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プロダクトデザインを通して、生活の中で「デザインはたのしい」という気持ちを届ける。そんな想いを込めて、さまざまな商品を発表している「D-BROS(ディーブロス)」。
企業ブランディングや広告制作を手がけるデザイン集団のドラフトが、制作から販売まで一貫しておこなうプロダクトデザインブランドです。
今回は、直営店事業を統括するショップディレクターと、ショップ店長・販売スタッフを募集します。
「ここで働くということは、ショップスタッフとして立つだけでなく、一人の人間がどのようにして生きるかっていうことに似ていると思います」
「商品をどう並べたらいいのか。どんなことを喋ったらいいのか。どのように売ろうか。そういう考え方もデザインですよね。デザインっていうのは、みんなが考えるよりも大きいと思っています」
代表の宮田識さんが話してくれた、印象的な言葉です。
生活の中でデザインをたのしんでもらおうと生まれたD-BROS。
そんな想いを届ける働き方は、なんだか自分たちもたのしんでいるようでした。
東京都渋谷区。恵比寿駅と渋谷駅のちょうど真ん中あたりにある株式会社ドラフトの事務所にて話を伺います。
そもそもD-BROSが生まれたきっかけのひとつは、ドラフトでの仕事との向き合い方が関係しているそう。
「私たちは企業や商品のブランディング、広告制作を主な仕事としてきましたが、どんな仕事も終わりがくるんです」
だからこそ、どのようにすれば自身の想像するデザインが実現できるかを考え続けてきました。
「あるとき、グラフィックデザインという手法を使ってプロダクトをつくってみようかなって思いついたんです」
そのアイデアに至る過程には、当時のデザイン業界の現状も関係しています。
「『デザイナー』といっても、プロダクトデザイナーもいればインテリアデザイナーもいたし、建築、イラスト、グラフィックデザイナーまでいて。やっていることがみなバラバラだったんですよ。グラフィックの中だけでも枝分かれしているし、変だなって思っていました」
「業界を眺めると、D-BROSでつくりたいと考えていたプロダクトを形にしている人が見事にいなかったんです。お互いがお互いのことを知らんふりしていてね。こんな世の中はよくないんじゃないかと。自分がやらなきゃいけない。そう思ってね」
そうして、1995年にプロダクトブランド「D-BROS」が立ち上がります。
「D-BROSでの活動は、商品の企画から生産、販売、最終的にはお客さんへ商品を説明することまで。だからD-BROSの活動は、自身がクライアントの気持ちになれる重要なファクターとなっています」
D-BROSの商品の特徴は、デザインというものが日常の概念に変化をもたらしているということ。
たとえば、といって指したのは、壁にかかっているタイムペーパーという商品。
「あれは文字盤が紙でつくられているので、くしゃくしゃになっちゃうんです。また、無地の紙を用意すれば、好き勝手に字を書き足せる。そこには遊べる可能性がある」
「体験というか、自分の物として『熟す』っていう感覚なのかな。デザインはこうあるべきだと思います」
時計と聞くと、重厚で精密なものというイメージ。
なんだか、時間の捉え方までもラフになるというか。豊かになる感覚が生まれてくるようです。
「デザインによって、自分の生活が変わったり、目の前の会話が変わったりするじゃない。きれいなデザインだねって言われることもうれしいけど、何か別の発想によって要素を足すだけで、話がはずむこともあるし、使うときもワクワクすることがあるんですよ」
D-BROSの商品には、日常の中では隠れているものに気付かせてくれる何かがあるように思いました。
そんなデザイン力を魅せることで、多くの人に「デザインはたのしい」という気持ちを届けるのが、今回募集する販売スタッフとなります。
「うちの商品は説明ありきだから、まず商品の説明をして、購入につながる。そして、最後に何をしゃべるかが大事になるかな。商品を包む20秒とかね」
「お店に立つスタッフは、自分で言葉を探さなきゃいけないと思うんですよね。言葉って誰かに教わるものではないから、自分の気持ちが自然に出る。自分の言葉を帰り際に一言添えたら、あそこに行ったらなんか気持ち良いなって思うじゃない。それもデザインだと思うんです。そういう気持ちで接客して欲しいですね」
どんな接客なんだろう。お店にも訪れてみました。
まずはじめに伺ったのが品川店の店長、倉持明日香さん。お店のオープニングから働いている方です。
前職は雑貨屋で働いていたものの、数週間で入れ替わっていく商品のサイクルに違和感を感じていました。
「以前から美術館や雑誌でD-BROSの商品が気になっていました。もともと絵を描いておりましたし、ものづくりにも興味があったので、次第にD-BROSに関心が向いていくようになりました」
実際に働いてみてどうでしたか?
