求人 NEW

柳ヶ瀬のレストランを育てる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「おっ、こんないいお店あったんだ」

自分のまちでそんなお店に出会えたとき、わくわくすると同時に、なんだか誇らしい気持ちになることがあります。

近くの農家さんの有機野菜を使った美味しい料理と、地元の酒屋さんがお店のために選んだワイン、無垢材の空間でゆっくり過ごせる心地よさ。

心も満ちるようなお料理は、食べる人をしあわせにすると思う。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA そんなお店が、岐阜県の柳ヶ瀬(やながせ)にオープンします。

名前は、まだありません。柳ヶ瀬のまちの人に馴染むものをつけようと思っているところ。あたらしいレストランの、ホールスタッフを募集します。



名古屋からJR東海道本線であっというまに岐阜駅についた。ここから今回オープンするレストランがある柳ヶ瀬商店街までは、歩いて15分ほど。   

大通りから一本入った道を進むと、居酒屋、食堂、洋服、雑貨…といろんなお店が続く。その先に柳ヶ瀬商店街があった。

今でこそシャッターを下ろした店も多いけれど、デパートや映画館なども揃い、かつては東京銀座と並ぶ華やかなまちだったそう。

商店街の真ん中くらいのところ、アーケードを抜けた先にmalkinを見つけました。今回あたらしくオープンするレストランの前身のお店です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 席数は50ほど。木肌そのままの柱やテーブルに、落ち着いた灯り。どこかほっとする空間で迎えてくれたのは、岡田さん。昨年の12月に前オーナーから経営を引き継いだ方です。

「小さいころから食べるのが好きで、親に連れられていろいろ食べ歩いては、『どこどこの親子丼が一番おいしい』というちょっと変わった子どもでした。柳ヶ瀬商店街の中にも、お世話になったお店がたくさんあります」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ハキハキと話す岡田さんは、岐阜生まれ。憧れていた柳ヶ瀬商店街でお店をはじめてからは、20年。

今回オープンするレストランのほかにも、ツバメヤという和菓子屋と、ミツバチ食堂という定食メインの飲食店もひらいています。

どちらも自然素材でつくられた、安心して食べられるものたち。地元の人たちも足を運ぶ人気のお店だけれど、ここにたどりつくまで「失敗も成功も含め十分やってきた」と話します。

「昔はどちらかというと、ファーストフードのような考え方でした。短大卒業後にはじめたワッフル屋は、店も従業員もどんどん増やしていこうと、利益のために原料を安く仕入れようと業者を買い叩いたり、従業員も十分には育っていませんでした」

「お店は10店舗に大きくなりましたが、やっぱり行き詰まってしまって」

自分自身もつかれきってしまったとき、マクロビオティックを勉強していたスタッフからお弁当を差し入れられる。

仕事が終わったあと薄暗い倉庫で一人お弁当を食べた岡田さん。大きく価値観がかわった。

「食べた瞬間にからだ中があつくなる感覚というか、味がおいしい以上に、力が湧いてきて。すごいエネルギーを感じたんです」

そのお弁当をきっかけに、農薬や添加物の入っていない、本来の自然がもつエネルギーにすっかり感動してしまった。

「お客さんにも、自分が堂々と提供できるものを出したい」

それまでの店を人に譲り、自然の素材を使った和菓子屋「ツバメヤ」をはじめます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 不思議と、考え方が変わってからは、経営もうまくいくようになったそう。

まちの人たちからも、こんな声が。

「当時、柳ヶ瀬商店街はこれまでにないほど閑散としていました。そこで柳ヶ瀬土産的なものをつくったら、みんなから『ありがとう』って言われたんです。柳ヶ瀬を盛り上げてくれてありがとう、って」

「それがなんだかすごくうれしくて。誰かの幸せにつながるような経営をしていったほうが、わたしは満たされるなって思ったんです」

だから岡田さんのお店づくりは、自然の食べものや人とのつながりが基本。

malkin - 1 (12) 「今は、自分であたらしいことやるよりも、いろんなものを継いでいきたいなって気持ちがあって。今回オープンするレストランも、その一つなんです」

そんな岡田さんの経営スタイルは、スタッフの個性を生かすこと。

「ふつう経営者って『こういうことをやりたいから、あなたにこの部分を任せます』って方が多いと思うんですけど、わたしの場合、どちらかというとチームの感覚なんです」

チームの感覚。

「実は、私はお料理も接客に長けている訳ではないです。自分がすべてできる訳ではないから、その人の特技を生かしてお店をつくろうと思う。だから、スタッフ個人に注目します。下手したら、その人の得意なことに合わせて業種も変える。型にとらわれないんです」

malkinへ来て岡田さんが思ったのは、2年前の開店当初からいるシェフの林さんの能力があまり生かされてなかったこと。

「シェフの林は、もともと全国にあるポール・ボキューズというフレンチの副料理長でした」

「『1万円出すから好きな料理をつくってほしい』と伝えたら、素晴らしいセンスのお料理が出てきた。それまでのカジュアルな料理より、おそらくちゃんと一皿ずつ出てくる料理のほうが、林の経験が生かされるんじゃないかと感じて。メニューを、それまでのカフェスタイルのものから、コースを中心としたものに変えました」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 使う食材は県内の農家さんから直接仕入れた無農薬野菜で、調味料も無添加のもの。

