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「お客さんが新しい仕事を持ってきてくれたり、常連だった人がスタッフになったり。すべて出会いがきっかけなんですよ。これをやるから人集めよう、っていう感じではなくて、そこにいたんです」良い場は出会いを生み、出会いは場を豊かにする。
そんな循環によって、株式会社クラシックは成長を重ねてきました。
“ハイクラスのカジュアル”を掲げ、東京・恵比寿や銀座、品川駅構内など、都内で10のレストランやバーを経営。
そのほか、デザイン・PRや人財教育の事業もはじめ、飲食にとどまらない展開を見せています。
今回募集するのは、都内10店舗のいずれかで働くサービスホールスタッフと調理スタッフ。
未経験でも大丈夫。読んでいて少しでもビビッときたら、「まずは一度お店に来てほしい」とのことです。
恵比寿の「ALMA(アルマ)」というお店を訪ねました。
恵比寿駅の改札を出ると、ロータリーには盆踊り大会のやぐらが組まれている。それを横目に鉄橋をくぐり、小さな川を超えて明治通り沿いに歩く。
駅からだいたい7分ほどでALMAの看板が見えてきた。
青い屋根と大きなアンティークの扉が、どっしりとした雰囲気を醸し出している。夜に来たらきっとまた違った雰囲気なんだろうな。
ALMAはラテン語で「恵み」という意味だそう。東北の食材にこだわり、毎日取り寄せる魚介類や野菜など、自然の恵みを使った日替わりの料理を提供している。
訪ねたのは13時。店内では、夜の営業に向けた仕込みが着々と進められていた。
窓際の席に座り、まずはじめに話を聞いたのは代表の萱場(かやば)さん。
現在クラシックは都内で10の飲食店を経営しており、ALMAはその1店舗目だという。
ほかの店舗も、蒸し料理を中心としたフレンチやタパスを提供する銀座のフレンチバー「Vapeur(ヴァプール)」や、モーニングのコーヒーから仕事終わりにクラフトビールまで楽しめる品川駅構内の「TAMEALS(タミルズ)」など、いずれも個性的なお店ばかり。
最近では、CMで使われる料理のケータリングやECサイトの商品撮影、レシピ提供といったデザイン・PR事業を展開したり、今年の8月には人財教育を目的とした新会社も設立したという。
「調理師学校を出ても、実際の現場で力を発揮できないと意味がないですよね。だから専門学校をつくって、うちの店舗で研修するとか。まだ大風呂敷ですけど、そんなことができないかなと思ってチャレンジをはじめています」
将来的にはホールディングス化も考えているという萱場さん。経営者としての感覚が鋭い方なのだなと想像する。
ただ、飲食の道を志すきっかけは現場にあったという。
「仙台出身で、18歳から飲食のアルバイトをはじめて。19歳のとき、自分の接客したお客さんが、お店じゃなく自分に『ありがとう。また来るね』と言ってくださったことにものすごく感動したんですね。それでこの仕事しかないなって」
以来、25年にわたって飲食一筋。店長や新店舗のプロデュースなど、さまざまな形で飲食の仕事に関わってきた。
転機が訪れたのは、1年半ほど前のこと。仙台を拠点にしていた前の会社が分社することになり、萱場さんが東京の全店舗を買いとる形で独立。
株式会社クラシックとして再スタートを切った。
「本当に、不思議な経緯でここまできたんですよ。ぼくが22歳のときに小さいDJバーを出したんですけど、今のクラシックの取締役は全員そこで出会った子たち。みんな20年以上の付き合いがあるんです」
「それから、ALMAのお客さんがJRさんのお仕事を持ってきてくれて。事前に面談があるんですが、最初10坪のスペースという話だったのに、1時間話し終えて30坪のスペースでやってみませんかということになり。それが品川駅構内の『TAMEALS』につながって。今では一番売り上げの高い店舗になっていますね」
10年前、単身で東京に繰り出した萱場さん。お店での出会いを機に、気づけばたくさんの仲間に囲まれていたという。
たしかに、飲食店にはいろんな人が訪れる。とはいえ、クラシックがここまで人を惹きつけるのはなぜだろう?
「うちは決して安いわけじゃないんです。ものすごい高いわけでもない。そのちょうど中間、ハイクラスのカジュアルという考え方なんです」
ハイクラスのカジュアル?
