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都会と田舎の中間
何にも染まっていない街を
PRしながら仕事をつくる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「この街は、無色で無難で、大きな特徴が見つからないふつうの街なんです。けれど、まだ何にも染まっていないからこそ、自分次第でこれから何色にも染めていける街なんだと思う」

そんな住民の方の言葉が印象的な取材でした。

栃木県さくら市

県都・宇都宮市のすぐ隣に位置する、人口44000人ほどの街です。

ここで、地域おこし協力隊としてこの街をPRしながら、自分の仕事をつくっていく人を募集します。

近隣都市のベッドタウンとして栄えるほか、工業地帯や自然にも恵まれたさくら市。その住みよさから、近年は緩やかに人口が増加している地域でもあります。

けれども、地域の人たちが言うのは「大きな特徴が見つからない」ということ。たしかに商業施設や住宅、そして自然が程よく共存するこの街は、いわゆる“ふつう”の街です。

ただ、取材しているうちに見えてきたのは、ここには自分たちのやりたいことに楽しそうに取り組む人たちがいて、みんな口を揃えて「ちょうどいい街」と言っていること。

時間に急かされるようなことも、人が多すぎたりも、距離が近すぎたりもしない。自分のペースで生きられる街なのかもしれません。

「まだ何かをしたいわけじゃないけれど、ちょうどいい場所に移住したい」という方でも大丈夫です。

まずは実際に住んでみて気づいたものや感じたことを伝えることが、街のPRとなるはず。その中で、自分らしい仕事のつくり方をじっくり考えていけばいい。

自分なら、この街でどう生活して、何を発見していくだろう。そんな未来への想像が働けば、きっとこの街は面白いと思います。


東京から宇都宮までは、新幹線で1時間。そこから電車で30分ほど揺られた先に、さくら市はある。

市内には東西、南北それぞれを横断するように国道が走り、道路沿いにはスーパーやコンビニ、さらにはホームセンターやレンタルビデオ店も立ち並ぶ。

一本中に入ると、閑静な住宅街が広がる。新築が多く、子連れの若い世代も多く見かけ、決して小さな都市ではないという印象。

まずは市役所に向かって、今回の募集を担当している南部さんと合流する。

一つひとつの質問にとても丁寧に答えてくれる方で、きっと、これから街にやって来る人たちのことを助けてくれると思う。

「さくら市は、渋滞がないんです。全国チェーンから個人店まで一通り揃っているし、大きな病院や公園もある。車さえあれば本当に不自由なく生活できる。ひいき目なしに、住みやすい街だと思います」

さくら市は、2005年に合併して誕生した街。春になると市内のあちこちで桜が満開に咲き誇ることから、市名を公募した際、「さくら市がいい」という声が多かったのだという。

市の南西側の氏家(うじいえ)地区は隣接する市町のベッドタウンとして、北東側の喜連川(きつれがわ)地区は温泉が楽しめる観光地として栄えてきた。最近では分譲地も整備され、近隣の街で働く子育て世代からシニア層まで、幅広い人たちが生活している。

そんなさくら市が力を入れてきたのが、住環境の充実。

たとえば、市民であれば医療費は18歳まで無料。小中学校には電子黒板を導入し、今後は幼稚園でも英語教育を開始するそう。

そうした施策が実り、全国の市町村を対象にした「住みよさランキング」では県内で毎年上位に名を連ね、2016年は県内1位に選ばれた。移住者数も伸びており、12年前の市の誕生から人口は4000人近く増えている。

「たとえば、宇都宮に住んでいた方がそろそろ家を持とうかと考えたときに、まず候補に上がるのがさくら市なんです。土地も家も手に入れられて、教育環境も整っている。さくら市はちょうどいいね、という声が多いですね」

そうすると気になるのが、街が地域おこし協力隊を募集する理由。

順調に見えるさくら市が、どうして地域おこし協力隊の募集をはじめることになったのだろう。

「実は、県内の方にはさくら市を十分に知っていただいているのですが、県外へのPRが本当にまだまだなんです」

実際に移住者が増加しているといっても、その多くが県内から。都市部からの移住者は少ない。

それに、街のPR活動に携わっているのも市職員の南部さんたちだけ。ありふれた視点でしか発信できていないのが実情だという。

移住者がいることに、ただ安心しているわけにもいかない様子だ。

今回募集する人は、移住者の目線でさくら市を発信していくことが大きな役割となる。

現在は、市のホームページやSNSをはじめ、『さくら市で暮らそう』というウェブサイトやイベントを通して移住者の声を紹介し、情報を発信しているところ。

新しく入る人も、まずはこれらのツールを活用しながら、自分が移住して得られた経験や感想を伝えることが第一歩となりそうだ。

内にいる人にとっては当たり前のことでも、外から来た人の目には新鮮にうつるものもあるはず。着飾った言葉ではなく、ありのままを素直に表現するといいのかもしれない。

それに、と南部さん。

「正直、人が増えている街といっても、減少しているエリアもあるんです。街の雰囲気を知ったあとは、そういった地域にも入り込んで活動してもらうことになります」

人口が増加しているのは、街の中心や分譲地。一方で、北側の喜連川地区を中心とした農村部は次第に人が減り、高齢化も進んでいる。

ただ、そのぶん危機感を抱いている人も多い。現に、若い人を中心に「なんとかしよう」という動きが起きていて、精力的にイベントを企画する人も多いのだとか。

南部さんも積極的に紹介してくれるというから、まずはその人たちと親しくなって徐々に地域に馴染んでいければいい。

「すべてを丸投げする、ということは絶対にないので安心してほしいです。新しく来てくださる方にとっても住みやすい街となるよう、環境を整えることが僕たちの仕事ですから」


