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まずはやってみよう

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自分が好きなことを仕事にする。そんなふうに働けたらとても素敵だと思う。

だけど、自分がなにをやりたいのかまだ見つけられていなかったり、大きな希望を持って働きはじめても実際には思っていたような仕事ができなかったり。そんな人も多いのではないかと思います。

モヤモヤと動き出せずにいるのなら、ここで働いてみるのがいいかもしれません。

tsuruya01 群馬県は四万(しま)温泉にある「鹿覗キセキノ湯 つるや」

ここでお客さんをもてなしながら、つるやや四万のまちを元気にしていくアイディアを一緒に考えるスタッフを探しています。

普通の旅館での働き方とは、少し違うものになると思います。興味を持ったら、ぜひ続けて読んでみてください。



東京から新幹線と在来線を乗り継ぎ、2時間ほどで中之条駅へ。そこからバスに揺られてぐんぐん山道を登っていくと、あっという間に四万温泉に到着した。

バスを降りた瞬間、森の匂いがして空気がおいしい。

tsuruya02 四万川のほとりを歩いてみると、お蕎麦屋さんやお土産屋さんが並ぶ。

バス停から車で10分ほど山道を進み、四万温泉の中でも一番奥の自然が深い場所につるやがありました。

まずは代表の関さんに、このまちで宿を営むことになった経緯を聞いてみます。

つるやは関さんのおばあさまがはじめた宿。お母さまが宿を継ぐときに、東京で生まれ育った関さんも四万にやってきた。

「お前は大学出すから、旅館なんてやらなくていいよって言われていたんです。自分でも都会でバリバリ働いてやる!と思っていました」

tsuruya03 東京の大学を卒業後、旅行会社に就職する。仕事は順調だったし、結婚して家族もできた。

そんなときに母からつるやが潰れそうで、経営を助けてほしいという相談を受ける。

宿はぼろぼろでお金もない。湯治場としての印象が強く、若いお客さまが訪れない。2年だけという約束で四万に戻ったものの、ここで何ができるのだろうと悩んだといいます。

「うちの唯一の売りは露天風呂で、母がお金をかけて山の斜面につくったものでした。とても良いものなのに良さを伝えきれていないような気がして。どうしたものかと考えながら湯船につかっていたら、ガサッと音がしてカモシカが露天風呂の前を通ったんです」

tsuruya04 「こんなことが起きるのは自然豊かなつるやだからこその魅力だ!と思って。だから『鹿覗きの湯』と名前を変えてアピールすることにしました」

そこから、関さんの快進撃がはじまる。

自分ならどんな宿に泊まってみたいだろうと考えて、大規模な工事をしなくても今日からはじめられることを次々に見つけて実行した。

たとえばチェックアウトを遅い時間にしたり、お風呂を貸切で使えるようにしたり。

「今では当たり前のことも多いけれど、当時は革新的だったと思います。既存を見直して、別の角度から光をあてることで、魅力を生み出すことができると気づきました」

目の前のことにしっかりと関わっていくと、自ずと問題は解決されていく。つるやはメディアからも注目され、年商は30倍に。奇跡の旅館と呼ばれるまでになった。



そんなつるやは今、第二の転換期を迎えている。

きっかけは2011年に起きた東日本大震災。客足は途絶え、なにかできることはないかと考えた関さんは、被災者に避難所として全室提供することを決める。社員もゼロになった。

「結局、群馬には需要がなくて避難所にはならなかったんです。もう一度大卒の子たちを雇って、ゼロから宿をスタートさせることにしました。自分と支配人以外、8人のスタッフは全員20代です」

全室提供はかなり思い切った決断だったと思いますが、後悔はないですか。

「結果的には、失敗だったと言われるかもしれません。でも金儲けだけを考えているよりはよかったと思うんです。負け惜しみじゃなくてね(笑)あらためて人って大事だなと気づけたし、新しい人といろいろな展開ができるんじゃないかと前向きにとらえています」

tsuruya05 賑わいは戻りつつあるものの、かつての勢いはない。関さんは既存を見直して新たなアイディアを考えている。

「本館から車で3分ほどのところに新館をつくって、四万でグランピングができないかと思っています」

グランピングとは、自分で道具を用意することなく、設備の整った施設で楽しむ贅沢なキャンピングスタイルのこと。最近では東京でも耳にすることがある。

「四万に既存であるものといえば、温泉や自然。旅館でおもてなしという固定概念を取り払って、四万の自然の中でできるおもてなしがあると思うんです。たとえば部屋で食事をするんじゃなく、川べりで星空を見ながらおにぎり食べてもいいと思うんですよ」

tsuruya06 とても楽しそうに話す関さんを見ていると、なんだか私までワクワクしてくる。

「スタッフにも、社長が会社を使って新しいことをやって楽しんでいるんだから、我慢することないよって言ってるんです。失敗しても会社が責任をとるから、つるやを使ってもっと楽しんでもらいたいです」

新館を担当するスタッフは、設計士との打ち合わせから参加してアイディアを出している。

独立して自分のお店を立ち上げた人もいるし、つるやの経営するカフェで働くことも歓迎だという。

tsuruya07 「いろいろな選択肢を提供できるので、生きた勉強ができるんじゃないかな。そんな人が地域にも増えてくれたら、まちの創生にもつながるんじゃないかと思うんです」

