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小さな会社だからこそ

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就職するなら大企業。

そう考える人は多いようだけれど、日本の会社の99.7%は中小企業です。

日本仕事百貨でも紹介している会社のほとんどが中小企業だし、10人ほどで面白いことをやっている会社がたくさんある。

小さな会社“でも”というより、小さな会社“だからこそ”できることがあるのだと思う。

株式会社エレガントウッドコーポレーション(以下、エレガントウッド)は、小さな会社であることの利点を活かして、大手企業には真似できないものづくりをしています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA つくっているのは、建物の壁面を装飾するデザインパネル。

単にカタログに載せて販売するのではなく、建築家やデザイナーの要望に合わせた特注品を制作したり、デザインパネルの新しい使い方を提案したり、一般的には使わない素材や加工法で新商品もつくってしまう。

そのフットワークの軽さは社内にも通じていて、若いスタッフも垣根なく一緒になって会社のことを決めていきます。

大事なのは経験でも年齢でもなくて、この会社を面白がってくれるかどうか。営業担当と製作担当の募集です。

 
東京・池尻大橋駅。

昨年、この駅近くにできたという事務所に伺いました。

迎えてくれたのは、エレガントウッドの石井さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 石井さんにお会いするのは2014年の取材以来。久しぶりなのに距離感を感じさせない、とても親しみやすい方です。

いまは関東圏での仕事が半数を超えていて、月に1度は出張に来て1週間ほど滞在するのだそう。

エレガントウッドは石井さんのお父さまが創業した会社で、本社は福岡県にあります。

家具の生産高が日本一の大川市で、もともとは家具の化粧材として使われるツキ板を、主に地元家具メーカーに向けて販売していました。

ツキ板とは天然木を0.2㎜に薄くスライスしたシートのようなもの。これを様々な材に糊付けすることで、経年変化のある天然木ならではの味わいを商品に与えることができる。

木目風の塩ビシートが広く普及する今では、ツキ板を扱える数少ない会社のひとつでもあります。

elegantwood03 取引先のデザインパネル製造会社を引き継いでからは、凹凸のある不燃材にツキ板を貼り付けた製品を中心に、デザインパネルの製造・販売を開始。

ところが当初、設計事務所やデザイン事務所に営業しても、なかなかうまくいかなかったそう。

「業界的に、常に新しい形の商品が求められていて。だけど凹凸のデザインはもう出尽くしていて、うちも含めてどこも差別化できていないんです。だから商品を載せたカタログを見せても、金額だけで他社と比べられてしまう。そんな状況が嫌だったので、こちらから設計士さんへ提案することをはじめました」

elegantwood04 たとえば、デザインパネルの表面に貼り付ける素材を変えてみる。ツキ板の他にシルクや布を貼ることで柔らかい質感を表現できるそうだ。

塗装も加えればいろんな色で表現できるし、デザインパネル自体も不燃材だけでなく合板やアルミなどを使うことだってできる。

クライアントの要望に合わせて素材や加工の組み合わせを変えることで、既製品にはない新しい商品を提案できるように。

また、プログラムを使ってより複雑な加工が可能となる機械「NCルーター」を導入して、特注などの多様なニーズに応えられるようになっていった。

elegantwood05 最近は、デザインパネルを空間の一部分に使ってアートパネルのように見せるなど、使い方を含めたデザイン提案までしている。

「自分から提案するのは楽しいですよ。興味を持ってくれる人は結構多くて、カタログにないものを見せると『こんなのあるの?』って」

提案力の高さに加えて、もともとの品質の高さもエレガントウッドの強み。

ツキ板で培ってきた糊付けして加工する高い技術があるのはもちろん、関係の深い地元の塗装会社に依頼して、複雑な凹凸もきれいな塗装で仕上げることができる。

「うちのパネルってエッジがきれいに立っているんです。他社のものだと、色のキワがぼやけてたりする。その差って結構でかい」

そもそもデザインパネルのメーカーで、塗装までやっているところは珍しいそう。色ムラでクレームが起こるなどリスクがあるため、真っ白なパネルを納品したあとは施工会社に塗装を委ねるのが普通だという。

elegantwood06 そんなエレガントウッドのデザインパネルは各地で評価され、東京駅やスカイツリーをはじめ、都心部の百貨店やホテルなどで使われている。

これからは銀座6丁目にできる新しい商業施設「GINZA SIX」など、大型案件も控えているという。

「たかだか13人の小さい会社が東京に出張ってきて、有名な建築家さんと一緒に仕事して、いろんな物件に納めて。そう思うと、結構やりがいはあるのかなと思ってやってますよ」

elegantwood07 最近は、新たな素材を使ったデザインパネルを開発している。

石井さんが見せてくれたのは、木でも石膏でもない、不思議な黒色の模様の入った透明なパネル。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「これ、アクリルなんです。透明なアクリルの上に薄い黒のアクリルを貼り付けて、削った残りがグラデーションに見える」

どうしてアクリルを使うことにしたんですか?

