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信州は西軽井沢。ここに、今までにない新しい方法でライフスタイルを提案する住宅展示場があります。
その特徴は、モデルハウス×宿泊施設。
昼間は住宅展示場として自由に見学でき、夜は宿泊施設として泊まることができる。
風土のよい地域ならではの暮らしを味わってもらおうと、この場所を運営するのは、株式会社住宅アカデメイア。
ここで、ハウジングツーリストという職種を募集します。
マルチハビテーション(二地域居住)や移住を検討する人に向けて家づくりをサポートしたり、宿泊体験する人をもてなしたり、地域で暮らす楽しみ方を提案するイベントを運営したりと、幅広い仕事を手がけていきます。
これまで聞いたことがなかった事業。詳しく話を伺うため、昨年4月末にオープンした「class vesso(クラスベッソ)西軽井沢」を訪ねました。
新幹線で軽井沢に向かう。前夜に雪が降ったこの日、雪化粧をした外の景色が眩しい。
しなの鉄道に乗り換えて、15分。クラスベッソ西軽井沢がある、長野県・御代田町に到着した。
御代田駅前に降り立つと、本当にここに住宅展示場があるのだろうかと思うほど、人気も少なく静かだった。
浅間山を背にして5分ほど歩いて行くと、看板が見えてきた。
駅に降りたときの印象から一変。6棟ある洗練されたデザインの家が並ぶのを見て、わくわくした気持ちになる。
さっそく、モデルハウスの1棟に案内してもらいました。
「VOICE」と名付けられたモデルハウスで、木材や内装の漆喰など、自然素材にこだわっているそう。人が健やかに住める環境があり、断熱性にも優れています。
平屋造りの構造と薪ストーブが完備してあることは6棟に共通しながら、コンセプトはそれぞれ異なります。どこも、こだわりをもって建てられている。
体験宿泊できるモデルハウスなんてはじめて聞いたけれど、一体どのようにこの場所が生まれていったのだろう。
クラスベッソ西軽井沢でハウジングツーリストを務める西沢和浩さんに、話を伺いました。
この場所を運営する住宅アカデメイアは、主に住宅関連企業に対するコンサルティングを手がけています。
「人口減少によってどんどん地方の活気が失われていくなか、都市部に人口が集中してしまう日本の構造や、着工率が減り続ける住宅業界の未来について、私たちは次の一手を探っていました」
住宅コンサルティングを行う会社として、どんな暮らしを提案すれば人々の暮らしを幸せなものにできるのか。業界の成長につなげられるか。
日本の風土こそ生かすべき資産だと、住宅アカデメイアは考えました。
マルチハビテーションという言葉がまだ世の中に浸透していないころから、平日は都市部で仕事をして、休日はロケーションのいい土地でゆったりと過ごすような暮らしこそ、人の生き方を豊かにすると思い描いてきた。
そうして住宅アカデメイアが舞台に選んだのが、住宅展示場のモデルハウス。
というのも、住宅展示場のモデルハウスにはコストがかかっているわりに、環境を活かしきれていないことがほとんどだった。
それなら、風土のよい土地にモデルハウスを建て、地方に住みたいと考える人にとっても、住宅会社にとっても、トライアルの場として使ってもらおう。
「マルチハビテーションを検討している人にとっては、宿泊体験をすることで、地域で住まうことを具体的にイメージできる場に。住宅会社にとっては、オーナーとモデルハウスをシェアすることで、多くの投資をせずに住宅展示場での新しい業態を実験する場になります」
「それぞれの課題とニーズに応えるような場所が各地にできたら、さまざまな立場の人が幸せになれると、私たちは考えたんです」
とはいえ、はじめからそんなにうまくいくとは思っていなかったそう。
ところが、はじめてみたら、お客さんの反応には手応えがあった。
「家の広さや間取りなどの住み心地や、薪ストーブなどの使い心地が、自分たちの暮らしに合っているのかどうかということを、実体験をもとにお客さんが考えられているのが伝わってきました」
ハウジングツーリストは、どんなふうにお客さんと関わっていくのか。具体的に聞いていきます。
仕事の大きな柱の1つは、お客さんの家づくりのサポート。
「どんな家でどんな暮らしをしたいのかお話を聞いていきます。気に入った家が見つかれば、資金計画に移ったり、土地がなければ土地も探したり。住宅会社の営業ではないから、公平な立場でお客さんのわからないところをクリアにしていく役割があります」
ローンについてなど、ある程度まで話が具体的になってきたら、展示に参加する住宅会社にお客さんを紹介します。
もう一つは、体験住宅に宿泊する人をもてなすこと。
この地域だからこそできる暮らしの楽しみ方を伝えていきます。
信州ワインや地元のビール工場のビールを紹介したり。ピザ釜を使ったピザづくりも体験できるようにしている。
「冬は、近くにあるおいしいお肉屋さんをご案内して、貸し出し用のコンロと鍋で、自分たちですきやきをつくって召し上がってもらったりします」
