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文化は、ここから

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「コーヒーを飲むことが日本で文化になったように、次はみかんジュースが当たり前に食卓に並ぶような文化をつくりたい。そうすれば、僕らだけじゃなく愛媛のみかんを使ったビジネスは絶対にうまくいくと思っています」

ten01 そう力強く話してくれたのは、みかんなど柑橘類の加工品を扱う専門ブランド「10(TEN)」の代表をつとめる梶谷さん。

TENは、愛媛のみかん産業の魅力を最大限に活かしたオリジナル商品を提案することで、みかん産業を次世代につなげていくことを目標にしています。

今回募集するのは、今年新たにGINZA SIXに誕生した直営店で販売スタッフとして働く人。販売や飲食の経験はあるに越したことはないけれど、未経験でも大丈夫です。

まずは、日々お店を訪れる目の前の人に喜んでもらうことから。

ゆくゆくは、愛媛みかん産業の未来の一翼を担う仕事になるかもしれません。



愛媛県の松山空港からリムジンバスに揺られて向かったのは、道後温泉駅。

道後温泉本館へと続く商店街のアーケードをくぐると、すぐ左側にTENの直営店「10FACTORY 道後店」を見つけた。

ten03 TENの直営店は現在、道後店と松山本店、銀座店の3店舗。銀座店は現在、県外唯一の直営店となります。

お店の中に入ると、まず目を惹かれたのが洗練されたデザイン。きっとプレゼントとしても喜ばれると思う。

迎えてくれた代表の梶谷さんは、今年で30歳。とても気さくな方だ。

ten04 「もともとTENは、エイトワンという会社で生まれたブランドなんです。分社化するときに、代表を任されました」

道後温泉にホテルをつくるところから始まったエイトワンは、「使う」「食べる」「旅する」の視点で、現在12のさまざまなブランドを展開している会社。地域活性化や農業の復興、高齢化社会対策など、日本を元気にするためのさまざまな活動に取り組んでいます。

たとえばTENは、運営するホテルの朝食でみかんジュースを出したのがはじまり。農家さんから直接購入するみかんが宿泊客に喜ばれる一方で、みかん農家の高齢化が進み、後継者が不足していた。

地域経済が循環するような仕組みをつくりたい。みかん栽培に誇りを持てるようにしたい。そんな想いで、新しいブランドが誕生した。

ten05 梶谷さんがTENの代表になったのは、ブランド立ち上げから2年ほど経ってからのこと。

もともと、梶谷さんの家は愛媛県の八幡浜市で3代続くみかん農家だった。両親の背中を見ているうちに、自然とみかん農家になりたいという気持ちが強くなっていったという。

「うちのみかん山は先祖代々守ってきた土地で。僕はそこからの景色がすごく好きなんですよ」

標高300メートルほどの山の上からは、九州まで見渡せる。

夏は太陽が自分の真上に上がり、冬は夕日が海に沈んでいく姿を眺める。春には心地よい風も吹く。

ten06 「そういうものをこの先も残していきたいなって。だけど、大人になるとみかん農家のしんどさも見えてきました」

梶谷家で主に育てていた“早生(わせ)”というみかんは、10~12月が収穫時期。その時期は忙しいけれど、それだけではとても食べていけない。

さらに、みかん栽培は天候にも大きな影響を受ける。

「台風がきたら実が傷むし、雨が降りすぎたらおいしくない。満足にいいものがつくれる年って、数年に一度とかなんですよ」

大学を卒業後、3年間農協で働いたのちにみかん農家を継ぐことを決める。けれども、みかん農家の現状は相変わらず厳しいままだった。

「美味しいみかんをつくっても高く売れない。いいものができなかったら捨てるしかない。みかん農家だって家を買いたいし、旅行にも行きたい。でも今のままではうまくいかないと感じていました」

ten07 そんなときに、TENを展開していたエイトワン代表の大薮さんに出会う。

みかんを加工して商品化することで、地域や農家にお金が入るシステムをつくろうという大薮さんの想いに共感した梶谷さんは、TENの代表に就任することになった。

「加工用のみかんって、コンテナいっぱいに詰めて、20キロで数十円とか。みかんをつくるほど赤字になってしまうんです」

そこで取り組んだのは、商品のブランド化。販売価格を高く設定し、その分農家からみかんをより高い価格で購入できる体制をつくろうと考えた。

「できるだけ柑橘の味が美味しくなるように、熱を入れずに充填しています。瓶も、本当は酒が入る瓶なんですよ。中身が美しく見えるようにこだわっています」

いいものをつくって、工夫すれば農業は稼げる。それを証明するために試行錯誤の日々が続いた。

「僕は農家であり、TENの社長でもある。農家は1円でも高く売りたいけど、ビジネスとしては1円でも安く買いたい。売り手と買い手、どちらの気持ちもわかるからこその葛藤がありましたね」

教科書もないし、教えてくれる人もいない。それでも続けてこられた理由は何なんだろう。

「やっぱり自分がつくったものが、評価されていくっていうのが一番楽しい」

ten08 「今ではついてきてくれる農家さんもいるし、お客さんとも触れ合うことができて。少しずつ自分の存在意義を感じられるようになってきた気がしますね」



愛媛で梶谷さんのお話を聞いたあと、日を改めてGINZA SIXにある銀座店を訪ねることに。

オープンしてからまだ日が浅い銀座店は、梶谷さんをはじめ、愛媛にいるスタッフが交代でサポートしながら運営している。この日は、道後店の店長である神田さんが来ていました。

ten09 愛媛の店舗と銀座店とでは、客層などに違いを感じますか?