お料理の仕込みも、シェフ一人ではつくりきれず既製品に頼っていた部分を、新たにイタリアンのシェフを招き、すべて手づくりできるように切り替えた。

お昼は1200円から、夜は3500円から。カフェよりは少し高めの値段設定にはなるけれど、おいしいものをゆっくり味わう、落ち着いた時間が提供できる。

「この間は貸切で岐阜市市長が来てくれたり、商店街の会合もありました。あたらしいレストランは、大人の社交場のような、まちの中の色んな人が交わる場所になればいいなと思うんです」



そんな岡田さんの経営とお客さんの反応を、直に見ているのがシェフの林さん。

ランチタイムが落ち着いたころ、お話を伺いました。

「岡田さんは、これと決めたら突き進む人。ぼくも自分の店を持とうかと考えていた時期もありました。でも、この人だったらついていけるかなって思うんです」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 林さんは、2年前にmalkinがオープンした当初から働いている。岡田さんがきて、少しずつ変化を感じているそう。

「無農薬のお野菜や無添加のものを使うようになったら、お客さんから直接『おいしかったです』と言われることがすごく多くなったんです」

「常においしいものをつくる努力はしていますし、以前もそれなりの反応はあったんですけれど、素材でこんなにも違うものなのかって。経営的にはまだまだな部分もありますけど、やりがいもありますし、少しずつよくなってきた感じがありますね」

実感をたどるように言葉を選ぶ林さんは、職人的な雰囲気の方。

聞けば、小さいころから料理が好きだったそう。

これまで、料理の専門学校を卒業してからは、イタリアンに2年、割烹に5年。飲食店の経営を勉強するために、デリを扱うカフェで4年。最後はフランス料理を学びたいと、名古屋のポール・ボキューズに5年勤めた。

「いろんな世界を見てみたかったんです。どれもあたらしいことができて、楽しかったですよ」

そろそろあたらしいことを、と考えたとき、地元である柳ヶ瀬が思い浮かんだ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「ぼくが高校生のころ、柳ヶ瀬商店街は憧れのまちでした。でも、たまに帰ってくると、少しずつシャッター街になっていって、さみしかった」

「ぼくにできることがあるなら、柳ヶ瀬でやってみたいって思いがありました。そんなとき、タイミングよくmalkinがひらくと聞いて飛び込んだんです」

話を聞いていると、岡田さんも林さんも、柳ヶ瀬を大事に思っていることが伝わってくる。

だからこそ、強みを生かして、まちの人がよろこぶものを考えている。

「値段は少し高いかもしれないけれど、かしこまってやる店でもないと思うんです。このお店は、長居できる、居心地のよさが大事だと思います」

「たとえば、今食後にオーガニックのカモミールティーをお出ししているんです。食べた後でも、お茶を飲んでゆっくりしてもらう。どうやったらお客さんに満足してもらえるか。ぼくらは実践しかないので、そういう当たり前の小さなところから考えていけるといいですね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ホールスタッフは、おもてなしがメイン。

一日中立ちっぱなしでホールを動き回るから、体力勝負な面もある。

すると、岡田さん。

「やっぱり、飲食店での経験がある人がいいと思います」

「そしてできれば、ワインが好きという人に来て欲しいんです。林シェフのお料理にも合うと思いますし、私自身、ワインって面白いなって思うことがあって。今まで以上にワインに力を入れていきたいと考えています」




パートナーとして協力してくれるのは、地元の「お酒を楽しむ専門店 水谷酒店」。岐阜市を中心に約100の飲食店に、ワインを中心にセレクトし卸している酒屋さんです。

岡田さんが、4代目となる水谷昌貴さんを紹介してくれました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 水谷さんの一番の仕事は、「それまでワインをあまり知らなかった人に、ワインを好きになってもらうこと」なんだそう。

「ワインって、頭が痛くなるとか知識が必要というイメージがあって、そもそもおいしいって思ったことがないという人も少なくないと思います」

「けれど、提供するお料理や、その料理を好む人に合わせてワインを選べば、また違ってきます。ときには、ワインにコーラを入れたり、『こんなんワインじゃねえ』って言われる飲み方でも、ぼくはいいと思う。おいしく飲んで、その時間が楽しいものになったら、利益もきちんとでてくると思っています」

だから水谷さんは、卸先のお店に足を運び、オーナーと話し合ってワインを選ぶ。結果として、取引している飲食店さんのほとんどは、安定して経営しているそう。

今回オープンするレストランは、お料理が変わり、さらに店の内装も変わる予定。

どんなものを選んでいくかは、これからのお店の雰囲気によって変わりそうです。



最後に、岡田さんから伝えたいことがあるといいます。

「やっぱり、地元の人に愛されるお店にしたいと思ってるんです。だからホールスタッフに欠かせないのは、人が好きなこと。このレストランの顔として働きたい人に来てほしいです」

じっくりゆっくり、柳ヶ瀬の人たちに愛される場所になるように。

一緒に柳ヶ瀬のレストランを育てていきませんか。

(2017/6/12 倉島友香)