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いつも、子どもたちの隣で

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「トゥッティっていうのはイタリア語で、“みんなで一緒に”っていう意味なんです。合理性だけを追求するのではなくて、いつも目の前にいる子どもたちと一緒に私たちも考えながら、この教室はできあがってきました」

東京は赤羽にある、トゥッティ幼児才能教室

tutti01 1歳から小学校に上がる前の子どもたちの能力をのばす幼児教室と、小学生から高校生までの受験対策や勉強のサポートを行う学習教室の2つからなります。

今回募集するのは、この幼児教室または学習教室で働くスタッフ。子どもたちから見れば「先生」となる人です。

トゥッティは、ただ知識や技術を学ぶだけの場所でも、受験のためだけの場所でもない。取材では、「一つの大きな家族みたい」「親にも友達にも、学校の先生にも言えないことを話せる場所」という言葉も聞こえてきました。

マニュアル通りの教え方に違和感を感じる人や、子どもたちの変化を自分のことのように喜べる人なら、きっとこの教室と相性がいいと思います。



赤羽駅から徒歩5分ほどの商店街に入る。途中で一本脇道に入ると、トゥッティの看板が見えてきた。

tutti02 建物の2階が幼児教室、3階が学習教室として使われています。

迎えてくれたのは、トゥッティを立ち上げた田村英次さん、千春さんご夫婦。

まずはこの場所をはじめることになった経緯を聞いてみる。

tutti03 前職では、教育関係の出版社で営業の仕事をしていた英次さん。全国の本屋さんはもちろん、学習塾にもよく顔を出していたといいます。

「たまたまある取引先で見せていただいたビデオに、すごく衝撃を受けましてね」

内容は、愛知県豊橋市で幼児教育に力を入れている仔羊幼稚園の授業風景だった。

「気持ちを込めて歌を歌ったり、高い段の跳び箱を飛んだり。子どもたちがあまりにも生き生きと、いろんなことを高いレベルでやっていて。誰かにやらされている感じもなかった」

なぜそんなふうに生き生きとしていたのだろう。

そう尋ねると、千春さんも当時のことを振り返る。

「たとえば跳び箱なら、3段が飛べたらすぐ4段ではなくて、3段をへっちゃらになるくらい飛べた子に、4段を出す。そうやって、できることを少しずつ積み重ねると、次のステップはすぐそばにある。それが軸となる教育法なんです」

何かができるようになったら、またすぐに別の目標に追い立てられる。

そうではなく、「好きだな」「楽しいな」と感じながら自分で乗り越えていく力を幼児期からつけられたら、将来やりたいことを見つけていく力や、学び方にも影響するのではないか。

tutti04 「何かを教え込むんじゃなくて、引き出す教育が必要なんだとそのときに実感したんです」

「自分たちもこの幼児教育を広めていきたい」と、一目見て強く感じたというお二人。とはいえ、幼稚園をはじめるには資金面でも、国の認可を受けることもハードルが高い。

ならば学習塾のような形で取り組もうと、1993年にトゥッティをオープンした。

当初、集まった生徒は7人。わからないなりにもやってみる、という手探りの状態で、幼稚園と塾との違いにぶつかることになる。

「幼稚園は毎日来るけど、幼児教室は週に1回か2回しか来ないわけですから。幼稚園と同じことをやってもうまくいかないんです」

そこで考えついたのは、幼稚園の1日を1時間の授業の中に凝縮すること。1回の授業のなかで知育、工作、運動、歌のすべてを行う独自の授業スタイルだった。

ここで私も、実際に授業を見せてもらうことに。

「さぁ次は運動いくよ!」「絵を描こう!」の声とともに、運動ではチーム対抗戦で盛り上がり、絵を描くときにはしーんとしたなかで集中する。

tutti05 みんなその時間をめいいっぱい楽しんでいる。

「10分くらいなら、運動が苦手な子でも一緒に走ってあげるとなんだかできるような気になってくる。短い時間だからこそできることって結構あるんです」

すると父兄から、小学校受験の対策をしてほしいという要望が。しかもトゥッティの授業が、学力だけでなく運動能力なども問われる、受験の対策に効果的だということがわかった。

けれども、才能をのばす幼児教育と受験は、なんだか結びつかないような気がします。

「私たちも、受験のための塾には絶対にしたくなかった。でも小学校受験って、実はそんなに特別なものではないんです」

tutti06 はじめて見る問題にチャレンジする精神や、自分で考え工夫することは、社会で生きていくために必要なもの。トゥッティでの学びや小学校受験は、共通してその力を養うことにつながる。

「そこから生徒が増えはじめて、2年目には100人くらい。今250人の子どもが通っています」

「夫婦2人で運営していたので、小学3年生で卒業ということにしていたんです。でも成長とともに、中高校生になってもここで学びたいという声があって。それに応える形で、先生たちを募って学習教室も運営することになりました」

tutti07 「本当に大変なんですけどね」と言いながら、英次さんはどこかうれしそう。

長い子は、なんと18年間もトゥッティに通っているのだとか。一人の生徒に、長く深く付き合う教室へと発展してきた。

千春さんは、どんな人が向いていると思いますか?