四万温泉協会の会長も務めている関さんは、つるやだけじゃなく四万のまち全体のブランディングにも目を向けている。

「スタッフはもちろん、訪れるお客さまも地域も巻き込みながら、みんなが喜んでくれるようなことを、考えていけたら楽しいですね。ほかにない旅館づくり、まちづくりを一緒にやってみたいという人が来てくれたらうれしいです」



続いてお話を聞いたのは、支配人の京野さん。

tsuruya08 関さんがどんどん新しいものを生み出していくアイディアマンだとしたら、京野さんは日々の運営を支える縁の下の力持ち。話しやすくて、頼れる兄貴分のような方です。

東京出身で、もともとは東京で電気工事の仕事をしていたそう。関さんの奥様の妹さんと結婚したのを機に、4年ほど前に未経験でこの世界に飛び込んだ。

こっちにきてみてどうですか。

「最初は、灯と店がないのにびっくりしました。あとは東京ではセカセカ動いている感じで、自分もその一員でした。ここでは時間がのんびり流れているように感じますね」

未経験で正攻法のやり方はわからない。だからこそまわりの意見を柔軟に取り入れながら一緒に考えていきたいと思っている。

たとえば、最近ではドリンクのメニューを一新したそう。これまでつるやではサワーや甘いお酒のメニューがなかった。若い女性のお客さまも多くなっている中、スタッフから意見が出たそうだ。

tsuruya09 「メニューを増やしてみたいんですって声があがって。考えなしの提案だとノーと言うこともありますよ。でも基本的には、もしもダメだったら方向修正すればいいから、まずはやってみようというスタンスでいます」

仕事以外のことでも、スタッフとはよく話をしているという。

「趣味の話や恋愛の話を聞くことがあります。働いているとどうしてもつらいこともありますよね。愚痴相手でもいいかなと思ってるんです」

「この前は一緒にスノボに行ったんですよ」と楽しそうに話してくれる姿から、年齢や役割の垣根なく仲がいいんだなと感じる。もちろん移住の相談にものってくれるそうです。

一方で、旅館での働き方についても変えていきたいと京野さん。

旅館では中抜けのシステムが一般的なのだそう。朝働いて、途中の休憩は長いけれどまた夕方から働く。休みも1日とれることは少なく、半休を2日に分けてとるのが普通だという。

旅館の仕事に興味があっても二の足を踏んでしまうのは、こういう働き方が一般的になっていることもあるのかもしれない。

「でも旅館で働いていたって、旅行にも飲みにもいきたいじゃないですか。自分が嫌なことはやらせたくないので、1日休みや連休もとれるようにしています」

もちろんまだまだ人手も足りなくて、体制が整っていない部分もある。だけどみんなが楽しく働けるように、いつも考えを巡らせている京野さんのような人がいることはとても心強いと思います。



最後に紹介したいのが、昨年の4月からつるやで働いている荒井さんです。

tsuruya10 大学では国際社会学部で、カナダに留学したりしながら英語を学んでいた。どうしてつるやで働くことにしたんだろう。

「英語を学んでいるうちに、英語はもちろんコミュニケーションをとることに興味があるんだなと気づいて。接客業をメインに就職活動をしました」

「1日体験をさせてもらったら、先輩もすごく優しくて。ゆくゆくは海外にいきたいとか、独立したいとかみんな夢を持っている。ここなら頑張れそうだし、良い影響を受けながら働けそうだなと思ったのが決め手です」

入社後はマナー研修を受けたのち、先輩スタッフの配膳を手伝ったりしながら実践の中で仕事を覚えていく。

実際に働いてみてどうですか。

「本当に上下関係とかはなくて、みんな優しいです。でも思った以上に、繁忙期と閑散期の差は激しいですね。お盆や紅葉の時期もかなり混むようなので、バタバタします。お食事をお部屋まで運ぶので、体力勝負な面もありますよ」

働きたてのころは、ワインがあけられなかったり、食事が残っているのに御膳を下げようとしてしまったり。不慣れなことや気配りができていないことで、お客さまにお叱りを受けることも多かった。

tsuruya11 「申し訳ない反面、うまくできなくて悔しいという気持ちもあって。お酒や料理も含めて、幅広く勉強しなくちゃとあらためて感じています」

わからないことはそのままにせず確認をする。休憩時間には温泉街に足を運んで話のネタを探す。荒井さんのように、できることを探しながら一つひとつ自分のものにしていこうという姿勢が必要なのだと思う。

「自分で発見をして、それをいかに伝えられるかということが大事かなとは思います。発信すれば、自分がやりたいことは応援してもらえるのですごくいい環境ですよ」

今は日本の文化を英語で外国の人に伝えることを目標に、勉強を続けている。外国からお客さまを担当させてもらったり、つるやのFacebookで英語でも四万温泉の魅力を発信していこうと考えているそう。

目の前のことに打ち込みながら、自然と自分のやりたいことが明確になってきている印象でした。

tsuruya12 つるやには、まずは一緒にやってみようとあなたを待っている人たちがいます。

なにごとも、動き出してみないことにははじまらない。自分もワクワクしながら働きたいと感じたら、四万温泉を訪れてみてください。

(2017/4/20 並木仁美)