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ものがたりはそこに

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いいものをつくれば、自然と伝わる。

たしかにそうかもしれません。

けれども、ものづくりの過程やつくり手の顔も知りたい、という人は増えているように思います。

食品で言えば、「安心したい」という気持ちがその裏にはありそう。では、雑貨だとしたら?なぜその背景を知りたくなるのでしょう。

その理由のひとつは「愛着」じゃないでしょうか。たくさんの手間暇やこだわりを込めてつくられたものだと知るからこそ、大事にしたいと思えたり、丁寧に手入れをしようという気持ちになったりする。

さらに言うなら、説明しきらずともよさがにじみ出るような「余白」があるものほど、知りたくなるのかもしれない。直感的に手にとり、ルーツを辿ると、その裏にはちゃんとストーリーがある。

そんな余白とストーリーを持ったものが求められているような気がします。

「カランコロン京都」や「ぽっちり」、「ハンカチベーカリー」など、14ブランド36店舗を全国で展開しているスーベニール株式会社。

布小物やがま口など、余白とストーリーを持った雑貨を企画・製造・販売しています。

この会社で、オリジナル商品の企画開発やこれからはじまる新プロジェクトを運営していく「もの・ことづくりディレクター」と、自社サイトの企画やデザインを担うWebディレクターとWebデザイナー、ストーリーを伝えるライターを募集中です。

京都の本社を訪ねて詳しく話を聞いてきました。


少しの雨模様も、京都の路地を歩くと風情に感じられる。

烏丸御池駅から徒歩7分。スーベニールの本社に到着した。

迎えてくれたのは、常務取締役の塩崎さん。

「1歳4ヶ月の子どもがいるんですけど、今朝は5時半に起きたんです。そのあと本人は二度寝しても、わたしは寝られず。でも、この取材がすごく楽しみで、今日はやたらとテンション高いねっていろんな人に言われています(笑)」

本当に楽しそうな様子が伝わってきて、なんだかうれしい。

そんな塩崎さんは、代表の伊藤さんとともにスーベニールを立ち上げたパワフルな方でもある。

まずは会社のこれまでについてお聞きしたいです。

「はい。もともとの会社っていうのが、株式会社伊と忠(いとちゅう)といいまして。京都の四条河原町に120年続く履物の専門店なんですね」

京都では、創業から100年を越えてようやく「老舗」と呼ばれるそう。

伊と忠の商品は、全国の百貨店でも50年近くにわたって取り扱われてきた。

けれども、時代とともに和装の需要は減るばかり。

「履物となると、和装のなかでもさらにコアなもの。老舗として大事に守っていく部分も持ちつつ、和装に興味のない若者にも和の文化のよさを知ってもらいたいということで、2005年に雑貨事業を立ち上げたんです」

当時、入社3年目だった塩崎さん。前職のファッション雑貨メーカーでの経験を活かし、立ち上げに力を注いだ。

新ブランド「karan colon」はのちに「カランコロン京都」としてリニューアルし、新宿の1号店を皮切りに全国へ展開。今から5年前に分社化し、14ブランド36店舗を構えるまでになった。
こだわっているのは、「日本のものづくり」とオリジナリティのある商品づくり。

たとえば、主力商品のがま口は生地からデザインし、山梨のジャガード屋さんで織ってもらい、京都のがま口職人さんに仕上げてもらう。

企画から製造、販売まで、社内のデザイナーとともに一貫して顔の見える範囲でつくっているのだそう。

「それでも京都の人って、『誰が、どうやってつくっているか』はいちいち言わないんですよ」

なぜ言わないんですか。

「ものをいいと思って買ってもらえれば、それでいいっていう潔さがあるんです。わたしは京都の出身ではないですけど、社長は京都人のなかの京都人で。雑貨も背景をあまり説明することなく販売してきたんですよね」

それは京都に残る文化であり、美徳でもある。老舗として譲れない部分はもちろんある。

けれどその一方で、背景のストーリーやつくり手の顔が見えるものを使いたい、と考える人は増えてきている。

変化の兆しは少しずつ確信となり、今年、塩崎さんたちは動きだした。

「ひとつ新しい枠組みをつくることで、わたしたちが大事にしていることをストレートに伝えていきたいなと。ちょっとこう、遊びがあってもいいかな、とか。スタッフ一人ひとりが自分発信でつくりたいものをつくってみたらどうなるんだろうとか。そういう要素を盛り込んだ新プロジェクトをはじめます」

新プロジェクトでは、オリジナル商品を開発し、Webサイトでその商品が生まれるまでのストーリーを伝えたり、実際に使っている人の対談やインタビューを掲載したり。

次第に「ものづくり」の枠を超えて、ライフスタイルや価値観を伝えるメディアとしての役割が生まれてくるかもしれない。

そのため、雑貨の企画・製造や販売のみならず、「いろいろな経験をしてきた人に加わってもらいたい」と塩崎さん。

「今回の募集で『もの・ことづくりディレクター』と言っているのは、商品の企画にとどまらない仕事だから。イベントを企画したい人とか、雑誌の編集をしていたような人にもぜひ来てほしくて。一緒に面白いことができる人であればぜひ、っていう感じなんですよ」


