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誠実なイソップさん

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「なにかを決めるときには、相手にも自分にも誠実であるかどうかで考えたくて。あたり前のことなのかもしれないんですけど、それを仕事でも大切にできるから、居心地がいいんだと思います」

これはスキンケアブランドAēsop(イソップ)の関谷さんが話してくれたこと。

イソップはオーストラリアのスキンケアブランド。百貨店やセレクトショップなどで、シンプルなパッケージを目にしたことがあるかもしれません。

ここで、直営店のメンテナンスや新しい店舗の立ち上げなど、ブランドをハード面から支えていく人を募集します。まずはアシスタントとして働きはじめることもできるそうです。

直営店はブランドの思考が集積した空間。ブランドについての話を聞いていると、まるで「イソップさん」という人を紹介してもらっているような感覚になりました。

  

東京・外苑前。

ライフスタイルショップなどが点在するエリアで、ひっそりと佇む青山熊野神社。その横のビルの中にイソップの日本オフィスがある。

扉を開けると、商品のイメージがそのまま空間になったような、シンプルな空間が広がっている。

洗練されたデザインの、外資系スキンケアブランド。

どんな方に会えるのか緊張しながら待っていると、坂口みどりさんが笑顔で声をかけてくれた。

「ようこそ。今日はよろしくお願いします」

日本で直営店を出店しはじめた7年前からここで働いている方。まずはイソップの商品について教えてもらう。

「ヘアスタイリストだったデニス・パフィティスが、1987年に創業したのがイソップです。ミニマムで高品質なものを使いたいという想いから、無駄なものを排除した製品をつくったことがブランドのはじまりです」

主な原料はその年に収穫された植物を利用しているので、ワインのように毎年香りや色が変わる。香りが特徴的な商品が多いけれど、それは効果と使い心地を優先した結果、生まれてくるものなんだそう。

スキンケアやボディケアを合わせると100種類ほどの商品が店頭に並んでいる。

季節ごとに新しい商品が出ているものの、スキンケアブランドによくある、ホワイトニングやアンチエイジングという商品ラインはない。

「シワがあったら、歳をとったら醜いんだというのは、広告などでつくられた考え方なんです。いろんな情報に惑わされず自分に正直に、気持ちいいと思える生活をしようという想いがあります」

流行に流され焦って買うのではなく、自分に合うと思ったものを自然と選んでもらいたい。

パッケージはシンプルなデザインで統一されていて、広告や宣伝は行っていない。

「とても謙虚なので、わかりにくいんですよね。すごく頑固に、考えを30年貫いてきました。流されずに自分の道を行く、本当に自分が好きなものに囲まれて暮らす、という価値観に共感してくださる方は、最近増えてきたように思います」

  

自分が心地いいと感じるものを、自分で選ぶ。

そのためにも、イソップを使う人がさまざまな価値観や思考に触れる機会を用意しているんだそう。

「アートや映画、世界中の街のことだったり。今まで自分の時間を費やしてこなかった文化的なことに触れる機会が多くあります。たとえば、ギフトキットは毎年テーマが違っていて、星座の名前がついていたりするんです」

今年のテーマは1950年代にイギリスで行われた社会心理実験。詩人や道具に使う素材などが商品名になるようなこともあった。

「カシオペアってなんだっけ?って。自分でも興味を持って学ぶので、必然的に自分の一部になる。お客さまに対しても、あたらしい世界を見せていくブランドです」

いっけんスキンケアとは関係のなさそうな知識。それはイソップが考える美しさにつながっている。

「本当の美しさって、どれだけ自分が興味のあることを掘り下げていくかとか、たくさんの知識を生活に活かしていけるかっていうことであって。シミがあるかないかが、美しさに影響するわけではないと思うんです」

みどりさんが入社した当時は4人だった本社スタッフは、現在20人以上に、お店も直営店を含めて26店舗を構えるほど広がってきた。世界でもヨーロッパやアメリカ、そしてアジアでも店舗は着々と増えている。

規模が大きくなってもブランドのメッセージや創業時の想いが薄まらないように、さまざまな工夫をしているんだそう。

「働く環境もその1つです。世界のどこのオフィスでも、同じペンやノートを使う。ドリンクは必ずこの格言入りのカップに移し変えて飲みます」

洋服はモノトーンのものを着用して、携帯は黒にする。オフィスでの過ごし方もいくつかのルールがあるそうだ。

ここで働くということは、こういうワークスタイルを選ぶということ。

つまり、仕事をする時間は“イソップの人”として働く。ブランドのクオリティを保つために必要な考え方だという。

「毎日触れるものがイソップでないといけないんです。店舗のスタッフがイソップとして働いているように、オフィスでもイソップでいる。同じ環境で働いていると価値観が似てくるのか、趣味が近い人が多いような気がします」

個性を出せなくて、窮屈に感じるようなことはないんでしょうか。

「そう感じる人もいるかもしれませんね。でも一方で、人の考えは違うからおもしろい、という考え方のブランドでもあるんですよ。ベースになるものは同じだからこそ、一緒に心地よく働いていけるんだと思います」

イソップという言葉には、「嘘、偽りのない」という意味がふくまれているそう。

イソップに触れる人が、自分に正直にいられるように。その状況をつくるためには、まずはブランドとしての姿勢をぶらさずにいる必要がある。

「きちんとイソップを知ろうとすると、深いですよ。商品の中に入っているものはもちろんですが、商品が置いてある棚ひとつでも理由がないものはないんです。私もいまだに、イソップってそうだったの!って毎日のように発見があるんです」