「そうですね。一つあるとすれば、語らせたら止まらないくらい、本当に好きなものがある人。好きだと思っていないと教えていても説得力がないし、学ぶことの本当のおもしろさが伝わらないから」



ここで働く菜奈子さんは、まさに子どもに伝染させていくほどの深い“好き”を持っている人だと思う。学習教室で、主に中高生の個別指導を担当しています。

tutti08 自身も2歳からトゥッティに通っていた、卒業生のひとり。今は大学院で、医学に関わる研究をしている。

「これからも思い出に残っていることを聞かれたら、まず一番にこの話をすると思う」と、生物を担当したある生徒の話をしてくれた。

「最初は何を教えても『ふーん』っていう感じだったんですけど。自分が興味を持った部分を伝えていたら『先生、そんなに生物好きなんだ』ってすごく笑ってくれたんです」

どんなふうに伝えたのでしょう?

「たとえば、子どもは親以外の人には似ないですよね。当たり前のように言うけど、なぜだろうと中学生のころの私は思っていて。そこから細胞やDNAに興味を持ったことが、医学の道に進むきっかけにもなったんです」

教科書通りではつまらないからと、ビジュアルで捉えられる資料集も持参。楽しそうに語る菜奈子さんを見て、生徒も少しずつ興味を持つようになっていった。

「自分から発信する子じゃなかったのに、『わからないことがあるから』って引き止めてくれるようになって。最終的には、生物を学んで活かせるような職に就きたいから、看護学部に行くって言ってくれたんです。それがすごくうれしかった」

トゥッティでは、教え方にマニュアルはないし、カリキュラムも生徒一人ひとりに合わせて先生が自分で組んでいく。だからこそ、学校とも塾とも違ったつながりや信頼が生まれているように思います。

tutti09 「学校の先生は、自分が興味のあることをやりなさいって言う。でもこの勉強をしたら、こんな道が開けるんだよって身をもって示してくれる人はいないじゃないですか」

「ここでは子どもたちに教えることで、自分も医学の道を歩みはじめた原点に戻れるというか。学ぶことの面白さに立ち帰れる場所なので、それを伝えられればいいなって思います」



もう一人紹介したいのが、同じく学習教室で働く永澤さん。学習教室のリーダー的存在で、しっかり話を聞いてくれる優しいお兄さんです。

tutti10 実はトゥッティに来る前にも、個別指導中心の塾で働いた経験があるそう。

「教えること自体は楽しかったんですけど、すべてマニュアルで決まっていて。漠然と、生徒の本当の学力はなかなかのばせないなと思っていたんです」

そんなときにトゥッティを見つけ、軽い気持ちでアルバイトとして働きはじめた。今では正社員となり、中学受験対策のクラスと、小学生から高校生までの個別指導を担当している。

実際に働いてみてどうですか。

「自分よりも長くいる子どもが多いので、こちらが試されているような気になることもあります(笑)でも、ほかの塾ではできないようなことができるんです」

「たとえば、中学受験のクラスに勉強はからっきしの子がいて。でも今度、ロボットの世界大会に出るそうで、勉強以外のところで好きなことがあるんですよね」

名の知れた学校に合格させることや、知識を身につけさせることだけが教育ではない。

永澤さんは生徒の興味に合わせて、ロボットや科学を学べる学校を見つけ、実際に学校まで足を運んだ上で紹介したそう。

「その子の軸の部分と付き合って、合った学校に入れてあげられたのは良かったと思います」

tutti11 一方で、永澤さんも菜奈子さん同様に大好きなものを持っている。自室の四方は本棚で囲まれ、本の重さで床が凹むくらい、無類の本好きなのだとか。

「自分で企画した読書講座をやっています。寄り道をさせながら本を読むんです」

寄り道?

「本を読みながら、子どもはいろいろ考えるんですよね。おいしそうなお菓子の描写がでてきたら、食べてみたいとか。本筋とは関係のないことでも、考えることで子どものなかに何か豊かなものがたまっていくと思うんです」

子どもたちと長く付き合うからこそ、すぐには結果が出ないことにも取り組める。新しく入る人にも、自分なりに考えて企画していってほしい。

見せてくれた自作のワークシートには、手書きの書き込みが。時間をかけて丁寧につくっていることが伝わってきます。

tutti12 「子どもをみるには時間がいくらあっても足りないので、授業外の時間でやらざるを得ないこともいっぱいあって。でも好きなことだと、準備も楽しいんです。それが続く秘訣かなと思います」

大変なこともあれば、教えてください。

「付き合いが長いぶん、他の塾より家庭との関係が密なんですよね。生徒のためを思ってやることでも、ご家庭にちゃんと伝わっていないと実現が難しいです」

先生から家族に向けて、子どもたちの状況や今後の方針を自分の言葉で説明する。ときには、お母さんの不安を汲み取ることも必要です。

もちろん、最初は千春さんたちがフォローしてくれます。

「慣れてくれば、自分が思い描く授業スタイルが組めると思いますよ」

tutti13 子どもにとって、本当に大切なものはなんだろう。そのために自分はなにができるだろう。

それを一心に考え続けているから、ここで働く人たちは世の中の「当たり前」には流されない。手間のかかることだって厭わない。

なによりとても楽しそうに、子どもたちと関わる姿が印象的でした。

いつも、子どもたちの隣で。一緒につくっていく場所なのだと思います。

(2017/3/26 並木仁美)