「いろんな伝統工芸の職人さんと一緒に商品をプロデュースしてるt.c.k.wという会社があって、一緒に何かできないかと思って連絡したら、たまたま向こうもNCルーターの加工技術がほしかったみたいでつながったんです」

「そしたら、仲間内にアクリルを使ってモノづくりをする作家さんがいたので、一緒にやろうかって話になって。それで、いろいろ試作してみたんですよ」

エレガントウッドがNCルーターで削ったものを、東京にいるアクリルの作家さんが磨いて仕上げるコラボ商品。

事務所内には淡いピンク色の模様のアクリルパネルや、ツキ板をアクリルで挟んだパネルなど、いろんな試作品が置かれている。

ところでNCルーターってなんでも削れちゃうんですね。

「いや、普通は木や石膏しかやらないです(笑)アクリルを削る機械じゃないので」

はじめて削ってみたとき、機械から変な音がしたり、アクリル板が台から吹っ飛んだりしたらしい。

「うちの職人もストイックなんですよね。アクリルの作家さんともいろいろ話し合いながらつくったり、あとはうちが勝手に試作したりして」

なかには遊び心でつくったものもあるみたい。

まだお客さんからのニーズが明確にあるわけでもないし、時間もコストもかかることだけど、つくっちゃうんですね。

「誰もやってないから、やりたいんですよね。こんなの、大手企業だったら普通やらんから。これがやっぱり中小企業の醍醐味だと思うけどな」

elegantwood09 そんな攻めの姿勢がエレガントウッドの独自性をつくりだしているのだと思う。

アクリルパネルは浅草の和食レストランで照明器具として使われ、自分たちでも想像しなかった新しい活用法を見出すことができた。

また、t.c.k.wとは引き続きコラボ商品を開発中。国内産絹糸だけでできた織物に越前紙を裏打加工するというt.c.k.wが開発した新素材「絹布紙」。これをエレガントウッドのデザインパネルに貼り付けた新商品も生まれている。

「いまはモノを売ってるメーカーだけど、これからは脱却してデザインができるデザイン事務所のようになってもいいと思う。あとは建築に特化しなくてもいいから、貼って塗って加工する技術を使って、違う分野にも挑戦できるといいなって」

違う分野?

「アクリルを削ってオブジェをつくるとか。まだ分からんけど、いろんな可能性があるのかなって思うんですよね。やってることに対しての自負はあるので、何とか活かしたいなって」

 
たしかに、貼って塗って加工する技術があれば、建材以外の商品だってつくれそう。

「お歳暮でハムを入れている木製の箱があるじゃないですか。あれをツキ板でつくったらもっと高級感出せるから、ハムメーカーにも営業いけるなって思ったりするんです(笑)」

そう話すのは、営業担当の小林さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 爽やかな笑顔が特徴の小林さん。前回の募集で入社し、石井さんと2人で営業を担当しています。

小林さんにとってエレガントウッドははじめての会社。

出身は福岡市。関西の大学に通い、経済学を専攻していたのだそう。

「実家に帰って就職浪人してたんです。よほど行き詰まってたんでしょうね。あるときグーグルで『仕事』と検索したら日本仕事百貨が出てきて、たまたまエレガントウッドの記事を読んで、かっこいい仕事だなって」

「建築だからってことでもなく、ツキ板なんて知らなかった。就職活動していたころに思ったのは、この会社に入りたいと思う決め手は仕事内容より人なのかなって。石井と会って話して、何となくフィーリングが合う気がしました」

今回加わる人も小林さんと同じ営業を担当してもらいます。

最初の半年は石井さんと行動を共にして、東京への出張も一緒に行く。現場での営業の仕方を見て真似て、やがてひとりで営業に行くようになります。

この仕事をしていて、大変なことってありますか?

「2年半やってきて、ようやく成果が出るようになったこと。苦労したことも多かったですけど、この会社は自由でいいんですよ」

どう自由なんですか?

「基本的に石井は放任主義だから仕事の優先順位は自分で決められるし、今回の募集でもどんな人材を採用したらいいかを僕から投げかけた。会社をこれからどうしていこうかっていうのも、僕が若いからとか関係なく石井は相談してくれる。普通の会社じゃできないことだと思うんですよね」

逆を言えば、経営について答えられるだけの考えを常に持つようにしていなければ、石井さんについていけなくなってしまうのだと思う。

「自由過ぎるがゆえの責任感もあります。自由にやるぶん、自分でしっかり考えてやっとけよって。プレッシャーは少なからずありますね」

小林さんは、今後どんな目標がありますか?

「一番は営業を統括するマネージャーにならなきゃいけないなって。というのも石井が忙し過ぎるんですね。営業の統括も、商品の試作も石井がやっている。もっと会社をよくするために経営に力を入れていってほしいし、当然僕ら従業員の生活もよくするために福利厚生もよくしてもらいたい。って思うと、いまのままじゃダメだなって」

「もっと石井から仕事をもらってバトンタッチして、石井は経営を考えて会社よくしていくっていうのが当面の目標ですね」

そんな話を聞いて「それ、俺の言葉やん(笑)」と石井さん。

「まあ、よく伝わってるんですよね。日頃からよく会話してるから」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 小さな会社というのは必ずしも十分な環境が揃っているわけではない。アレもないコレもないと嘆くより、あるものを活かして自分が会社を変えていこうと思える人が、この会社には合っているんだと思う。

変えられる土壌があるのに、ウジウジしてるのはもったいない。小林さんもそう話していました。

小さな会社だからこそ。自分次第でいくらでも仕事の幅を広げていけると思います。

(2017/3/30 森田曜光)