「うちに来てくださるのは、たとえば380円のビールより、700円払ってでも雰囲気のいいところで飲みたいねっていうお客さん。だから消費税が上がろうとも、あまり売り上げには影響しません」
「薄利多売、スクラップアンドビルドみたいな商売の仕方ではなくて、一流の仕事や本物の素材に触れることで、感受性を高め、カジュアルな形でサービスを提供する。そういう考え方を大切にしています」
過去にはグランメゾンと呼ばれる高級レストランでの研修や、海外研修なども開催。一流の仕事に触れる機会をつくってきた。
「人間って、旅に出たり、恋愛したり、家族と過ごしたり、映画を見たりとか。そういう経験によって磨かれることで、サービスや感性が花開くと思うんです」
そこで来年からは、有給休暇に加え、日給の半額程度で休日を“買い取れる”制度を取り入れることも検討しているという。
つまり、日給の半額を受け取りながら、仕事以外のことに取り組む期間が設けられる。
「『老後にエベレストにのぼりたい』と言うのなら、今行ってほしい。お店の都合もあるかもしれないけれど、買い取ったら自由に使っていいんです」
「ひとつの会社にいながら、自分で生き方働き方を選べる。その代わり、働くときはものすごい真剣に働く。ぼくはそんな会社が理想なので」
萱場さんは、どんな人と働きたいですか。
「年齢も人種も関係なく、共感してくれる人なら誰でも、とりあえずやってみたいんですよ。お互いのお見合い期間というつもりで、一緒に働いてみる。そこからだと思うんですね」
サービスホールスタッフ、調理スタッフともに、未経験でも歓迎とのこと。
ただ、求められるレベルは高い。飲食の経験がなければ不慣れなことも多いだろうし、わからないなりに必死でついていく姿勢は必要だと思う。
具体的にはどんな仕事があるんだろう。
ここからはALMAの店長である西田さんにも話を聞く。
「平日はディナーのみなので、13時ごろに来たらキッチンスタッフは仕込み、わたしたちは掃除を徹底的にやります。あとはメニューが日替わりなので、その日の食材を見ながらシェフと相談してメニューをつくり、ディナーに入っていくという流れです」
こうした通常営業に加えて、ALMAではたびたびイベントも開かれる。
「年に5、6回はイタリアからワインの生産者さんが来て、日中に試飲会、夜はその方のワインに合う料理をディナーでお出ししたりする日もあります」
「かと思えば、全員ユニフォームを着替えて一定期間和食を提供する『居酒屋あるま』というイベントがあったり。いろいろですね」
もともとALMAのオープン当初からのお客さんだった西田さん。掛け持ちのアルバイトからスタートして、今では店長を務めている。
「うちの会社は、有名店から来たシェフとかソムリエはいないんですよ。みんなこの会社で勉強して、貫いて、腕を上げてきた人たち。だから未経験でも、努力をすれば可能性が広がって、上にあがっていける環境なんです」
きっとお客さんだけでなく、スタッフ同士も感性の合う人が揃っているんだろう。
入れ替わりの激しい飲食業界のなかで、10年20年と辞めずに続けている人が多いのは、良い人間関係が築かれている証拠だと思う。
「ぼくは、一つひとつのお店を会社だと思っているんです」と萱場さん。
「なので各店舗のリーダーに権限移譲をして、税理士さんや労務士さんとも直接やりとりしてもらっています。お伺いは基本的になしで、自分たちで決断していいよと」
それはなぜですか。
「各リーダーが経営者として物事を判断していく人間に育ってくれたらいいな、っていう想いですよね。自分だったらそういう会社で働きたいですし、『この会社にだったら、自分の人生を使ってもいいな』って思える会社でありたいんです」
また、創業時から掲げているのが「スケルトン経営」。
会社にいくらお金があり、誰がどの程度の給料をもらっていて、領収書を誰が何にいくら切っているか。月に一度、全従業員に向けて開示するのだそう。
西田さんは今、社内の独立支援制度を活用し、念願だったワインバーの開店に向けて準備を進めているという。
「ちょうどいい物件が空いたということで、社長に志願して。今はどういうお店にしようかなとか、ALMAの基盤をどう固めていこうか、日々考えながら過ごしています」
入ってすぐにやりたいことができるわけではない。西田さんは、9年の経験と信頼を積み重ね、チャンスを掴んだ。
「ALMAはオープンキッチンのイタリアンですけど、ほかにもバーだったりカフェだったり、いろんなお店があるので。その人の得意分野によっていろんな選択肢が選べるのは、うちの会社らしいところじゃないかなと思います」
最後に話を聞いたのは、銀座のフレンチバー「Vapuer」で店長を務める細川さん。
13年前から萱場さんのもとで働き、いろんな局面を乗り越えてきた方だ。
仙台から東京に進出する際も、周りがためらうなか、すぐに手を挙げたのが細川さんだった。
「できるかできないかは別として、チャンスはいただけるので。もちろん、成功も失敗もしましたけど、どちらにせよ学ぶことは常にありました」
品川、日本橋、横浜、銀座と、異なる客層やジャンルのお店を渡り歩くなかで、さまざまなノウハウを身につけてきた細川さん。
その一方で、すべての店舗に共通して言えることもあるという。
「応募や面接をされる前に、できれば一度お店に来てほしいんです。ネット上から、なんとなくいいな、ポチ。ではなくて。ご自分で見て、飲んで、食べて、感じてもらいたい」
「その上でいいな、ここで働きたいと思っていただけたら、大きくぶれることはないので。これまでお客さんからスタッフになった人も、きっとそういうところで感性が合致していたんですよね。ぜひ一度お店に来ていただいて、直感と飲食を通じて、感じていただけたらと思います」
実は取材でみなさんにお会いするまで、少しかしこまった気持ちでいました。
なぜなら、サイトはなんだかシュッとした感じだし、名前が読めない横文字のお店も多い。自分には馴染みのないお店かな?と、勝手に想像したところもあります。
けれども、物腰柔らかなみなさんの雰囲気に、いつしか気持ちも和らいで。帰るころには、「またお客さんとして来ますね」と言って別れました。
今回の募集がどんな出会いにつながるか。再びお店を訪ねる日が楽しみです。
(2017/9/6 中川晃輔)