続いて南部さんに、さくら市を盛り上げようと活動している方を紹介してもらった。

過疎化が進んでいる北側の喜連川地区でギター工房を営む高野さんだ。

「旧喜連川町で生まれ育って、大学から地元を出て。卒業後はカナダへ留学して、英語を学びながらギター製作や修理を勉強しました」

帰国後、地元へ戻って工房をはじめてからは、ギターやウクレレを手がけるように。そのうち、さくら市でジャズのイベントができないかと考えるようになったそう。

「これは、ほんの思いつきで(笑)さくら市には自分が行きたいと思えるような音楽イベントがなかったから、自分でつくってみようかという軽い気持ちで市の助成金に応募したんです」

応募のきっかけは、締め切り1週間前に市の職員の方から「面白そうだから、応募してみたら」と教えてもらったこと。初心者の高野さんに、書類の準備から書き方までを丁寧に教えてくれたそう。

「あ、意外と自分でもできるんだなって。市の助成金といったらハードルが高く思えるけれど、それを相談できる相手がいると全然違う。やろうと思えば結構いろんなことができる環境だと思います」

そうして7年前からはじまったのが、「さくら ジャンゴ・ラインハルト・フェスティバル」という夏の音楽イベント。

プロ・アマチュアを問わず、音楽を愛する人が集まり、楽器を演奏したり、セッションを奏でたり、音楽への熱を夜通し語らう数日間だ。

当初は公民館のみで行なっていたものの、年々規模が拡大。スポンサーも市内外から数多く集まり、複数の会場のそばにはマルシェも登場するなど、今では街ぐるみのイベントとなった。

住民の人たちも含め、市内外から幅広くスタッフとして協力してもらっている。聞くと、さくら市には新しいものに目くじらを立てる人はおらず、イベントや新しいことが好きな人が多いそう。

「スタッフの多くはボランティアです。デザインができる人がフライヤーを作ったり、手の空いている人が公民館で印刷をしたり。それぞれが得意なこと、やりたいことを持ち寄って場をつくっている感じですね」

こうした取り組みが市民から自然に生まれるのが、さくら市の面白いところだと思う。

「きっと街の人たちは、新しく入ってきた人がいると知ったら『とりあえずおいでよ!』と、いろんなところに誘うと思います。そうするうちに仲良くなれるだろうし、溶け込めるんじゃないかな」


新しく入る人は、その後も希望すれば住み続けてもらえるように副業をしてもいい。さらに、最後の1年は週休3日にして、自分で仕事をつくるための準備時間に充ててほしいそう。

最後に紹介してもらった綱川さんは、さくら市で自分の仕事をつくった方。市内で着物のリメイクを行なったり、細工教室を開いている。

「実は私、2回リストラにあっているんです。会社の倒産や不景気で仕事を失うって、本当に辛いことで。もうこんな思いをするのなら、いっそ自分らしい形で仕事をつくって生きていこうと思ったんです」

もともとアンティーク生地や着物が好きで、手元に集めていたという綱川さん。仕事をつくろうと考えたときに、真っ先に浮かんだのが生地のアンティーク店を開くことだった。

まずは物件を探すところからはじめたけれど、潤沢な資金や成功への自信があったわけではない。内心は不安でいっぱいだったという。

「でも不安以上に、歴史もしがらみも、文句を言う人もいないまっさらなこの土地で、自分にできることをできる範囲で積み重ねていく楽しみのほうが大きくて。まだ何にも染まっていないからこそ、自分色にどんどん染めていけるのかな」

アンティーク生地を販売するお店は街にはまだなかったため、お客さんも興味を持って来てくれたそう。要望をもとにはじめた裁縫教室も、今では60人近くの生徒がいる。

綱川さんのお店をきっかけに着物生地や文化に興味を持ち、新たな趣味として夢中になる人も多いそう。

これも、綱川さんが街を少しずつ染めていった結果だと思う。

「この街は、ちょうどいいんです。手探りで始めても、自分のできることを試すうちにちゃんとステップアップしていける。街の大きさも、環境も、まず試してみるのにとてもいい土壌なんですよ」


さくら市には、わかりやすい特徴があるわけでも、誰もが知る名物があるわけでもありません。けれども、そんな街の環境にちょうどよく溶け込み、生活や仕事を楽しむ人たちがいました。

この記事を読んで気になった人は、「お試し移住」として1ヶ月から市内のマンションに住むこともできるそう。まずはさくら市がどういうところか、自分の目で確かめるのもいいかもしれません。

田舎でも、都会でもない。そんなちょうどいい街で、自分らしく生活してみませんか。

(2017/11/13 取材 遠藤真利奈)
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