マーケティング部の小田島さんは、入社2年目にして新規事業の商品開発部門を担当している。

今回募集する「もの・ことづくりディレクター」のイメージに近い方だと思う。

「生活のなかで、自分はどんなものがほしいのか。どんな人がどんなものを求めているのか。大きな視点で考えるようなところを担当させてもらっています」

総合大学の芸術学部で工芸を学び、漆や焼き物、ガラスなどの素材の面白さと向き合ってきた小田島さん。

スーベニールの商品は、もともとお店に行ったことがあって知っていたそう。

「量産や一本化の流れにはない手づくり感とか、一つひとつのものにこだわりを感じられるのがいいなと思って。きれいで品がいいだけじゃなく、かっこつけない人間味があるというか。そこが素敵だなあと感じていました」

入社後1年間は、先輩からマーケティングの基本を教わりながら、既存ブランドのMDなどを担当。会社の運営体制や強み、弱点を実践のなかで知る期間だったという。

実際に企画開発を担当した商品をいくつか見せてもらった。

「たとえばこれ。わたし、後藤美月さんっていうイラストレーターさんの絵がすごい好きで。こちらからお声かけをして、一緒に革小物をつくっているところなんです」

革とプリントの組み合わせ、そして3種類のオリジナルの絵柄が、ほかにはない雰囲気を醸し出している。

ただ、こうして形になるまでにはいくつも壁があったそうだ。

「もともと布小物がメインなので、まずは革を扱えるメーカーさんを探すところからはじめました」

革にプリントする技術は、どこにでもあるものではない。HPから温度感を感じとりつつ、次々に電話をかける。

幸い、大阪のメーカーがすぐに見つかった。

「でも最初は、絵のテクスチャや色をどこまで表現できるかわからないと言われてしまって。そこからわたしたちも試行錯誤を重ねながら、サンプルを持って何度も工場に行きましたね」

色の具合や絵柄の配置、縫製の仕方に至るまで、ひとつずつクリアしていく。

「関わった人たちの熱意とチャレンジ精神がここに詰まっています」と小田島さん。

「わたしたちも、作家さんも、メーカーさんもはじめてのことばかりで。うまくいかないことのほうが多かったですし、こうして形になるとやっぱりうれしいですね」

隣で聞いていた塩崎さんも、あるエピソードを思い出したそう。

「京都の染色工場さんにオリジナルの風呂敷をお願いしたんですよ。ほかの卸のメーカーさんと比べたら、10分の1ほどの小ロットです。ご苦労もかけたなと思います」

無事に商品は完成し、お店で販売を開始。

そんなある日、ベテランの職人さんから連絡があった。

「カランコロン京都の本店に行かれたそうで、『若い子が持ちそうなキラキラしたもののなかに、自分の風呂敷が並んでいてうれしかった』って。わたしもなんだかすごく感動しちゃって」

「どれだけ一生懸命つくっていても、使う人の姿が見えないと思っている職人さんは多いんですよね。そのときに、買ってくれる人とか、お店に並んでいる様子がリアルに見えることは、すごい価値なんだって思ったんです」

ストーリーを伝えるということは、買う人の安心感や愛着を生むだけでなく、つくり手の喜びや誇りにもつながっていく。

そこに信頼関係が生まれると、またいいものを一緒につくりたいと思える。

今回の新しいプロジェクトを通じて、ますますいい循環が生まれそうな予感がしてきた。


「あたたかみや、人間味がうちの商品の特徴だと思うんです。Web上だけれど、店頭で手にとって触れているような感覚が伝わるように工夫していきたいです」

そう話すのは、新プロジェクトのWeb担当をしている佐藤さん。

Web担当とはいえ、もともと経験やスキルがあったわけではないという。

専門知識を持ったスタッフとコミュニケーションをとりながら、既存ブランドのECサイトをつくり込んだり、InstagramなどSNSを通じた情報発信のディレクションもしている。

「良くも悪くも、考えたものが形になるまでが早いんですね。それは商品だったり、サイトの提案だったり、お店だったり、規模はいろいろあるんですけど」

日常のささいな気づきから商品が生まれることも少なくない。そして店頭に並ぶと、すぐさまお客さんや店舗スタッフからのフィードバックが返ってくる。

そのサイクルがとても速いのだそう。

「自由な発想で挑戦しやすい反面、模索する時間っていうのは結構大変で。次から次へ、終わりのない課題が出てくるんですよね。今はそれが当たり前と思えるようになりましたけど、1〜2年目は大変でした」

全国に150人いるスタッフのうち、大半は20代。早いうちから裁量を得て、チャレンジする人はどんどん力をつけられる環境だと思う。

最後に塩崎さんの言葉を紹介します。

「わたしたちは老舗のルーツを持ちつつ、常にベンチャー精神を大事にしていて。新たな事業領域で挑戦したい人がいれば、企業としてそれをきちんと形にしていきたいと思っているんです。そんな方の応募をお待ちしています」

いいものにはストーリーがある。

それを堂々と伝えられるのもまた、気持ちのいいスタンスだと思います。

丁寧に、まっすぐ伝えていきたいという人はぜひ応募してください。

(2017/11/21 中川晃輔)

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