここで働くスタッフは、ときには“無茶振り”とも言われる西田さんのアイディアをかたちにするために、なんだか毎日いそがしそう。
経験はなくとも絵を描いてみたり、突然ワークショップの講師になってみたり。
「しょうがないなあ」と言いながら、みんなでおもしろがって仕事をする姿勢が印象的な会社です。
訪れたのは豊岡市のちょうど真ん中にある“豊岡鞄団地”。
ここは材料商や鞄のメーカー、卸し会社が集まる日本で唯一の鞄専門の工業団地です。
この団地の中にコニーの本社がある。コニーはメーカーと卸しの両方の機能を兼ねていて、本社以外にも東京や海外に工房と支店を置いています。
ここで迎えてくれたのが代表の西田さんです。大きなよく通る声が印象的。
もともとは西田さんの地元大阪のアパレル会社で、自社の服を販売する営業をしていた。
叔父が経営していたコニーに転職を決めたのは、今から27年前のこと。
「ここにはオリジナルのブランドはなくて。営業の仕方もまったく違いましたし、はじめは戸惑いもありました。でも相手にしているのは一流のブランドや上場企業。『こんな会社に出入りできるんだ!』って思いましたね」
「僕は新しいことが好きで。とくに新しいお客さんを見つける仕事が好きでした」
社長に就任してからも新しいことが好きなのは変わらない。「とんでもないことを思いつく社長」と自身のことを話します。
「ずっと同じ仕事をやるっておもしろくない。たとえば違う仕事と仕事をクロスオーバーさせたらおもしろいんじゃないかとか、あんまり人がしないことをしてみたいんです」
豊岡に本社を置く会社ではなかなかない海外支店をつくったり、「ものづくりを武器に営業せえ」と職人に営業をさせたことも。
売上の99%が今はOEM生産というコニー。東京オリンピックを前に、西田さんはまた“とんでもないこと”を思いつく。
それがあの白いキャリーバッグのブランド“CREEZAN”です。
「先代の社長とも、いつかは自分たちのブランドを持ちたいと話していました」
「質の良い革のキャリーバッグをつくる技術は社内にある。まずつくるならオンリーワンやと。で、白い鞄つくろうって考えました」
そのとき、社内の皆さんはどんな反応だったのでしょうか。
「つくる人間は口そろえて『社長やめましょう、よごれますから』って。でもちょっとまって、これつくったら鞄を汚さないためにきれいな工場になるやん。それだけノウハウもできるやん」
「こんな誰もつくりたがらない鞄をつくれたら、自分らのスキルアップにもなるよねって。だからやろうって言ってつくりました」
こうして、つくる人も売る人もドキドキさせてしまう白い鞄は完成した。完成した鞄を社内でも見せていただきました。やっぱり目を引く格好よさ。取引先の方からも褒めてもらえているそうです。
とはいえ、現在の販路は銀座和光さんと豊岡市内の鞄専門店だけ。今後は近くの観光地・城崎温泉に直営店を出すことで、周知していこうとしています。
今年の6月にオープンする直営店は、カフェと鞄の販売スペースが一緒になったおもしろい空間なんだとか。
ここでも西田さんのアイディアが。
「豊岡といったら豊岡鞄、但馬牛、出石(いずし)焼き。だから出石焼きのそば猪口を販売しようと思って」
そば猪口?