「D-BROSの商品はひと工夫された仕掛けのある商品が多いので、商品をみて驚かれるお客様が多いです。私がデザインしているわけではありませんが、得意げに接客できるのはちょっとうれしいというか。一緒におもしろい視点を発見する感覚があります」
そう言ってみせてくれたのはカップ&ソーサーという商品。
一見するとソーサーとカップの面にグラフィックが施されているように見えるけど、カップの側面が鏡で加工されているため、ソーサーのグラフィックが反映する仕組み。
さらに、D-BROSのお店だけで展開している商品「スタンプイット」についても話してくれました。
スタンプイットは、D-BROSがデザインしたスタンプを無地のノートやカードに自由に押すことで、自分だけのオリジナルアイテムがつくれるというもの。
「以前、友人の結婚式のウェルカムボードのアイデアを探されているお客さまがいらして、スタンプイットをおすすめしてみたんです」
「お客さまがうまくつくる自信がないというので、どんなスタンプがいいか、レイアウトなども相談しながら一緒につくらせていただきました。出来あがったものをみて、完成品を買うよりも手作りでつくったものの方が気持ちのこもった贈り物になったと大変満足してくれました」
後日、そのお客様が写真を見せに再びご来店してくださったそう。
「とてもうれしくて、たったひとつの商品でも誰かを喜ばせたり、楽しませたりすることができるんだなと気付きました」
“デザインは人を幸せにする”
D-BROSの想いは商品とともに人の手に渡り、広がっています。ショップスタッフはその役割を担う、とても重要な存在となっています。
「まずは自分がD-BROSのデザインや商品に愛着を持って働くことで、お客さまも楽しんでいただけるのかなと感じます」
「あとは働いているスタッフもそれぞれに絵を描くことや物をつくることが好きな方が多いので、ものづくりに興味がある人にも向いているのかもしれません」
ここで、こんな質問をしてみました。そもそも、これまで続けてこられた理由は?
「一度、結婚のタイミングで退職を考えたことがあったのですが、そのときに宮田さんが一緒にお食事をしてくれる機会を設けてくれて。『もうちょっとやってみれば?』と言ってくれました」
「宮田さんがスタッフひとりひとりのことを常に気にかけてくれて、ステップアップする機会をつくってくれたのも大きな理由です」
お店にふらりと訪れたり、ステップアップする環境もつくってくれたり。働きながら学べる機会が多いようです。
同じく店舗スタッフとして働いている藤岡芳理さんにも話を聞きます。
「品川駅という場所柄、来店される方は様々ですが、もともと私はD-BROSの商品が好きだったこともあり、接客時に自分で使った体験談を話す事ができました」
「D-BROSの雰囲気が好きという方も多く来店されますし、定番の商品も常に店頭に並んでいることもあり、働きだしてからお店のイメージが変わったり自分の心境が変化することなく続けてこられたかなと思います」
品川駅構内の商業施設(エキュート品川)内にあるD-BROSは、吹き抜けからエスカレーターで上がってきてすぐの場所にあるので、まずディスプレイが目に飛び込んできます。
「フラワーベースというビニールでできた花瓶が正面に並べてあるんです。はじめは色のついたきれいなガラスが並んでいるように見えるんです」
花瓶はガラスや陶器というイメージが強いので、遠くから見ただけだと、その素材に気づきませんね。
そんなフラワーベースの商品で、印象的な出来事がありました。
「あるときお客さまが『家の仏壇に仏花を生けてるんだけど、陶器や金属だと重いし、倒れたときは不安なので、フラワーベースに変えたら楽そうでいいわね』っていうお話をされたんです」
「ただ、『鮮やかな色味の物だと仏壇には合わないかしらね』と話をされたので、黄色と茶色がセットになっている江戸切子の柄をご提案したんです。木彫のお仏壇や仏花の色味に合わせられ、ご先祖様に失礼にはならないと思いますよって。結果的に、納得されてご購入してくださいました」
多くの方がデザインを見て購入を決めると思いますが、軽いという視点で商品を選ばれることもあるんですね。
「会話をしていると、こちらでもいろんな提案ができますし、面白いですね。やっぱり自分の言葉で話す機会は多いです」
「商品の説明を覚えることも重要ですが、働く中で自然と覚えていきますし、そこでの不安や焦りはないと思います。いかに自分の言葉を話せるか。それに尽きると思いますね」
最後に、宮田さんが販売のあり方について話してくれました。
「今って、素材について透明じゃないと通用しない時代なんです」
透明?
「そう。何かあれば疑ってかかり、気が付いたらあっという間に拡散される。だからこそ、いかに透明化するかということは大事なことで」
「これから銀座にもお店を出すので、世界中からお客さんが来て『これはどういう塗料ですか』とか聞かれると思うんです。そこでどう対応するか。どんな一言を添えるか。そういうことに向き合っていくべきだと思います」
ショップスタッフとして立つだけでなく、ひとりの人間として知識や視点をもって働くことで、きっとデザインのたのしさも伝わるんだと思います。
ひとつひとつの商品を丁寧に説明したり、自分の中から言葉を選んで伝えたり。さらに商品を透明化にするところまで、デザインは含まれています。
「デザイン」という言葉を大きく捉えることで形や色だけではなく、探求し続ける姿勢も見つめる。それこそがドラフトという会社のあり方なのかもしれません。
(2017/6/12 浦川彰太)