  

1つ1つに理由がある。それは店舗のデザインでも言えること。

日本で設計のコーディネートを担当しているのが、関谷薫さん。あたらしく入る人は、薫さんと一緒に働くことになる。

さらっとした口調で話をしてくれる薫さんは、10歳のお子さんを持つお母さん。まずはここで働くことになった経緯を聞いてみる。

「もともとフランスに住んでいて、店舗設計はまったくの未経験から現場で学んできました。イソップと出会ったのは、日本で店舗設計をやっていたころですね」

建築雑誌で長坂常さんが設計した店舗があるということを知り、空間を見るために訪れたのがイソップ青山店だった。

「天井を見上げながら入っていったら、いい香りがして。棚には同じパッケージがまるで本のように並んでいて。不思議な空間だな、と思ったのを覚えています」

「気がついたらイソップの商品を試していました。スタッフがすごく自然に接してくれたのが心地よかったんでしょうね」

それからは仕事の合間に店舗に通うほど、生活の一部としてイソップを使うようになった。ストアデザインの募集が出たタイミングで、ここで働くことになったのが2年ほど前のこと。

  

設計は本国のデザイナーがすることもあれば、外部の建築家と組むこともある。

薫さんの仕事はデザインを依頼する手前のコンセプトづくりから、その空間ができあがるまでをコーディネートすること。

主張しないブランド、と聞いてシンプルな空間を想像するかもしれないけれど、直営店はそれぞれ、まったく異なる個性的な空間になっている。

それはなぜなんでしょう。

「これは私の考え方なんですけど、イソップさんという人格があって。彼はその街にいる人たちが居心地良くいられる空間をつくるだろうと思うんです。その国、その街、その道。両隣の建物や土地の歴史を紐解きながら考えていきます」

生活のなかで自然に立ち寄れる場所。いつも行くカフェや本屋のように、その街に馴染むような空間をつくる。

具体的にどんなふうに仕事をしていくのか、昨年中目黒にできた東京店の話を聞かせてもらう。

「まずは中目黒を散歩しました。おしゃれなエリアだと思っていたけど、意識して歩くといろいろな人が住んでいて。洗濯物を干していたり、夕飯の支度をしている匂いが漂っていたり。日常の生活がある街なんだと知りました」

コンセプトにまとめていくために紐付けたのは、昭和初期に活躍した映画監督、小津安二郎の作品。

「彼の世界って、日常をとてもフラットに伝えるんです。嬉しいことでも悲しいことでもなく、ただ淡々と語る。その世界観を『デイリネス(Daily-ness)』という言葉にまとめ、デザイナーと共有しました」

日本の古い家庭にあるチーク材の家具。台所の壁に貼られているようなタイル。家の玄関のような入口。

『デイリネス』をふくらませた空間には、なつかしい日本の家庭を連想させるような要素が盛り込まれた。

「デザイナーはコンセプトをすべて拾ってくれることもあれば、一部を引き出して形にしてくれることもあります。ここで方向性が共有できると、いい空間ができるんです」

あたらしく入る人は、まずは今ある店舗のメンテナンスを担当してもらう予定。並行して薫さんと新店舗の立ち上げに関わりながら、少しずつ仕事を覚えてもらいたい。

「建築家やデザイナー、施工会社もそうですが、オーストラリアのメンバーにも共有する必要があって。なにを意図した空間なのか、ちゃんと理解をしてもらうためのコミュニケーションには時間がかかることもあります」

「人に気持ちを伝えるときも、お金の使い方を判断するときも、誠実であることがいちばんうまくいくというか。それはイソップが大切にしているバリューの1つでもあります」

  

「お昼ごはん、食べていきませんか」

せっかくなので、薫さんの同期である伊藤紫乃さんとのお昼をご一緒させてもらうことに。

よく立ち寄るというお弁当屋さんは意外にも、からあげやコロッケが並ぶお店だった。

「サラダとか食べてるイメージありましたか?それじゃもたないよね、イソップの仕事は(笑)」

紫乃さんはドイツで生活していた時期がある。海外経験のある人は社内に多くいるそうだ。

「イソップの謙虚なところが日本的だと感じて。ミニマルさというか、審美眼。そこに惹かれて働くことにしました」

赤いマスカラが似合う紫乃さん。服装や使うものにルールがあることを窮屈だと感じることはなかったんですか?

「最初はびっくりする人もいますよ。でも私は感動しました。世界観をつくるために、そこまでこだわるんだって」

「私も薫さんも、イソップの考えが自分の生き方とけっこう同じなんです。自分が重んじていることを会社も大切にしている。それが私にとってはすごく心地いいんです」

その後のおしゃべりの話題は、環境や食品、日本の働き方のことに。社会に対する自分の考えを、一緒に働く人たちとフランクに話せる関係ってなんだかいいな、と感じた。

「ここで働く人は、なんだろう、どうしてだろうって日々感じて生きている人が多いと思います。だから、好奇心がある人に来てもらえるといいな」

  

お会いしたみなさんは、自分がなにを大切にしたいのかをちゃんとわかっているように感じました。

それは、イソップさんが教えてくれたことなのかもしれません。

(2017/11/7 取材 中嶋希実)
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