「春以降だと、朝起きてから、裏の畑で育てているキャベツやレタスが採れます。8時から営業している近くのパン屋さんでパンを買って、朝採れ野菜とパンで朝食、なんてね」
なんとも贅沢な時間が過ごせそう。
西沢さんがここで働くようになったのも、まったく新しい住宅展示場のあり方が面白いと感じたから。
「それから、私はここから30分ほどの東御市に住んでいるんですよ。移住したい人と地域をむすぶことができたら、地域貢献につながるかなと思って」
以前は住宅営業の仕事や、調理師の仕事をしていた西沢さん。お客さんにオーブン料理をふるまうなど、経験を仕事に活かしているようです。
地域の人にも開かれた場として、この場所を楽しんでもらいたい。
「施設を置かせていただいている地域のみなさんに、マルシェやワークショップをたくさん開催していただいています」
マルシェに参加した人から、家づくりを考えている人を紹介してもらったりと、地域の人からご縁をもらうこともあるそう。
「土地を活かす様々なアイデアによって、地域に新しいコミュニティの形ができる。そうすると、参加している住宅会社さんがお家をつくることにつながる。そうしてまた、コミュニティが生まれて活性化する」
「橋渡しをしていくというか。人と人、人と場所をむすぶ、非常にいい形になってきていると感じています」
オープンしてまもなく1年。今でこそ、いい循環を生む場となっているけれど、当初は大変だったといいます。
「住宅営業に関しては、西沢以外、本格的にやっていたメンバーがいない状態。ホテルの事業に関しては、まったく素人。この場所をどう運営していくかというところは、相当苦労しました」
そう話すのは、西沢さんと同じくハウジングツーリストを務める安倍(あんばい)伸一さん。
ベッドメーキングも掃除も、全部自分たちでやりながら覚えていった。
事業も、これまでにない新しいことに挑戦している最中。
「うちとしては、誰と誰、どの地域をむすんで事業化していくのか。今も手探りの状態です」
そうしたなかでも、安倍さんは仕事のどんなところが面白いと感じているのでしょう。
「お客さんとの打ち合わせでマルチハビテーションという暮らし方を知って驚かれる場面だったり、体験宿泊をされたご家族が、来たときとは全然違った表情で帰られていったりするのを見るんです。お客さんが笑顔になる瞬間に立ち会えるのが、楽しいですね」
お客さんと関わるなかで印象に残っていることはありますか?
「マルチハビテーションという住まい方を考えている人の本質というか」
本質?
「新しい暮らし方じゃないですか。その人たちは、どんなことを思って、なんでそういう生き方をしたいのかなと、いつも考えながらお話を聞いています」
あるとき打ち合わせをした東京に住むご夫婦は、奥さんが出産を控えていて、将来は自然豊かな土地で子育てをしたいと考えていた。
「その方が言ったんです。『今住んでいるところは、働く場所であって住む場所でない』と。直球でそうお話しされたのを聞いて、なるほどなと思って」
「毎日会社に行って仕事をして家に帰るだけの生活は、自分たちの暮らしの本質ではないということに、どこかで気づいたんでしょうね。マルチハビテーションという暮らし方を知って、自分たちはこういう道を進んでいきたいとおっしゃったときが、いちばん印象に残っています」
安倍さんは、今、東京に住んでいる。
都内でお客さんとの打ち合わせをしながら、週5回出張している生活なんだとか。もともと出張に慣れていたということで、それほど大変でもないそう。
「とはいえ僕自身、移住したいと考えていて。ただ、家族のこともあるし、なかなか踏み切れないところがあります」
「自分自身もそうした状況にいるから、お客さんが何でそうしたいんだろう?と素直に聞きたいんでしょうね」
子育てをする家族や、年配の方まで、お客さんの幅は広い。一人ひとりが、どういう暮らしをしたいか、どんな不安があるか。まずは耳を傾けていくことが大切になるようです。
そして、自分のことをさらけだして話してくれるお客さんに対して、自分自身も正直でいることが、お客さんといい関係を生んでいくのだと思います。
最後に西沢さんに、どんな人に来てほしいか聞いてみます。
「ハウジングツーリストとしては、移住に興味がある方で、人と触れ合って楽しめる人ですね。人の一生をサポートする仕事ですけど、その人にとっていいと思うことを、楽しくその人に与えられるのがいい」
「一緒に事業を進めていくパートナーとしては、新しいことを生み出していこうと、能動的に考えてくれる人ですね」
正解がないなかで、事業をよりよい形にしていかなくてはいけない厳しさもあると思います。
「でも、それでお客さんに喜んでもらえたらうれしいですよね」と安倍さん。
ときにユーモアを交えて話すスタッフのみなさんからは、人を楽しませたいという気持ちをいちばんに感じました。
4月に愛知県・蒲郡に、7月には同じ長野県の蓼科にも新しい場所が誕生します。
モデルハウスの環境、土地の魅力を活かして、どんな暮らしを提案できるか。
アイデアを思いついて、いてもたってもいられなくなったら、西沢さんたちに会いに行ってみてはいかがですか。
(2017/03/27 後藤響子)