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今日着たい、きもの

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

自分の服を選ぶとき、どんなことを考えますか?

今日は大切な打ち合わせがあるからしっかりしよう。暖かくなったから春らしい色の服を着て出かけたい。

ファッションは自分の気持ちを表す方法でもあると思います。

日常のファッションのひとつとして、きものという選択肢も楽しんでほしい。

大塚呉服店1枚目 そんな想いから生まれたのが、ブランド『大塚呉服店』。姉妹ブランドである『WAKON』とともに、有限会社みさ和が運営しています。

今年でスタートから5年を迎えた大塚呉服店。さらにファッションとしてのきものを広めていきたい。

今回は、大塚呉服店の京都・神戸・新宿のそれぞれのお店で働く人と、京都店の店長候補、そして昨年リニューアルしたWAKON姫路店で働く人を募集します。

自分がおしゃれを楽しむことが仕事に活きる。ここで働く人たちからは、そんな空気を感じました。

きものを着たことがない人でも、挑戦してほしいとのこと。ファッションが好きな方は、ぜひ続きを読んでみてください。



取材に訪れたのは、大塚呉服店 新宿。

新宿店1 まず目に飛び込んできたのは、洋服のような柄のきものでコーディネートされたトルソー。

店内には、バリエーション豊富な帯に、日傘やバッグ、帯留など、魅力を引き立てるアイテムも並ぶ。

洋服姿のスタッフの方もいて、きものに馴染みがなくても、足を踏み入れてみたい気持ちを後押ししてくれそう。

そんな気軽さがある一方で、商品を整えるスタッフの方の所作には、背筋が伸びるようなうつくしさを感じます。

所作 大塚呉服店を手がけるみさ和は、1973年に創業しました。

新しい一歩を踏み出したのは、2000年。人々から縁遠い存在になっていたきものや呉服店を、身近で気軽なものにしていこうと、大塚呉服店の前身となる『WAKON』を立ち上げました。

WAKONでは、卒業式や成人式など思い出の一着となるようなきものから、普段着のきものまで扱っている。お客さんも、10代から年配の方までと幅広い。

5年ほど前に社長が代替わりをしたのを機に、より日常着としてのきものにフォーカスして生まれたのが、『大塚呉服店』でした。

コンセプトは「きものが着たくなる呉服店」。

「身近にきものを着たいと思っている人にとって、かわいいと思える商品セレクトや空間づくりをして。価格帯も1・3・5万円に絞り、手に取りやすいようにしています」

そう話すのは、写真右手の森村祐妃さん。京都店の店長と新宿店の店長を兼任しています。やわらかな雰囲気をまとった方です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 森村さんは、WAKONで店長を経験したのち、大塚呉服店の立ち上げ時から京都店で店長を務めてきました。

「でもはじめは、『きものを着ること自体に馴染みがなくなった今、日常で着たくなるきものってどんなものだろう?』と、私自身なかなかつかめずにいました」

それでも、お客さんと接するなかでイメージをつかんでいったといいます。

「お客さまとしては、きものを着ることでそれまでの自分と大きく変わりたいわけではなくて。きものに自分の個性を出したいんだと気づきました」

自分の個性をきものに。どういうことなんだろう。

実際、お客さんの求めるイメージを商品に反映させるには苦労したといいます。

「きものにも、晴れ着と普段着があるけれど、市場に普段着として出回っているものは、地味なものが多くて。大塚呉服店のターゲットは、20〜30代の女性。渋いものより、明るくてきれいめな色を好まれます」

若い人たちがいま着たいと思うきものはどんなものなのか。必死に探してお店に揃えてみると、お客さんはついてきてくれた。

「そうやって、お客さまが着たい着物のイメージがわかってきて」

京都店内観 お客さんが求めるきもののイメージをより明確にしていくうえで、お客さんと同じく大きな影響を与えてくれたのが、一緒に働くスタッフの存在だったそう。

「うちのスタッフは、洋服でおしゃれすることが大好きな子ばかりで。洋服感覚で着たい着物というのを、積極的に伝えてくれるんです」



洋服感覚で着たい着物って、どんなふうに想像していくのだろう。

新宿店のチーフを務める石黒奏さんが答えてくれました。

「たとえば来季のファッションでは、こんな素材や色が流行すると知ったら、それをきものにどう活かせるだろう?とスタッフ同士で考えるんです。それがすごく楽しくて」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「今度のトレンドにはスポーティーな色合いが多かったねってなったら、それを色案に当てはめてみたりします」

色案とは、生地のベースや柄に使う色の配色のこと。デザイナーがいない大塚呉服店では、主にスタッフがオリジナルで考えている。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA なるほど。配色を洋服に近づけることで、着てみたときのイメージが湧きやすいかもしれない。きものはもっと自由に考えていいものだし、そうやっていけば新しいものになっていく気がします。

「着こなし方のベースはきもので、組み合わせを洋服の感覚に近くするんです」

きものの生地によって、色合いや素材感も異なる。

そこに、帯や帯締めなどのアイテムを組み合わせることで、華やかな印象になったり、大人っぽい印象になったりする。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 組み合わせ次第で、与える印象はさまざま。

だから、お客さん一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、その人に合ったコーディネートを提案していくことを、いちばん大事にしているといいます。