「そうそう。うちがデザインしたの置いたらおもしろいんちゃうかなって。城崎の店舗でも、急に日頃の仕事とは違う仕事を与えるわけですよ。今回は生産管理チームをそば猪口班に任命して、デザインさせました」
すると横からこんな言葉が。
「うちらはデザイナーちゃいますよ!笑」
すかさずツッコミを入れたのは、隣で話を聞いていた生産管理部主任の関岡さん。コニーで働いて12年になります。
「この会社で大変といえば、社長の対応ちゃいますか(笑)」
「なんでや!」と横で笑う西田さん。掛け合いが楽しい2人です。
関岡さんが例のそば猪口の話もしてくれました。
「最初はもちろん『うちら鞄屋ですよね』って言いましたよ。でもこういうことはよくあるんです。一緒にやることになった方と『とりあえずやりますか』って」
結局出石焼きの窯元さんのところに協力をお願いしに行き、完成したのがこのそば猪口です。
「社長のアイデアでイレギュラーなことも多いですけど、やったことないことをやるほうがおもしろいですよ。このそば猪口づくりも、売れるかどうかわからないですけど楽しいですよね」
とはいえ、この例は特別なもの。生産管理部の日々の業務はコニーを支える要です。
「取引先への営業、提案、見積もり、検品、出荷、アフターフォロー。一連の流れをするのが生産管理部です。生産管理部がいないと受注もできないし、資材の調達もできない。そこが一番肝になります」
そんな関岡さんは、コニーに入社するまで市内の会社で事務職に就いていた。
伝票や請求書を発行する毎日の繰り返しに飽きてしまったことが、転職を考えたきっかけだそう。
「ここでは毎日仕事が違います。同じことをする日はないんです」
出社したらメールをチェックして、パソコン業務。豊岡市内外の鞄の工房へ進行状況のチェックに行ったり、仕上がったものの検品をしたり。出荷業務も仕事のうち。商品の入った重たいコンテナの搬入もスタッフ総出で行ないます。
関岡さんは月に1、2回は東京へブランド担当者との打ち合わせに行き、ときには海外の工場でつくっている商品のチェックに現地まで出張することもあるんだそう。今は国内にいる5人のメンバーで、いくつかのクライアントを分担している。
受注をして、鞄をつくり、納品する。同じ流れのようだけれど、お客さんも違えば商品も違う。そのつど臨機応変に対応していきます。
苦労することってありますか?
「覚えることがすごく多いと思います」
「『値段をあといくら下げたいけど、どこをどう変えたらできるだろう』と聞かれたときに提案できるためには、材料のことも金額のことも知っていないといけません。営業するときにも後押しができないですよね」
“生産管理”というと、受発注と品質の管理がメインの事務仕事のように思われてしまいがちだけれど、コニーの生産管理の仕事は本当に多岐にわたります。その分知っておかないといけないことも多いということ。
入社したばかりのころは、生地の見本帳や金具を家に持ち帰っては勉強したのだそう。一人前になるには3年はかかるけれど、知れば知るほどお客さんと話ができるようになって、仕事は楽しくなっていく。
「アパレル関係のお客さんと接することも多いのでファッションが好きな人は向いてると思います。ブランドの鞄とか興味をもってくれる子がいいですね」
コニーは東京と豊岡に自社の鞄工場も持っています。
みなさんがラボと呼ぶ本社ビルの中の工房“Laboratory”で働く宮嶌さんにも話を聞きました。
宮嶌さんは東京とイタリアで鞄づくりの技術を学んだのちに、Iターンで豊岡にやってきた方です。ラボのリーダーのような存在。
「ここにはじめて来たときは何もまわりにないぶん、鞄づくりに集中できる環境だなって思いました。3日くらいでここに決めて。その2週間後くらいには引っ越してましたね」
入ってみてどうですか。
「今は人の上に立つ仕事も増えたので大変なこともあります。でも手を動かすことが大好きなので、すごく楽しい」
コニーは休みの日も工房を開けるので、仕事でなくてもミシンを踏みにくることも。いつか独立したいと考えている人もぜひ入ってほしいそう。
ラボで働くスタッフは7人。豊岡出身ではない人ばかりです。
未経験の方は、まずはミシンを踏む前段階や後処理を担当することになるそう。ずれないように生地を固定したり、内職さんにお願いするものの数を数えたり。そんなことからはじめていき、その次に目立たない部位のミシンを担当させてもらう機会がやってくるそうです。
「未経験の子も1人いますし、今は平均年齢が24、5歳と若いですよ。はじめは自分から進んで勉強していかないと難しいところはありますね」
経験を積んでいくと、いろいろなことを任されていく。宮嶌さんもつい先日、西田さんが思いついた革小物ワークショップの講師に任命されたと教えてくれた。
「急に任されて最初はすごく大変でした(笑)」
「でも今までお客さんと直接お会いすることがなかったので生の声を聞けて、笑顔で帰ってもらって本当によかったなって。今後も何かしら伝えていきたいなって思いましたね」
隣で聞いていた西田さんが「いやだなって思う人はここじゃ生きていけんよ」と笑います。
たしかに、ここで働くためには西田さんの起こす波にうまく乗っていかないといけないように思います。
でも、乗れたらきっとおもしろい。
最後に関岡さんがこんなことを言ってくれました。
「コニーのいいところって人だと思うんです。すごくみんないい人ばかり、よくここまでそろったなって思う。若い人はとくに飛び込みやすい環境だと思います」
西田さんをはじめ、皆さん新しく入る方を心待ちにしています。コニーで働く自分の姿を想像できたら、ぜひ応募してみてください。
(2017/3/14 遠藤沙紀)