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「誰よりも早くきれいに。うまくできれば、『俺の仕事どうや』って言いたくなる。職人としてのプライドみたいなものは、昔の職人も今の職人も、変わらないと思います」そう話すのは、need(ニード)代表の中野さん。
ニードは、石川県金沢市で、住宅家具や店舗で使う什器など、一点もののオーダーメイド家具をつくっている会社です。
かつて高給取りと言われた職人をとりまく環境は、ものづくりの機械化や大量生産によって、きびしいものに変わってきました。
それでも、職人の技術は機械には真似できないものもあります。
「できるところは機械化し、職人として手をかけるところはしっかりやる。誰よりも早くきれいに。そこを求めるから、やり方にこだわりは持ちません。結果として、利益もついてくる。ぼくは、職人を憧れの仕事に戻したいんです」
ニードが目指すのは、家具職人のあたらしいあり方かもしれません。
ここで、中野さんの右腕となるような職人を探しています。
東京から新幹線で2時間半。金沢駅で降りたら、市バスに乗り換える。大きなお店やチェーン店が並ぶ大通りを30分ほど進んでから下車。
大通りから住宅街へ入りしばらく歩くと、小さな工場(こうば)が見えてきた。
戸が開いていて、外から覗くとまちの工場という感じ。中から代表の中野さんが出てきて、声をかけてくれた。
事務所に入り、さっそく話を伺います。
ニードはもともと、中野さんのお父さんがはじめた家具屋。お父さんは、幼いころ丁稚奉公に出て職人になったのだとか。
「ぼくも小さいころは工場を遊び場にして、木屑を触ったり、職人さんにカンナで削り方を教えてもらっていました。父親も職人だし、自分もそういう人生を歩むんだろうなって。違和感なく親父のあとをついていきましたね」
刃物の研ぎ方から家具のつくり方まで、すべてお父さんから習ったそうです。
「やってみると、この仕事って楽しくてね」
「やっぱり、出来上がったときの快感ですよね。いいものがつくれると『どうや、これ俺の仕事や。すごいやろ』って言いたくなってしまう(笑)それでお客さんがよろこんでくれたら、ますますうれしいんですよね」
中野さんが家具づくりで目指しているのは、まず使いやすいこと。そしてお客さんが求めている以上のものを先回りしてつくること。
「たとえば、玄関収納の依頼があるとするじゃないですか。その扉がバンッと音を立てて閉まらないように、ある角度まで閉まると自動で速度が遅くなるソフトクローズという部品をつけるんです」
「すると、ふわ〜っと静かに閉まる。まあ、よけいなお世話かもしれないんですけどね」
そう笑う中野さんからは、いいものをつくろうという、職人の気質が伝わってくる。
けれど、そんな丁寧な仕事ぶりとは反対に、この業界はあまり儲からず、残業も当たり前という風潮があるという。
「家具業界って、どんぶり勘定なんですよ」
依頼がくると、はじめにお客さんに見積もりを出す。つまり、先に売値を決めてつくるのだけれど、人によって作業の進み方はまちまち。1日でできると想定したものが2日延びただけで利益がなくなってしまうことも。
「もちろん、手作業できっちりやらないといけないところもある。ただ、誰でもできる部分に関しては、平準化して数字が読めるようにしたいんですよ」
「そのためにやってきたのが、機械化するための設備投資と、日々当たり前にやっている仕事を、当たり前にやらないということ」
当たり前にやらない?