どういうスタイルできものを着たいか。どこに着ていきたいか。普段はどんなテイストの洋服を着るのか。趣味は何なのか。今の気分は晴れやかなのか、それとも落ち込み気味なのか。

「会話のなかで、お客さま自身がどういうふうになりたいか、イメージを引き出してあげて。それを踏まえて、こういうのがありますよといくつか選択肢を挙げながら選んでもらう」

「それを繰り返してお客さまにぴったりのものを見つけていく。正解はないけれど、一緒に紐解いていくような感じです」

根っこにあるのは、お客さまに、きものを着た自分を好きになってもらいたいという気持ち。

「私たちの仕事って、人を輝かせたり、可愛くしてあげること。人に何かしてあげたいということが好きじゃないと、なかなか難しいと思います」

「最近は『着てみて好評だったよ』『これはすごく褒められるの』『ここで買ってよかった』と言ってもらうことが多くて。すごくうれしいですね」



石黒さんは、前回の記事を見て大塚呉服店で働くようになりました。

石黒さん所作2 「もともと10年前ぐらいに、大学を卒業してから大手の着物屋さんで働いていました。でも、扱うものはよくある昔ながらのものに決まっていたし、普段着のきものも高価で買えないものが多くて」

「きものがすごく好きで入社したんですけど、ちょっと違うかなと思うようになって、別の仕事をしていました」

それから5年ほど経って、大塚呉服店の求人記事を見つけた。

「大手の着物屋さんに入ったときも、もっと日常で着物を着られたらいいのになと思っていたけど、そのころって実現できそうな着物屋さんがなくて。ここなら、私がやりたいことができるだろうと思いました」

やりたいこと?

「服って自分を表現するものだと思うんです。それと同じ感覚で、きものをはじめられて、且つ誰もが1着はお気に入りのきものを持っているなんてところまで広めたい」

「日本で着物を着る人が半分くらいいるようになったら着物屋さんをやめてもいいかなって。たぶん一生かかっても無理だと思うんですけど、それぐらいの気持ちで働いています。まだきものの魅力を知らない人たちに、もっともっと衝撃を与えたいです」


石黒さんの話を受けて、森村さんも反応します。

「きものを身近に感じてもらうためにも、やりたいことはたくさんあります。たとえば、ファッションの参考にできるような、きものの雑誌をつくりたいねって話をしたり」

実際に昨年の夏には、スタッフの熱意とお客さんの求める声とが重なり合って、はじめてLook bookを制作した。

店頭に立ってお客さんの反応を感じとるからこそ、仕事に活かせるアイデアが浮かんでくる。新商品の色を決めたり、その日の気候やお店の前を通るお客さんの動向に合わせてトルソーのコーディネートを変えたり、スタッフでコミュニケーションを取りながらアイデアを共有する場面は多いのだとか。

「どうしてその色がいいのか、提案する理由を自分自身がちゃんと理解して、人と共有できる人がいいと思います。それができれば、お客さまにもきっと伝えられる」

そう話すのは、佐藤笑未さん。働きはじめて1年が経つそう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 働いてみて、どうですか?

「お客さま一人ひとりの好みに合った提案をしていくことは難しいです。ヒアリングしてお客さまの要望を汲みとったうえでおすすめしたいものを、道筋をたてながら提案していかないといけません」

「どう伝えればよかったのかと悩むこともあるけれど、好きだからもっと伝えたい。今はその気持ちのほうが強くなってきました」

お客さんには商品の良さだけでなく、使い心地を伝える。

「きもので店頭に立つ日は、家で着付けてから出勤して、歩いてみてここがもたつくんだとか。この草履はすごく履きやすいとか。そういう感覚を、よりリアルに伝えられないと」と石黒さん。

納得して買っていただくためにも、相手の気持ちを汲みとりながら、自分ごととして伝えていくことが大事なようです。



ふたたび森村さんに、どんな人に来てほしいか聞いてみます。

「販売スタッフにしても、お店を束ねていく店長にしても、お客さまを相手にする仕事だから一喜一憂することも多いです。課題を克服していくだけのガッツと粘り強さがないとつづかないですね」

WAKONで働く人はどうでしょう?

「基本となるのは同じで、相手の気持ちを尊重して、『こうなりたい』という気持ちを叶えてあげること。ただWAKONでは、特別な日に着るきものとして選んでくれる方も多くいます」

WAKON 「いろんな想いを抱えてくる人の期待に応えていくことが求められますね。一方で、人生に寄り添うという意味で、やりがいもひとしおだと思います」

将来、京都店の店長になる方は?

「一人ではお店をつくることはできません。チームワークが大切になるので、スタッフを尊重しながら全体をまとめられるといいですね」

「それから京都店は本店であり唯一の旗艦店です。2階のギャラリーでは、きものやファッションが好きな人たちをつなぐようなイベントを行ってきました。責任感をもって、さらに企画・実行してほしいです」

hanelca 「着飾ることは楽しいですからね」

取材中、ふとこぼれた言葉が印象的でした。

きものを着る楽しさを伝えて、相手を輝かせる。

それを仕事にしたいと思えたら、ブランドをつくる一員になれると思います。


(2017/03/14 後藤響子)