「愛媛では、利用客の多くが観光で訪れた関東圏の方なんです。『みかんなのになんだかお洒落なお店ね』と言っていただくことも多くて。反応も良かったんですが、実際に銀座に来てみるとハードルが非常に高いなと感じています」

銀座という場所のハードルですか。

「そうですね。やっぱり、求める質が高い。僕らも自信を持ってつくっているんですけど、味やデザイン、スタッフの対応もまだまだ未熟ですね」

「ジュースを飲んだときのお客様の表情など、小さな変化も見逃さずに、どんな味をおすすめしたほうがいいかな、と考えていきます」

国内・海外を問わず多くの人が訪れる銀座店には、お客さんの気持ちを感じ取るアンテナのような役割を期待している。

一方で、商品の価値をきちんと伝えていくことも大事な役目。

そのために、まず愛媛の店舗やみかん農家の現状を知ることからはじめてほしい。入社後は、研修として梶谷さんとみかんの産地巡りをしたり、農家さんや愛媛の店舗スタッフと交流する時間も設ける予定とのこと。

ten10 「働く人が一緒にみかん産業を盛り上げたいという気持ちや、みかんへの関心を持つだけでも、お客さまへの伝わり方は全然違ってくると思うので。そういう発信源になれたら、社会貢献にもつながっていくのかなと思います」

「ここで事業が成功したら、みかんだけじゃなく日本全体に展開して地域を活性化できる道筋がつくれると思うんです。まだ夢のような話ですけど、同じ志を持って働いてくれたらうれしいですね」

店長として働くときに、心がけていることはありますか。

「店内のレイアウトなどを、スタッフみんなで考えるようにしています。自分ならどういう動線が使いやすいのか、商品の販売実績も共有して何を目立つ位置に置くのかなど、一人ひとりに考えてもらって柔軟に変更しています」

ten11 たとえば、今の時期はゼリーが手に取られやすいという意見が出てレイアウトを変更した。

お店のレイアウトや商品に積極的に関わると、そのぶん愛着や責任感も増すように思います。

「今のスタッフたちは、自分たちで店を回すっていうくらいの気持ちでやってくれているんです。それが本当にうれしいですね」



そんな頼もしいスタッフの一人として紹介してもらったのが、高岡さんです。

ten12 これまでカフェやアパレルで接客販売を経験してきた高岡さん。どうしてここで働こうと思ったんですか?

「いろんなフルーツが置いてあるお店はあるけど、みかん専門店っていうのが珍しいなと思って。接客も柑橘も好きなので、応募してみることにしました」

なかでも決め手は、店頭で飲める生絞りジュース。高岡さん自身もおいしさに驚き、自信を持ってお客さんにおすすめしているそう。

「やっぱり生絞りを飲んだときのお客さまの表情がすごくいいんです。飲み終わったあと、美味しかったって声に出してくださるくらい。それを聞いたときに、心からありがとうございます!って言える感じがすごくいいなって思っています」

とはいえ、最初はみかんの品種についてほとんど知識がなかった。知るほどに、みかんの魅力にはまっているよう。

「勉強するうちに、それぞれ甘さや苦味、酸味があることを知って。どれも違った良さがあっておいしいんです」

ten02 たくさんの品種を覚えるのは、大変そうです。

「確かに大変でしたね。だけど好きになれれば、楽しく覚えられると思います。あとは接客方法のマニュアルもないので、やりにくいと思う方もいるかもしれません」

まだまだ若い会社だし、新しい店舗の環境が完璧にそろっていないこともある。

決められたマニュアルがないからこそ、何気ない会話を交わしながら、楽しくお買い物をしてもらうことを心がけている。

「以前、30代の女性の方がいらして。最初は軽く見ているだけという感じだったんですが、品種をいくつかご紹介したら『そんなものもあるんだ!』と興味を持ってくださったんです」

「これは実際に食べたことがある」と女性が話してくれたのは、“せとか”という甘めで珍しい品種。そこで、“はるか”と“ブラッドオレンジ”を勧めた。

「特にブラッドオレンジは、よく酸っぱそうだと言われますが、実際飲んでいただくと甘いんです。私も好きな品種なんですけど。意外でおもしろいと喜んでいただけて、いろいろと飲み比べるために買ってくださいました」

さらに、TENではスタッフの意見が商品開発に活かされることも。過去にはドレッシングやビネガーが、スタッフからの要望で商品化されたそう。

「母の日や父の日用の包装を考えてみようということもありました。そのときはお花を買ってきて添えたんですが、そういうこともスピード感を持ってできますね」

新しく入る人にも、臆せずどんどん提案をしながらお店をつくっていってほしいです。



TENは、ただ高級でおしゃれなだけのお店ではない。

目の前の人の「おいしい」や「うれしい」に誠実に応えながら積み重ねたものが、日本を元気にする新たな文化へとつながっていくのだと思う。

ten13 興味を持ったら、一緒にみかんの世界へ踏み込んでみませんか。

まずはぜひ、銀座店に足を運んでみてください。

(2017/11/10 並木仁美)

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