「そうです。たとえば、金槌で数回叩いて釘を打つのも、頭の大きな金槌に変えれば、2回で打てるようになるとか。道具をスムーズに取れるように、物の配置を考えてみるとか」
そうやって、いつもの作業を少しずつ効率化していく。
「つくり方にもこだわりを持たないんですよ」
「ぼくは最終形が同じであれば、早いほうがいいと考えているんです。効率がよかったら、みんなに『こっちがいいよ』って伝播したい」
経験を積んでいくことは、どんな仕事にも大切なこと。けれど頑なになってしまって、柔軟性が失われることもある。
当たり前を疑い、こだわりから自由になってみる。
培った技術を生かしながら、状況に応じてものづくりをしているのが、ニードなんだと思う。
「そういうのって、常に考えてないと気付けないんです」
「小さなことだけど、積み重ねれば、利益につながる。お給金として還元できれば、職人という仕事への自信にもなると思うんです。ぼくは、職人をもう一度憧れの仕事に戻したいんですよね」
5年をかけて、徐々に会社の体質も変わってきた。
いい形になってきたところで、長年一緒にやってきた工場長が独立することになった。
そこで今回、中野さんの右腕となり、ニードの屋台骨となるような人が求められています。
「ぼくは今、営業に出ているので、もう工場に入っていないんです。工場にどっしりと構えて、ぼくが相談もできるような、一人前の職人さんに来てほしいんです」
現在ニードのメンバーは5名。
工場では、中野さんのお父さんである会長さんと、それぞれ職人歴1年と3年になる職人が製作を担当している。もう一人は、事務や製作補助をしてくれるパートさん。
中野さんは柔軟にあたらしいことを試してみるから、変化することを楽しめる人だとよいかもしれません。
ニードが年々変わる姿を見てきたのが、異業種から飛び込んで3年が経つ定免(じょうめん)さん。
「中野さんって、職人が生き残るために何をするかって考えているんですよね。仕事に関しては、ストイックな面もあります。そこをうまく汲み取って、ぼくらもどうしていきたいのかをみんなで話し合いながら実践してきました」
「慣れてしまっているものを改善するって、難しいなってあらためて思うんですけど。だんだん、いい方向に向かっている気がするんです」
入社当時は日付が変わるまで作業する日も少なくなかった。今はまだ定時は難しいけれど、3、4時間は短くなったそう。
「そういう意味では、ニードは失敗を恐れんような会社でもありますかね」
失敗を恐れない。
「たとえば、ぼくの前職はトラックのドライバーでした。家具職人としての経験がなかったので、本来なら、まだつくらせてもらえないはずの家具もありますし、リスクもあると思うんですけど、ここでは『やってみや』って」
「ただ、任せっきりじゃなくて、みんなでフォローする雰囲気もあるんですよね」
そんなニードの雰囲気が伝わるのか、やってくる依頼も「こんなのつくれるかな」という相談から入る家具も少なくないそう。
「自分もつくらせてもらうことがあるんですけど、難しいのも楽しいんです。単調なものをつくってるほうが飽きてしまうタイプなので、頭悩ませてるくらいがちょうどいいかなって」
そう言って、最近つくったという企業のヒストリーディスプレイを見せてくれた。
「これは両側にアールがかかっているんですけど、どちらも下は収納になっています。引き出しのように見えるけど、実は扉になっていて。アールの部分も一からつくるので、カーブベニヤという曲がる木を一枚一枚貼って重ねてつくっていくんです」
はじめは指示されたやり方でつくり、いいやり方を思いつくと、中野さんに相談してみることも。
「どうすれば早くできるだろう、どうすればきれいにできるだろう。考えるのが難しくもあり、楽しいところですね」
「街中で家具を見たときも、どうやってつくっているんだろうってつい考えてしまうんです」
心底ものづくりを好きな気持ちが伝わってくる。
とはいえ、決められた期間内につくるのも職人の仕事。質と効率のバランスをどうとるかで、葛藤することもあるという。
「自分のペースでじっくりできれば一番いいんでしょうけど、責任も持たないといけないので。やっぱり、納期に間に合わせるっていうのが、一番大変ですね」
とくに店舗の依頼のときは、お店のすべての家具を手がけることもあるから、物量も多くなる。ときには、遅くまで作業することも。
「まだ作業の流れも改善できると思うんで。あたらしい人も一緒に、試行錯誤していけたらと思います」
工場長としては、どんな人が向いていると思いますか?
「個人的には、真面目な方がいいですね。やっぱりそういう立場になる人は、ぼくら後輩スタッフからは技術の指導を、お客さんからは責任を求められると思います。コミュニケーションできる人だといいかもしれませんね」
具体的には、お客さんとの打ち合わせから参加し、工場での製作、搬入まで、家具製作の全体を担う。
工務店からの仕事が多く、什器などの店舗家具が3割、テレビボードや収納、洗面台など、一般住宅の家具が7割ほど。ほかにも、イベントブースや建物外観の目隠しなど、さまざまな依頼が舞い込む。
ここでふふたび、中野さん。
「打ち合わせでは、表面の仕様など、細かなところまでお話しします。工務店さんは家づくりのプロだけど、家具のことは知らないことも多い。家具のプロとして、ぼくらが提案する部分もありますよ」
たとえばある店舗で、アイアン製の取っ手をつくりたいという要望があったとき。ただ接着するだけでは弱いから、扉とどう噛ませるかまで考えて、取っ手をデザインしていく。
「お客さんに『大丈夫ですよ』って涼しい顔して帰ってきて、工場で必死になってバタバタしていることもあります」
何とかつくりあげれば、ノウハウが蓄積される。
だんだんと「ニードに相談してみよう」というリピーターも増えてきた。
「つねに応えなきゃいけないってプレッシャーはあるんですけど。やっぱり、頼られるのはうれしいですよね」
工場ではものづくりの平準化を進め、営業では、3D図面の導入や丁寧なアドバイスなど、ニードの付加価値を高める。
ニードの理想の職人のあり方は、両輪があって実現することだと思います。
職人として、さらに挑戦したい。そう思ったら、中野さんたちに会ってみてほしいです。
(2017/6/20 倉島友香)